新涼の大交流祭レポート

2018.12.07 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。いよいよ『新幕 第弐拡張』し、シーズン3も始まりました。ここ数週間はゲームマーケットの準備から事後処理まで慌ただしく、なかなか時間の取れない日々が続いておりました。お待たせして申し訳ない限りではありますが、ここでシーズン2でやり残した最後の仕事を行わせていただきます。

     

     そう、『新幕』シーズン2を締めくくるべく11月3日には大規模イベント「新涼の大交流祭」が福岡にて開催されたのです。そちらのレポートをお送りいたしましょう!

     

     関東、関西と比べてしまうと十分な参加者が見込めるか不安でございましたが、ふたを開けてみれば総勢83名ものご参加を頂け、大変盛り上がるイベントとなりました。数多くの遠征してくださった皆様、そして地元、九州から集まってくださった皆様に心からのお礼を申し上げます。ありがとうございました!

     

    今回も多くのご参加、本当にありがとうございます!

     

    本気でもカジュアルでも楽しめる和気藹々とした会場でした!

     

    入口ではウツロ様がお出迎え

     

    当日サプライズで、スタンプのサービスもございました。

     

     それでは早速はじめましょう!
     

     

    新カード公開は今回も

     

     開会式ではもちろん大会のレギュレーションなどの説明が行われましたが、それだけではございません。前回の大規模イベントと同様に、『第弐拡張』で登場する新たなアナザー版メガミ、「第三章」オボロのカードが全て公開されました。
     
     これらのカードはプロキシカードとして印刷され、大会を途中で離脱した方に配布されました。勝利を目指して戦い続けるだけがこのイベントではありません。残念ながら2敗してしまったとしても、フリープレイで新たなメガミを体験できるのです。

     

     もう『第弐拡張』が出ている以上はご存知かもしれませんが、こちらで当時の画像も掲載しておきましょう。

     

     

    いち早くアナザー版オボロを使った決闘も楽しまれていました。


    物語テーブルも勢揃い!

     

     さらに素晴らしいことに今回のフリープレイはそれだけではありません。ここ数か月間、シーズン2での交流祭ではさらなる盛り上がりをめざし、『第二幕』で開かれてきたような特殊テーブルの補強を図ってきました。
     
     例えばクレイジーな特殊ルールが適用された環境での決闘である「大乱闘」、はたまた1対1で特殊なドラフトを行ってから決闘する「Open 2Pick Draft」などがあります。
     
     そしてその中でも最も好評だったのは、公式小説『桜降る代の神語り』での出来事を特殊なやり方で再現する「神話再現」でした。第1回では第二章における天音揺波と氷雨細音の決闘を、第2回では第一章における闇昏千影による龍ノ宮一志の暗殺が描かれます。両者のプレイヤーは構築済みの特殊デッキを用いて、歴史に残る戦いを楽しめるのです。
     
     中でも第3回で行われた叶世座公演は最高の盛り上がりを見せました。これは本作初となる協力型ゲームであり、本作の新たな可能性を開いた一作と言えます。
     
     そして今回の大規模イベントではこれらの物語テーブル全てを遊ぶことができました。様々なやり方で、カジュアルなゲームを楽しむ方々の姿が見られ、負けたとしても楽しいイベントを実現できたと強く感じております。
     

    大好評の協力型ふるよに「叶世座公演」。3月発売の『祭札二〇一九』に収録予定です!


    激闘は当然ながら苛烈!

     

     当然、カジュアルで楽しいだけではありません。頂点を決める大会そのものは極めて激しく、相変わらず熱いものでした。全国の強豪が集う大規模イベントということもあり、早期から強豪同士が激突するという波乱も数多く起こります。
     
     中でも会場に大きい衝撃を与えたのは3回戦におけるまやんさんとあかさきさんの対戦です。まやんさんは名古屋での大交流祭と第2回全国大会を制した名古屋の強豪。そしてあかさきさんは前回、大阪での大交流祭でシーズン1の頂点に立ちました。
     
     二人の戦いは苛烈を極め、最終的にはあかさきさんの勝利で終わります。後日に特別に動画としてお送りいたしますので是非ともご覧くださいませ。上達を目指す全てのプレイヤーにお勧めできる内容になっております。

     


     そして3回戦が終わり全勝は10名。4回戦のマッチングはさんろさんとtotさん、あさぎさんとますたーHさん、エンデさんとあかさきさん、たたりさんとのんのんびよりさん、幽さんとひいらさんになりました。
     
     さんろさんはユリナA/サリヤ、totさんはユリナ/サリヤを宿すビートダウンのミラーですが、ユリナがアナザーかそうでないかに差がある魅力的なマッチ。この戦いはビートダウンには一日の長があるtotさんの勝利となりました。
     
     あさぎさんはユリナA/オボロ、ますたーHさんはハガネ/ユキヒ。まずはあさぎさんが見事な攻めでライフにリードを取りますが、ますたーHさんは「超反発」「円舞錬」を巧みに使いリーサルを遅らせ、逆転の機会を掴みます。
     
     エンデさんはシンラ/ライラ、あかさきさんはトコヨ/ライラを宿したコントロール寄りの対戦。「引用」が「雅打ち」を、「無窮ノ風」が「引用」を睨み合う戦いは、シンラの動きを見事に読み切ったあかさきさんの勝利。シンラ使いにして前回覇者の貫録を見せつけます。
     
     たたりさんはユリナ/オボロ、のんのんびよりさんはトコヨ/オボロを宿します。のんのんびよりさんが「斬撃乱舞」で先制するもたたりさんも負けじと反撃。しかし最後は「梳流し」でリードを広げ、「久遠ノ花」で残り1ライフに蓋をしたのんのんびよりさんの勝利です。
     
     幽さんはシンラ/サリヤ、ひいらさんはAユリナ/トコヨを宿します。この試合はコントロール同士による静かな立ち回り。山札の枚数が争点になるような重い試合は、最後に「森羅判証」でライフ差を広げた幽さんの勝利に終わります。
     

     

    残り5人の5回戦!

     

     残る全勝は5名。totさんとのんのんびよりさん、幽さんとますたーHさん、そしてあかさきさんは階段卓でTNKさんとの対戦となりました。
     
     totさんはユリナ/オボロ、のんのんびよりさんはトコヨ/ハガネを宿します。コントロール能力でのんのんびよりさんがtotさんをけん制する中、totさんが取った戦略は以外にも「虚魚」を軸にした構築。多数の設置カードを同時に使用し、ライフのリードを取ります。
     
     しかしライフ7対3の時点でのんのんびよりさんは「大山脈リスペクト」を活用して2回の「鐘鳴らし」からの「遠心撃」。5点をライフに当てます。最後はコントロールをこなし切り逆転勝利。のんのんびよりさんが決勝進出です。
     
     幽さんはトコヨ/サリヤ、ますたーHさんはユキヒ/ハガネを宿します。「無窮ノ風」と「砂風塵」が飛び交う中、まずは幽さんがサリヤのビート能力でリードします。対するますたーHさんは「引力場」を活用しクリンチ寄りのコントロールを仕掛けます。
     
     そして好機を巧みに見出しました。「たぐりよせ」に「詩舞」を撃たせ、「砂風塵」で残りの手札を落としてから「大重力アトラクト」して「ゆらりび」! 見事にライフを逆転した後はコントロールを完遂し、ますたーHさんが決勝進出となりました。
     
     階段卓ではあかさきさんはシンラ/ライラを、TNKさんはユリナ/サリヤを宿します。「引用」「反論」「立論」でコントロールするあかさきさんに対して、TNKさんは「斬」「柄打ち」「Waving Edge」などでビートダウンを仕掛け、ビートVSコントロールの流れです。
     
     撃ち合いの末、TNKさんが「浦波嵐」から「月影落」で4ライフを削り取ります。しかしあかさきさんは1ライフ1オーラを辛うじて残し、残る山札1枚を引いて焦燥から「風魔旋風」「風魔纏廻」「風魔旋風」「雷螺風神爪」「風雷撃」と叩き付けて逆転です。あかさきさんの勝利により全勝は3めいとなったため、決勝トーナメントの実施が確定します。
     
     4勝1敗のプレイヤーの中からオポーネント・パーセンテージが計算され、1位であったtotさんが決勝トーナメントに進出となりました。
     

    見事4勝1敗以上を成し遂げた上位の皆様と、BakaFireで記念撮影。


    新たな戦略か、再発明か。波乱の決勝トーナメント

     

     こうして、決勝トーナメントに進出する4名が決まりました。マッチングの結果、準決勝ではあかさきさんとのんのんびよりさん、ますたーHさんとtotさんが対戦することとなりました。
     
     決勝トーナメントでの対戦内容は前回と同様に後日に動画にてお届けいたします。
     
     第1試合、三拾一捨の結果、あかさきさんはトコヨ/シンラ、のんのんびよりさんはトコヨ/ハガネを宿します。
     
     両者ともにトコヨを宿すため戦いは必然的にコントロールの気質を帯びることになります。山札1順目は「詭弁」「詩舞」「要返し」などのコントロールカードで細かく競り合います。そんな中、「無窮ノ風」「砂風塵」により手札を落としてから「梳流し」「雅打ち」を当てたのんのんびよりさんが先制します。
     
     対するあかさきさんは、「風舞台」を貼ったのんのんびよりさんが手札に「遠心撃」を残していると予測し、離脱、後退から「引用」を試みますが残念ながら手札にあったのは「詩舞」。さらに無情にも再構成から「遠心撃」を引かれ、さらに痛打を被ります。この時点でライフは9対4。

     

     その後ものんのんびよりさんは「要返し」で山札差によるライフアドバンテージを稼ぎ、適切なコントロールであかさきさんの追撃を許しません。

     

     対するあかさきさんは「森羅判証」でライフを回復し、「晴舞台」などの付与カードで反撃を試みます。ですがここでのんのんびよりさんによる無情な「大破鐘メガロベル」。あかさきさんは実に巧みな付与札捌きでダメージを重ねますが、回復したライフを削りきることはできません。のんのびよりさんが決勝進出となりました。
     
     
     第2試合、三拾一捨の結果、ますたーHさんはユキヒ/ハガネ、totさんはオボロ/サリヤを宿します。
     
     totさんは基本動作を上手い手順でこなし、間合を3まで一気に飛ばすように駆け抜けました。後のインタビューなどで分かったところによると、本大会以前の段階ではユキヒ/ハガネは中距離での攻撃を軸に戦うのが基本だと考えられており、totさんはその立ち回りを巧みに対策していました。
     
     しかし、返しのターンでますたーHさんは逆に前進、そして「ふりはらい」で前進を選び間合を1まで近づけました。
     
     ますたーHさんは今大会のため、まったく異なる戦略を編み出して練習してきていたのです。それはユキヒ、ハガネともに間合を0に近づけることが得意であることを活かしたクリンチコントロールデッキです。
     
     その後も間合0へ巧みに潜ってオボロの設置を躱し、「砂風塵」などの妨害でサリヤの攻撃を阻害します。特に活躍したのは「引力場」。ますたーHさんはシーズン1以降さほど活躍していなかったこの1枚の強さを見出し、コントロールを継続します。
     
     試合は進み両者のライフは4。ここでますたーHさんは「大重力アトラクト」から「ゆらりび」を放ちます。これが奇妙なのはtotさんはオーラを4残しており、オーラで受けられる点です。
     
     ですがそこまで含めてますたーHさんは計算していました。ここでオーラを失えばtotさんはクリンチコントロールから逃れるリソースを失うのです。最後までコントロールを継続し、最後は「遠心撃」でフィニッシュ! ますたーHさんの優勝です。
     
     
     こうして決勝はのんのんびよりさんとますたーHさんの試合に決まりました。最後の三拾一捨、結果としてのんのんびよりさんはトコヨ/オボロ、ますたーHさんはユキヒ/ハガネを宿します。

     

    緊張の決勝戦。達人同士が向き合います


     ゆっくりと間合を詰めあう中、最初にますたーHさんが間合5から「ふりまわし」を打ち込みます。返しにのんのんびよりさんは「無窮ノ風」から「梳流し」や、設置からの連続攻撃で反撃します。しかしますたーHさんは上手く捌き、痛打には至らない。
     
     返しに「もぐりこみ」を「詩舞」で躱されるも、続けて「引力場」で間合を1へ。ここからますたーHさんはクリンチコントロールの構えを仕掛けます。「つきさし」でライフを取りながら、「大重力アトラクト」「もぐりこみ」「たぐりよせ」でコントロールを継続。のんのんびよりさんのオボロに仕事をさせません。
     
     ライフが少しずつ推移し6対5。ここでますたーHさん勝負に出ます。「たぐりよせ」で間合を寄せて「砂風塵」。これで「詩舞」が捨てられたのを見て、「久遠ノ花」上等の「ゆらりび」! しかしのんのんびよりさんは「久遠ノ花」を入れていませんでした。5点がライフに直撃し、ますたーHさんの優勝です!

     

     準決勝、決勝共にますたーHさんのクリンチコントロールが決まった試合になりました。しかし当然ですが、この類のコントロールは万能の戦法ではありません。
     
     クリンチコントロールという古典的なデッキの中で、ユキヒ/ハガネのそれが一線級に強力であったことを見出し、相手の予想を外したという先見性。さらにトップメタのオボロが間合0に幾ばくかの脆弱性を持つというメタ読み。これらを総合的に見てこの構築を持ち込むという判断は、まさしく一大再発明であり、ますたーHさんの大会規模での戦略が光ったと言えます。
     
      
     今回の大交流祭も大きな盛り上がりの中、幕を閉じることとなりました。優勝したますたーHさん、準優勝ののんのんびよりさん、ベスト4のあかさきさんとtotさん、おめでとうございます!
     

    最後は全勝の3名で、賞品と共に記念撮影!

     
    新涼の大交流祭

     

    優勝
    ますたーH
    オボロ/ユキヒ/ハガネ

     

    準優勝
    のんのんびより
    トコヨ/オボロ/ハガネ

     

    ベスト4
    あかさき
    トコヨ/シンラ/ライラ

     

    tot
    ユリナ/オボロ/サリヤ

     

    上位賞(4-1)
    (オポーネント順の掲載となります)

     


    トコヨ/シンラ/サリヤ

     

    ぽっぷん
    トコヨ/オボロ/ライラ

     

    あさぎ
    Aユリナ/オボロ/ユキヒ

     

    ひいら
    Aユリナ/トコヨ/オボロ

     

    さんろ
    Aユリナ/シンラ/サリヤ

     

    エモとぱP店長
    ユリナ/オボロ/ユキヒ

     

    センチ(舞茸)
    Aトコヨ/オボロ/ハガネ

     

    ◎あなたのサークル「月乃路」は、日曜日西地区”や”-20bに配置されました(つきのみち)
    ヒミカ/オボロ/ハガネ

     

    ふぇりる
    Aユリナ/オボロ/サリヤ

     

    ソウ
    Aユリナ/Aヒミカ/オボロ

     

    キリカ
    オボロ/サリヤ/ウツロ

     


    メタレポートを報告しマース

     

     大規模大会の結果は今の環境を大きく反映しており、魅力と同時に課題も浮き彫りにしております。シーズン1はサリヤを中心としたビートダウンがあまりに強く暴力的であったため、戦い方がかなり固定化されてしまう問題がありました。シーズン2ではその部分は大きく解消され、ビートダウン、コントロール、コンボの入り混じった魅力的な環境になったと考えます。
     
     他方で、後述する使用率から見ても、オボロには大きな問題があるのは間違いなく、この点については重く反省すべきと考えています。幸いにして私どもはシーズンの早期からその問題についての検討を始めており、禁止カードこそ不要なものの、カード更新では必ず修正すべきだと考えていました。
     
     この問題が独特なのは、三拾一捨で特に問題が顕在化する点です。以前の禁止改訂で、これまでにない形での問題が確認されつつあると触れましたが、その予測は残念ながら正しいものでした。オボロが他のメガミと比べてやや強力なうえ、多くのメガミとの相性も良いため、三拾一捨という環境においてオボロを採用するメリットがあまりに大きすぎるのです(※)。
     
     合わせて、全勝を達成した3名から、今回の3柱を選んだ理由をインタビューしました。参考にご覧ください。

    あかさきさん トコヨ/シンラ/ライラ
    シンラを持って行くにはどうすべきか考え、トコヨ/シンラの強力さに注目した。残る1柱はライラ、サリヤ、オボロ、クルル、Aユリナなどから検討した結果、ライラに決めた。

     

    のんのんびよりさん トコヨ/オボロ/ハガネ
    トップメタだと考えたユリナ/オボロを三拾一捨で返せるように構築した。トコヨ/オボロ、オボロ/ハガネ、トコヨ/ハガネのいずれもユリナ/オボロに対しては有利である。やはり遠心撃は最強……!

     

    ますたーHさん オボロ/ユキヒ/ハガネ
    上方修正されたハガネちゃんを使いたかったので、オボロ/ハガネとオボロ/ユキヒの強さに注目してユキヒ/ハガネを練習した。苦しくて諦めそうになったが、最後に強力なクリンチコントロールのルートを発見し、持ち込むことを決めた。

     

    ※ 他方でオボロには(シーズン1のサリヤと違い)いくつかの弱点もあるため、二柱を普通に選ぶ大会でオボロを持ち込むのが常に正解とは限りません。
     

    使用メガミ一覧

     

    ユリナ/トコヨ/シンラ    1
    ユリナ/オボロ/ユキヒ    5
    ユリナ/オボロ/サリヤ    6
    ユリナ/オボロ/ライラ    4
    ユリナ/シンラ/サリヤ    1
    ユリナA1/ヒミカA1/オボロ    2
    ユリナA1/トコヨ/オボロ    2
    ユリナA1/オボロ/ユキヒ    2
    ユリナA1/オボロ/サリヤ    2
    ユリナA1/ユキヒ/シンラ    1
    ユリナA1/シンラ/サリヤ    1
    ユリナA1/チカゲ/サリヤ    1
    サイネ/トコヨ/サリヤ    1
    サイネ/オボロ/ハガネ    1
    サイネ/オボロ/サリヤ    1
    サイネA1/ヒミカ/トコヨA1    1
    サイネA1/オボロ/ウツロ    1
    ヒミカ/トコヨA1/ハガネ    1
    ヒミカ/オボロ/ユキヒ    2
    ヒミカ/オボロ/ハガネ    4
    ヒミカ/オボロ/チカゲ    1
    ヒミカ/オボロ/サリヤ    2
    ヒミカ/オボロ/ウツロ    1
    ヒミカ/ユキヒ/チカゲ    1
    ヒミカ/ユキヒ/ウツロ    1
    ヒミカ/サリヤ/ライラ    1
    トコヨ/オボロ/シンラ    1
    トコヨ/オボロ/ハガネ    3
    トコヨ/オボロ/ライラ    1
    トコヨ/チカゲ/ライラ    2
    トコヨ/シンラ/ライラ    1
    トコヨ/シンラ/サリヤ    1
    トコヨ/クルル/ライラ    1
    トコヨ/サリヤ/ウツロ    1
    トコヨA1/オボロ/ハガネ    1
    トコヨA1/オボロ/ライラ    1
    トコヨA1/シンラ/ライラ    1
    トコヨA1/クルル/ライラ    2
    オボロ/ユキヒ/ハガネ    3
    オボロ/ユキヒ/クルル    1
    オボロ/ユキヒ/サリヤ    1
    オボロ/ユキヒ/ライラ    1
    オボロ/ユキヒ/ウツロ    1
    オボロ/ハガネ/クルル    1
    オボロ/ハガネ/ウツロ    3
    オボロ/クルル/サリヤ    1
    オボロ/クルル/ライラ    1
    オボロ/サリヤ/ライラ    2
    オボロ/サリヤ/ウツロ    1
    シンラ/ハガネ/クルル    1
    シンラ/サリヤ/ライラ    1
    チカゲ/サリヤ/ライラ    1


    メガミ使用率・上位率

     

    使用人数 使用率 上位人数 上位率
    ユリナ 17 21% 2 12%
    ユリナA1 12 15% 5 42%
    サイネ 3 4% 0 0%
    サイネA1 2 2% 0 0%
    ヒミカ 15 18% 1 7%
    ヒミカA1 2 2% 1 50%
    トコヨ 15 18% 5 33%
    トコヨA1 7 7% 1 14%
    オボロ 59 71% 12 20%
    ユキヒ 20 24% 3 15%
    シンラ 10 12% 3 30%
    ハガネ 18 22% 4 22%
    チカゲ 7 8% 0 0%
    クルル 8 10% 0 0%
    サリヤ 25 30% 5 20%
    ライラ 20 24% 2 10%
    ウツロ 9 11% 1 11%

     

     これにて今回の大規模イベントは終わりとなり、シーズン2もこれにて完全に終わりました。現在ではシーズン3も始まっており、そちらでは全国大会をはじめとした魅力的な試みを行ってまいります。
     
     今週はここまでとなります。来週の記事では今後の展望、2018冬を通し、それらの試みを紹介いたします。ご期待くださいませ!

    『桜降る代の神語り』第70話:未来のための戦いへ

    2018.12.07 Friday

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       英雄たちは勝利した。だけどまだ、彼女たちに凱旋の機会は訪れない。

       

       人の世の諍いを鎮めた後に待っていたのは、この地を闇に落とした終焉の影。
      ウツロが飛び立ち、その圧倒的な力と存在感から天音揺波たちが解放された後から、物語を続けよう。

       桜降る代に至る、終わりと始まりの物語を。

       

       

       


       抑圧された感情は胸の奥で膨らんでいく。もし押さえつけていた圧が消えたのなら、その感情は身体から吹き出すように発露することだろう。
       花弁を散らした翁玄桜の下、己の常識を試されるような異常な光景を目の当たりにした者たちは、まず月明かりに他人の顔がきちんと照らし出されていることに安堵した。
       そして、安堵の後に来るのは、恐れの揺り戻しである。特にそれが大きかったのは、死線とは縁遠かった瑞泉の一般兵たちだ。

       

      「なんだよ……あれ、なんだったんだよ……!」
      「あんなの化物だ……殺されるかと思った……」
      「ウツロ様は味方だって言われてたけど、やっぱりメガミ様にこんな罰当たりなことを手伝わせるなんてだめだったんだよ!」

       

       揺波と瑞泉の決闘を見守っていた彼らは、主の敗北からさらに追い打たれ、動揺のままにざわめきを生んでいた。蹲る者、自身の正気を確かめてもらおうとする者、この場にいた不幸を嘆く者……共通していたのは、怯えに身体を震わせていたことだった。

       本来であれば彼らを御するはずの男は、膝をつき、枯れた桜を仰ぎ見るのみ。

       

      「ウツロぉ、いいぞぉ……はは、ふは……」

       

       力なく、意思も絶えた瑞泉の口から溢れるうわ言を聞き届ける者は誰もいない。この異常を前にして、そんな余裕の持ち合わせがあるはずもなかった。元を辿れば、彼こそが災厄をもたらした張本人だという安易な帰結は、恐慌の中で容易く手が届く。
       皆、畏れに駆られたように感情を吐き出していた。
       ただ、そんな中で揺波は、静かにじっと目をつぶっている。

       

      「…………」

       

       震えもなければ、強張ってもいない。まるで誰かの声に耳を傾けているようであったが、辺りを満たす恐怖に炙られた言葉に傾聴する価値があろうはずもない。
       千鳥はそんな彼女の様子を不審に想い、肩に手をかけると、

       

      「おい、どうした天音」
      「えっーーあ、あぁ、はい」

       

       上の空といった様子で揺波は応じるが、その視線は千鳥に向くことはない。
       遠く、闇のその向こうへ。彼女の意識は、強大な影が去っていった方角に注がれていた。

       

      「ウツロさん、追わないと……」

       

       ぽつり、そう零す揺波に、千鳥は眉をひそめた。
       場を支配する恐れは、あのウツロが自分たちに害を為すのではないか、という懸念から生まれたものだ。実際、なければならないものを消した下手人という事実が、散った桜という姿になって目の前にそびえている。
       瑞泉陣営ですらそんな心持ちなのであれば、元々ウツロと敵対していた千鳥がはっきりとした敵対心と、それ故の絶望感を抱いているのは至極当然のことだった。

       

       しかし、揺波にはそれがなかった。意識は明らかにウツロを見定めているのに、敵とみなしていない、いっそ心配するような面持ちであった。
       恐怖に浸るこの場には、あまりに似つかわしくない。

       

      「なんでだ? 追って、また話でもするのか? 前よりもっと話が通じなさそうになってたじゃねえか」
      「えっと、それは……」

       

       どう答えたものか、揺波は言葉選びに苦心する。自分の中にある確かな答えと、それをうまく説明できそうにない自分に気づき、次第に困惑の色が滲み出してくる。
       しかし、そんな中で唐突に、「あっ」と声を上げた揺波は、

       

      「ぽわぽわちゃんが、直接お話するそうです」
      「は……?」

       

       その意味を千鳥が理解しそこねた直後だった。
       突如として彼女の左手が輝き、辺りの闇を払拭した。何事かと衆目を集める最中、光は次第に形を帯びていき、やがて揺波の隣に並び立つように少女の姿をとった。
       桜色の装いに身を包み、背中に花びらのような四枚の翅を有した黒髪の少女こそ、揺波に宿っていたホノカ、その顕現体。時を経て、再びその姿を現した彼女は、目を点にした千鳥に訴えるよう、揺波の答えを継いだ。

       

      「理由は分からないんですけど、私が行かなきゃいけない、私がやらなきゃいけないことがある、そんなふうに感じるんです」
      「えーっと、なるほど? ……天音、ひょっとしてこの子がホノカ?」
      「ぽわぽわちゃんです。そういえば、千鳥さんはこの格好見たことなかったんでした」

       

       眉間にしわを寄せていく千鳥をよそに、揺波はホノカの両肩に手を置いて、

       

      「ぽわぽわちゃんもこう言ってるっていうのもあるんですけど、わたしもやっぱりウツロさんのこと、放っておけないな、って。だから、まずは追いかけなきゃいけないんです」
      「そうです! 居ても立ってもいられないんです!」
      「あー、待て待て。待ってくれ。俺も余裕がないんだ、一旦落ち着かせてくれ」

       

       手で制止を告げる千鳥を、揺波とホノカは不思議そうに見つめる。それは、答えるだけ答えたのだという意思表示でもあり、千鳥の頭をさらに悩ませる一因となる。
       彼はまずホノカを指差すと、

       

      「そもそもホノカの顕現には、すごい量の力が必要なんじゃないのか? それこそ、もらった神代枝でも全然足りないくらいの。だから天音の手に居るって聞いたんだが」
      「んー、そうですねえ。ユリナさんが、ザンカさんから力を受け継いだ時点で、なんだかできそうな感覚はありました」
      「なんだかできそう、ってあやふやすぎる……!」

       

       不明瞭な回答に加え、それ以上の詳細を望めない状況では、合理的な解答が得られるはずもない。旅を共にしてきた千鳥であっても、揺波が二人になったような現状に、焦りを抱えながらでは混乱がいや増す一方であった。
       と、

       

      「忍の納得より、今は話を進めるほうが先決だ。違うか?」

       

       会話に混ざってきた佐伯は、うまく反論する言葉が見つからない千鳥をじっと見据えていた。
       千鳥が渋々疑問を飲み込んだのを見て、佐伯は賛成の意を示すように、小さく手を掲げる。

       

      「行くべきである可能性があるのは確かだ。私は、ウツロの追跡に同意する」
      「可能性……? 何か心当たりでもあるのか」
      「ああ。予測が正しければ、こちらから動かないと状況は好転しないはずだ。放っておけば、この地の有り様が変わった未曾有の災害の日として、永遠に記録されるだろう」

       

       佐伯も、千鳥と同様にウツロとの戦いで負傷した身である。けれど、予感よりも確かな可能性が、起き得る未来を予見してしまった者としての義務感を生み、彼を対処へと突き動かしているようだった。
       最低限の納得を得た千鳥は、気持ちを切り替えるように大きく息を吐く。
       それを肯定と受け取った揺波は、ホノカを連れてウツロの飛び去った方角へ歩き出そうとした。

       

      「なら早く出発しましょう」
      「おいおいおい、だから待てって!」
      「……?」

       

       何故止められるのか分からないという顔が、二つ並んでいる。
       これには千鳥も具体的な反論の用意があった。

       

      「あーだこーだ言ったけど、俺だって協力するつもりだ。とりあえずウツロのところに行くのもそれでいい。けど、どうやって飛んでったあいつを追いかけるんだよ!」
      「それに、だ。我々は『行く』ということで構わないだろうが、ジュリアさんや怪我人を連れていけないからと言って、ここに置いていくわけにもいかないだろう」

       

       ちら、と動かした視線の先では、もう動くのをやめた神渉装置の成れの果てを、当のジュリアが力なく調べていた。
       人同士の決着は、先刻迎えられた。けれど、脅威の大きさに吹き飛ばされてしまっていたが、ここは敵地の真っ只中なのである。決闘の結果を反故にするような首魁を見てしまった以上、無事に帰れる保証はなおさら見当たらない。

       

       気が逸っていたのか、揺波は指摘されるまで気づかなかったようだった。ホノカはばつが悪そうに目線を落としている。方法を探さなければならないという前向きな検討事項はともかく、仲間を危険に晒しかねないという懸念は確かに彼女たちの勢いを削ぐには十分だった。

       

      「はい……ですね……」

       

       でも、とは揺波は言い出せなかった。
       一瞬の沈黙に、はっきりとした答えを持っていなかった一同はさらに口を重くする。
       だから、

       

      「複製装置を使えばいいじゃないのさ」
      「……!?」

       

       輪の外から突然投げ込まれたその言葉に、全員息を呑んで身構えた。
       声の主は、瑞泉の配下であるはずの浮雲耶宵その人だった。クルルの攻撃に巻き込まれ墜落した彼女は、頭から少し血を流し、やや歩きにくそうにしているものの、得物が弓であることを思えば立派な兵力であることに間違いない。
       しかしどうしてか、浮雲に敵意はなく、弓も持っていなければ、今の言葉は助言以外の何物でもない。

       

      「あたしの使ってた<空>だよ。それで飛んでいきゃあいい。まあ、ご覧の通りあたしたちの手持ちはクルルに壊されちまったからね。充填もできなくなった今、まともに使える予備がどれだけ残ってるかによるけど……」
      「いいのかよ」
      「いいんだよ」

       

       薄く警戒の色を滲ませた千鳥の問いに、けれど浮雲は肩をすくめて応じた。

       

      「勝負がついたなんて、みんな分かってるさね。そんなことより、目の前の危機をどうにかするのが先だよ。うちの大将は使い物にならなそうだし、ここはあたしが出張る番ってことで、やるべきことをやりに行かせてもらおうじゃあないの」
      「おまえも来るのかよ」
      「なんだい、嫌かい? 戦力は一人でも多いほうがいいと思うけど。複製装置を一番使い慣れてるわけだし」

       

       飄々とした言葉遣いだが、その目だけは真剣だった。ミコトとして、この地に住む者として、この危機をどうにかしたいという意思が確かに宿っていた。
       千鳥を含め、誰からも反対意見は出なかった。渡りに船ではあるが、船に穴が空いていないか、全く調べない訳にはいかないというだけのやり取りだと皆が理解していた。選択肢がない以上、船に乗ることは半ば確定しているのだから。

       

      「よし、あんたたちッ! 騒いでないで、あるだけ<空>持ってきな!」

       

       浮雲の一喝で、不安を吐き出すだけの装置となっていた兵たちが、屋敷の中へと続々と駆け込んでいく。その光景に欺瞞は欠片ほどもない。
       それを見ながら、指折り数えていた佐伯は、

       

      「できれば七つあればありがたいが……まずジュリアさんたちに三つあれば、オボロ様のところまで合流してもらえる」
      「藤峰さん、あの怪我で大丈夫かなあ」
      「そこはもうひと踏ん張りしてもらうしかあるまい。皮肉にも、複製装置は身をもって信頼するに至ったものの、この場所には信用が置けないからな」
      「……離脱用のは三つって言ったのかい? 二つじゃなくて?」
      「えっ……」

       

       意図の汲み取れない浮雲の疑問には、少々呆れが含まれていた。
       千鳥が彼女の視線を追った先で、一抱えほどもある風呂敷包みが動いていた。それはウツロの去った方角とは反対の、明らかに城下へ脱出する向きである。

       

      「あーっ! 楢橋、おまえ……!」
      「ひえっ……!」

       

       折れた左腕が使えないため、右腕一本で風呂敷包みを担ぐ楢橋の姿は、彼の本職たる泥棒というよりも、死闘の末に戦利品を勝ち得た強者のようだ。……やっていることは火事場泥棒のそれであり、一人勝手に逃げ出そうとしている事実は変わらないのだが。
      慌てて飛び出した千鳥に首根っこを掴まれ、

       

      「ゆ、許してっ! もういいじゃんか、オレっちの役目は終わったでしょ!」
      「あんた、俺たちの中で一番長く複製装置使ってたんだろ!? 合流地点まで飛んでくっていう最後の仕事が残ってるんだよ!」
      「やだやだ、他の人でもいいんじゃん! もうさようならしたいの!」
      「……ジュリアさんに、複製装置の使い方を教えてあげて欲しいんだ」
      「はい、手取り足取り指導させていただきます」

       

       盗品を置き、手のひらを返したようにジュリアの下へと走っていく楢橋。名を呼ぶ彼の声が、揺波たちの下へ戻っていく千鳥を虚しくさせるも、あの強大な影と再び相向かう緊張感も同時に弱まっていったようだった。
       やがて、瑞泉の兵が次々と複製装置を運んでくる。浮雲はそれを、真っ先に揺波に手渡した。
       けれど、

       

      「いえ、大丈夫です」
      「は……?」

       

       今までの話をひっくり返す遠慮に、浮雲は訝しむ。
       しかし、最初からウツロを追おうと足を踏み出していた揺波たちには、それは必要のないものであった。
       揺波の視線は、ホノカの背後に注がれている。

       

      「ね、ぽわぽわちゃん」
      「はいっ、ユリナさん! いけると思います!」
      「わたしたちは、これで」

       

       ぐ、と背中に力を込めるように力んだ揺波は、その力を背後に解き放つように胸を張った。
       すると、揺波の背中にも、ホノカと同じような二対の桜色の翅が現れた。きらきらと結晶の輝きを鱗粉のように放つそれは、宵闇と恐怖に包まれた瑞泉城の庭で人々の光となった。

       

      「さあ、行きましょう。ウツロさんのところへ」

       

       

       

       


       山の上から見渡す夜景には、従来地上の光が映えていた。空から月と星が照らすように、点々と存在する神座桜は夜闇の中であってもその輝きを失わない。月が陰っていれば次に方位の指針とできる程度には、あって然るべき光であった。

       

      「やはり、予想は当たっていそうだ」

       

       佐伯はそう言って、青空と桜とかけ合わせたような色合いの翼を羽ばたかせる。
       瑞泉城から飛び立った追跡部隊の五人は、あるべき地上の光の一切が失われた大地を眼下に収めつつ、ホノカを先頭に空路を辿っていた。現在位置の頼りになるのは前方右に連なる、御蕾山を有する山脈だけで、ホノカの感覚を曖昧な道標とする今、黒い海を泳いでいるような不安が一同を襲う。

       

      「どういうことだよ」

       

       そう訊ねる千鳥に、佐伯は皆に届くように声を少し張り上げて、

       

      「全員聞こえているか!? この状況に至った経緯と、我々がやるべきことについて、私の推測を話そうと思う。特にホノカ様、最終的にはあなたの手にかかっています。よく聞いていただきたい」
      「わ、私ですか……?」

       

       動揺するホノカ。速度を落とし、声の届く範囲に位置した彼女は、並んだ揺波の顔を思わず窺った。
       そして佐伯は、とつとつと語り始める。

       

      「これは、古い史料の記述から類推した話ですが……陰陽本殿の桜花結晶のない桜を、我々は現実に目の当たりにしました。お伽噺でしかなかった、花のない桜がああして存在しているーーその理由は一体何故か。その答えは、ウツロの権能にあります」
      「昔散らしてそのまんま、ってわけじゃあないんだろう?」
      「ああ。あの桜は、過去に散ったのではない。あの場に封印されていたウツロの力により、現在に渡ってずっと咲くことを許されてないんだ。花となるはずだった力は、結晶になる前に塵となって還されていたわけだな」

       

       なるほど、と納得を告げる浮雲。
       佐伯はさらに、ホノカに視線を移し、

       

      「では、その桜花結晶を作り出しているのは何者か。それこそが、ヲウカ様に他なりません」
      「ヲウカ……」

       

       投げかけられた名を、ホノカは繰り返す。自覚がなくとも、揺波が否定しようとも、瑞泉の強烈な求めは彼女の心に強く刺さっている。

       

      「桜花結晶の生成を司るヲウカ。桜花結晶の塵化を司るウツロ。対の力を持つこの二柱によって、桜の力は形態を変えながら循環しているわけなのです」
      「なあ……それならちょっとおかしくないか?」

       

       疑念を挟む千鳥に、佐伯は目で先を促す。

       

      「ヲウカとウツロで結晶を循環させてたってことは、力がいい塩梅のところで拮抗してた、ってことだよな? じゃあ、今までずっと神座桜を咲かせ続けてた状態で保ってたのに、桜がいきなりこんな全滅状態になるのはなんでだ? いくらなんでもウツロ側に寄り過ぎてると思うんだけど」

       

       彼の言葉の裏には、眼前で本人を前にした恐ろしさが隠れている。が、それを考慮してもなお、理性は違和感を口にさせていた。
      これには他の者も同意を示し、佐伯に答えを求めた。故に彼は、

       

      「ウツロの力が強まった、という事実は既に体感した通りだ。忍の疑問は最もで、確かにこれだけでは割に合わないと感じる。だが、もし、力の均衡が両側から崩れていたとしたら……?」
      「……!」
      「そう、ウツロの力が強まっただけではない。対するヲウカ様の力が、何故か弱まってしまっている。だからこそ、陰陽本殿の桜のような事態が全土に広がってしまったと考えられる」

       

       ですが、と間髪入れずに佐伯は繋いだ。

       

      「ここにいるホノカ様の力は、間違いなくヲウカ様の力と同質です」
      「え、あ……それじゃあ、私の手にかかってるっていうのは……」
      「理解が早くて助かります。ヲウカ様が今何処でいかがされているのかは知りませんが、ウツロの力とヲウカの力が均衡を取り戻しさえすれば問題は解決するはずです。つまり、そのためにはーー」
      「私とウツロさんの力が、釣り合えばいい……?」

       

       答えを先んじて口にしたホノカは、己のことではないような非現実感に戸惑うも、じわじわとその意味を飲み込んでいったようだった。それだけの隙間が、彼女の言葉にし切れない動機に隠れていたのである。

       

      「ご明察です。ウツロを追いたいあなたのその衝動は、均衡を取り戻すべくウツロの力に引かれているからでしょう」

       

       道が、言葉によって拓かれる。不確かな感情に説明を与える佐伯の言葉を、ホノカは己の中で反芻し、心の整理をつけていく。
      そんな中、次なる疑問を挟んだのは浮雲だった。

       

      「それで? 具体的にどうやるか、何か考えてるんだろうね」
      「当たり前だ。やるべきことは二つ。第一に、戦いを通じてウツロの力を弱める。第二に、ホノカ様には力をより高めてもらう。まあ、後者は僭越ながらホノカ様次第で、こちらから具体策を示せないのは申し訳ない限りですが」

       

       それに、千鳥は苦笑いを漏らす。

       

      「戦う? 俺たちが? あれと?」

       

       けれど、彼は反対の意図を示したのではない。
       全員、一歩も動けなかっただろうに。暗にそんな揶揄を自分にも向けて、冗談じみた提案に彼は笑うしかなかったのだ。そもそもメガミと決闘以外で戦うことが無謀極まりない行為なのに、相手はヲウカの対の存在なのだからむべなるかな。

       

      「なら逃げるか?」
      「冗談言うなよ。あんたこそやれるのか?」
      「当然だ。この地の危機に、力を尽くさずして何かミコトか」

       

       それに、と佐伯は目を眇め、

       

      「時間があるとは限らない。あのウツロの目的が何なのか分からない以上、援軍の到着を待ってはいられない。桜花結晶がなくなったことによる影響や混乱も予想されるし、我々でなければ間に合わないかもしれない。そんな状況で傍観するわけがないだろう」
      「取り返しのつかないことになったら、目覚めが悪いしな」
      「……まあ、というのは私の建前なわけだが」

       

       小さく笑った佐伯の目は、揺波とホノカを指し示している。
       理由も、やるべきことも、その意思も、彼女たちから生まれたものだ。
       二人は、求められたそれを、ただ思うままに述べる。

       

      「ウツロさんは悪いことしてるわけじゃあないんですよね? 前も、今も、やっぱり悪いメガミだとは思えません!」
      「私も、ユリナさんと一緒の気持ちですっ! それに、今すぐウツロさんのところへ行かないと絶対にダメな気がするんです! 私たちで行きましょう!」

       

       

       勢い余って二人の翅が接触しそうになる。すんでのところで回避した互いは、自然と向かい合う形となって、通った意思に満足そうな笑みを浮かべた。
       これには千鳥も笑って、

       

      「俺たちがうだうだ言うより、英雄とメガミ様を信じたほうがマシだな」

       

       絶望感を、彼女たちへの信頼の陰に隠す。

       と、そこへ、

       

      「見えてきたよッ!」

       

       鋭い浮雲の報告に、一同が進路の先へと向き直る。狩人たる浮雲の目より遅れて、揺波の瞳もまた広い夜空の中に対象を捉えた。
       巨大な黒い翅をゆったりと羽ばたかせ、静かに空を往く影の形。まるで地上に広がった闇を吸い上げたかのようで、禍々しい紋様の刻まれた翅に隠れるようにして据わっている灰色の頭部が、辛うじて人の体裁を成したモノだと認識させてくれる。

       

       枯れる桜という絶望をもたらしたウツロは、変わってしまったあの姿のままで、そこにいた。
       彼女の飛翔に、強い意志は感じられない。ただ導かれるように翅を動かすのみ。
       何者にも囚われずに。

       

      「ウツロさぁぁぁぁぁんッ!!」
      「…………」

       

       ただ、揺波の割れんばかりの大声での呼びかけに、一瞬だけ、宙で動きを止めた。
      それもすぐに、気に留めるほどのことではないと判断したのか、それ以上の反応を示すことなく、再び羽ばたいた。
      それでも、揺波の決意は変わらなかった。

       

      「行きましょう……!」

       

       同意する声が夜空に入り混じる。
       五つの光が今、影と相対する。

       

       

       


       人と人、人とメガミ……この英雄譚の戦いは、それだけじゃあ終わらない。
       己の役目を理解していくホノカもまた、天音揺波と歩む存在として、終焉の影に立ち向かう。

       けれど、きちんと覚えておいて欲しい。天音揺波の言葉通り、これが悪いメガミを退治する、そんな物語ではないことを。
       さあ、未来のための戦いをはじめよう。

       

      語り:カナヱ
      『桜降代之戦絵巻 第五巻』より
      作:五十嵐月夜  原案:BakaFire  挿絵:TOKIAME

       

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      『新幕 半歩先行く戦いを』第2回:全力で行こう

      2018.12.07 Friday

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         こんにちは、BakaFireです。

         

         こちらのシリーズは本作の攻略記事となります。目標は初級者から中級者へのステップアップ。ルールは理解できているものの、今一歩勝利への道筋を掴みかねている方を対象として、理論立てられた基礎をお伝えしております。

         

         もともとは『第二幕』のバージョンが連載され、完結しています。しかしシリーズそのものが素晴らしい点と、『新幕』で当時の知識が使えるかどうかが不明瞭である点を鑑みて、『新幕』へのコンバートを行っています。

         

         本シリーズは現在大会で活躍されているプレイヤーの中より、戦術の理論化、文章化に長けた強豪であるつきのみちさんに執筆して頂いております。それでは今回も始めるとしましょう。

         


         

        著者紹介:つきのみち
         本作を発売から今日にかけて遊んで頂いている古株のプレイヤー。具体化された理論に裏付けられたプレイングと、丁寧なメタ読みを得意とする。2017年8月のコミックマーケット92では本作の攻略冊子を同人にて作成、頒布した。新幕の大規模大会もシーズン1、シーズン2ともに4勝1敗で終え、その実力はいまだ健在だ。

         

        『新幕 半歩先行く戦いを』

        第2回:全力で行こう

         

         

         前回の「前進」と「後退」に続き、今回は全力について解説しようと思います。

         

         全力カードは強大な効果を持つものが多い一方で多大なデメリットを内包しているハイリスク・ハイリターンなカードです。このデメリットを最小化しつつメリットを最大化しなければ、全力カードを使っても大きな有利を得ることは出来ず、下手をすれば自滅します。今回は、如何に全力カードの効果を引き出すか、逆にいかにして全力の攻撃から身を守るかを考えたいと思います。

         

         

        1. 全力の基本

         

         全力とは何か。「全力」と書かれた黄色いカードを使用することですが、これをルール的に厳密に解釈すると以下のような流れとなります。

         

        1. 自らのメインフェイズ開始時に「全力カードの使用」を宣言する。
        2. 手札もしくは未使用の切札からサブタイプ《全力》を持つカードを1枚使用する。
        3. カードの効果を解決し、メインフェイズを終了する。

         

         《全力》を持つカードを使用する場合、メインフェイズ開始時にしかその宣言ができないこと、カードの効果を解決すると即座にメインフェイズが終了してしまうことから、《全力》を持つカードを使用するにあたっては以下の制約が付きます。

         

        • メインフェイズ中に当該《全力》カード1枚以外のカードを使用できない。
        • 基本行動ができない。

         

          これらの性質により、全力を宣言したプレーヤーは以下のようなデメリットを背負うこととなります。

         

        • 手札や集中力が溢れる
        • 攻撃前に間合い等を調節できない(攻撃のみ)
        • 使用後に間合い・オーラを調節できない

         

         これらのデメリットが及ぼす影響とその対策について、使う側と使われる側の双方から考えてみます。

         

         

        2. 全力カードを使いたい!

         

         単に全力カードと言っても、その効果の方向性によって使用時に注意することは変わります。そこで、大まかに3種類に全力カードを分類して考えてみたいと思います。

         

        分類1:攻撃
         カードタイプが「攻撃」である。

         

        分類2:防御
         次のどちらかの効果を持つ:「自オーラを増やす」「間合を変化させる」

         

        分類3:その他
         分類1と分類2以外の全て

         

         

        2.1 手札と集中を無駄にしないためには?(全分類共通)

         

         自ターン終了時に手札の枚数が2枚を上回っていた場合、2枚になるまで伏せ札にする必要があります。全力カードの使用を宣言すると、選択した全力カード1枚以外一切のカードを使用できないため、全力カードの使用を宣言した時点で手札が3枚より多く(全力の切札を使用する場合、手札を一切消費しないため2枚より多く)存在すると手札の損失が発生します。ターンの開始時に手札を2枚引くことを考えると、手札を無駄にしないためには、手札1枚以下でターンを開始する(全力切札の場合、手札無しでターンを開始する)ことが条件となります。


         同様に、自ターンの開始時に集中力が2だった場合、新たに集中力を得ることができず無駄にしてしまいます。次ターンの開始時に集中力を無駄にしないためには、全力カードの使用を宣言した時点で集中力が1以下である必要があります。毎ターン開始時に集中力は得られるので、全力カードを使った際に集中力を無駄にしないためには、全力カードを使う前のターンに集中力を0にしておく必要があります。


         ただし、これを露骨に狙うと全力カードを構えていることがバレバレになってしまうため、使用するタイミングがバレてもあまり関係のないカード以外では、手札や集中力を無駄にしてでも打つべき場面が来たら打ちましょう(確定で「つきさし」が決まる時など)。

         

         また、全力カードを使った次のターンは、原則手札4枚+集中力2の状態になります。

         

         

        2.2 攻撃前に間合は調整できない。オーラも削れない。手札も減らせない。(攻撃)

         

         この弱点は全力カードの構造的な都合上、全力を使用する側から解消することは難しいです。逆に、間合いを外した状態で相手にターンを渡すことで簡単に回避することができるため、全力の攻撃カードは暴虐的なまでの威力を持つことが許されているのです。


         全力攻撃の構造的な弱点なので、全力カードを持つ側としては無理に相手に全力攻撃を当てることより、全力カードの存在を利用して相手を畏縮させ(集中力を得られなくする方ではない)、代償を得ることが重要となります。例えば自分がユキヒ(閉)、相手が近接系のメガミを宿している際に、相手のオーラが3〜5程度残った状態で間合6で相手にターンを渡したとしましょう。すると、相手は前進して「ふりまわし」の間合から脱することが不可能なため、自らの集中力とオーラを勝手に消費して後退するか、前進して「ふりまわし」を受けるかの二択を迫られるのです。


         このように、全力の攻撃カードは撃つ前に間合を調整することはできませんが、全力の攻撃を回避するために相手に無駄な手札や集中力を消費させることで有利を取れる場合があります。(なお今回の教材には「ふりまわし」を用いましたが、熟練したプレーヤーを相手にする場合、前回の攻略記事で説明した「力を溜めて駆け抜ける」移動を応用して被害を軽減してくるため、「ふりまわし」だけではそうそう大きな有利を取らせてもらえません)

         

         また、当然のこととして、全力攻撃前には相手の手札を見たり捨てさせするカードも使用できないため、相手が全力攻撃を打ち消したり間合をずらして回避してくる対応を持っている場合、1ターンに1枚しか使用できない全力カードをドブに捨てる事態になりかねず非常に厄介です。こういう場合は、そもそも全力攻撃カードをデッキに入れないか、相手の再構成直後を狙って「無窮の風」や「砂風塵」で捨て札に送り、相手が再構成するまでの間に全力攻撃を使うと良いでしょう。

         

         

        2.3 攻撃後にも何もできない(攻撃・その他 攻撃で特に重要)


         「雑な居合は死を招く」という古から伝わる格言があります。全力カードは宣言した瞬間から先、下手をすると次の自分のターンまで自分に行動の選択権が与えられない状態が続くため、「使用した次のターンに致命的な打撃を受けないか」は常に考える必要があります。特に「居合」や「斬撃乱舞」は強大な攻撃カードである反面、その適正距離の範囲内に高い攻撃力のカードが集中しているため、何も考えずに使用すると致命的な反撃を受ける可能性が高く、注意が必要です。

         

        例えば雑な居合が死を招く典型例としては以下のような流れがあります。

         

        相手ライフ6、自分ライフ5で自分が「居合」を使用(自フレアは3未満とする)

        相手「癇癪玉」で対応した上でライフ受け

        相手ターン開始時に癇癪玉で自オーラに1ダメージ
        (相手によってはここでさらに設置攻撃による追撃等が入る)

        相手「天音揺波の底力」使用

        オーラで受け切れないためライフ5ダメージ、敗北

         

         このようなことにならないために、防御以外の分類の全力カードを使用する際は、以下の点に留意すると良いでしょう。

         

        • 自分のオーラは十分あるか(間合の都合上相手が攻撃できない場合を除く)
        • 相手は危険な対応を持っていないか(攻撃のみ)
        • 相手の得意な間合いに居ないか
        • 手札に「対応」を抱えておくと手堅い

         

         なお、防御分類の全力カードは非常に強力な防御効果を持つものが多いため、困った時にとりあえず使って防壁を築き、次のターンに手札4枚+集中力2を使って反撃を行ったり態勢を整えたりすることができるため、比較的雑に使っても大きな問題はありません。筆者は「無音壁」を心の中で「困った時の巻物」と呼んでいます。


        (余談ですが、「空駆け」「風舞台」等も困った時に引くと天の助け足り得るので困った時の巻物扱いしています)
         


        3. 全力攻撃から身を守りたい!

         

         全力攻撃は全力カードの中でも特にハイリスクなカードです。それ故に、オーラを全て破壊するとか、ライフに2点直撃とか(しかもこの2つの効果は両方とも同じカードが持っているのだ!)、4/3の攻撃とか、とにかくヤバい威力のカードのオンパレードです。これらは1回でもまともに受ければ体勢の立て直しだけで手一杯となり一方的に相手に主導権を握られ続ける事態となりかねません。よって、「相手に全力攻撃を使わせない」、あるいは「使われても大丈夫な盤面を構築する」ことが重要です。具体的には、2.3項で挙げた「全力攻撃すべきではない状況」に相手を追い込むことです。すなわち以下のような状態です。


        (上に書いてあることほど重要)

         

        • 間合をずらしておく(そもそも使用させない)
        • 相手のオーラを減らしておく
        • 打消し/間合ずらしによる無効化ができる対応札を持つ(実際に手札に無くても、持っているフリでも効果はある)
        • 未使用の対応切札があるメガミでフレアを潤沢に用意する(実際に切札に無くても、入れているフリでも効果はある)
        • 自分の得意間合いに居座る
        • 手札/集中力を潤沢に保つ(無理矢理攻撃してきた場合反撃で十分なリターンを得られるようにする)

         

         特に間合をずらしておくことと、相手のオーラを減らしておくのは重要です。ただし、間合いをずらすことで自身の集中力や手札・オーラを無駄遣いするくらいなら積極的に相手のオーラを削ったほうが得をします。オーラを減らした場合相手はオーラを補充するために手札や集中力を消費するハメになりますが、不自然な間合ずらしは相手に何ら消費を強いることができないためです。相手のオーラさえ削っておけば、仮に相手が全力攻撃を使ってきた場合でも、(場合によっては攻撃のライフ受けで増えた潤沢なフレアを使って)オーラの減った相手を攻め立てれば致命打を与えることができるでしょう。


         また、対応カードを持っている(フリでもよい!)ことも重要です。相手は1ターンに1枚しかカードを使えないのにそれが無効化されては大損ですので、手控えさせることができるかもしれません。

         

         

        4. 何点までならライフを犠牲にできるか?(上級者向け)


         新幕になり第二幕より全体の攻撃力が上がった関係により、相手の攻撃の適正距離範囲から明らかに外れている場合を除き「その他」分類の全力カードをノーリスクで使うことは難しくなりました(豊富かつ強力な対応と変形時効果の凶悪さで誤魔化せる「Julia's BlackBox」が限度でしょう)。相手の攻撃がより苛烈となったためにそもそもオーラ5を維持することが難しく、その後の追撃ダメージも痛烈な事が多いためです。

         

         これらのデメリットの大きさゆえ、「その他」分類の全力カードを使う場合、「使ったら勝ち」(シンラ+ユリナ<古刀>の「天地反駁」など)か、「使って次のターンが来たら勝ち」(「天地反駁」、「呼び声」+「天雷召喚陣」など)くらいの状況を構築することが望ましいです。この辺は要は決まればその時点で勝ちなので、それまでに死なない限りいくらライフを失っても構いません。デッキ構築時点で「何点までならライフを犠牲にできるか?」を考えておき、計画的にダメージを制御しましょう。

         

         新幕で全体的に攻撃力が増加した影響により、全力カードの不用意な使用による事故の発生率は二幕時代に比べ格段に跳ね上がっています。手札から黄色い札を出す前に、立ち止まって安全確認をする習慣を付けましょう。全力カードの適正使用と安全確認で、今日もゼロ災でいきましょう。

         

         全力カードについての攻略は以上となります。

         

         次回は「切札」について攻略しようと思います。

         

         

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        2018年12月禁止改定

        2018.12.03 Monday

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           私どもはバランス調整の宣言と、それに基づく理念に従い毎月第一月曜日にカードの禁止改訂を行います。この記事はその2018年12月のものです。禁止カードを出すことそのものについて疑問や不安を感じる方は、こちらよりリンクしている宣言か、それを要約した理念をご一読いただければ幸いです。

           

           

          2018年12月禁止カード

           

          ハガネ/『終章』ウツロで禁止

          大重力アトラクト

           

          ※ これらの禁止はシーズン3の間、即ち2019年5月下旬まで継続し、『第参拡張』でのカード更新を通して解除されます。

          ※ この禁止は『終章』ウツロ固有のものです。通常のハガネ/ウツロでは「大重力アトラクト」は使用できます。

           


           こんにちは、BakaFireです。シーズン3も開始し、新たな展開がはじまりました。今月は多数の更新と共に、改めて本作を魅力的にしていくための多数の試みをお伝えしていきます。ご期待くださいませ。
           
           シーズン最初の禁止改訂となりますので、まずは現状をお伝えします。とはいえ、まだ先行発売から10日程度しか経っておりません。なので環境の全体像についてお話しすることは不可能というべきでしょう。あくまで今の時点での観測結果ということにご留意ください。
           
           
          シーズン3バランスの現状評価
           
           この時点で新たな禁止カードを出さざるを得ないことから分かる通り、私どもはひとつ大きな過ちを犯していたことに気づいてしまいました。こちらへの謝罪や今後の対策は詳細を説明した後に行うものとして、それ以外の点についてどうなのかを先に述べさせて頂きます。
           
           後述する過ちを除いた、それ以外の全ては今の観測範囲ではうまく働いていると考えています(やや言い訳がましい言い方となってしまうのが悲しい限りですが)。
           
           特にカード更新は今のところ完璧に働いています。勝ち辛い点が懸念されていたサイネと、勝ち易く柔軟すぎることが問題だったオボロは共に適切なバランスへと移ったと言えます。シーズン2における禁止カードも問題なく解除でき、『旅芸人』トコヨ、サリヤともにバランスの問題は起こしておらず、魅力が消え去ったということもありません。
           
           問題点を除いた新たなメガミ、つまりはホノカとアナザー版オボロ、チカゲもまた今の時点ではバランスの問題はどちらの方向でも起こしていないと考えており、ゲームに新たな展開を与えています(※)。

           

           総じて、シーズン2で残された問題点の解決は上手くいっています。つまり私どもが向き合うべきなのはシーズン3で新たに生まれた問題点であり、それが改善されればシーズン2を超えた、ひいてはこれまでの本作で最良の環境が訪れるだろうと予見しています。
           
          ※ ただ、こちらについて今の時点で見解を固めるのはナンセンスです。今のところ、禁止カードを出すことはまずありえないように思いますが、カード更新での上方修正や下方修正はこのシーズンを十分に見守ったうえで、適切なやり方が検討されることでしょう。

           


          新たな問題についての説明

           

           問題を端的に述べるならば、私どもはアナザー版ウツロのバランス調整を間違えました。特に終焉の影を蘇らせるまでの早さは、私どもが想定していたものから(組み合わせごとに大小あれど)ずれていたと言えます。
           
           ただし、アナザー版ウツロのカードそのものに禁止を出していない点からも分かる通り、彼女は全体の禁止カードをこの時点で出さなければならないほどに危険な存在ではありません。いくつか補足しましょう。
           
          補足1:弱点は多い

           

           彼女はその特性からしてピーキーなメガミであり、弱点が多く存在します。オリジン版ウツロやシンラ、限定的ながらホノカなどはその最たるものであり、彼女は安定して実力を発揮し、大会で絶対的な正解になるようなタイプではありません。
           
           この辺りはシーズン1のサリヤ(※1)、シーズン2のオボロ(※2)とは対照的なところです。
           
          ※1 弱点があまりにもないため、二柱を選ぶ標準選択で常に正解となっていました。

          ※2 多くのメガミと自然にかみ合う上に強力なため、三柱一捨で正解となりやすすぎました。

           

          補足2:使い方が難しい

           

           彼女を使いこなすのは難しく、終焉の影を蘇らせたからと言って勝利できるわけではありません(逆に勝てなくなることすらあります)。
           
           ゆえに彼女を使いこなすには特化した練習と専門技術が必要であるため、多くのプレイヤーにとって彼女は宿して簡単に勝てるメガミではありません。

           

          補足3:受け手のリテラシーに強く依存する

           

           彼女がどの程度脅威となるかは、彼女への対策や、弱点となる立ち回りをどこまで知っているかどうかに強く依存します。正しく対処すれば、逆にほとんど働かせずに勝つことも可能です。

           

          補足4:ゲームの新しい開拓としては大成功である

           

           彼女を用いた、あるいは用いられた際の本作の体験は、これまでのゲーム体験とは大きく趣が異なります。強大な存在となる感覚、逆にそれを討伐する感覚は素晴らしく楽しく、魅力的な拡張という側面では大成功とすら言えます。

           

           このような開拓への挑戦を行わなければ、拡張はどれも同じようになり、いずれは常に陳腐で面白くないものになってしまいます。私どもはその点について上手くやりました。
           
           しかし新しく楽しく王道でない体験は上位の強さではないほうが望ましいものです。私どもはその点においていくらか誤ったといえます。

           


           ここまででアナザー版ウツロの概要はご理解いただけたと思います。それを踏まえ、なぜ今月の時点で禁止カードを出したかを説明します。
           
           それは上記の補足全てを打ち破るような組み合わせと戦い方がここ数日の間に発見されてしまったからです。その組み合わせはハガネ/Aウツロであり、私どもは有志の協力も含めてこの土日で十分な回数の検証を行いました。その結果、この組み合わせは致命的に問題があると認めざるをえなかったのです。
           
           5フレアを溜め、1ターンで「大重力アトラクト」から「残響装置:枢式」「砂風塵」「重圧」と使えば一連の動作で間合0に入り、ダストを10作り、相手の手札を落とし、畏縮させられます。こうして終焉の影を蘇らせれば、ほぼ全ての組み合わせに対して優位に立つことができます。

           

           それに加えてハガネ/Aウツロが他に持つコンボや立ち回りがいくつか存在する弱点を潰しており、組み合わせとしての総合力がさらに高まっています。
           
           これらを総合すると弱点はほとんどなく、補足1、補足3はほぼ無意味です。動きを知っていれば使うのは簡単で、補足2も働きません。圧倒的すぎるため楽しくないので補足4も無いも同然です。
           
           他のアナザー版ウツロと違い、この動きはカジュアルな場でも、競技的な場でも魅力的な結果を生みません。この事実に今の時点で気づいた以上、イベントを可能な限り楽しいものにするためには、ここで禁止カードを出すべきだと私どもは決断したのです。

           

           このデッキを咎めるにあたって意味を成す禁止は「大重力アトラクト」か「残響装置:枢式」の2つです。そのうち「残響装置:枢式」を禁止すればこのデッキは完膚なきまでに消滅しますが、私どもが「大重力アトラクト」なしでテストをした範囲ではこのデッキの強さは問題なく、むしろ魅力的な水準でした。そこでデッキの選択肢を可能な限り残すためにも「大重力アトラクト」のほうを禁止にします。
           
           私どもはアナザー版ウツロに対して引き続き警戒しています。ですが少なくとも他の組み合わせは上記の4つの補足が成り立っており、直ちに禁止を行う理由がありません。また現状では使い手も、使われる側もリテラシーは完全ではなく、この時点で急ぎ過ぎた措置をしても過ちを重ねる可能性が高いと言えます(※)。
           
          ※ 例えば『第二幕』のサリヤは強すぎるという意見が発売直後に殺到しましたが、受け手のリテラシーが成熟した結果、全く問題のない強さだと分かりました。
           

           

          謝罪と今後の対策

           

           私自身、今回こそは完全なバランスを世に出せると強く期待していたため、ショックを受けております。今回もまた過ちを重ねてしまい、誠に申し訳ございませんでした。その上でこのような中で、本作を遊び続けて下さっている皆様にはお礼の言葉以外ありません。重ね重ねお詫びと共に、お礼申し上げます。
           
           それでは今回の原因は何であり、それを踏まえて私どもはどのような対策を行うべきでしょうか。まずは前回に禁止カードを出した際に書かせて頂いた対策について報告しましょう。
           
           まず、カード更新において現行のプレイヤーの皆様からの意見をより取り入れるという点においては、大いに成功しました。より洗練したカード更新が行えたのは勿論のこと、大阪の方々から強く意見を集めた最初の試みであったために新しい発見があり、次回以降のカード更新に向けた様々なヒントも得られました。
           
           他方で、その試みを通してバランス調整チームを未来のカードに専念できるようにするという点においては、今回の失敗も含めて完全には機能しなかったと言えます。試みをした上でも更新の内容についてバランス調整チームは考えないわけにはいかず、劇的な効果はありませんでした(小さな効果はあったと考えています)。
           
           総じて、完全な成功ではないものの良い結果を出したことは間違いないため、今後も近い試みを続けていくつもりです。
           
           しかし現状はこの試みだけでは足りていません。現時点で本作の組み合わせは203通りに至っており、正直に申し上げると私どもは膨れていく組み合わせ爆発に圧殺されつつあります。
           
           今回のハガネ/Aウツロに関しても、プレイテストで回されたことがないわけではありません。しかし数回のテストでは私どもは完全に正しくこの組み合わせを扱えず、その際は不幸なことにとても魅力的な接戦となったのです(しかもハガネ/Aウツロ側が負けました)。
           
           これが私どもの実力不足であることは事実です。しかしそれ以上に全ての組み合わせに熟達することはもはやできないという、膨大な組み合わせとゲーム空間がもたらす構造上の欠陥に由来しています。ですが厄介なことに、その欠陥は同時に魅力でもあるのです。
           
           これに対して私どもの取れるアプローチは2つあります。魅力と欠陥を共に失わせるか、欠陥と上手く付き合っていくかです。前者の道を選ぶならば、なにかしらの方法で使えるメガミに大きな制限をかけることになります。
           
           しかしその道は本作を魅力的にするとはとても思えません。本作は広大な世界にこそ魅力があり、その強みを活かしていくべきなのです。ならば私どもは直面している欠陥に対して、上手く付き合うやり方を探す必要があります。
           
           私どもはそのために以下の3つの試みを行います。

           


          試み1:組み合わせ単位の禁止カードへの見方を変える。

           

           今回、私どもは組み合わせ単位での禁止カードを再び出すことにしました。それはゲームを幾らか魅力的でなくすることは間違いありませんが、今や組み合わせは203通りあります。その中の1つにおいて制約がかかっても、ゲームをひどくつまらなくするわけではありません。
           
           私個人の意見として、シーズン2での「Thallya's Masterpiece」禁止はサリヤの魅力を明らかに損ねましたが、「二重奏:吹弾陽明」の禁止は『旅芸人』トコヨの魅力をさほど失わせませんでした。むしろ、明確な正解が消えたために彼女を他の組み合わせで使う工夫が活発化したほどです。
           
           なので私どもは組み合わせ単位の禁止について、もう少しだけ寛容になることにします。
           
           ただし、それを踏まえて決して誤解してほしくないことがあります。同時に、私たち自身も絶対に誤解してはならないことであり、ここに強く戒めとして残そうと思います。
           
           ここに寛容になるからと言って、バランス調整に手を抜いて良いということは絶対にありえません(※)。私どもは発売前の段階で全力を尽くし続けることを、引き続きここに約束します。
           
          ※ そもそも今回も全力を尽くしたからこそ、このくらいの過ちで済んだという見方もまた正しいのです。

           

           

          試み2:バランス調整チームを増員する。

           

           今回の失敗を受け、バランス調整チームを少数ながら増員しました。これによりプレイテストの頻度を増やしやすくして、組み合わせの爆発に可能な限り抵抗します。
           


          試み3:直前フィードバックチームを結成する。

           

           アナザー版ウツロは『第弐拡張』における他の3柱と違う点があります。それはバランス調整を通して強くなったメガミであるという点です。
           
           アナザー版オボロとチカゲは調整を通していくらか弱体化されており、ホノカは大きく弱体化されています。他方でウツロは私の出した初期案が弱かったため、大きく強化が行われたのです。私どもはその結果、彼女が魅力的なゲームを生むようになったことで満足してしまい、どこかで臨界点を超えていたことに気づきませんでした。
           
           近い例として「Thallya's Masterpiece」も同様です。このカードは初期案から4回の弱体化が行われました。その時点で私どもはまともに見えるようになったことで満足しましたが、結果は愚かなものでした。
           
           これらが告げている事実は、私どもは実際に印刷されるまでの変化を知っているために、その変遷に判断が曲げられてしまうことです。
           
           そこで新たに直前フィードバックチームを結成します。これは入稿の2,3週間前に初めてカードリストを見て、それに対して素朴なフィードバックを伝えるというチームです。彼らがいればこれまでの変遷という色眼鏡なしでカードが見られるため、発売後の結果を先行的に予測できるようになります。
           
           そしてそのフィードバックと、これまでの歴史をつき合わせ、それらを総合的に判断して最終的なカードリストを確定するようにします。
           
           
           本日は以上となります。次回の禁止改訂は1月7日(月)となります。現在はシーズン3の序盤であるため、私どもは引き続き環境の観察を強く続けています。その結果をそちらでご報告差し上げることになるでしょう。

          シーズン3禁止改定

          2018.11.30 Friday

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             私どもはバランス調整の宣言と、それに基づく理念に従い毎月第一月曜日にカードの禁止改訂を行います。この記事はその中でも特殊なもので、シーズンの移行に伴う禁止カードの解除を宣言するものです。禁止カードを出すことそのものについて疑問や不安を感じる方は、こちらよりリンクしている宣言か、それを要約した理念をご一読いただければ幸いです。

             

            シーズン3初期禁止カード

             

            なし

             

             こんにちは、BakaFireです。いよいよ本日11月30日よりシーズン3がはじまり、新たなカードプールでの対戦の幕開けとなります! 『第弐拡張』を手に取って頂いた皆様、お楽しみいただければ嬉しい限りです。

             

             シーズンの開始時期となりますので、ルールに従い禁止カードはすべて解除されます。とはいえ、こちらの記事で多くを語る必要はなさそうです。すぐ3日後には12月の禁止改訂が待っているため、この記事は実質的には本日から3日間のためのものだからです。