シーズン1→2カード更新

2018.07.05 Thursday

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     こんにちは、BakaFireです。今週には合計3本のゲームバランスに関する記事を予定しており、こちらはその3本目となります。いよいよ本日、『第壱拡張:神語起譚』の先行販売が行われ、そちらに封入されたカード更新パックにて初となるカードの更新が行われます。こちらの記事ではそれらの更新すべての意図を説明いたします。

     


     
     どの記事から読まれるかは分かりませんので、冒頭文は全ての記事で共通のものとしておきます。既にほかの記事でお読みの方は読み飛ばして頂ければと思います。

     

     

    冒頭文:シーズン1バランスへの全体評価
     

     これまではシーズン1の環境を楽しみ、研究を続けて下さったプレイヤーの皆様ができる限り楽しめるよう、私どもは可能な限りバランスに対して言及しないよう心掛けてまいりました。
     
     しかしながらシーズン1も終わり、シーズン2でのカード更新も目前に迫った今週には、今のゲームバランスに関する私どもの想いと考えを包み隠さず、可能な限り誠実にお話しさせて頂きます。
     
     6月の禁止改訂で軽く触れたとおり、現在のゲームバランスは(今後の拡張空間と引き換えに)もっとも整っていた『第二幕』の最終段階よりは崩れたものとなってしまっています。現状への評価を正直に申し上げますと『第二幕+第壱拡張』の時期(2017年3月〜7月)よりは良いバランスにあり、『第二幕決定版』(2017年10月〜12月)の時期よりは悪いバランスにあると考えています。『第二幕+第壱、第弐拡張』の時期(2017年8月〜10月)と比べるとどうなのかは微妙なところです。こういったバランス面の後退については私どもの力不足であり、深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。
     
     このように書くとバランスについて酷くネガティブで、崩壊しているように感じられるかもしれません。しかし誤解なさらないでください。『新幕』はゲーム全体を派手で鮮烈なものにすることに成功した上で、十分に魅力的だった『第二幕+第壱、第弐拡張』の時期と同程度には多くのメガミが輝ける状況を作れています。あくまで最も理想的だった状態から後退したという話なのです。
     
     実際、全体としては『第二幕』よりインフレーションした方向で魅力的なゲームに仕上がっています。しかしながら、バランスが後退したという点もまた事実であり、インフレーションについていけていないメガミがいる一方で、インフレーションするにしてもやりすぎている箇所があり、そして今後に問題となりうる潜在的なリスクも存在しています。
     
     私どもが理想のバランスを目指し続けると理念を掲げており、これらの課題全てに真摯に取り組んでいく意志がございます。それゆえに宣言した理念に従いカード更新を行います。
     
     幸いにしてバランス上の問題やリスクのうち、今見えているものの大半に対しては今回のカード更新でメスを入れられています(3つの記事のうち1つはこのカード更新に関するもので、今の環境についてより詳しく言及し、全てのカード更新への説明を行います)。
     
     
    今シーズンにおける更新の目的

     

     まずは今シーズンにおける更新のコンセプトを説明いたします。『新幕』は多くの面で成功している一方で、私どもの力不足ゆえに大きな失敗から小さな失敗、あるいは失敗とまでは言えないものの改善できうる余地は多分に存在しています。
     
     これら全てを一度のカード更新で最善の形に持って行くことは不可能です。第一に、変更される枚数が多すぎて混乱が大きくなりすぎます。第二に、変化の過程で別の過ちを犯すリスクが高まります。第三に、そもそも印刷上の問題があります。
     
     そこでカードの更新については毎回のコンセプトを丁寧に定め、それに従った更新を行わせていただきます。今回のコンセプトは以下の4つになります。
     
    目的1:基本セットを可能な限り魅力的にする。
    目的2:攻撃力の基準を見直す。
    目的3:問題のあるメガミに調整を行う。
    目的4:潜在的リスクに前もって対策しておく。

     

     それぞれ説明しましょう。

     


    目的1:基本セットを可能な限り魅力的にする。

     

     『新幕』は『第二幕』と違い、初めから12柱ものメガミが存在します。それ自体はゲームを奥深くする面ですばらしいものですが、新たに本作を始めたプレイヤーにとっては障壁としても働いてしまいます。12柱分のカード内容を把握するのは簡単なことではなく、それゆえにイベントへの参加を尻込みする方がいらっしゃっても不思議ではありません。
     
     さらに付け加えるならば『基本セット』だけをお求めいただいている方もいらっしゃるはずです。私どもは『達人セット』の購入が前提となりつつある現状には良くない側面もあると考えており、その改善を図ろうとしています(もちろん、最終的に大規模大会などの競技的なイベントまで進む方は『達人セット』もお求めいただくことを想定しています)。
     
     そのため、使えるカードプールを基本セットに限定したイベントを開催するべく、計画を進めています(場合によってはウツロも使用可能としてもいいかもしれません。彼女も難しいルールを含んでおらず、『第壱拡張』をお求めいただくのは『達人セット』より簡単です)。
     
     しかし、そのような方向で進めていくとなると『基本セット』の内容は他と比べてより重要になります。確かに『基本セット』には環境に悪影響を与える形で目立っているメガミはいませんが、基本セットのバランスもそれはそれで懸念すべきところは多いのです。そこで、今回のカード更新では『基本セット』の更新を優先して進めるものとしました。
     
     『達人セット』のメガミも目的3や目的4のような急ぎ整えるべき点は直しますが、より深く彼女らと対話するのは次のシーズンとなります。


     

    目的2:攻撃力の基準を整える

     

     今回の更新にて攻撃力に関するバランスを改めて見直します。正直に懺悔すると開発中の間は、私どもバランス調整チームはダメージのバランスへの変化を正確に見定められていませんでした。
     
     『新幕』はライフを10に増やし、その上でゲームスピードの向上を目指す必要がありました。それゆえにライフへのダメージを増やすか、ダメージを通しやすくするのは必要な変更です。しかしその際に、前者の方向へと舵を切りすぎたのは失敗でした。3/2や2/2の枚数が増えすぎたために一部のメガミで塩梅を見誤り、乱暴さや理不尽さが目立ってしまったのです。
     
     私どもは今後、ライフへのダメージが2以上の攻撃へとルールを定め、慎重に取り扱うようになります。具体的には認められるのは以下の事例に限られます。
     
    ・1枚目である。

     

    どのようなメガミも1枚目の2/2(飛苦無など)や、正しく調整された3/2(マグナムカノンなど)などを持つことができます。

     

    ・1/2である。

     

    1/2はバランスを壊しづらいため、2枚目のライフダメージ2として持ち得ます。もちろん、他のカード次第ではありますし、3枚目はやめておくべきでしょう。

     

    ・連続攻撃に制約がある

     

    間合の管理が難しかったり、対応でしか使えなかったり(返し刃)すると、2枚の2/2や3/2が共存することがありえます。逆に連続攻撃が容易な場合はライフダメージ2以上の攻撃を持ち辛くなります。

     

    ・全力である。

     

    全力は十分な欠点であるため、高いダメージにできます。今後はこの方向性でライフダメージを取りやすいようにバランスを調整する可能性は高いと言えます。

     

    ・適切な消費を持つ切札である。

     

    切札は正しい消費が与えられればどのようなダメージすら持ち得ます。

     

    ・その他の構造に弱みを持つ。

     

    例えばヒミカは2枚の3/2を持っています。しかし、近づかれた後に戻ることが難しいという間合における弱みと、対応を1枚も持たないという弱みが与えられているため許されているのです。

     

    余談:
     この件で象徴的な誤解をひとつ挙げるとすれば、3/1と2/2の価値変動がまさにそれでしょう。『第二幕』では3/1と2/2は互角に近く、やや3/1の方が優勢でした。ライフへのダメージを当てることそのものが難しいゲームだったため、ライフ受けが安定しやすい3/1は強いと見なされていたのです。ですが『新幕』ではライフが10に増えたために1ダメージの価値が下がり、結果として2/2の方が強力になっていました。 
     驚いたことに、-/1ですらもはや過剰に強力ではなくなっていました。この点はデザイン空間の拡大として好意的に捉えています。

     
     
    目的3:問題のあるメガミに調整を行う。

     

     目的2で挙げたダメージ面の問題を中心に、ゲームバランスに問題を生じさせていたメガミを調整します。これは強さや理不尽さの面だけでなく、勝ち辛いという逆の問題を持つメガミへの調整も含まれます。
     
     今回の更新では、元来行いたくはない下方修正が想定以上に必要になってしまいました。これらの問題あるカードを作成してしまった点につきまして、深くお詫び申し上げます。
     

     

    目的4:潜在的リスクに前もって対策しておく。

     

     3に近いですが、問題が顕在化していない点が異なります。バランス調整チームが調整後の環境でプレイテストを行い、このまま更新を行うと問題があると判断した箇所も先んじて整えておくのです。
     
     
    各メガミへの見解と調整内容

     

     ここからメガミ1柱ずつに今シーズンにおける見解を書き、結果としてどのカードにどのような調整が行われるのかをお伝えいたします。


    ユリナ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当
    2:攻撃力の基準を見直す:ある意味で該当
    3:問題のあるメガミに調整を行う:やや該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     ユリナを調整する理由は多岐にわたります。1から3まで順に、一つずつ説明しましょう。

     

     目的1においては、使われ辛いカードがいくつかある点に問題を感じています。それゆえに構築が少しばかり固定化しやすく、眼前構築におけるせめぎ合いで少しだけ魅力が乏しくなっています。
     
     目的2についてはユリナはその立ち位置ゆえに、攻撃力の基準となるべきメガミです。ユリナは主人公である上に防御力、移動力は平均以下で、攻撃方向以外の搦め手もほとんどないのですから。私どもはユリナこそが、特別なリスクを負わない範囲での攻撃力の上限だと定めました(そして上限とするには、僅かに火力不足とも言えます)。

     

     目的3について、強さにおけるユリナの現状を一言で言うと、半歩足らずであると考えています。確かに強力なカードは存在し、十分に戦うことは可能です。しかしながら私どもが観測してきた範囲に限れば、二柱選出での大会でユリナの存在感は乏しく、僅かな力不足が感じられます。

     

     大規模大会においてユリナは大きく躍進したと言えます。しかしながら、それは三拾一捨という特殊な環境と、あの場でのメタゲームが大きな影響を与えています。細かく説明すると長くなりすぎてしまうため割愛しますが、私どもバランス調整チームはこの調整は正しいものだと信じています。


     

     

     居合は適正距離2でも使用できる代わりに、2で使用した場合は3/2になるようになります。
     
     目的1の側面としては「居合」は使い辛さゆえに、デッキに入らなくなりすぎてしまいました。適正距離2で使用できない攻撃/全力は相応の何かが求められますが、そうなると対応不可を付けるなどのやり方で、居合の弱点すら全て消してしまい魅力的ではありません。ゆえに適正距離に2を加えるのが正しいやり方となります。
     
     他方でユリナが安易に間合2に潜ることを正解としたくはありません。そこで間合2で使用すると損をするようにしました(ネガティブなテキストを用いているのも、そのための意図的なものです)。それでも間合2に潜るケースはある程度はあるでしょうが、間合3に居座ることが正解である場面が増えるだけで十分です。
     
     目的2の側面でユリナの攻撃力が僅かに不足していると書きましたが、「斬」「一閃」「柄打ち」「圧気」「月影落」のいずれか1つでも上方修正したら、ゲームは破壊される可能性があると考えています。そうなれば直すべきなのはこのカード以外ありえないでしょう。攻撃力の調整方法として、全力カードを推進していくという指針とも合致しています。

     


     

     

     足捌きは本来の効果に加え、現在の間合が1以下であれば2歩の離脱効果が追加されます。
     
     「足捌き」はユリナにとって必要なカードですが、必要なケースがやや少ないために少しばかり残念なカードとなってしまいました(上手く使えるケースに限れば強力です)。
     
     さらに、このカードはライラの「風走り」と比較して下位互換です。私としてはメガミが異なる時点で下位互換と言う概念はありえないと考えていましたが、発売時点でのフィードバックは良いものとは言えませんでした。この点についてはワクワクできるものにするという感情面で失敗したと考えており、今後は下位互換のカードはよほどのことがない限りは作らない見込みです。
     
     調整の方向としては、使えるケースが少ないのが問題なので、別のパターンでも使う価値のあるカードにしました。他方でこのカードをいつでも便利なカードにはしたくはないため、適度な使い辛さは維持しております。
     
     
     

     

     浮舟宿は消費が2に減少します。その代わりに再起は即再起になり(ライフを回復しない限りは)1回しか未使用に戻せなくなります。
     
     「浮舟宿」は消費が3だと使い辛さが目立ちます。他方で消費を2にすると、毎ターン未使用に戻し続ける動きが理不尽な防御力を生んでしまいます(消費が3であっても相手によっては理不尽な防御力になってしまうのも小さな問題です)。そこで、それらを全て解決するためにこのような更新を行いました。

     


    サイネ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当
    2:攻撃力の基準を見直す:ごく僅かに該当
    3:問題のあるメガミに調整を行う:やや該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当

     

     サイネは実に厄介な形で問題を抱えています。少しだけ問題のあるカードを多数持っているのです。そしてこれらの問題ゆえに『基本セット』における体験を歪めてしまっている恐れもあります。
     
     他方で、シーズン1では活躍不足が目立ちました。私どもの分析ではこれはサイネの問題ではなく、問題のあったオボロ、サリヤ、ライラのいずれも(しかも問題のある個所が)サイネにひどく刺さっていたためだと考えています。
     
     サイネは打点の幾らかを「返し刃」に依存しています。しかしオボロの「影菱」やライラの攻撃全般は間合2であるためサイネ側は打点が苦しくなり、しかもオボロやライラが使っているカードはまさしく問題のある攻撃力そのものなのです。
     
     サリヤはそうではありませんが純粋にハイスペックなうえ、「Thallya's Masterpiece」を駆使してクリンチを仕掛けられ続けるのがサイネにとっては苦しすぎます。
     
     他方でこれらの問題が解決されると、サイネの存在には一定のリスクがあります。実際、カード更新を適用した環境におけるプレイテストで、サイネを用いて中距離戦を狙ういくつかの組み合わせは結果を残し、強力過ぎる懸念があると判断されました。

     


     

     

     律動弧戟の消費は6になります。
     
     まずは謝罪と共に断言しますと、このカードを純粋に単独で見た場合、適正な消費は6です。しかしカードはメガミ全体で見られるべきであり、サイネの他のカード次第では5のままでも許される可能性はあると考えていました。
     
     しかし、後述する「響鳴共振」の調整において、消費が5のままだと組み合わせたリーサルが早期から安定してしまうと分かりました。他方で「響鳴共振」の消費をさらに1上げるのは全くもって魅力的ではありません。これらの事情を加味し、私どもは「律動弧戟」の消費を適正なものに変えることにしました。
     
     
     

     

     響鳴共振は本来の機能を残しつつも、全く別のカードへと変化します。
     
     深い謝罪と共にお伝えしますと、このカードを印刷したのはひどい失敗であり、私どもは強く反省しています。シーズン1末期でこそサイネそのものの活躍が不足したため強く話題になりませんでしたが、初期のフィードバックは悪く、私どもとしても大きな過ちだと早期に認識しました。
     
     『第二幕』の数値バランスでは適切な読み合いが機能していましたが、『新幕』では理不尽じゃんけんとしか言いようがありません。このカードがデッキに入っている時にケアを怠ると、シンプルに即死するのです。合計消費6でオーラを3削られ、そこから「律動弧戟」をはじめとした連続攻撃が打ち込まれるのは明らかに不当です。
     
     他方でサイネ側からしてもケアをされてしまうと切札の枠を1枚潰されてしまい、安定したゲームプランが組みづらくなってしまっています。「返し刃」にせよ「響鳴共振」にせよサイネ側は相手依存という不安定さにさらされ続けており、どこか不当な弱さを感じてしまいます。
     
     その上で、サイネにとって相手のオーラを間合へと送る挙動は必要なものです。そこでこの動作を安定させつつもマイルドにして、両者にとって納得しやすい形でゲームプランを構築しやすくしました。
     
     
     

     

     音無砕氷は1/1の攻撃カードとなる代わりに、消費が2になります。
     
     これもまた強化と弱体化それぞれの理由があります。
     
     強化の側面としては攻撃力の向上が目的です。サイネは「返し刃」が当たり辛い相手に対しては攻撃面で苦しい立場に立たされがちです。そこでもう1枚だけ攻撃カードを切札から入れる余地を加えることにしました。
     
     弱体化の側面は、コントロール的な立ち回りへの相性の緩和が目的です。「音無砕氷」は3/1や-/1を駆使して1点ずつリードを重ねていく勝ち方を強く咎めています。その上で消費が1であると繰り返しの使用がやりやすすぎるのです。他方で2/2など相手にはそこまで強くないため、2/2、3/2などのカードで殴り続ける立ち回りをゲーム全体で推進し過ぎているという側面もあり、それも緩和すべきと考えました。
     
     
     

     

     氷雨細音の果ての果ては消費が5になります。
     
     サイネ単独では消費が4のままで問題ありませんが、同じ中距離で十分な攻撃力を持つメガミと組んだ際に問題が生じました。オーラで受けられてしまったとしても、そのままオーラを5削ったことから連続攻撃を通し、勝ててしまうのです。
     
     これらのリスクを考慮し、他の切札と組み合わせづらくするために消費を1上げて調整します。

     


    ヒミカ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当するも調整なし
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当せず
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     ヒミカは十分な存在感があり、他方で問題があるとも言えません。『基本セット』の枠内でも、強すぎるとも弱すぎるとも言えません。それに加え、ウツロが参入したうえでなければ、遠距離攻撃を中心とした戦い方を正しく評価できないという側面もあります。
     
     これらを総合的に考慮し、ヒミカの調整は不要と判断しました。

     


    トコヨ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当
    2:攻撃力の基準を見直す:ある意味で該当
    3:問題のあるメガミに調整を行う:強く該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     トコヨはある意味で本作における最大の失敗だと評価しています。改めて深くお詫びをさせてください。誠に申し訳ございませんでした。
     
     サリヤなどは強さの面で明確な問題がありますが、トコヨは逆に弱さの面で明確な問題があります。かつての記事で、『第二幕』におけるトコヨは潜在的問題に愛され過ぎたために強力だったと書きました。しかし『新幕』になり潜在的問題が取り除かれた今、トコヨはその強みの多くを失いました。『第二幕』当時の強すぎるイメージを私も、バランス調整チームも引きずっており、彼女の調整へと慎重になりすぎてしまったのです。
     
     トコヨを輝かせるには、攻撃力か防御力の向上が必要です。しかし防御力を上げすぎてはいけません。冷静にカードリストを眺めると、トコヨの防御能力はすでに相当のものであり、ここから防御力に大きな上方修正を加えるとデザイン空間におけるひどいリスクが生まれます。つまり、高い防御力を持つメガミが未来永劫デザインできなくなる可能性があるのです。結果として、攻撃力を中心とした調整を行うことになります。

     


     

     

     梳流しの適正距離は4になり、集中力が2でなくても使用でき、山札に戻るのは集中力が2の時のみになります。
     
     これはつまり『第二幕』初期で問題であり、調整対象となった「梳流し」そのものです。あの時の問題を知っている方からすれば本当に大丈夫なのかと問いただしたくなるかもしれません。しかしプレイテストを重ねた結果、どうやら大丈夫どころか、このくらいしなければトコヨは十分に機能しないようです。
     
     先程、トコヨは攻撃力を上方修正すべきと書きましたが、当然-/2にしてはいけないことは理解しています。攻撃の当てやすさを中心に調整することで、定期的な-/1でリードを広げていき、相手の2/2などを捌くことでコントロールして勝つという立ち回りを実現します。

     


     

     

     晴舞台は完全に別のカードになります。
     
     昔の「晴舞台」は私の大好きなカードです。しかし、残念ながらいくつかの欠点のために、使用に堪えない水準のカードだったようです。置いただけでは一切の利得が得られず、納5ゆえにダストを十分に用意するのが難しく、さらにその上で効果のために追加のダストが必要です。
     
     まず、これらすべての欠点を払拭しました。しかしそうなると問題として、カードの複雑性が『基本セット』のカードとしては上がりすぎてしまいました。そこでそのカードはアナザー版トコヨへと旅立つことになります。
     
     代わりに「晴舞台」はトコヨがオーラを高める方向で、防御力を向上できるカードとしました。トコヨの防御力を上げすぎてはいけませんが、この1枚は問題のない枠内で機能しています。
     
     集中力を得る効果は畏縮などへの対策です。畏縮をキーワードにした時点で、この機能がトコヨを咎めることには気づいたため、「詩舞」を通した対策を図りました。しかしまだ不足しているようなので、二方向からこの問題への解決を図ります。もう一方向についてはサリヤの項目でお話しいたします。

     


     

     

     無窮ノ風は適正距離が3-8になり、対応不可を得ます。
     
     残念ながら今の「無窮ノ風」は完全に失敗しています。使用に耐えるカードパワーではありませんでした。必要に応じて定期的に使用するには間合に無理があり、このカードへの対応、特に間合をずらすものはトコヨの立ち回りをひどく阻害します。そこで、これらの欠点を払拭することにしました。

     


    オボロ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:強く該当
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     オボロは今回のシーズンで強い問題があったメガミです。では、その問題がどこから生じているのかというと、私どもは攻撃力の高さにあると判断しました。
     
     『第二幕』から(特に『決定版』から)ずっと、オボロは設置を経由した攻撃による高い攻撃力を持ち続けていました。しかし今回の失敗を踏まえ、改めてオボロのあり方を見つめ直したところ、このような暴力的火力は忍らしくなく、より忍者として相応しい形で調整されるべきだと判断しました。忍はここまで暴力的でなく、より巧妙であるべきなのです。

     

    余談
     他方で、『第二幕』と比べるとデッキ構築の楽しさと言う側面では大きく向上しました。『第二幕』でのオボロは明確に「全体的に弱いために使い辛いカード」を何枚も抱えており、そのために構築が硬直的になりすぎていました。特に切札はひどく、「鳶影」以外は(一部の極端なデッキを除き)選択することに高いリスクを背負わなければなりません。

     『第二幕決定版』での調整以降はオボロは環境で活躍するようになりましたが、全体的に弱いカードを多数抱えていたがために「忍歩」は過剰なパワーを持つ形で調整せざるを得ませんでした。やむを得なかったとはいえ、これは最善の形でなかったのは確かです。
     『新幕』のオボロはこの面において全てのカードが使用に値する状況にあり、多彩なデッキ構築の広がりを獲得しています。


     

     

     影菱は常時効果を失い、代わりに(伏せ札から使用した場合に限り)相手の手札を伏せ札にする攻撃後効果を得ます。

     

     攻撃力を整えるにあたって候補となるのは「影菱」と「鋼糸」ですが、対応不可の絶対性と、3/2というゲームを終わらせる力や理不尽さの大きさから「影菱」に軍配が上がります。
     
     オボロの方向性そのものを切り替えるため、設置によるダメージの上昇そのものを取りやめます。そして代わりに設置で使用した時に限り、相手の手札を破壊できるようにし、オボロには別の強みを与えることにします。

     


    ユキヒ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当せず
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     ユキヒは魅力を示しているうえに、良好なバランスにあると判断しています。細部で気になる所はゼロではありませんが、いずれも優先順位は低いものばかりです。

     


    シンラ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当せず
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当

     

     シンラは強さの面ではほとんど問題はありません。しかしながら、彼女には極めて大きな潜在的リスクがあります。サイネ/シンラの5(4)カードデッキを中心とした森羅判証デッキです。この類のデッキはバランス調整チームでも発見されており、発売後初期に注目すべきデッキとして懸念されていました。
     
     しかしながら、実際はほとんど結果を残しませんでした。理由は極めて簡単です。オボロとライラに弱く、さらに言うならオボロ/ライラに対して最悪と言ってよいほどに相性が悪いのです。彼女らもまたシーズン1で結果を残し、同時に問題のあるメガミです。
     
     ですが結果を残していないと言っても、サイネ/シンラが問題のあるデッキであることは間違いありません。オボロ、ライラへの調整が行われた次のシーズンで、このデッキを放置するというリスクは避けなくてはなりません。
     


     

     

     皆式理解の神算効果は新しいものになります。

     

     サイネ/シンラのデッキを調整するにあたり、候補となるのは「森羅判証」そのもの、「壮語」、そしてこの「皆式理解」です。どれを調整すべきか。私どもの考えをお伝えしましょう。
     
     「森羅判証」そのものについては、カード単独での強さは極めて適切です。さらに、弱くするやり方が見つけづらく、またシンラにとって象徴的であるこのカードが単純に弱くなるのは魅力的ではありません。
     
     「壮語」はカード単独では適正かつ面白みのあるものです。「森羅判証」との組み合わせについても、『新幕』のライフ水準では「壮語」からの安定したダメージがなければ「森羅判証」は機能し辛いと判断しました。
     
     では何が問題なのか。私どもは「森羅判証」を最速で立てる動きが正解になってしまう点に問題があると判断しました。「皆式理解」があれば納を実質12とできるため、「壮語」からの確定6点と、その他の付与を合わせて十分に相手を倒せます。この安易さと、対処できないどうしようもなさにこそ問題があるのです(対処するにはそれこそ、オボロやライラのような不当な火力を用意しなくてはなりません)。また、「森羅判証」「皆式理解」パッケージが安定し過ぎてしまうという構築の硬直性も小さな問題です。
     
     以上より、「皆式理解」を「森羅判証」の引き伸ばしには使えないようにしました。一方で弱体化になってしまわないよう、応用の幅も少し広げます。

     


    ハガネ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     ハガネは『第二幕』でも今一歩ふるいませんでしたが、『新幕』においてもその状況を引きずっています。決して弱すぎるというわけではないのですが、どうにもくすぶり続けているのです。
     
     極度に熟練した方はある程度の強さで使用できています。しかし多くのプレイヤーにとって彼女が選択肢に昇らないのは、大規模大会の使用率を見ても明らかでしょう。
     
     この状況を打開し、より魅力的なメガミとするためにも、ハガネには根幹にあたる1枚へと調整を施します。

     
     

     

     遠心撃は攻撃後に集中力が0になる代わりに、相手の手札も伏せ札にするようになります。但し、一連の効果が生じるのはあなたのターンである場合のみとなります。
     
     ハガネの今一歩振るわない状況を解決するため、様々なカードへの上方修正を検討しました。しかしどれもいまひとつジューシーではなく、根本的な解決につながっていません。
     
     そこでバランス調整チームで検討した結果、ハガネの根幹にある「遠心撃」の使い辛さこそが問題であると判断されました。但し、「鐘鳴らし」の存在を考慮すると、ダメージを増やす方向の調整だけは行ってはいけません。
     
     「遠心撃」の問題はどこにあるのでしょうか。検討の結果、要点は2つだと分かりました。第一に「遠心撃」の準備から使用までの過程で相手はオーラを5用意できるため、「遠心撃」だけでは永久にライフへのダメージを与えられない点。第二にライフへのダメージを通したら、反撃でハガネ側がそれ以上の被害を被る可能性が高い点です。
     
     それらを解決するために、攻撃後効果で相手の手札もまとめて吹き飛ばすことにしました。こうすれば相手は纏い1〜2回分のリソースを失うため、オーラの回復が間に合い辛くなります。さらに反撃のための手札を吹き飛ばせるので、後者の問題も解決します。
     
     本当に大丈夫かと思ったかもしれませんが、私も最初にこの案を見た時はそう思いました。そして高い警戒心をもってプレイテストを重ねたところ、驚くべきことに問題なかったのです。
     
     但し、オボロ/ハガネの「鳶影」からの「遠心撃」だけは駄目でした。その問題を解決するため、フェイズ終了や手札の伏せ札などすべてを含め、一連の効果は自分のターンにしか発生しなくなります。

     


    チカゲ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当せず
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     チカゲは十分に魅力的であるだけではありません。驚くほどに絶妙なバランスなのです。他の全てのメガミは(今回調整されていないメガミも含め)、どこかは調整したい箇所が見つかるものです。しかしチカゲは全てのカードに対して、完全な納得をほぼ全員が示しているのです。
     
     チカゲの調整は今のところ100点と評価しています。全てのメガミについて、彼女と同じ水準の成功に至れるよう努力を重ねてまいります。

     


    クルル

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当せず
    3:問題のあるメガミに調整を行う:見送り
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当

     

     『第二幕』でもクルルの全容が明かされるまでは半年を要しており、彼女の研究には十分な時間が必要です。その事情を鑑みると、今シーズンの時点で調整を行うのは早計と判断します。
     
     『新幕』発売から1か月程度の間はこの文章を書いて終わりにするつもりでいました。しかし、『第二幕』で研鑽を重ねたプレイヤーの研究速度は向上していました。予想に反し、今の時点で大会で一定の成果を出しつつあります。
     
     そしておそらくは、この結果はまだ全容ではありません。クルルが現時点で存在感を示している時点でリスクが生まれていると判断し、最も懸念すべきカードに調整をかけておきます。
     

     

     

     びっぐごーれむの消費は4になります。
     
     「びっぐごーれむ」はサイネ/クルル、オボロ/クルルなどで不穏当な結果を出しており、強く回った際のライフ差などを見ても高いリスクがあると評価せざるを得ません。
     
     そこでクルルの山札1週目の動きをいくらか阻害するために「びっぐごーれむ」の消費を1引き上げます。カードの挙動を踏まえると、山札1週目で「びっぐごーれむ」の効果が使用できないと動きは制限されます。それゆえに、この増加は十分な制約となると期待しています。

     


    サリヤ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:やや該当し、禁止カードで対応
    3:問題のあるメガミに調整を行う:強く該当し、禁止カードで対応
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     サリヤは結果として、シーズン1では最も大きな問題があったメガミです。具体的な問題については禁止改訂の記事にて書いておりますので、そちらをご覧ください。
     

     

     Form:YAKSYAは変形時効果で手札を捨てなくなる代わりに相手はカードを1枚しか引けなくなり、集中力を0にする効果を失います。

     

     「Form:YAKSYA」と「Thallya's Masterpiece」の2枚がゲームバランスにおける問題のあるカードです。重要なのは、両者を適切な塩梅で整えなければサリヤは魅力的な調整とならない点です。
     
     「Form:YAKSYA」は変形時効果を緩和する形でそれを実現しました。単純にこれまでの変形時効果が理不尽すぎたのは確かですが、なぜこのような塩梅になったかを説明しましょう。
     
     まず、「Form:YAKSYA」を使う側も対ビートダウンではリスクを背負っています。全力を使ったうえで守りを固められないため、返しで蹂躙される恐れがあるのです。そのリスクを緩和するためにも、相手のリソースを削る効果はある程度は残すべきです。
     
     他方で、元の効果はコントロールに対して致命的すぎます。手札を全て捨てさせられては対応カードでBeta-Edgeを捌く立ち回りが全く機能せず、ただただ蹂躙されてしまうのです。これら二点を踏まえ、手札を捨てる効果を除き、新しい形式の効果を実装したのです。
     
     もう少し語るとすれば、手札破壊が増えすぎないよう制御したという側面もあります。今回のカード更新では手札破壊が少しばかり多めとなったため、他方で相応しくない位置の手札破壊は減らすべきだと判断したのです。
     
     集中力を0としないようにしたのは、トコヨ側の事情です。畏縮は何とでもなりますが、集中力が0になりつつ畏縮するのはトコヨにとって本当に駄目です。
     
     畏縮は良い塩梅の効果ですが、サリヤという1柱のメガミの中にそれらの効果を増やしすぎた点は失敗だと判断しています。今後は畏縮は1柱に多くて1枚、本当に大きな理由がある場合のみ2枚というくらいの使い方になるでしょう。

     


    ライラ

     

    1:基本セットを可能な限り魅力的にする:該当せず
    2:攻撃力の基準を見直す:該当
    3:問題のあるメガミに調整を行う:該当
    4:潜在的リスクに前もって対策しておく:該当せず

     

     ライラはオボロと並び、火力面で問題のあるメガミです。バランス面での問題はほぼ全てがそこに集約されますので、今回の目的に従って攻撃力を見直すことにします。
     

     

     獣爪は適正距離が1-2になり、ダメージが3/1となります。
     
     今回の目的や理念に従うと、「獣爪」か「風雷撃」を調整することになりますが、より根本的な解決に繋がるのは「獣爪」の方です。まずは2/1を考慮してみましたが、残念ながら弱すぎたため、3/1がふさわしいと判断されました。
     
     それに加え、適正距離から0を除くことにしました。「獣爪」を間合0で使用できることには幾ばくかの不当さがあります。一度調整したカードを再び調整する事態には陥らないようにしたいため、この機会でそこにもメスを入れておきます。

     


    次のシーズンに向けた今の指針

     

     以上で、今回のシーズンの更新は終わりとなります。お読みいただきありがとうございました。新たな環境をお楽しみいただければ嬉しいです。
     
     最後に次の更新について今の意識を書いておきます。
     
     ユリナ、サイネ、ヒミカ、トコヨ、オボロ、ユキヒ、ハガネ、チカゲ、ウツロは今のところは次に重く扱う予定はありません。もちろん、問題が見つかった場合は別です。
     
     サリヤは大きな宿題を残してしまったため、必ず重く扱われ、更新されます。
     
     シンラ、ライラはバランス上の大きな問題は落ち着いたとみていますが、面白さにおける改善点が残されていると考えています。その点を見直す見込みです。
     
     クルルは例外で、次のシーズンこそが彼女の本質と、然るべきあり方を見定めるタイミングだと考えています。それゆえに、重く扱われることになるでしょう。

    2018年7月禁止改定

    2018.07.02 Monday

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       私どもはバランス調整の宣言と、それに基づく理念(PC版)(スマートフォン版)に従い毎月第一月曜日にカードの禁止改訂を行います。この記事はその2018年7月のものです。禁止カードを出すことそのものについて疑問や不安を感じる方は、こちらよりリンクしている宣言か、それを要約した理念をご一読いただければ幸いです。
       
       
      2018年7月禁止カード

       

      なし

       

       

       結論として、私どもは今回のシーズンでは禁止カードを出さないという決断をしました。理由は前回の禁止改訂から大きく変わってはいません。ゲームバランスにおける大きな欠陥はなく、大会などの競技的な場に持ち込むにあたっての安易な正解もありません。当然、カジュアルに遊ぶ場ならばなおさらです。
       
       先月から今月にあたっての変化を私どもの視点からお伝えするならば、より新しいデッキが環境に登場し、大会環境はより混沌としたと考えています。これは多くの面で魅力の方が大きく、素晴らしい知らせだと捉えています。
       
       しかし他方で、長期的に見てより良いゲームを目指していくにあたっては問題だと捉えざるを得ないものは増えました。私どもが『新幕 第壱拡張』で計画しているカード更新の内容は、今月までの環境の変化に伴って確かに変化したという点は、正直にお伝えいたします。
       
       これらの理由に加え、今月は大規模大会が計画されているという事情もございます。先日の記事でも書かせて頂きました通り、7月28日(土)では大阪にて、今シーズンを締めくくる大規模大会が開催されます。
       
      (定員128名のところ、ありがたいことに今の時点で103名もの申請を頂いております。誠にありがとうございます。まだ席は空いておりますので、参加を検討されている方はお早めにこちらのフォームよりご申請ください)
       
       熱心なプレイヤーの皆様は本当にありがたいことに、そのイベントに向けて研究や練習を行ってくださっています。このようなタイミングで禁止カードを出すのはそれらの試みを台無しにしてしまう恐れがあるため、よほどの事態でなければ出す理由はありません。そして今の環境はいくつかの荒い面が気になるのは確かですが、魅力的であるとも考えており、よほどの事態とはとても言えません。
       

       

      次のシーズンに向けたバランスについて
       
       私どもは今のゲームバランスについて、良好であるものの、他方で改善できる余地は多いと考えております。現在、私どもは8月のコミックマーケットにて先行販売される『新幕 第壱拡張』に向けて更新カードの最終調整を行っています。そしてその先行発売の後には当ブログにて詳細な考えをお伝えします。

       

       

       本日は以上となります。次回の禁止改訂は8月6日(月)となりますが、このタイミングは拡張を発売する直前であるため、禁止カードを出す予定は基本的にはありません(もし万が一出す事態になってしまうとすれば私どもの想定外の問題が発見された場合に限られ、その際は禁止はシーズンを跨る形で行われます。そのような事態にならないよう、私どもは今の環境やバランスに目を凝らし続けております)。

      『桜降る代の神語り』第58話:大乱戦、再び!

      2018.06.22 Friday

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         奇策を繰り出し、強襲の途上にある天音揺波たち。
         土石流はメガミにだって止められたものじゃない。それに、見てから対応したんじゃああまりにも遅すぎる。
         けれど彼女たちは土石流を輸送手段と扱った以上、策にも当然弱点はある。敵もまた強かなのだから、一切の動乱がないなんて、ありえはしないだろう?

         

         

         


         月明かりに煌めく水面が、瞬く間に土に濁っていく。

         

        「だいぶ揺れなくなってきましたね。最初のうちは何回か手着いちゃいましたけど」
        「なんつー平衡感覚してんだよあんたは。どれだけ岩にぶつかったか分かんないぞ……それ言ったら、操縦者さんもよっぽどだけどさ」

         

         呆れたように言う千鳥は、揺波の実感が告げるものの意味を考えていた。
         一行が土石流と共に筏で川を下り始めてから暫し。馬もかくやという速さでの猛進を阻むものはなく、低く響くような唸りを上げて着実に目的地へと迫っていた。
         不揃いの岩石がまま混在する土石流の中に安寧はない。それでも揺れが抑えられているのは、ひとえにサリヤがこの短時間で操舵に慣れてきたことと、少しずつ河幅が広がりを見せており、流れが分散しているからである。とはいえ、今もジュリアなどは支えに掴まっていないといけない程度には悪路であることには違いなかった。

         

         急襲を目的としている以上、勢いが削がれるのは問題である。けれど、問題が問題とならないよう、彼らは事前の準備と予測をしてきている。
         夜闇の中、目を眇めて先を確認していた佐伯が声を張り上げた。

         

        「翁玄桜がだいぶ見えてきました! 森もとうに抜けましたし、上陸地点まであと僅かでしょう!」
        「そ、それはいい知らせね! 流石にそろそろ疲れてきちゃった……っと!」

         

         サリヤがヴィーナの首を右に向けると、連動するように筏の進路も右に少しだけ逸れていく。そうして直撃を避けた巨石に濁流は次々とぶつかり、水よりも石塊の飛び散る飛沫が少なからず船上に乗り上げる。

         

        「後少しご辛抱ください。……それより、ここで一度計画の最終確認を行っておきませんか。上陸後にそんな悠長はことはしていられませんし」
        「そうデスネ。サーキ、お願いできますか?」
        「お任せを。――二人もこっちに集まってくれ!」

         

         濁流の轟音にかき消されぬよう張り上げられた呼び声に、揺波と千鳥の顔が引き締まる。真剣な佐伯の眼差しが、その時が迫っていると二人に意識させる。
         ヴィーナのすぐ後ろに小さく集ったのを確認し、佐伯は何度目かも分からないその確認を繰り返した。

         

        「瑞泉城に攻め込む我々の役目は二つ。第一に、陽動。既に瑞泉に先乗りしている闇昏千影班は、もう研究所に潜入しているだろう頃合いでしょうが、彼女らが救出作戦が完了するまで敵の目をこちらに惹きつけます」
        「この土石流の勢いなら、まだまだ橋を壊して余りあるな!」
        「ああ、これもハガネ様のおかげだな。西の兵が合流するまでにはケリをつけたい」

         

         各大家に対して複製装置で増強した武力で優位に立つ瑞泉の兵は、叶世座より質は高くないと予想されているにしろ厄介な問題であった。神代枝があっても多勢に無勢、制限がある揺波たちは増援による消耗戦を何より避けなければならなかった。
         それに対し、土石流での進攻は『兵力の分断』という解決をももたらす。ただ橋を落とすだけとは違い、濁流がある以上無理に渡河するわけにもいかない。永遠に流れ続けるわけではないにしろ、電光石火の戦においてはそれで十分であった。

         

        「そして第二に強襲。大目的はもちろん、敵大将――」
        「瑞泉、驟雨」

         

         その名をゆっくりと噛みしめるように、揺波はつぶやく。ともすれば濁流に音が飲み込まれてもおかしくないはずなのに、その場の誰もが、彼女が発した敵の名を耳にし、深く頷いた。彼女はこそ、この計画の最も大きな要なのだという信が、皆から集まった視線に載せられている。
         と、佐伯が確認を続けようとしたときだ。

         

        「雑兵は相手にせず、まっすぐ本丸へ向かう。理想的には人数差を作った上で瑞泉驟雨へ挑みたいが、敵戦力の――」
        「しっ……!」

         

         突然手をかざして割って入った千鳥が、口元に人差し指を当てる。
         一人だけ警戒を顕にした彼に、他の者は若干反応に困っていた。なにせ一同は今、土石流の上の筏という実質密室同然の場所にいるのであって、時折跳ねてくる大岩のほうがよっぽど恐ろしいのだ。

         

        「アノ、チドリサン……?」
        「静かに……! 寒気、感じないか? 俺だけってんなら、姉さんのおかげかな?」

         

         そっと懐の苦無に手をかけながら、

         

        「まあ……何より、この面子だよな」
        「面子……?」
        「この面子でいるの、すっげえ既視感が湧いてきて涙が出てきそうなんだよなぁ。俺もできることなら道中無事に過ごしたかったわけだけど――」

         

         皆、千鳥の嘆きに呼応するように、各々得物に手をかけた瞬間だ。
         最初に動いたのは、佐伯だった。

         

        「……っ!」

         

         千鳥の警告に助けられてなお、それは半ば勘のようなものだった。
         外周を警戒しようと振り返った最中、視界の端で僅かに輝いたものを切り落とすように、爪を取り付けた右手を反射的に閃かせる。
         ちょうど佐伯の頭上で弾かれたそれは、矢だった。
         さらに彼は、もう一つ視界の中に異物を発見する。

         

        「天音ッ!」
        「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

         

         天から降ってきた矢と共に、雄叫びを上げる男が両手の爪を叩き込むように、筏へと降下してきていた。
         咄嗟に鞘ごと刀を掲げた揺波が、高度を味方につけた男の一撃を受け止める。

         

        「う、くぅ――ぁッ!」
        「ぬぅ……!」

         

         そのまま叩き落とすように振り払われた男は、不安定な足場を物ともせずに綺麗に着地し、筏の後方へと間合いを離した。己の肉体を月明かりの下で誇示するよう、毅然と構えるその重心はまったく揺らぐことはない。
         強襲してきた男・架崎宗明を前に構える千鳥であったが、さらにもう一人、文字通り架崎の背後に現れた敵の姿を見て、思わずため息をついた。

         

        「ほらな? この面子でこの感じ、こうなると思ったんだよなあ」
        「そいつぁこっちの台詞だよ。嫌な感じがして来てみれば、あの変な馬にもっと奇天烈なおまけを引っさげて来るとはね」

         

         晴れた空に桜色を溶かし込んだような色合いの翼を羽ばたかせながら、浮雲耶宵は肩をすくめてみせた。
         あの陰陽本殿での戦いから時を経て、両者は再びにらみ合う。お互い謎の多かった当時とは異なり、今この場にいる全ての人間は、互いの目的をはっきりと理解していた。故に、無駄な疑問が出ることもなく、敵対の視線は幾重にも交差する。

         

        「今度は負けんぞ。驟雨様のために、この場で貴様らの策を打ち砕いてくれる!」
        「天音、佐伯さん、行くぞッ!」

         

         架崎の声を受けた千鳥が、取り出した神代枝を砕く。夜闇に舞い上がった桜の光によって、三人のミコトがそれぞれ力を手にする。
         闇昏千鳥は、暗がりに溶け込むような深い朱色の傘を。
         佐伯識典は、論壇という戦場を進む支えとなる巻物を。
         そして天音揺波は、決闘を愛する者との絆を示す刀を。

         

         

        「わたしたちも、押し通らせてもらいますッ!」

         

         最後の闘いの、最初の闘いが、始まる。

         

         

         

         


         突きに対する受けはいくつか存在する。素早く伸びてくる一撃は、一方で点しか攻撃することはできない。少しでも軌道を逸らされたり、狙われた一点を体捌きで僅かでも動かせば、受け手が傷を負うことはない。

         

        「ふんッ!」

         

         架崎が突き出してきた右の爪に対し、反射的に揺波が採ったのは体捌きによる回避であった。半身になりながら向かって左側に踏み込み、切り捨てるように複製装置が取り付けられた架崎の右腕へ刃を振り落とすつもりだった。
         けれど、

         

        「ぅあっ……!」

         

         飛び込むように踏み出した左足が、床の丸太と丸太の間につま先をとられてしまい、それ以上踏ん張ることができなくなってしまう。つんのめった体勢を立て直すように右足が足場を求めるが、その間にも相手は追撃の準備を整えている。
         間合いを離すように振った間に合わせの一刀は、しかし腰が入りきっていないために架崎の左の爪で逸らされる。さらに沈むように踏み込んだ彼に、完全に懐に入られた形となってしまった。
         そこへ、不思議とよく通る佐伯の声が投げかけられる。

         

        「『天音がそんな下手を打つだろうか?』」
        「くっ……面倒な!」

         

         架崎は揺波へ爪を振り上げることなく、何かを恐れたように一歩間合いを離した。渋々といった表情から、苦々しいそれへと変わっていく中、今度こそ体勢を戻した揺波の切り払いを避けるように、さらに距離を離していった。

         

         敷き詰められた丸太という特殊な環境は、さしもの揺波も対応しきれていないのが現状だった。ただでさえ揺れる筏の上では、刃先のぶれを気にする以前に満足に振るうことすらできない。
         しかし対する架崎は、元々凍った地面の上での戦いを得意とするミコトである。濁流の上では流石に不安が残るのか、筏を凍らせてこそいないものの、不安定な足場での立ち回りは一枚上手であった。

         

        「ありがとうございます、佐伯さん!」
        「援護してやるから、こっちには通すなよ!」

         

         応える佐伯は、ヴィーナをかばうようにして書を広げていた。そこには、邪魔にならないように縮こまるジュリアと、操舵を続けるサリヤの姿がある。荒れる船上になおさら気が抜けなくなったサリヤは、彼らの戦いを振り返って確認する余裕もない。

         

        「ほうら、架崎とばっかり遊んでていいのかい!?」

         

         無論、航行不能が揺波側の敗北条件であることは浮雲たちも理解していた。そして分かりやすく船頭に座すサリヤへ、真正面から浮雲は弓を引く。足場の不安定さから唯一解放されている彼女にとって、筏は的でしかなかった。
         短い間隔で飛来するのは空色の矢。視認性だけが救いであるそれは、一呼吸もしないうちに頭蓋をえぐる凶弾に他ならない。
         だが、辛うじてそれを全て撃ち落としていたのは、千鳥の苦無であった。

         

        「サリヤさんもっと頭下げて!」
        「でも、前が……!」
        「いっそ目隠しでもするってぇのかい?」

         

         嘲笑う浮雲。防御で手一杯の千鳥は、浮雲と違って飛び道具の数に限りがある。いずれは顕現させた傘で叩き落としていく他なく、狭い筏の上でそのような曲芸がいつまで続くか分かったものではない。何より、上陸の機会を逃すこともまた、千鳥たちの敗北条件なのである。
         と、そこで千鳥は、ヴィーナの後部座席へと飛び乗った。

         

        「佐伯さん、頼む!」
        「仕方ないな……!」

         

         毒づきながらも、佐伯は夜空を舞う浮雲へと焦点を合わせた。
         そして、彼女を指差して、

         

        「そこの小僧の持ち玉だって底があるんだ。何射もしておいて、貴様だけがこの世の理を覆せる訳もない!」
        「なにを――」
        「『矢は射ればなくなる! 当然のことだ!』」

         

         そうはっきりと言い切った瞬間だ。
         浮雲が指の間に挟んでいた空色の矢が、はらりはらりと解けていくように宙に溶けていった。

         

        「そんな理屈が通ってたまるかい!」
        「言っただろ! 押し通るってな!」

         

         咄嗟に腰の矢筒にある実物の矢に手を伸ばした浮雲めがけ、千鳥は閉じた傘を全力で振り抜いた。すると、傘は柄が途中から切り離され、宙にいる浮雲へ一直線に襲いかかった。月光に鈍く光るのは、柄の中に仕込まれた長い鎖である。

         

        「ちぃっ……!」

         

         左腕で身をかばうものの、傘の打撃は見た目以上に重い。衝撃を抑えきれなかったのか、速度も高度を下げていく浮雲であったが、土石流から飛び上がった石塊をすんでのところで躱して再加速、後方から筏を追う形となる。

         

        「千鳥さん、後ろで相手しましょう!」
        「応!」
        「させぬわ!」

         

         揺波と鍔迫り合いを演じていた架崎が、千鳥へ思いっきり息を吹きかけた。その吐息は、風を切る筏の上であっても空気を刺し通すかのように細く、しかも零下のように白い。瞬く間に千鳥の足元に突き刺さったそれは、ヴィーナの後部座席ごと彼の左のつま先を氷漬けにしてしまった。
         飛び降りようとしていた千鳥は堪らず姿勢を崩し、すぐ下にいたジュリアに飛び込みかけるが、その前に佐伯の腕に支えられる。

         

        「おい、貴様……!」
        「わ、悪かったってば!」
        「アノ、サーキ……チョット」
        「――忍はあの肉達磨でも相手にしてろ……!」

         

         佐伯は自分の足元でジュリアが手招きしていることに気づくと、ぞんざいに千鳥を筏の後方に放り捨てた。まさかそこまでされるとは思っていなかった千鳥は、左足が解き放たれる瞬間も見極めきれず、支えにしていた柱に背中からぶつかった。

         

        「痛ってえ! もうちょっとなんとかならなかったのかよ!」
        「え……しかし計画では筏ごと……いや、やむを得ませんか」
        「聞いてねえし!」

         

         抗議の声は、ジュリアに耳を貸していた佐伯には届いていない。しかし千鳥は、二人の密談が現状を打破する足がかりになることを期待して、それ以上の追求はせずに戦列に復帰し、揺波と並んで架崎に相対する。
         ……そう、彼を含めた五人は、この状況に小さくない焦りを感じていた。
         不利を背負いつつも、人数差などの有利を活かして互角には持ち込めている。
         だが、時間は、揺波たちに決して味方をしない。
         敵に追われながらの奇襲など、意味がない。

         

        「行きま――っ!」

         

         その焦りが、注意力の欠如を生む。加わった千鳥と共に攻めに出ようとした揺波の、その右の一歩が、千鳥同様に凍って丸太に張り付いていたのである。
         それを横目に、協調が崩れたのは承知で千鳥が単身飛び込むも、繰り出す小刀は踏み込みの浅さ故に容易に受け止められる。それを陽動とし、足払いを仕掛けるも、相殺するような蹴りが置かれている。覚悟ができている分、そこから体勢を取り戻すのは架崎のほうが早く、千鳥は転がるようにして架崎の間合いから逃れる。

         

        「はは、はははッ! 自分の用意した策に溺れて、満足に打ち合いもできんとは!」
        「くそ……」
        「恥を晒し続けんよう、早々に葬ってくれよう、反逆者たちよッ!」

         

         両の爪が打ち鳴らされる。先程の吐息とは逆に、上気した肌から湯気が立ち上っていた。
         そんな彼を愉快そうに嗜めるのは、猛々しい羽ばたきで筏に追いついてきた浮雲であった。

         

        「おいおい架崎。そんな興奮なさんなって」
        「あぁ? 何故だッ!」
        「まーた見えてないんだから……。いいかい!? 連中は、おまえさんをさっさと倒しちまいたくてたまらないご様子だよ。あたしたちには早々に退場してもらいたい理由があるってことさね。だったら、いつまでも遊んでやるのが仕事じゃあないのかい!?」

         

         それを聞き、すっ、と冷徹な表情を取り戻した架崎は、それでも抑えきれない優越感に口端を歪めた。
         意図を読まれ、それでも行くしかないと再び踏み出す揺波と千鳥。その様子を見ていた佐伯は、浮雲を注視しながらも頭を回し続けていた。ジュリアから提示された策を脳裏に描こうとしているようだが、眉間には皺が深く刻まれている。

         

        「やるなら……そうですね。次に曲がった後でしょう。際どいところですが……」
        「ダイジョーブ……サリヤなら、やれます……!」

         

         信頼に満ちたジュリアの笑み。この土壇場で見せられたその表情に、佐伯は小さなため息と共に悪戯めいた笑みを浮かべた。
         それを見るなり、ジュリアは大きく息を吸い込み、

         

        「予定変更デス! T−3、行きマス!!」

         

         濁流と乱戦に負けないよう、声を張り上げた。
         すぐさまヴィーナの下へ引っ込んだ彼女の発した謎の言葉に、反応は三分された。
         揺波たちは驚きをやや見せながら、ヴィーナへにじり寄るように少しずつ身を寄せていく。まるでヴィーナを守るような陣形にも見えるが、その間も得物は架崎たちに向けられたままであり、戦意にも衰えは見られない。

         

        「まだ何か仕掛けが残ってるっていうのかい……!」
        「だったら、その前に叩き潰すまでだ!!」

         

         強く警戒し、もう一回り距離を取る浮雲とは対照的に、それを最後の抵抗と捉えた架崎は、あっけなく興奮のたがを再び外していた。

         

        「同じくライラを宿す奴がいたな!? ならばこの技で始末してやろう!」

         

         架崎が右腕の複製装置を操作すると、一瞬の停止を挟んでから回転が再開される。乱れる河の音にかき消されているが、耳をすませば、その歯車の旋律の周期が僅かに変わったことが分かるだろう。
         そして、バチ、バチ、と。
         架崎の爪が、雷を纏っていく。
         架崎の爪が、風を巻き起こしていく。

         

        「死ねえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

         

         丸太を蹴り、大自然の破壊力を手に猛然と迫る。その威力があれば、誰かに致命傷を負わせることも、あるいは筏そのものの破壊もできよう。
         ……だからこそ、架崎はその選択をしてしまった。
         策を真正面から打ち砕けるだけの力があったからこそ、それを選択してしまった。

         

         最前で正対する揺波が、体内で練り上げた気を、嵐と成す。

         

        「はあぁぁぁぁッッ!!」
        「う、ぐぁ……」

         

         筏の後部へ吹き付ける暴力的な気流が、爪を振りかぶった架崎に直撃する。今まで巧みに乗りこなしていた彼は、その圧力に耐えきれず一歩、後ろにやった足を、図らずも丸太と丸太の間に突き入れてしまい、身体を支えきれなくなって膝を着いてしまう。

         

         それが、合図となった。
         今まで皆を導いてきた漕手が、高らかに宣言する。

         

        「Now or never……! GO……!!」

         

         サリヤの言葉と共に、皆一斉に顕現武器を宙に還す。そしてヴィーナへと群がるように、さらに横に拡張された木製の後部座席にしがみついた。
         サリヤの背中に抱きつくようにして乗り込んでいたジュリアが、

         

        「今こそトッテオキ、見せてあげまショウ!! BlackBox……、OPEN!!」

         

         


        「I AM THE SKY. I DEFY YOU. TRANSFORM...」

         

         呼応するサリヤの指が、ヴィーナの一部を深く押し込んだ。

         

        「FORM:GARUDA!!」

         

         変化は、孵化のようですらあった。
         ヴィーナの胴体から光が溢れ出したかと思えば、胴体と前輪を結ぶ横っ腹の部品が、前輪を軸に外へと展開していく。生じた光から広げられるその部品は、もう一弾さらに展開し、ヴィーナの全長に勝るとも劣らない黒く大きな翼と化した。大地を駆る鉄の馬が、空駆ける鉄の鷲へと瞬く間に変貌したのである。
         それだけではない。変形と同時、ヴィーナの後部は爆発したかのように、圧縮された炎を吐き出した。筏に組み込むための機構を破壊しながら、その推進力でもって、巨体を飛び上がらせる。

         

         鷲が、夜空に両翼を広げた。
         五人を乗せて、弾丸のように宙を突き進む。

         

        「は……?」

         

         開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。今まで空を制していたはずの浮雲は、変形の光が収束したおかげで夜陰に紛れ始めたヴィーナの姿をただ、ぽかんとしながら目で追い続けていた。
         と、そんな一手に考えも吹き飛ばされていた架崎を、加速度的に増していく揺れが襲う。

         

        「う、うおぉッ!」

         

         ぐらぐらと、今までにはない揺れに足を取られる中、なんとか立ち上がろうとしていた彼だったが、ヴィーナが発進した今、自分は一人、筏に取り残されたのだとようやく気づいた。
         けれど時すでに遅し。操舵手を失った筏は、濁流に取り残された岩石に正面から乗り上げてしまい、機構も破壊されて脆弱になった船首から真っ二つに割れてしまう。

         

        「架崎ッ!」
        「うきぐ――」

         

         浮雲が伸ばした救いの手を、彼が取ることはなかった。うねり上がった波に下半身を飲み込まれ、大自然の暴虐に晒された架崎は、悲鳴を上げる暇もなく、夜闇の底、土石流の中へと消えていった。
         僅かに飛んで後を追った浮雲だったが、全てを等しく押し流してしまう力の前には無力である。歯噛みして一旦諦めると、揺波たちが飛んでいった方角を眺めた。

         

         その方向には、もう目前に迫っていた瑞泉城と巨大な神座桜の姿がある。城へ引き込むような河の分岐が見られるが、船着き場を始めとして川縁の何もかもが押し流された後であった。城へと土石流が向かわなかったことだけが幸運だろうか。
         そんな光景を尻目に、獲物を見つけた猛禽のように滑空して行くヴィーナは、それ自体が目を疑いたくなるような現実ではあっても、そのまま城まで到達するであろうことは容易に想像できた。

         

        「しゃあないねえ……。だが、負けが決まったわけじゃない、か」

         

         舌打ちを一つ、奇天烈に奇天烈を重ねた策で出し抜かれた浮雲は、近くにあった樹に留まりながら、居城にいる主人に思いを馳せていた。

         

         

         


         奇策というのは、考えの外側からやってくるから奇怪な策になる。戦場から離脱したこの一手はまさしく常識の外からやってくる策といっていいだろう。
         無事刺客を退け、予定外ながら瑞泉城に向かうことができた天音揺波たち。だけど彼女らの役割は強襲だけではない。さっきも言っていたね? 陽動だ、と。


         さあ、視点を再び移し換えよう。行動を開始した闇昏千影たちを見てみようじゃあないか。

         

         

        語り:カナヱ
        『桜降代之戦絵巻 第五巻』より
        作:五十嵐月夜  原案:BakaFire  挿絵:TOKIAME

         

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        舞台は大阪、大規模大会に挑戦しよう!

        2018.06.22 Friday

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          炎熱の大交流祭で、今こそ燃え上がろう!

           

           こんにちは、BakaFireです。本日はクルル特集の中篇を更新いたしましたが、もうひとつあなたのお耳に入れておきたいことがございましたので、追加の記事を書かせて頂きました。何度か当ブログでも触れておりました、シーズン1を締めくくる大規模大会についてです。
           
           初めてご覧になった方のために、もう少し説明いたしましょう。本作はある製品が発売してから、次の製品が発売するまでの間を1シーズンと定めています。そしてシーズンの間で拡張によるカードの追加、既存カードの更新、禁止カードの解除(これらの理念は詳しくはこちらをご覧ください)が行われるのです。
           
           そして現在は『新幕 基本セット&達人セット』の発売から『新幕 第壱拡張』の発売までという、シーズン1の途中というわけです。
           
           私どもは各シーズンの終盤に、そのシーズンを締めくくり、頂点を決めるための大規模大会を1回は開催します。それらの大会は関東以外の地方で開催される見込みです(シーズンによっては全国大会を開催します。そちらは全国で予選が開催され、本戦を関東で開催します)。
           
           本日お知らせするのはシーズン1の大規模大会です。そして『新幕』シリーズ最初の覇者を決める決戦の舞台は、大阪となります。
           
           経緯、背景についてはこんなところでしょう。それでは続けて、イベントの概要を紹介いたします。
           

           

          炎熱の大交流祭

           

          日時:2018年7月28日(土) 11:40〜20:00 (11:00開場)
          会場:難波御堂筋ホール ホール8A
          バージョン:新幕
          参加費:500円
          定員:128人
          当日受付:有(予約を強くお勧めします
          レギュレーション:三拾一捨、5回戦+決勝トーナメント

           


          真剣勝負のレギュレーション
          三拾一捨を楽しもう!

           

           本大会では普段よりも実力が試されるレギュレーション、三拾一捨が用いられます。『新幕』で新たに本作に触れ、初めて見たという方もいらっしゃると思いますので、説明いたします。
           
           三拾一捨では当日の受付に際して、メガミを2柱ではなく3柱申請して頂きます。そして各試合において相手の3柱を確認し、お互い秘密裏にその中から1柱を取り除くのです。その上で同時に公開し、残った2柱で対戦します。
           
           この構造ゆえに、普段の大会では見なかったようなマッチングも頻発します。より多様な対戦に対応する実力が試される戦いになるのです。
           
           こうして聞くと厳しそうに感じるかもしれませんが、ルールが複雑ということはありません。多彩なマッチングに触れあえる、楽しさという点でも魅力的なレギュレーションですので、ぜひともこの機会に挑戦してみて頂けると嬉しい限りです。
           

          定員は本作初の128人規模!

           

           定員は本作初となる128人規模となります。ここまでの拡大ができたのも、ひとえに応援して頂いている皆様のおかげです。この場を借りてお礼申し上げます。この勢いを維持していくためにも、是非とも今回もご参加いただけると嬉しい限りです。
           
           128人とはいえ、7回戦をやるには本作は厳しいものです。そこで今大会は5回戦の上で、上位4名による決勝トーナメントを行います。決勝トーナメントの前に上位表彰式は行いますので、それ以降は観戦をお楽しみいただくもよし、フリー対戦を行うもよし、お時間が厳しい場合はお帰り頂いても問題ございません。


          交流祭形式なのでドロップもOK!
          カジュアルにも楽しめます。

           

           こうして聞くと真剣勝負すぎて苦しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。交流祭形式を採用しておりますので、各試合の間に自由に大会を離脱し、フリープレイに移ることができます。最も魅力的に感じるやり方で、本イベントを自由にお楽しみください。


          覇者にふさわしいゴージャスな賞品もございます。

           

           そして大規模大会では普段の大会と違い、よりゴージャスで魅力的な賞品も用意しております。紹介しましょう。
           
          上位賞(4勝1敗以上)

          • プロモーション集中力カード:シンラ
          • 限定アクリルフィギュア:ヒミカ

           

          ベスト4

          • 上位賞の内容
          • 任意のプロモーションタロット1枚

           

          優勝

          • 上位賞の内容
          • 全てのプロモーションタロット1枚ずつ
          • 全てのプロモーション集中力カード1枚ずつ
          • TOKIAME先生描き下ろし色紙

           

           限定アクリルフィギュアは大規模大会でしか手に入らない特別なものです。ちびメガミが描かれ、背面では世にも珍しいメガミの後姿を見ることもできます。毎回の大規模大会で異なるメガミとなりますので、そのメガミが入手できる機会は極めて限られます(もしかしたら未来で復刻はあり得ますが、大規模大会の上位という条件は変わりません)。
           
           プロモーション集中力:シンラは大規模大会の上位賞です。変更の予定はなく、大規模大会上位の証と考えてください。
           
           大規模大会での勝利は過去のプロモーションタロットを入手する大チャンスでもあります。ユリナ、ヒミカ、トコヨ、オボロ、ユキヒ、シンラのいずれも可能です。特にユリナ、オボロ、シンラは今後はこの方法以外では入手はできません(ヒミカ、トコヨ、ユキヒは復刻の可能性はありますが、いずれも大会の優勝賞品という形になります)。
           
           そして見事優勝した暁にはこれらすべてに加え、TOKIAME先生描きおろしの色紙をお贈りいたします。
           
           
           以上となります。大規模大会は本日より申し込みが開始しております。こちらのフォームに必要事項を記載し、お早めにお申し込みいただければ幸いですあなたのご参加、心よりお待ちしております!

          狂気カラクリ博覧会(中篇)

          2018.06.22 Friday

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            イカれたカラクリ開発秘話

             

             

             こんにちは、BakaFireです。今回の記事はクルル特集の中篇となります。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします

             

             このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は新シリーズ第2回にして累計第7回となります。

             

             前篇ではメガミ・クルルに関する歴史を説明し、彼女のキーワード「機巧」が生まれるまでの話をしました。中篇では『第二幕』での個々のカードに注目し、それらを通して彼女を語ります。『新幕』にまつわる話は後篇に行いますので、それまでお待ちください。

             

             

            カードの何に注目するか

             

             やり方もこれまでのものを踏襲します。以下にてまとめましょう。

             

            • カードの歴史と評価に注目する
            • 歴史とはカードが生まれた経緯を指す。
            • 歴史においてルールの変化が重要ならばそれも語る。
            • 評価はゲームにおける魅力、バランスの適切さ、メガミの気質の体現性の3点を見て行う。
            • 現在問題視している箇所や、カードへの否定的な見解も書く(出版から時間が経ち、皆様からのフィードバックを頂くと至らなかった点も見えてくるのです)
            • 否定的に書き、修正を匂わせたとしても、修正を急ぐつもりはない。


             クルルへの反省点は、とても驚くべきことに小さなものです。これほど難解なメガミを、しかもたった一人でプレイテストする羽目になったにも関わらず、僅か1枚の調整で済んだ(いや、当然調整は望ましいものではなく反省すべきではあるのですが)のはむしろ奇跡的です。

             
             

             

             えれきてるが正しい意味で生まれたのは機巧というキーワードが誕生したのと同時でした。前篇で機巧のアイデアが浮かび、そのまま次のプレイテストに向けてカードリストを作り直したと書きましたが、その際のリストに最初から存在していたのです。
             
             最大の目的はクルルに独自性のある勝利手段を与えることでした。クルルのターゲットである「クレイジーな発明家」は(ほかならぬ私自身を含め)型にはまることを嫌います。それゆえ、勝ち筋もまた異常であるべきなのです。
             
             本作は「間合を合わせて攻撃し」「ダメージを与える」ゲームです。そこで私は、そろそろ1柱くらいは前者の型を完全に壊してもよいだろうと考えたのです。つまり、攻撃でない手段でライフにダメージを与えます。
             
             もちろん、無条件でライフにダメージを与えられる行動カードを作るのは明白に危険です。しかしその点でもクルルは完ぺきでした。まさに今、機巧というキーワードが誕生し、それを用いたカードを作っているところなのですから。
             
             そこで併せて素晴らしいアイデアが浮かびました。クルルは一切の攻撃カードを持たないようにするのです。こうすれば明らかな異常性を強調でき、さらにこの勝ち筋をプレイヤーに分かりやすく伝えられます。同時に攻撃カードを使うことを露骨に難しくでき、機巧の調整がやりやすくもなるのです。
             
             最後に考えるべきなのは機巧が求めるカードタイプをどのようにするかです。ここまでで、攻撃に頼らずに勝つというコンセプトは明白なので、攻撃は条件に入れるべきではありません。むしろ、攻撃は強いカードタイプなので攻撃カードをできるだけ入れないようにしたいという感情を呼び起こすべきです。そこで逆に、数多くの行動カードを求めるようにしました。このように調整することで、攻撃でなく「えれきてる」で勝つという戦略を力強く推進できるのです。
             
             続けて、そういったカードはどんなデッキに入るのかを考えてみました。まず考えたのが対応カードを用いるコントロールのようなデッキです。トコヨの「梳流し」は分かりやすい類似例です。このカードも相手のオーラを無視できるため、幾ばくか近い側面があるのです。
             
             しかし当時の時点でトコヨの強さから(やや過小評価していましたが)「梳流し」への危険性も感じていました。ゆえに、対応カードをふんだんに盛り込んだコントロールデッキが「えれきてる」を用いることには危険もあると感じたのです。
             
             ですが驚いたことに、機巧の便利さは私の予想を超えていました。それこそ対応を機巧の条件にしてしまえば良いのです。対応カードを捨て札や使用済の切札にするということは、そのカードで対応できないということを意味します。結果として「えれきてる」を撃つ瞬間には対応を構えづらく、隙ができるのです。
             
             こうしてクルルの勝利手段として、まずはルールを破るダメージ手段が発明されました。驚いたことにカードリストに入ってから、一度も変更されませんでした。

             


             

             

             クルルの初期妄想の時点で「全力を全力でないタイミングで使用できるようにする」カードは存在していました。前篇でお伝えした通り、ルールを破りクレイジーなことをすると同時に、他のカードへの依存性が高いこのカードは発明家にとって最高のおもちゃです。
             
             しかし機巧が生まれるより前にはバランスの問題より、実装できていませんでした。「クイックドロー」は原初札として(カードを引かなければ)そこまで強力な方ではありませんが、無条件で存在すれば明らかにゲームを破壊します。
             
             それについても機巧の発明が解決してくれました。機巧を適切に調整できれば、このカードも問題なく実現できるのです。
             
             それでは、どのような機巧条件にするべきでしょうか。この手のクレイジーな効果で第一に考えるべきなのは、この効果を悪用した際に最も凶悪となる状況です。私は連続攻撃の中に全力攻撃を混ぜた場合だと判断しました。「斬」「一閃」「居合」が1ターンの間に全て飛んできたら悲しいことに人は死にます。
             
             これについてはクルルが攻撃カードを持たないという構造から、かなり緩和されています。そこで私はそれに加えて、機巧条件で行動や付与を要求することでタイミングを抑止しつつデッキ構築にも縛りを加え、危険性を抑止したのです。

             


             

             

             このカードは機巧よりも昔、初期のカードプールから原案が存在していました。ご覧いただきましょう


            行動/対応
            【常時】このカードは対応でしか使用できない。
            カードを2枚引く。

             

             本作で「カードを引く」効果には大きな危険性があります。理由は2つあります。1つは通常札が追加のコストを要求しないこと。もう1つは山札が7枚しかないため、引き切りが容易であることです。
             
             それゆえにこの類のカードはヒミカ以外が持つことはできませんでした。しかし拡張も『第弐拡張』まで進んだ頃ともなれば、そろそろこの類の効果が再び作りたいところです。さらにフレーバーとしても良好です。本作のドローは刹那的な思考をイメージしているため、感情と紐付けられたヒミカが持っていますが、クルルが持つのもまた自然です。発明家は外因的な刺激で思考をスパークさせ、認識を拡張させるものなのですから。
             
             これはそういった経緯でデザインされ、問題を見事に回避していました。行動回数の増加にせよ、引き切りにせよ、動くべきターンに過剰な行動ができるから問題となります。対応でしか使用できないならばカードを引けるタイミングは相手に依存するため、相手はケアができるのです。
             
             そして機巧が導入された後もこのカードは残りました。実に奇縁なことに「対応でなければ使用できない」効果が機巧と絶妙な相性だったのです。
             
             クルルはある程度単独で機巧を揃えられる必要があるので対応カードを持つべきですが、他方で攻撃カードを持たないというコンセプトも存在しています。そうなると行動か付与の対応となるのですが、それらは攻撃と違い、いつでも使用できます。しかしそうすると安易に自分のターンに使用するだけで機巧条件が満たせてしまい、メガミを組み合わせる魅力に乏しくなってしまうのです。
             
             ところがこのカードであれば、使用できるタイミングが相手に依存するため、機巧を安易に揃えづらくなるのです。グッドデザイン!
             
             しかしある程度プレイテストをした結果、どうにもこの効果のままでは使い辛いと分かりました。対応で2ドローをすると山札が1枚以下になることが多く、次のターンの再構成で機巧を崩さざるを得ないのです。
             
             そこで効果を機巧にとってより便利なものにすることにしました。山札の序盤に引いたため、機巧カードを伏せ札にせざるをえないことはよくあります。そこでそれらを山札の底に戻し、使用できる機会を得られるようにしたのです。

             

             ちなみにもうひとつの効果はトコヨへの対策です。当時はトコヨが極めて強かったため、そこへと対策するカードを多くのメガミが持てるように進めていました。『第二幕決定版』調整でお分かり頂ける通り、私は後にそのやり方が誤りで、そもそもトコヨを弱体化すべきだったと判断を改めました。
             

             

             

             このカードは「えれきてる」と共に、攻撃に依存しない勝ち筋として設計されました。同じように「ライフにダメージを与える」「行動カード」となるため、それ以外のところで体験に違いを与える必要があります。そこで全力カードにして、さらに条件を付与2枚とすることで「えれきてる」との差別化を図りました。
             
             しかし全力カードとなると、これだけではやや力不足にも感じます。そこで別のルートとしてクルルで「攻撃カードで勝利するルート」を検討できるようにもしました。クルルの全てがクルル中心で組むわけではありません。組み合わせた際に他のメガミを中心として戦える余地を残した方が構築の幅が広がり、魅力的なのです。
             
             クルルと組んで攻撃する際の問題は、攻撃の枚数が足りないため十分に相手のオーラをはがせないという点にあります。そこで、オーラへと5ダメージを与えることでその問題を解決するのです。
             
             これに近い効果はユキヒの「ふりまわし」が行っていますが、あれには間合制限があり、さらに対応も可能です。両方の弱みを払拭したカードを安易に作るのは、当然ですが危険です。
             
             しかしここでも機巧が巧妙に解決しました。攻撃2枚を条件とすれば、「とるねーど」でオーラを空けて、そこから滑らかに攻撃を連打する動きは極端にやり辛くなります。同時に攻撃カードが必要だと強調され、このカードがどういうカードなのかというメッセージが強まります。
             
             これも驚いたことに、機巧導入時の最初のデザインから一度も変更されませんでした。

             

             

             

             前篇でお見せした通り、「切札を未使用に戻す」カードは駆動ギミックにおいても、クレイジーな発明家を興奮させる意味でも重要と考えていました。問題はバランス調整のやり方です。とりあえず全力にしておくのは初めから確定しており、そこにどのような制限を付けるかが問題でした。
             
             機巧がデザインされた後は単純にあらゆる切札を未使用に戻せるようにして、機巧条件を正しく設定すれば十分だと考えました。そこで考えるべきなのは「あくせらー」と同様、一番やばいのはどういう時かということです。
             
             まず私は全ての切札を見直し、何が未使用に戻るとヤバいのかを検討しました。様々なロマンティックなアイデアが浮かぶ素晴らしい時間でしたが、ダントツでヤバいのは明らかに1つでした。「大破鐘メガロベル」です。
             
             本作において回復する効果は強力です。消費3の切札を何度も使うのは簡単ではありませんが「大破鐘メガロベル」は例外です。なぜならダメージでライフはフレアへ移動するため、実質的に消費は1なのです。
             
             もうひとつヤバそうなのは「あくせらー」との組み合わせです。明らかに危険なカードであるため全力にして隙を生むようにしているのに、これらと安易に組み合わせられるのにはリスクがあります。この2点を鑑みて機巧条件を考えるべきなのは間違いありません。
             
             まず、より危険な前者から始め、ハガネのカードプールを慎重に観察しました。そこでかつてのハガネのデザインは良い方向に働きます。彼女は対応カードを持っていないので、対応を条件にすればよいのです。さらに彼女の攻撃カードも「砂風塵」以外は使い辛いことにも気づきました。ゆえに攻撃を条件に加わります。
             
             ありがたいことに、後者も自動的に解決しました。「あくせらー」と一切の条件が重なっていないので、組み合わせた動きがやり辛いのです。もしそうなっていなかったら、「あくせらー」の条件をいじる必要があったでしょう。
             
             これらを踏まえ、私はハガネ/クルルを検証しました。これは実に楽しく、他にない体験であり、私はこのデッキの大ファンになりました。あるゲームでは合計12ライフを稼ぎ出し圧殺した一方で、他のゲームではなんだかんだ負けたのです。機巧条件は完璧でした。どうにかデッキが成立する一方で決断をプレイヤーに求めていました(例えば、安定して対応を揃えるには「どれーんでびる」が必要ですが、そうすると他の入れたい切札を諦めねばならないのです)。
             
             しかし、本当にこれで大丈夫と私は確信できませんでした。これはまさに、ヤバそうでヤバくないかもしれない少しヤバいデッキだったのです。また、これがデッキとして成立してほしいとは心から思う一方で、環境上位の強さには絶対になってはいけないと確信していました。これはゲームを遅延させて相手を怒らせて勝利するデッキであるため、使われる側がひどく不快になる恐れがあるのです。
             
             そのような状況のまま悩み続けていた中、私は別の問題にも気が付きました。「大破鐘メガロベル」を戻す分には強みがある反面、他のどれを戻してもかなりのゴミなのです。「完全論破」「滅灯の魂毒」などロマンを感じる構築を試しましたが、どれも苦労には見合っていませんでした。これではカードのデザインとして失敗です。
             
             私は考えに考え、巨大な結論にたどり着きました。未使用に戻すという挙動を辞め、消費を踏み倒して切札をその場で使用できるようにすればよいのです。「完全論破」にせよ「滅灯の魂毒」にせよ、4や5という重い消費をもう1度支払うから無理が生まれます。ならばそこを解決すれば、様々なロマンが現実的になります。
             
             そしてこのアイデアは無限メガロベルデッキへの懸念も払拭しました。メガロベルの消費を踏み倒すようにすると、桜花結晶がフレアへと滞留するようになります。こうすればメガロベルによりライフにするダストを不足させられるようになり、相手としても対処の余地が広がるのです。
             
             すばらしい解決手段は、複数の問題を一度に解決するものだとどこかで聞いた覚えがありますが、これはまさにそれです。こうして長い苦闘の末、このカードは完成したのです!

             

             

             

             機巧導入より前は「かさまわし」に近い効果で、切札が未使用に戻るたびに手札から見せることで、基本動作を1回行えるカードでした。
             
             機巧導入時は一時的に姿を消しました。しかし、しばらくしてこの類の効果がなければクルルは余りにも苦しいということに気が付きました。クルルは機巧を完成させるためにカードを使用しなくてはなりません。逆に言えば、基本動作をするためにカードを伏せ札にし辛いのです。いずれの基本動作もリソースを確保するには重要で、クルルはリソースを必要とします。そうなれば、この効果が帰ってくるのは必然でしょう。
             
             元のデザインと同様、歯車がかみ合うような感覚を補強するため、何かを条件に誘発する効果にするべきです。しかし駆動条件は多用すべきでないとすでに結論付けられていました。それでは問題は、何に誘発すべきなのかどうかです。
             
             そこで私は、機巧がカードタイプ、サブタイプに注目していることに気付きました。つまりクルルは全体としてそれらの情報に注目するメガミなのです。ならば、これまで注目されたことのないタイプを強く見るというのはどうでしょうか。
             
             攻撃は数多くのメガミが気にしており、またクルルと相反しています。付与はシンラが注目しており、対応はトコヨが注目しています(当時はヤツが健在だったのです……)。残りは行動と全力で、どちらもクルルの個性には合っていそうです。そこでこのカードでは行動カードに注目し、全力は別のカードに任せることにしました。
             
             カードとしては最高に上手くいき、気持ちの良い出来でした。クルルのリソース不足も解決し、実に魅力的なカードとなったと言えるでしょう。
             
             さて、ここからは発売後の話です。デザインとして多くの面で成功した「もじゅるー」でしたが、他方でクルルのカードの中で唯一カード調整を必要とした失敗談を抱えたカードでもあるのです。
             
             この手の話題の時は自戒と反省を込め、当時の感情を振り返るのが常ですが、しかしどうにもこのカードを悪く言うのは難しいものなのです。ひとつ、ひどく感情的な昔話をお許しください。
             
             今でこそ『第弐拡張』は『第一幕』『第二幕』シリーズにおいて最も成功した拡張だと確信していますが、発売直後はフィードバックにひどく苦しみ、精神的にナーバスになっていました。サリヤに対しては「強すぎる」、クルルに対しては「弱すぎる」というフィードバックが届き、私はチカゲの時のようなひどい失敗を繰り返したのではないかと不安で夜も眠れませんでした(マジで眠れませんでした)。
             
             私が救われたのは、発売翌週の大会です。そこにひどく病みながら視察に行った私は、プレイヤーたちが楽しげにクルルを回しているのを見たのです。環境がサリヤ一色でひどいものになっているという覚悟に満ちた予測も外れました。サリヤは適度にしか支配的でなく(実際は適正な強さでした。その辺の話は未来のサリヤ特集にて)、またクルルを用いたデッキが強豪プレイヤーの操るサリヤを打ち破っていたのです。
             
             いやまあ、そのデッキこそが後に修正を要した「無限音無」デッキなのですが。まあそんなわけで、私は感情的にあまりこのカードを悪く言うことはできないのです。
             
             この失敗は『第二幕決定版』調整で認め、修正しましたが、その修正もまたとても気に入っています。危険な動きを抑止する一方で上方修正でもあるため、プレイヤーがワクワクするものだったのです。今後に『新幕』で行われるカード更新も、可能な限りこのようなものにしていきたいと強く考えています。

             


             

             

             クルルの移動カード枠です。間合を「6−間合」にするという効果は最初から存在し、一度も変更されませんでした。このカードによる間合の体験は実に奇妙で、クルルらしいクレイジーさがあったのです。
             
             しかしゲームバランスの面では厄介でした。最初は単なる付与でしたが、しだいに悪用のやり方が多く、条件がないと強すぎると分かってきました。そこで切札にしてみたり、機巧条件を付けてみたり様々な変遷を経て、最終的には今の形に落ち着きました。
             
             『第二幕』がひと段落した今となって見直してみると、このカードはクルルの中で一番の失敗だと考えています。効果そのものに独自の魅力はあるのですが、クルル自身は攻撃を持ちません。機巧条件もうまいものではなく、間合を合わせる方向でこのカードを活用するのが難しすぎました。そして最終的に『新幕』では取り除かれることになります。
             
             いつの日か、きちんと攻撃カードを活かせる形で帰ってくると信じています。その時にクルルのカードであるかどうかは分かりませんが。

             


             

             

             クルルの戦略を想定し、必要性を計算してデザインしたカードです。このカードもまた、機巧導入時に誕生し、一度も変更されませんでした。
             
             まず、切札のサブタイプ対応という位置づけからスタートしました。前篇で語った通り、機巧における切札は拡大再生産のような側面があります。クルルのいくつかのカードは対応を求めるため、それを切札から提供できるという選択肢は魅力的なのです。
             
             次に戦略的意義を考えます。対応を必要とする以上、分かりやすいのは「えれきてる」です。このカードを用いる戦略はややコントロール的なものです。しかしその戦い方には欠陥があります。長期戦となりやすいくせに攻撃を行わないため相手のオーラをダストに送れず、ダストを枯らされることによるリソース不足に陥ってしまうのです。
             
             それを解決するには、相手側からリソースを奪うような効果が必要です。そうなれば、その行き先が自分のオーラとなるのは必然でしょう。対応として相手の攻撃を受け止めるにも使えるため、対応カードらしさが増すのですから。
             
             しかしコントロールで使うとなると、複数回使えなければ意味がありません。他方で再起を付けるのは拡大再生産というコンセプトに沿っていません。考えた結果、以前のコンセプトだった駆動ギミックをこの位置に導入することにしました。結果として大成功でした。クルルらしい誘発効果にしたことでこのカードがより大きなシステムの中で働く、絶妙な部品として感じられるようになったのです。

             


             

             

             機巧導入してから、しばらくの時を経て生まれたカードです。先述の通り「もじゅるー」は行動カードに注目し、クルルは行動と全力に注目するのが魅力的だろうと判断したため、併せて全力に注目するカードとしてデザインしたのです。
             
             まずは全力2つを機巧条件として、終了フェイズに1ダメージを与える切札を考えました。しかし危険であることは明白であり、試すまでもありません。条件を満たした後で放置しておけばそのうち相手が死ぬからです。
             
             全力2つでダメージを与えるべきだが、その際に機巧条件が崩れる必要がある。そう考えれば答えはすぐに出ました。ダメージと同時に再構成をすればよいのです。こうして誕生し、誕生後は効果は変更されませんでした。
             
             もうひとつ、私はこのカードのバランスについて印象深く、同時に心に刻んでいるエピソードがあります。お話ししましょう。
             
             このカードはデザイン時点では消費は2であり、そして本当に最後、入稿の直前まで2でした。入稿前の最後に近いタイミングで私はひどく悪い予感をこのカードに感じ、消費を3に差し替えたのです。
             
             発売直後はこのカードはあまり活用されておらず、使い辛いという評価が多いものでした。そのため私は判断の誤りも感じ、少しばかり気に病んでいました。しかし発売から半年が経過して研究が進み、第二回全国大会を迎えた時、このカードを活用したデッキは環境を大きく揺らしたのです。
             
             結果として、消費を2で出してしまっていたら環境をひどく歪め、全国大会に悪い影響を与えていたかもしれません。その時に私は、上振れの可能性が大きく、使い手のリテラシーを強く求めるカードは、プレイテストの時点ではやや弱く感じる程度に調整すべきという学びを得ました。
             
             事実として当時、一人でクルルを調整していた時の私の勝率は悪いものでした。しかしこのカードを初めとして、プレイヤーの技術が熟練したら高い上振れを示す可能性を感じてもいました。こういう時はプレイヤーの創意を信じるべきです。そしてプレイテスト時点の私が勝てないからといって、安易に強くすることは避けるべきなのです。この点において結果論ではありますが、クルルはかなり高い水準で成功していました。

             


             

             

             「あくせらー」「りげいなー」など、クルルは他のカードに依存するとともに、クレイジーな効果を持つカードが導入されていることは、これまで語ってきたとおりです。このカードもまた、その1枚と言えるでしょう。
             
             機巧導入と同時に「あっぷぐれーど」というカードが作られました。使用すると手札のカードを封印するとともに、そのカードを強化したカードがデッキに加わるというカードです。例えば攻撃カードを封印したら、以下のカードが加わります。


            狂化攻撃    攻撃/対応
            0-10    1/1
            【使用後】「あっぷぐれーど」に封印された《攻撃》1枚を使用する。その《攻撃》は対応されない。その後、その《攻撃》を再び封印する。

             

             封印したカードを強化するという考え方には強い魅力を感じました。しかしその反面、このカードにはどことない失敗も感じていました。しばらく悩んだ末、原因は「あくせらー」とプレイ感が重なりすぎていることだと分かりました。このカードは全力カードを封印するのが明らかに強く、同じ結果になりやすいのです。
             
             そこでコンセプトをそのままに考え直し、カードを質でなく量で強化することにしてみました。そうしたらとても魅力的であると同時に、同じカードが1枚しか入らないというルールを破る点でクルルらしく、さらにはカードの量が増えることで機巧を揃える助けにもなりました。
             
             アイデアが固まってからは結果として変更されませんでしたが、バランス調整には頭をひどく悩ませました。
             
             やるべきことは「あくせらー」「りげいなー」と同じです。増やすとやばそうなカードを全てリストアップし、その中で特筆すべきものを検証するのです。プレイテストの結果、最終的には問題がないと判断しました。今この時に至るまでゲームは破壊されておらず、どうやら私の決断は正しかったようです。

             

             それともうひとつ、おもしろい小噺もしましょう。『第弐拡張』と『第参拡張』を同時にデザインしたことは失敗した面の方が多いのですが、このカードが「でゅーぷりぎあ」の名前を変更しないようにできた点では大成功に働きました。そうしていなければ、ホノカのデザインでは一悶着があったことでしょう。

             


             

             

             ストーリーにおいて極めて重要な立ち位置を持つ、ストーリー再現枠とも呼べるカードです。神渉装置という装置の本当の意味で細かい設定は物語の流れと共に、ストーリー部門の打ち合わせを通して決まっていきました。しかし神渉装置という装置でメガミの力を奪い、それを瑞泉が手にするという漠然とした流れはこの時点で決まっていました。
             
             それゆえにクルルをデザインする時点でカードプールに取り入れられることになります。最初は相手の使用済の切札を使用するだけのカードでしたが、今一歩力不足が感じられたことと、機巧が導入されたことより、相手の切札を見て、使用済にする効果が加えられました。これは本来の効果とも美しく相互作用するとともに、メガミの力を奪うというフレーバーにもかみ合うものです。
             
             私個人の思い出としてみると、この効果がついに印刷されたのは感慨深いものです。『第一幕』開発中のカードプールに何度か姿を見せたことがありましたが、当然ながら全て没になりました。機巧、それも特に難しい7枚必須という条件をもって、どうにかこの効果が適正なバランスになったのです。

             


             

             

             原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。
             
             クルルの単独での不足点は明白です。自分で攻撃と対応が捨て札に置けなければ、機巧が組み立てられないのです。それゆえ、攻撃/対応のカードであることはすぐに確定します。
             
             それ以上に強い決断が必要だったのは、「クルルに挑戦!」をどういうゲームにしたいのかどうかです。クルルの精巧に機巧を組み立て、綿密なプレイングを行うという側面を強調するならば、切札にも機巧条件を定め、難解なゲームを作ることになります。
             
             しかしそのようなゲームは「メガミに挑戦!」に、そしてクルルというキャラクターに求められていることでしょうか。そしてそのクルルを回せるプレイヤーは本当に存在し、それは楽しいものなのでしょうか。私はそれをNOだと判断しました。
             
             それゆえにクルルのゲームを破壊するクレイジーさを強調することにしたのです。メガミは13柱もいますし、精巧なゲームは他のメガミがやっています。何より、ふざけてしまってよいメガミはこいつくらいではないですか! ヒャッハー!

             


             

             

             原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。「らんだまいざ」で語った通り、そういう指針で行くと決めたからには全力でクソゲーを作ることになります。
             
             最初に浮かんだのは「かおすすとーむ」でした。眼前構築でデッキに入れる通常札は7枚で、入れない通常札も7枚です。ならば、それを入れ替えてしまってもよいではありませんか(よいわけがない)!
             
             しかし問題があります。原初切札がそういう効果なのは相手にもわかっています。ならば、入れ替えられる前提でクソデッキを組むという選択肢が生まれてしまうのです。まあそれなら使わなければよいのですが、原初クルルで遊ぶのです。折角の原初切札を使わないなんて、つまらないではありませんか。
             
             そこで閃きました。「かおすすとーむ」が飛んでくるかどうか、使う側も使われる側も分からないようにしてしまえば良いのです(なにいってんだ)! 「かおすすとーむ」と比肩するクソカードをもう2枚作り、それら3枚からガチャをするクソカードを原初札にするのです!
             
             そういうつもりで作ったカードが「おめがぶれーど」と「完全態神渉装置」です。バランスを取ろうというか細い意志は見えなくもないですが、プレイテストはしていません。We Did't Playtest This at All!!
             
             
             今回はこんなところでしょう。来週は原稿作業の都合でお休みをいただきます。次回の更新は再来週、クルル特集の後篇でお会いしましょう!