『半歩先行く戦いを』第2回:全力で行こう

2017.10.13 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。

     

     こちらの記事は二週間前に始まりました、本作の攻略記事となります。ルールは理解できているものの、今一歩勝利への道筋を掴みかねている方を対象として、理論立てられた基礎をお伝えしております。

     

     本シリーズは現在大会で活躍されているプレイヤーの中より、戦術の理論化、文章化に長けた強豪であるつきのみちさんに執筆して頂いております。それでは、早速今回も始めるとしましょう。

     


    著者紹介:つきのみち
    本作を発売から今日にかけて遊んで頂いている古株のプレイヤー。具体化された理論に裏付けられたプレイングと、丁寧なメタ読みを得意とする。2017年8月のコミックマーケット92では本作の攻略冊子を同人にて作成、頒布した。本作の攻略が理論に基づき、これほどの分量を持って文章化されたのはその冊子が初めてのことである。


     

    『半歩先行く戦いを』

    第2回:全力で行こう

     

    著:つきのみち

     

     

     前回の「前進」と「後退」に続き、今回は全力について解説しようと思います。

     

     全力カードは強大な効果を持つものが多い一方で多大なデメリットを内包しているハイリスク・ハイリターンなカードです。このデメリットを最小化しつつメリットを最大化しなければ、全力カードを使っても大きな有利を得ることは出来ません。今回は、如何に全力カードの効果を引き出すか、逆にいかにして全力の攻撃から身を守るかを考えたいと思います。 

     

    1. 全力の基本

     

     全力とは何か。「全力」と書かれた黄色いカードを使用することですが、これをルール的に厳密に解釈すると以下のような流れとなります。

     

    1. 自らのメインフェイズ開始時に「全力カードの使用」を宣言する。
    2. 手札もしくは未使用の切札からサブタイプ《全力》を持つカードを1枚使用する。
    3. カードの効果を解決し、メインフェイズを終了する。

     

    《全力》を持つカードを使用する場合、メインフェイズ開始時にしかその宣言ができないこと、カードの効果を解決すると即座にメインフェイズが終了してしまうことから、《全力》を持つカードを使用するにあたっては以下の制約が付きます。

     

    1. メインフェイズ中に当該《全力》カード1枚以外のカードを使用できない。
    2. 基本行動ができない。

     

     これらの性質により、全力を宣言したプレーヤーは以下のようなデメリットを背負うこととなります。

     

    1. 手札や集中力が溢れる
    2. 攻撃前に間合い等を調節できない(攻撃のみ)
    3. 使用後に間合い・オーラを調節できない

     これらのデメリットが及ぼす影響とその対策について、使う側と使われる側の双方から考えてみます。

     

    2. 全力カードを使いたい!

     

     単に全力カードと言っても、その効果の方向性によって使用時に注意することは変わります。そこで、大まかに3種類に全力カードを分類して考えてみたいと思います。

     

    分類1:攻撃

     カードタイプが「攻撃」である。

     

    分類2:防御

     次のどちらかの効果を持つ:「自オーラを増やす」「間合を変化させる」

     

    分類3:その他

     分類1と分類2以外の全て

     

    2.1 手札と集中を無駄にしないためには?(全分類共通)

     

     自ターン終了時に手札の枚数が2枚を上回っていた場合、2枚になるまで伏せ札にする必要があります。全力カードの使用を宣言すると、選択した全力カード1枚以外一切のカードを使用できないため、全力カードの使用を宣言した時点で手札が3枚より多く(全力の切札を使用する場合、手札を一切消費しないため2枚より多く)存在すると手札の損失が発生します。ターンの開始時に手札を2枚引くことを考えると、手札を無駄にしないためには、手札1枚以下でターンを開始する(全力切札の場合、手札無しでターンを開始する)ことが条件となります。

     

     同様に、自ターンの開始時に集中力が2だった場合、新たに集中力を得ることができず無駄にしてしまいます。次ターンの開始時に集中力を無駄にしないためには、全力カードの使用を宣言した時点で集中力が1以下である必要があります。毎ターン開始時に集中力は得られるので、全力カードを使った際に集中力を無駄にしないためには、全力カードを使う前のターンに集中力を0にしておく必要があります。

     

     ただし、これを露骨に狙うと全力カードを構えていることがバレバレになってしまうため、使用するタイミングがバレてもあまり関係のないカード以外では、手札や集中力を無駄にしてでも打つべき場面が来たら打ちましょう(確定で「つきさし」が決まる時など)。

     

     また、全力カードを使った次のターンは、原則手札4枚+集中力2の状態になります。

     

    2.2 攻撃前に間合は調整できない。オーラも削れない。手札も減らせない。(攻撃)

     

     この弱点は全力カードの構造的な都合上、全力を使用する側から解消することは難しいです。逆に、間合いを外した状態で相手にターンを渡すことで簡単に回避することができるため、全力の攻撃カードは暴虐的なまでの威力を持つことが許されているのです。

     

     全力攻撃の構造的な弱点なので解消はできないため、全力カードを持つ側としては無理に相手に全力攻撃を当てることより、全力カードの存在を利用して相手を委縮させ、代償を得ることが重要となります。例えば自分がユキヒ(閉)、相手が近接系のメガミを宿している際に、相手のオーラが3〜5程度残った状態で間合6で相手にターンを渡したとしましょう。すると、相手は前進して「ふりまわし」の間合から脱することが不可能なため、自らの集中力とオーラを勝手に消費して後退するか、前進して「ふりまわし」を受けるかの二択を迫られるのです。

     

     このように、全力の攻撃カードは撃つ前に間合を調整することはできませんが、全力の攻撃を回避するために相手に無駄な手札や集中力を消費させることで有利を取れる場合があります。

     

     (なお今回の教材には「ふりまわし」を用いましたが、熟練したプレーヤーを相手にする場合、前回の攻略記事で説明した「力を溜めて駆け抜ける」移動を応用して被害を軽減してくるため、「ふりまわし」だけではそうそう大きな有利を取らせてもらえません)

     

     「ふりまわし」以外にもう一つ例を挙げるとすると、相手に与えるプレッシャーの高いカードの最たるものとして「居合」が挙げられます。「居合」はその絶大な威力と、前進で脱出できない2-3という適正距離も相まって強烈なプレッシャーを放っており、「居合」をかわす手段を持たないメガミは常にその行動を束縛されることになります。具体的には、「居合」を回避するためのカードを抱え続けるために手札全てを消費するような大胆なコンボができない、オーラ回復を強制させられる、オーラを消費して後退させられる等、非常に窮屈な動きを相手に強いることができます。

     

     また、当然のこととして、全力攻撃前には相手の手札を見たり捨てさせするカードも使用できないため、相手が全力攻撃を打ち消したり間合をずらして回避してくる対応を持っている場合、1ターンに1枚しか使用できない全力カードをドブに捨てる事態になりかねず非常に厄介です。こういう場合は、そもそも全力攻撃カードをデッキに入れないか、相手の再構成直後を狙って「無窮の風」や「砂風塵」で捨て札に送り、相手が再構成するまでの間に全力攻撃を使うと良いでしょう。

     

    2.3 攻撃後にも何もできない(攻撃・その他 攻撃で特に重要)

     

     「雑な居合は死を招く」という格言があります。全力カードは宣言した瞬間から先、下手をすると次の自分のターンまで自分に行動の選択権が与えられない状態が続くため、「使用した次のターンに致命的な打撃を受けないか」は常に考える必要があります。特に「居合」と「斬撃乱舞」は、その適正距離範囲内に高い攻撃力のカードが集中しているため、何も考えずに使用すると致命的な反撃を受ける可能性が高く、注意が必要です。

     

    例えば雑な居合が死を招く典型例としては以下のような流れがあります。

     

    相手ライフ6、自分ライフ5で自分が「居合」を使用

    相手「浦波嵐」で対応した上でライフ受け(自分オーラに2ダメージ)

    相手ターン開始時に再構成を宣言

    (相手によってはここでさらに設置攻撃による追撃等が入る)

    相手「天音揺波の底力」使用

    オーラで受け切れないためライフ5ダメージ、敗北

     

     このようなことにならないために、防御以外の分類の全力カードを使用する際は、以下の点に留意すると良いでしょう。

     

    • 自分のオーラは十分あるか(間合の都合上相手が攻撃できない場合を除く)
    • 相手は危険な対応を持っていないか(攻撃のみ)
    • 相手の得意な間合いに居ないか
    • 手札に「対応」を抱えておくと手堅い

     

     なお、防御分類の全力カードは非常に強力な防御効果を持つものが多いため、困ったときにとりあえず使って防壁を築き、次のターンに手札4枚+集中力2を使って反撃を行ったり態勢を整えたりすることができるため、比較的雑に使っても大きな問題はありません。

     

    3. 全力攻撃から身を守りたい!

     

     全力攻撃は全力カードの中でも特にハイリスクなカードです。それ故に、オーラを全て破壊するとか、ライフに2点直撃とか(しかもこの2つの効果は両方とも同じカードが持っているのだ!)、4/2の攻撃とか、とにかくヤバい威力のカードのオンパレードです。これらは1回でもまともに受ければ体勢の立て直しだけで手一杯となり一方的に相手に主導権を握られ続ける事態となりかねません。よって、「相手に全力攻撃を使わせない」、あるいは「使われても大丈夫な盤面を構築する」ことが重要です。具体的には、2.3項で挙げた「全力攻撃すべきではない状況」に相手を追い込むことです。すなわち以下のような状態です。

     

    • 間合をずらしておく(そもそも使用させない)
    • 相手のオーラを減らしておく
    • 自分の得意間合いに居座る
    • 手札・集中力を潤沢に保つ(無理矢理攻撃してきた場合反撃で十分なリターンを得られるようにする)
    • 打ち消し・間合ずらしによる無効化ができる対応札を持つ(実際に手札に無くても、持っているフリでも効果はある)
    • 未使用の対応切札があるメガミでフレアを潤沢に用意する(実際に切札に無くても、入れているフリでも効果はある)

     

     特に間合をずらしておくことと、相手のオーラを減らしておくのは重要です。ただし、間合いをずらすことで自身の集中力や手札・オーラを無駄遣いするくらいなら積極的に相手のオーラを削ったほうが得をします。オーラを減らした場合相手はオーラを補充するために手札や集中力を消費するハメになりますが、不自然な間合ずらしは相手に何ら消費を強いることができないためです。相手のオーラさえ削っておけば、仮に相手が全力攻撃を使ってきた場合でも、(場合によっては攻撃のライフ受けで増えた潤沢なフレアを使って)オーラの減った相手を攻め立てれば致命打を与えることができるでしょう。

     

     また、対応カードを持っている(フリでもよい!)ことも重要です。相手は1ターンに1枚しかカードを使えないのにそれが無効化されては大損ですので、手控えさせることができるかもしれません。

     

     

     全力カードについての攻略は以上となります。

     次回は「切札」について攻略しようと思います。

     

     

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    『桜降る代の神語り』第36話:帰路へ

    2017.10.13 Friday

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       天音揺波と氷雨細音の最後の決闘が終わり、そして二つの旅も終わりを迎えた。
       けれど、幸か不幸か天音揺波の物語はまだ終わらない。
       己の道を見出した彼女は、決闘を終え、これからどうしていくのだろうか。
       一つの区切りを迎えた天音揺波のその後から、そして新たな出会いを語ることにしよう。


      「ここ、置きますよー……?」

       

       そう揺波は恐る恐る言い、袴と薙刀を畳の上に置いた。手狭な玄関に踏み込んでいた大股の一歩を戻せば、もう揺波の身体は主のいない家から出てしまう。そして夕焼けも黒く染まってきた景色を右に左に確認して、音を立てぬよう戸を閉めた。

       

      「ふぅ……細音さん、どこ行っちゃったんだろ」

       

       彼女が案じるのは、つい先刻まで決闘をしていた好敵手の行方であった。
       結局決着の後、身体だけがそっくり消えてしまっていた氷雨細音を見つけることはできなかった。ただ、特に薙刀をそのまま置き去りにしておくのを申し訳なく思った揺波は、それらを携えて御冬の里は細音の家へとこうしてやってきていた。
       けれど、こじんまりとした一軒家の前で呼んだところで返事はなく、途方に暮れた揺波は、行儀が悪いと思いながらも勝手に入って勝手に薙刀たちを置いたのだった。

       

       ただその一方で、揺波の表情に深刻さは見られない。確かにどう考えてもおかしい去り方ではあったが、不思議でありこそすれ、悪い予感はしていなかったのである。それもまた不思議に思う揺波であるものの、これ以上の追求は無駄だという予感もまた得ていた。
       細音さんなら大丈夫。そんな根拠のない確信は、生涯で初めて引き分けた相手だからこそ生まれ出るもの。それよりもむしろ、おたおたしていたら却って彼女に怒られてしまうかもしれない――そんな想像をして、揺波は小さく笑った。

       

      「さて、と」

       

       ひとまず、今やらねばならないことは終わった。今日はこのまま御冬の里で、激戦で疲れた身体を癒やすつもりだった。そこで一休みしながら、区切りを迎えた自分の今後について考えようという腹づもりである。
       だが――考えるべきは、自分のことだけではない。

       

      「次はあなたかな」

       

       揺波の左腕に寄り添うようにしてふわふわと浮ぶ、桜色に淡く光る飛翔体。
       この、生き物かどうかすら分からない謎の存在も、目下の懸案事項であった。

       

      「わたしと一緒に行きたいの?」

       

       四枚の翅を持った謎の物体は、揺波の問に対して、彼女の目線の高さで小刻みに上下に飛んだ。まるで全身で首を縦に振る所作を模しているかのようである。
       揺波はその反応が、なんだか懐いた子犬がはしゃいでいるようで、全く悪い気はしかなかった。けれど頭を撫でてやるつもりで触れると、指は素通りする。ほんのりとした温かさがなければ、これのことを幽霊の類だと思ってしまったかもしれない。

       

      「よく分かんないけど、まあ、いい子……なのかな? えーと――」

       

       漠然と謎の存在を連れて行こうと決めた彼女は、そこで言葉に詰まった。
       呼びかけようとして、なんと呼べばいいのか分からなかったのである。

       

      「あなたなんて言うの? ――って言っても答えられないか」

       

       うーん、と唸りながら首を傾げる揺波。桜色の光は、それに追従するように彼女の眼前で漂っている。先程の反応からして、言葉は解しているようだが、名前の手がかりになるような反応は示してくれない。
       自分で考えるしかない。そもそも、口を利かない相手なのだから結局は自分で好きなように呼ぶしかないのである。ぶつぶつと呟きながら、揺波はじーっと謎の光を見つめていた。

       

      「光ってる……ふわふわしてる……ふわふわ? うーん――どっちかっていうと、ほわーっと? ほわほわ? 違うなあ、もっとこう可愛い感じですよね。あと、ぼんやり光ってる感じが足りない? ぽわー、ぽわーん……ぽわぽわーんって。ぽわぽわ……そう、ぽわぽわ、してる……?」

       

       そして、はっ、となった揺波は、ぐっと拳を握って謎の存在に呼びかけた。

       

      「ぽわぽわちゃん! あなたのお名前はぽわぽわちゃんです!」

       

       果たして桜色の物体は、喜びを露わにしたように、揺波の周りを飛び回った。可愛さを飛び越えて、いくらも間の抜けた名前であっても、少なくともこの謎の物体が持つ意志は、その名を受け入れたようだった。

       

      「さあ、行きましょうぽわぽわちゃん! おいしいご飯が待ってます!」

       

       星の見えてきた空の下、雪道を行く揺波の後を、桜色の光が追っていった。

       

       

       

       

       


       御冬の里を含めた一帯は、北限に至る玄関口とも称される。それより北は、山を一つ越える度に寒さは厳しさを増し、やがて人の住めない氷の世界へと至るのだと言われている。時には背丈以上に雪の積もる御冬の里でも、まだ優しい地域なのだ。

       

      「ぽーわっぽわー、ぽーわっぽわー、ぽーわぽーわちゃーんですよー♪」

       

       そんな里を早朝に発った揺波は、銀世界に別れを告げ、来た道を引き返すように南へ下っていた。昼餉を経た今は、食休みも兼ねてゆっくりと歩いているが、もう雪が見る影もない程度には走り通しであった。

       

      「むしろぽかぽかしてきちゃいましたね。寒かったから走ってきましたけど、今日は結構暖かかったみたいですねぇ。ぽわぽわちゃんは、寒いところじゃなくて大丈夫ですか?」

       

       揺波の問に答えるように、桜色の光は彼女の周囲を飛び回った。

       御冬の里で一晩を過ごした揺波は、当座の目的地を忍の里へと定めていた。家は焼失してしまっており、まずは知己を頼る他なかったが、それ以外にも尋ねる理由はあった。
       彼女が胸に抱いた目標は、みんなに決闘を好きになってもらうこと。そのために思いついたのは、ただ決闘をする、という漠然としたものであり、具体的な方向性について助言を欲していた。オボロは揺波が頼れる中でも一番の知識人である。無論決闘についても造詣が深い。

       

       加えて、実際に決闘を行うに際し、細音は決闘代行の立場であったことを揺波は思い出していた。その雇い主は古鷹であり、古鷹領は忍の里の森を北に抜けた場所にある。オボロに相談した次は、その線を辿ってみるのも悪くないのではないか、とぼんやりながら考えていた。

       

      「あとはぽわぽわちゃんのこと、何か分かればいいんですけど」

       

       右の肩口に留まったその存在は、悪性ではないと思われるも、謎の塊である。こんな存在について知っているなんて、オボロか、ひょっとしたらジュリアたちくらいなものだ。正体を明らかにできるのであれば、するに越したことはないのだ。

       

      「でも、ぽわぽわちゃんがなんであっても、可愛いから許しちゃえる気がします。――あっ、もう町ですよ! あそこ、草団子が美味しかったんですよぉ」

       

       とはいえ、今の揺波にとっては旅の友が増えたようなものである。行きで寄った際のことを話しながら、軽快な足取りで進んでいく。

       

       と、

       

      「ねえ」

       

       一つ、声を投げかけられた。
       足を止めた揺波は、声の源へ――後ろへと、振り返る。

       

       そこにあったのは、童女の姿であった。
       揺波より頭一つ分背の低い彼女は、腿のあたりまでで断ち切られた山吹色の着物に袖を通していたが、左は完全にはだけており、妙に肌に密着した黒の下着が顕になっている。けれどそれ以上に目を引くのは、左の肘まで覆われた、見た目に硬質な緑青色の篭手である。

       

      「あなたが、アマネユリナ……?」

       

       

       道のど真ん中で佇んでいた童女は、その問いかけに不安を滲ませていた。けれど、揺波が足を止めてまで彼女に向き合ったのは、今にも泣き出しそうに助けを求める幼子へ向けるような憐憫のためではない。
       その問いかけには、小さな圧が込められていた。
       それを無視してはいけない、無視は許されない――いっそそんな存在感を持って、もう通り過ぎたはずの場所から投げかけられたものに、揺波は通せんぼを食らっていた。

       

       だから揺波は、自然と、けれど強いられたように、それに答えた。一応世間からよく思われていなかったり、直接命を狙われたことがあったりと、真面目に答えるにはやや悪い身の上ではあるが、それでも揺波は是と答えた。

       

      「はい……わたしが、天音揺波、です」

       

       それを受け取った童女は、己の中でそれを反芻するように深く目を閉じる。
       固唾を呑んで見守る揺波だったが、ややあって童女は目を開き、篭手に守られた左の手をゆっくり握り込んでいった。
       そして、

       

      「……ッ!」

       

       真っ直ぐに、揺波を見た。
       拳を握って、揺波を見た。
       意を決して、揺波を見た。
       ただそれだけ。
       ただ、それだけのことで、揺波は、思わず腰の刀に手を伸ばしていた。いや、伸ばそうとして、脂汗の滲んだその手は、虚空で固まってしまっていた。

       

       揺波は以前に一度、同じような経験をしたことがあった。あの時は、膨大で濃密な殺意が揺波を動けなくするどころか、権能とは逆に恐怖で凍りつかせていたが、今は違う。刺されるような敵意ではないし、あの拳の中に迷いを閉じ込めているのも想像に難くない。
       これは、意志だった。害意なく、ただ純粋に、相対するという圧倒的な意志の力の発露。
       それが身の丈に合わない凄まじい存在感と、圧を生み出している。無論、ただの童女に可能なことではない。

       

      「なん、で……」

       

       メガミ。
       天音揺波は今、超越した存在と相対していた。

       

       


       天音揺波の帰路は、こんな新たな出会いによって阻まれることになった。
       『天音のため』から始まり、そして悲しき終わりを迎えたその因縁。
       劫火に焼かれ、それも鎮められたものの、残り火は未だ燻っていたというわけさ。
       さあ、彼女は再び因縁に直面する。彼女たちがどこに至るのか、ご期待あれ。

       

      語り:カナヱ
      『桜降代之戦絵巻 第四巻』より
      作:五十嵐月夜  原案:BakaFire 挿絵:TOKIAME

       

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      決定版に向けて大調整

      2017.10.06 Friday

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         この記事はニュース週間4つの記事のうち、最後の一つです。最初からお読みになりたい場合は、こちらよりどうぞ

         

         この記事は3つ目の記事でお伝えした『第二幕決定版』に向けた、カードの調整に関わるものとなります。

         

         

         調整を行うということは環境に大きな問題があるのかというと、以前の展望でもお伝えした通り、実はそうではありません。今の環境は「これまでの中で最善」という状況を更新し続けており、絶対的に強すぎるデッキも存在しないと考えています。

         

         ではなぜ調整を行うのか。それは以下の理由によるものです。

         

        1. 勝利を目指す際に、選択するには厳しすぎるメガミがいる。
        2. 大きすぎるわけではないが、強さに問題がある箇所はある。
        3. 「審美眼」問題を解決する必要がある。
        4. まさに現在再版を行っており、変更したカードを印刷する機会を得た。
        5. 『供焚沼蝓法戮鯣表したため、『第二幕』の調整はこれまでよりはやり辛くなる。ゆえに今のうちに、『第二幕』を理想的な形で完成させたい(理想をいえば、今回の調整を最後にしたいところです)。

         

        なぜそれほど急ぐのか

         

         調整を急ぐ理由は3から5の三つです。「審美眼」は著しく悪いフィードバックが複数届き、私自身としても大会における試合時間の面で問題視していたため、急ぎ話題に上げることにしました。しかし今後の展望で触れたとおり、性急に措置をしようとしたのは失敗だったと考えています。そのために、別の調整も急いで進める必要が生じてしまいました。とはいえ、「審美眼」に問題があるのは事実なので、本日の調整でそれを改善することにします。

         

         『供焚沼蝓法戮侶弉茲録瑤月前に決定していました。それゆえ私は『第二幕』再版には後ろ向きであり、順当なペースで来年2月頃に品切れになればよいと考えていました。しかしありがたいことに、そして全くもって想定外なことに、この数か月間で残部数がすさまじい勢いで減り、再版が必要になったのです(流石に半年以上基本セットがなく、新たなプレイヤーが参加できないのは問題がありすぎます)。

         

         いざ再版となるなら、「足捌き」「雅打ち」「審美眼」は変更が必要で、その時点でパッケージのデザインを僅かに変える必要も生じます。さらに『供焚沼蝓法戮侶鵑郵腓い如△海谿聞澆猟汗阿郎までよりはやり辛いものとなります。それならばいっそのこと、行うべき修正はこの機にすべて行ってしまい、『第二幕決定版』と銘打つべきだと判断したのです。

         

         実際のところ前回に行った8月の調整から僅かに2か月しかたっておらず、混乱させてしまう点については深くお詫び申し上げます。このような理由があったのだと、納得して頂ければ幸いです。

         

        何のための調整なのか

         

         他方で、調整そのものの理由は1から3の三つです。今回の調整の目的はゲームをより面白くするためであり、そのための手段としてメガミの間の強さの格差を埋め、同時にゲームの体験を悪くしうる動作を除こうとしています。

         

         しかし今回は大きく異なる箇所があります。強さに問題があるメガミに目を向けるだけでなく、強みを発揮できていないメガミに目を向けようとしていることです。ゆえに今回は下方修正だけでなく、様々なやり方で調整を行っていきます。

         

        メガミたちの今日この頃

         

         それでは早速調整内容と行きたいところですが、今回の目的を踏まえると、その前に各メガミへの見解をまとめておくべきでしょう。

         

        ユリナ

         

         ユリナには構造的な誤りがあり、それゆえに『第二幕』の潜在的問題を生んでいたのは既に語った通りです。しかし一方で、今の枠内であればユリナはいよいよもって適正なバランスにたどり着いたとも考えています。過半数、実に7枚もの下方修正を経てきましたが、今回はついに修正が不要なのです。

         

        ヒミカ

         

         組み合わせて強くなるメガミは限られますが、ヒミカの爆発力は十分に魅力的です。そして現状の環境においてもいくつかの組み合わせが結果を残しています。修正は不要でしょう。

         

        トコヨ

         

         私は皆様に深くお詫びを申し上げなくてはなりません。2017年8月に「雅打ち」を調整しました。これは強さだけを理由にした調整ではありませんでしたが、この調整によってトコヨは強さの面でも適切なバランスに至ったと考えていたのです。しかしそれは誤りで、私の理解が不足していました。

         

         3つ目の記事でお伝えした通り、今回の調整には今の大会で実力を発揮している方の中で個人的な親交の深い方に、ディベロップ部門の練習として助力を頂いていました。それらのプレイテストを経て、私はトコヨがいまだに強すぎると判断するに至ったのです。

         

         理由はいくつもありますが、私の中で決定的となったエピソードをお伝えしましょう。プレイテストでの一戦、ユリナ/トコヨとサイネ/チカゲでの対戦です。サイネ/チカゲは中距離型としてはそれなり以上の強さがある組み合わせであり、「雅打ち」修正後なら無理な戦いではないと考えていました。しかしユリナ/トコヨは余裕をもって勝利し、さらにデッキ10枚のうち実に8枚がトコヨのカードだったのです(さらに言うなら、ユリナのカードはさほど活躍しませんでした)。

         

         『第一幕』の際にユリナは熟練していないプレイヤーのためにデザインしたら、熟練したプレイヤーが用いたら強すぎてしまったという失敗がありました。今回のトコヨはそれに少しだけ似ており、一定以上に慣れたプレイヤーのためにデザインしたら、一定を大きく超えたプレイヤーが用いたら強すぎるようになってしまっていました。

         

         それではトコヨをどうするのかというと、正直なところ非常に悩みました。昔のユリナと違い、誰が使っても強いわけではないのも話を厄介にしています。しかし最終的な結論として『第二幕』のトコヨはより上級者向けのメガミにすることにしました。あとは具体的なカードにて話しますが、問題となるカードを使い辛いものにして、熟練したプレイヤーにとって妥当な枠内で強いメガミを目指すことにしたのです。

         

        オボロ

         

         オボロに上方修正が行われるのは自明です。しかしまあ、一応見解を聞いていってください。

         

         第一幕におけるオボロの状況は最悪でした。第二幕では改善されましたが、どこか力不足が残ったままくすぶっていました。それ故に過去のイメージから、私はオボロには多大な上方修正が必要だと考えていました。

         

         しかし改めて現状を鑑みると、オボロを取り巻く状況はかつてほど悪くはありません。いくつかのメガミとの組み合わせは結果を残せており、その強みを活かし始めています。とはいえ、オボロに上方修正が必要ないかと言われるとさすがにNOです。あくまで昔と比べると改善しているだけで、万全とはとても言えません。

         

        ユキヒ

         

         適正距離を変えられるというコンセプトは構造のレベルで本作において強く、良い塩梅で強力です。密接距離におけるクリンチ問題ももはや大きな問題ではなく、強すぎるということもありません。修正は不要です。

         

        シンラ

         

         『第一幕』ではまだ動けていましたが、『第二幕』以降では動きづらさが目立っています。現状ではメタゲームの隙間に何とか存在できていますが、活躍できる組み合わせが限られ過ぎているのも確かです。より多様な戦略を楽しめるよう、上方修正を行います。

         

        サイネ

         

         トコヨ、というか「雅打ち」のために弱いというイメージがつきまとっていましたが「雅打ち」修正後は強みを発揮し、第一線で活躍しています。修正は不要です。

         

        ハガネ

         

         第二幕においてハガネの使用実績はそれなりにあり、ハガネは微妙に力不足だがそこまで厳しくはなく、微細な上方修正で十分だと考えていました。

         

         しかしディベロップ部門とのプレイテストの結果、私は彼女についても意見を変えることになりました。オボロとは逆に、ハガネを取り巻く状況は段々と悪くなっています。彼女を活躍できるようにするには、相応の上方修正が必要と判断しています。

         

        チカゲ

         

         攻撃能力がやや中途半端ですが、毒の妨害力と「生きる道」によるサブルートまでを鑑みると十二分な強さがあります。修正は不要です。

         

        クルル

         

         カードプールを見れば明白な通り、彼女は危険な爆薬のようなものです。当然のことながら『第弐拡張』の発売以降その動向を注視していました。

         

         幸いにして、爆発の具合は一見して良好なものでした。しかしながら、ある1枚のカードには疑惑があり、大会を通してその強みがどの程度危険であるのかを注目していました。この調査を厄介なものにしていたのは、彼女の活用には高いプレイング技術が要求され、さらに言うならばそれは本作の普通の技術とは別軸にあるものだということです。

         

         結果として、そこには問題があるという結論に至りました(謎の仮面の男が身をもって立証した部分もあります)。しかし、調整をするかと言われるとそこにも幾ばくかの難しさがあります。この先は、カードの方で説明することにしましょう。

         

        サリヤ

         

         プレリリース、そして第弐拡張の発売直後に置いて、私は彼女のバランス調整で大きな過ちを犯したのではないかと強く心配していました。移動と攻撃を同時に行えるために攻撃力が高く、優秀な対応カードを持つために防御力も高い彼女は、発売直後のフィードバックでは強力だという意見が多数を占めました。

         

         しかしながら、時間が流れるにつれプレイヤーはサリヤの弱みを把握し、燃料を縛るプレイングを身に着けていきました。現時点での大会で彼女の強さは絶対的ではなく、概ね適切な強さと判断できるものです。

         

         もちろん彼女はストレートに強力であり、攻撃的なメガミとしてユリナ、ヒミカ、ユキヒ、サイネなどと肩を並べる水準にあるのは間違いないでしょう。しかし最終的には、彼女への調整は必要ないと結論付けることにしました。彼女を無理に弱くするより、強みを発揮できていないメガミを強くする方が健全で心地よいゲームになると判断したのです。

         

        調整内容を発表します

         

         以上でメガミたちへの見解はお伝えし終わりました。それでは、具体的にどのような調整となるのかを発表していきます。

         

        梳流し

         

         「梳流し」は山札に戻る効果が取り除かれ、さらに集中力が2でなければ使用できないようになります。

         

         「梳流し」は中距離にとどまる全てのメガミに対して、高い水準での否定を叩き付けていました。誤解を恐れず言うならば、それらのメガミを宿すならトコヨを宿した方がいいのです。中距離でターンを終えたならトコヨ側にも移動の負荷がないため「梳流し」での1ダメージが高い確度で与えられ(しかも使いまわされ)、遠距離に逃げるならオーラの不利を強いられ、近距離に寄って睨みあうにしても「要返し」をはじめとする長期戦向けカードを持つトコヨの方が有利なのです。

         

         さらに補足するなら、今回上方修正を行うオボロ、シンラ、ハガネも多かれ少なかれその条件を満たします。つまり「梳流し」の下方修正こそが、これらのメガミにとって望ましい上方修正とすら言えるかもしれません。

         

         この修正についてやりすぎだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが補足させてください。私どもはまずは、山札に戻る効果を取り除くだけで試しました。しかし先述したトコヨ8枚デッキの件はまさにその調整後に起こってしまったのです。私どもは「-/1」の強さを見誤っていたと認識していましたが、その認識ですらまだまだ甘かったと痛感しました。

         

         この調整は、トコヨをどのような方向で上級者向けにするのかも伝えています。トコヨは高い防御性能と「-/1」攻撃により、蝶のように舞い蜂のように刺すメガミです。このうち「蝶のように舞う」防御力の部分は他のメガミにはないもので、まさしくトコヨのアイデンティティです。ここを弱くしてはトコヨらしくなく、ゲームがつまらなくなります。

         

         では「蜂のように刺す」部分を弱めるしかありませんが、「-/1」攻撃を辞めるというのも良い指針には思えません。他のメガミと同じになり、トコヨの独自性が損なわれます。その結果として、「-/1」攻撃を撃つことそのものを難しくすることにしました。確実性のある1ダメージは、十分な障壁を超えるだけの価値があります。

         

        審美眼→点睛

         

         

         「審美眼」は新たなカード「点睛」になります。

         

         この枠にはこれまでにないほど悩みました。私が至った結論は「梳流し」の調整と併せ、新しい形でトコヨの「蜂のように刺す」部分を表現することです。

         

         「梳流し」の下方修正が行われたとしても、トコヨのサポート性能はまだまだ十分にあります。しかしトコヨをメインにしてダメージを与えるデッキは組みづらくなるのも事実です。そこで同等以上に難しく、それでいて課題の方向性が異なる「-/1」を追加することにしました。

         

         納4の隙を持ったカードに疑問を感じる方もいらっしゃるかもしれません。「圧気」などと比較して納が大きくなっているのは、トコヨ自身に「点睛」と相性が良いカードが多く、守るための術が用意されているためです。

         

         そしてそもそも決まらなくとも、相手が攻撃するか間合を動かすかといった形で状況をコントロールできます。このカードはその面にも価値があり、実にトコヨらしいコントロールカードでもあるのです。

         

        忍歩

        (2017/10/12に画像を差し替えました)

         

         「忍歩」はほとんど別のカードに生まれ変わります。効果を鑑みて、名前は問題なく引き継げると考えたため、そのままの名前になります。

         

         オボロを調整する上で最も意識したのは、設置を楽しくするということです。数あるメガミからオボロを選んでくださるプレイヤーは忍者らしさ、そして罠を仕掛ける感覚に楽しさを感じて下さっているのです。ゆえに雑な強化をして単に強くなるのでは意味がありません。設置を楽しめる方向で強くならなくてはならないのです。

         

         同時にオボロにはいくつもの弱点があり、それゆえに機能し辛い面がありました。折角なので以下にオボロちゃんの主な死因をまとめてみました。

         

        • 再構成をしたいターンに相手に間合1まで潜られて死亡
        • 通常札対応がないために相手に悠々と「梳流し」「月影落」「ゆらりび」などを撃たれて死亡
        • ようやく機会が来て撃てた「影菱」に「もぐりこみ」や「雅打ち」を撃たれて死亡

         

         「忍歩」はこれらの要件全てをにらんで改善しています。他方で、万能すぎるカードでもありません。伏せて攻撃的に使うか、手札に抱えて防御的に使うかをプレイヤーは決断しなくてはならないのです。しかしそれは相手も同じです。まだ見えていない「忍歩」が手札か伏せ札どちらにあるのかを読む必要が生じます。

         

         忍者の仕掛ける巧妙な罠。そこから生まれる新たな駆け引きをお楽しみください。

         

        (2017/10/12追記)

         誠に申し訳ございません。大きな問題が発見されたため、「忍歩」については調整内容を変更させて頂くことになりました。
         
         何が起こったのか説明いたします。10月8日の交流祭でのことです。そちらでは調整後の環境での大会も開催されていましたが、その大会自体は滞りなく終わり、その際の環境やバランスは一見して良好なものでした。しかし、その大会後のフリープレイで問題のあるデッキが発見されてしまいました。
         
         デッキはオボロとクルルの組み合わせを用い、「えれきてる」を「いんだすとりあ」で量産する類のものです。詳しい手順は複雑なので割愛しますが、然るべき手順を踏めば山札2周の間に確実に合計で6ダメージを与えることができます。
         
         それだけであれば致命的な問題ではないのですが、「忍歩」に対応が付いたために動作が安定し、相手の間合から逃れる力も高いものとなってしまいました。結果として、デッキの動作を妨害できるシンラか、逃れられない間合から十分な火力を打ち込めるヒミカのどちらかを宿していない相手であれば、ほぼ十割勝利することができます。
         
         このデッキの存在はヒミカかシンラの使用を強要し過ぎ、環境をひどく歪めると判断できます。そこで「忍歩」にさらなる微調整を行うことにしました。
         
         「忍歩」は2つの効果の両方を必ず解決し、その上で使用後に伏せ札になるようになります。
         
         上記のデッキを制御する部分は後者です。伏せ札となれば機巧の条件を満たすために使えなくなりますので、許容範囲内の動作で収まります。他方でこの部分はさらなる上方修正でもあります。手札から使用したら伏せ札になるので、その上で設置から使うこともできるのです。そこで強くしすぎないために2つの効果を必ず解決するようにし、「忍歩」を使用したら必ずフレアが1減少するようにしました。
         
         追記ならびに追加の調整はここまでとなります。この度は私どもの実力不足により混乱を招き、ご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございませんでした。幸い印刷には間に合いましたので、この「忍歩」も同様の方法で配布されます。

        (追記ここまで)

         

        立論

         

         

         「立論」は機能の方向はそのままですが、様々な面が変更されました。

         

         相手の山札を削る効果は「-/1」ダメージに近い側面もあり、強みがあるものです。しかし論壇と相手の山札枚数による二重の制限から効果的に使える機会が限られ過ぎ、「立論」は使いどころの乏しいカードになってしまっていました。

         

         また、シンラは《付与》カードを得意とするメガミですが、付与札にはダストが必要です。これまでのシンラはそれに反して、ダストを作る力が不足し過ぎていました。

         

         「立論」はそれらの問題を改善するため、まずは論壇が取り除かれました。そして山札を削る枚数を減らす代わりに、相手に山札がないならばオーラを削れるようにしたのです。

         

         ちなみにコンセプトである論壇が減りすぎている点について気になる方もいらっしゃるかもしれません。お答えしておくと、私どもは論壇を失敗だと捉えています。というより論壇はほとんど機巧(付与)であり、機巧のほうが応用しやすいうえにプレイ感が良いのです。

         

         ええ、『供焚勝法戮離轡鵐蕕蕨醒鼎任呂覆、より魅力的なシステム「計略」を採用しています。そちらもご期待ください!

         

        壮語→抗弁

         

         

         「壮語」は新たなカード「抗弁」になります。

         

         「壮語」は『初版』を支えた重要なカードです。ユリナ/ユキヒを中心とした高い近接火力を持つ構築に対して、ヒミカ/シンラは前進への抑止力と後退能力で対抗し、旧時代の名勝負を繰り広げたのです。

         

         しかし『第二幕』での「マグナムカノン」の調整を経て、段々と時代遅れの気配が強まってきました。ヒミカを軸とした戦法も火力が勝るライバルが増え、あえてヒミカ/シンラを選ぶ理由も薄れてきています。今でも「壮語」はデッキに入ることはあります。しかし大半の場合、納が2である付与札としてしか見られていません。「壮語」は悪いカードではありませんが、もはや「壮語」である必然性を失っています。

         

         他方でシンラ全体の話に移ると、シンラは特殊なダメージ手段によるコンボよりのコントロールを得意とするメガミです。しかし「反論」の下方修正により、コンボまで状況を保てるだけのコントロール能力がやや不足してしまいました(「反論」を戻すと過剰ですが)。

         

         そこで「壮語」の枠に防御的なカードを加え、シンラのコントロール能力を高めることにしたのです。

         

        円舞錬

         

         

         「円舞錬」はほとんど別のカードに生まれ変わります。効果を鑑みて、名前は問題なく引き継げると考えたため、そのままの名前になります。

         

         ハガネの調整指針は、オボロのそれとほとんど同じです。ハガネを選択している方は遠心どかーんという感じにこそ楽しさを見出して頂いているはずなので、そこを魅力的にしなければ意味がありません。

         

         「遠心撃」は十分な性能であり、「鐘鳴らし」も様々なサポートとして機能します。他方で「円舞錬」は様々な応用が利きそうに見える反面で、大体は2発目の「鐘鳴らし」であり、さらに言うなら最終的にデッキから抜けるカードの第一候補です。

         

         そこで「円舞錬」を十分に魅力のある遠心行動カードに生まれ変わらせることにしました。ハガネらしくするため、ハガネにしかできていない「相手のフレアを自分にとって有益なリソースに変える」効果にしました。遠心のために減ったオーラも補充できるため、このカードのためだけに遠心を満たす価値も十分にあります。

         

        地脈収束→引力場

         

         

         「地脈収束」は新たなカード「引力場」になります。

         

         「地脈収束」を一言で言うと企画倒れです。全力を持つ隙カードなので展開時に最低保証を付け、成功すれば更なるボーナスを得られるようにしたのですが、全く活躍しませんでした。なお悪いニュースは同じハガネに「大地砕き」があったことです。残念ながら99%のケースにおいて、「地脈収束」を貼るより「大地砕き」を撃つ方が良い結果になるのです。

         

         他方でハガネは前進カードの不足に悩まされていました。ハガネは本質的には適正距離0-2を得意とする近接型のメガミなのです。クリンチ問題との兼ね合いも併せて様々なやり方を検討した結果、彼女に最もふさわしいのは「風舞台」のようなカードでした。

         

         しかし「風舞台」そのものでは彼女にとって望ましすぎ、逆に魅力を損なってしまいます。そこで様々な個所に差をつけ、ハガネらしくするとともにバランスを整えたのです。

         

        もじゅるー

         

         

         「もじゅるー」は再起により桜花結晶を追加する効果を失った代わりに、そもそもの納が2から3になりました。

         

         クルルのどこに問題があるのかというと、最たるはサイネとの組み合わせです。そしてそれと比べると僅かに劣りますが、トコヨとの組み合わせも問題です。「音無砕氷」や「無窮ノ風」との相互作用は「もじゅるー」の納を容易に4〜6の範囲へと引き伸ばし、そこから許容範囲外のアドバンテージを得られるのです。

         

         さらに「もじゅるー」は《行動/対応》のカードを著しく強化するため、2ターン以上に渡って攻撃を強く抑止します。これは「審美眼」にも近い問題とも言えます。

         

         他方でクルルそのものに目を向けると、もう一つ気にすべき点が生まれます。彼女の構造は「もじゅるー」に強く依存しているのです。彼女は《攻撃》カードがなく、安易に使える《行動》カードもなく、情報を自らさらけ出すという弱い構造を持っています。それゆえに「もじゅるー」を活かしたリソース供給があってこそ彼女の奇妙な魅力が引き出されるのです。

         

         事実、上記の2つ以外のクルル関連のデッキについては弱いとまでは言えないまでも、力が及ばない場面が目立ちます。ここで安易に「もじゅるー」に下方修正を行うと、全てのクルルが死亡してしまうと予測されるのです。

         

         そこで「もじゅるー」には下方修正と同時に、上方修正を施すことにしました。最大の問題は納が4以上になることですので、それを防止します。他方で自分のターンではどのメガミと組み合わせても2ターン使えるようにして、より多くのデッキが活性化するようにするのです。

         

         デザイン的な反省点を述べると、クルルにおける相互作用の魅力を強調しようとしすぎました。再起に伴う誘発には独自の魅力があり、「どれーんでびる」は成功だと考えています。しかし「もじゅるー」にもそれを加えた結果、一部のメガミとの繋がりだけが補強され過ぎ、それらが強すぎる反面でそれ以外では力足らずになってしまったのです。

         

        調整カードの入手方法

         

         調整カードは以下の方法で入手できる見込みです。

         

        • 11月6日発売の『第二幕決定版』に同梱
        • 12月9日発売の『第参拡張』に同梱
        • 11月中旬以降の公式イベント、公認イベントで配布

         

         また、調整カードをまとめたpdfも配布いたします。カードの印刷までは申し訳ないながら今しばらく時間がかかりますので、それまではこちらをご利用いただけると幸いです。

         

        カードのpdfはこちらより

         

        イベント用のカードリストはこちらより

         

        (2017/10/12に再調整されたものに差し替えました)

         

        イベントでの適用について

         

         10月8日の「秋麗の交流祭」では適用した大会を開催します。しかし、ご参加いただける方の名前を拝見する限り初めて、あるいは2回目の参加という方も相当にいらっしゃいます。それらの皆様を混乱させてしまうのは望ましくないと考えますので、適用しない大会も併催することにいたしました。

         

         それ以降の公式イベントでは、これらの修正を適用します。

         

         公認イベントでは、11月中旬の調整カードの配布開始までは、適用するかどうかは任意とさせて頂き、主催者の決定にお任せします。それ以降では、これらの調整を適用します。

         

         調整カードの配布開始までは、pdfを利用するため、誠に申し訳ないながら裏が透明でないスリーブの利用を推奨いたします。お手数おかけしますが、ご協力いただければ幸いです。そうでない場合もご参加いただくことは可能ですが、公式イベントではカードの効果を読み替えて進めて頂くこととなります。

         

         

         これにて合計4回の情報週間はすべて終了となります。これからも本作はより魅力的なゲームであるべく、未来に向けて全力を尽くしてまいります。なにとぞ、引き続きお付き合いいただけると嬉しい限りです。

         

         今週の更新はさすがに厳しかったので、来週はお休みをいただきます。その一方で、今回の更新の内容はとても濃いため、質問がある方もいらっしゃると思います。そこで今回の更新内容をはじめとした本作に関わる内容への質疑応答を行います。こちらのツィートにリプライで質問を下さい。その中からお答えできるものに限り、再来週の更新にて返答させて頂きます。

        これまでとこれから

        2017.10.06 Friday

        0

           この記事は大ニュース週間のうち3つ目の記事となります。最初からお読みになりたい場合は、こちらよりどうぞ

           

           1つ目と2つ目は前後篇で、半年後に行われる大きな変化について説明しました。こちらの記事ではそれを踏まえた今後の計画と、私どもの変化についてお話しします。

           

          これからの頒布物を紹介しましょう!

           

           

          『桜降る代に決闘を 第二幕決定版』

          発売予定日:2017年11月6日

           

           申し訳ないことに現在基本セットが品切れを起こしてしまっており、再版を行っているのは以前もお伝えした通りです。しかしそもそも「足捌き」と「雅打ち」を修正した時点で、再版物のパッケージを同じものにするわけにはいきません。さらに「審美眼」や上方修正についての話もあります。

           

           そこでそれら全ての問題を解決し、「決定版」と銘打った形で出版することにいたしました! 調整内容やより詳しい意図、そして調整カードの入手方法は4つ目の記事で詳しく書かせて頂きますので、そちらをご覧ください。

           

           当然のことですが、『第二幕』をすでにお持ちの方は無理にお買い上げいただく必要はありません。ご安心ください。

           

           

          『第参拡張:????』

          発売予定日:2017年12月9日(ゲームマーケット2017秋で先行頒布)

           

           以前の展望でお伝えした通り、『第参拡張』は本年12月に発売となります。タイトルはもちろん決まっておりますが、より魅力的にお伝えしていくためにまだ秘密としておきます。ご期待ください!

           

           

          『幕間:細音雪花 DL版(仮題)』

          発売予定日:2018年2月

           

           『細音雪花』はもともとは『初版』と『第二幕』の間の変化を埋めるためのものであり、現在では役割を終えたものと判断しています。それゆえに再版も行わないのですが、その一方で差分のカードではなく、画集や設定資料集としての需要がいまだ存在しているというフィードバックを頂きました。

           

           そこで本冊子の画集、設定資料集部分をダウンロード販売することにいたします。さらに現状に合わせて加筆し、より奥深い設定まで掘り下げる見込みです。

           

           

          『桜降る代に決闘を供焚沼蝓法

          発売予定日:2018年5月

           

           そして昨日の記事でお伝えした通り、新シリーズの『供焚沼蝓法戮5月より開始します。こちらはデジタルゲーム版と同じく合計12柱の状態からスタートします。また、初めて遊ぶ方にはより親切に、すでに遊んでいる方にはより魅力的になるよう、一工夫した販売形態を予定しております。

           

          これからの私どもについて

           

           デジタルゲーム化に伴い、私どもの状況にも変化が生まれつつあります。丁度よい機会ですので、当ブログにおける「私ども」とは何者であり、それがどう変化するのかをお話ししましょう。

           

           まず、私どもと書いた場合、それは「だいたいはBakaFire」ということです。本作で私が関わっていないところは存在しません。だいたい一人でやっているので、マジヤバイ日々を過ごしております。なので、私どもが大組織であると誤解しないようにしてください。いや本当。色々ご迷惑おかけしている皆様には改めてお詫び申し上げます。

           

           「私」と断定しない理由は、素晴らしいアイデアの中には私以外から出ているものもあるため、全てを私と括ってしまうのはあまりにもおこがましいと考えているためです。

           

           一方で「BakaFireひとりで本作を作るとか無理」というのも事実です。イラストのTOKIAME先生、小説の五十嵐月夜先生などは私には実力的に不可能なところで、素晴らしい作品を仕上げて頂いているため特に分かりやすいですが、他にも多くの方々に支えられて本作は成り立っているのです。

           

           以下では本作の支え方に応じて、部門という呼び方で私どもを紹介します。ただ、部門内の個人を紹介するのは概ねの意向を踏まえ、一部の例外を除き行いません。お手伝いいただいているという立場なので、公式にかかわっていることを明確にし、責任を強く負いかねない状況にしたくないのです。

           

          ゲームデザイン部門

           

           メガミのコンセプトを決め、それに即したカードのデザインを行います。そしてプレイテストを行い、狙い通りの楽しさが得られているかを確認します。私がまず総合的な指針を打ち立て、それを踏まえてアイデアを出し合い、最終決定を私が行っています。

           

          グラフィックデザイン部門

           

           100%私です。カードとかパッケージとかボードとかのデザインです。

           

          イラスト部門

           

           概ね私とTOKIAME先生です。私が設定を決め、素晴らしいキャラクターデザインをTOKIAME先生が仕上げて、そして素晴らしいイラストを描いていただいています。メガミによっては、他の方が設定に関わることもあります。

           

          ストーリー部門

           

           私と五十嵐月夜先生、そしてサポート数名で行っています。世界観の設定、ストーリーの展開を決めています。主に私がプロットを書き、月夜先生が素晴らしい小説に仕上げて下さっています。また、見えづらい部分の設定にはサポートの方から素晴らしい助力を頂いています。

           

          ルール部門

           

           総合ルールとFAQを円滑に運用するために数名で行っています。昔は100%私が行っていましたが、最近は時間が回せないため、多くをサポートの方が行ってくださっています。

           

           ここまでがこれまでの私どもです。それでは、これからはどうなるのでしょうか。お伝えしましょう。『供焚沼蝓法戮筌妊献織襯押璽爐鉾爾ぁ以下の部門が増えることになるのです。

           

          デジタルゲーム部門

           

           デジタルゲーム版の開発を行っているチームです。これまでの部門と大きく異なるのは、この部門はいくつかの企業が関わるものであり、BakaFire Partyの枠を超えたものだということです。そしてそれにも関わらず、私の計画を傾聴し、尊重した上でご意見を頂けています。この状況に深く感謝するとともに、素晴らしいゲームにできるよう尽力していく次第です。

           

          ディベロップ部門

           

           この記事の後半で一番伝えたいのはこの部門です。これまで本作のバランス調整はゲームデザイン部門でのプレイテストが兼任していました。しかし『供焚沼蝓法戮粒発からはそれを切り分けます。今の大会で活躍しているプレイヤーの方々のうち、私と親しくお付き合いいただいている数名の方にお声掛けし、バランス調整を専門としたチームを結成することにしたのです。

           

           これを行うに至った理由は以下の通りです。

           

          • プレイヤーの皆様の実力がゲームデザイン部門を大きく上回り始めました。これは不思議な話ではなく、多くのゲームでこうなるのは必然です。プレイヤーの「勝つための探求心」は、「面白くするためのデザイン」とは方向性がずれているため、実力はプレイヤー側に傾いていくのです。そこで、「面白さを見る部門」と「強さを測定する部門」を切り分けます。もちろん、私は両方に所属します。
          • プレイヤー人口は増え続けています。そしてデジタルゲーム版ではさらに増加すると予見できます。昔のプレイヤー人口でこれを行うと身内感が強くなりすぎてしまうので大問題ですが、今ならば辛うじて容認できます。そして未来の人口を想定して魅力的なゲームを提供するには、今の時点で改革が必要と判断しました。

           

           ディベロップ部門を上手く回すための練習として、次の記事でお伝えするカード調整についてのプレイテストにも幾らか関わって頂きました。結果として、大会における現場の声をより適切に取り入れた調整にできたと感じております。

           

           ここで強くお伝えすることがあります。この部門に関わった方にも『第参拡張』の情報は一切流さないようにしています。理由はこの部門のメンバーには可能な限り純粋に『第二幕』を楽しんで頂きたいからです。誤解なきよう、お願いいたします。

           

           

           これにて、私どもが今後どのように変化し、そして今後の製品計画がどのようになるのかを説明し終わりました。4つ目の記事では、『第二幕』を決定版にするためのバランス調整の話を行います

          未来をつくるために(後篇)

          2017.10.05 Thursday

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             この記事は大ニュース週間のうち2つ目の記事であり、前後篇の後篇です。最初から読みたい場合はこちらよりどうぞ。

             

             前篇では大きな変更の概要や指針、そして歴史的な動機を説明しました。後篇では具体的な潜在的問題と、それらへの解答についてお話しします。

             

             

            3:変化を必要とする具体的な理由

             

             早速、潜在的問題について説明しましょう。私どもはこの問題への分析を行い、以下の4つに分類できると分かりました。それぞれ紹介し、説明させて頂きます。

             

            • 問題1:近距離問題
            • 問題2:瞬殺問題
            • 問題3:ライフの価値問題
            • 問題4:デフレーション問題

             

            問題1:近距離問題

             

             今の本作は近接攻撃(間合0-2程度)を得意とするメガミを極めて作り辛い状況にあります。修正前のチカゲに触れたことがある方は、思い出して頂ければと思います。あのような悪夢を繰り返してはいけません。

             

             この事態に陥っている原因は2つあります。細分化してみましょう。

             

            問題1−1:ユリナ問題

             

             『第二幕』のユリナはどうにか妥当なバランスにたどり着き、魅力的なメガミになったと考えています。しかしその一方で、潜在的問題の元凶でもあります。

             

             『初版』の時点から本作はある意味で最大の失敗を犯していました。それこそが「斬」と「月影落」です。間合1-2はゲームのルールから見て強力な間合であり、そこに3/1や4/3といった強力なダメージの攻撃を置くべきではありませんでした。結果、ユリナと組み合わせるとゲームが崩壊する恐れがあるため、近接攻撃を行うメガミを作るには大きな縛りが生じています。

             

             他方で解決が困難な問題でもあります。解決手段は「ダメージ」か「適正距離」の変更が妥当です。しかしダメージを安易に下げるのはイメージ面で問題がありすぎます。和風の決闘の花形で、切れ味もパワーもある刀という武器の攻撃力が低い。その状況は受け入れられるものでしょうか? 他方で適正距離を変えるとなると影響が大きすぎます。ユリナの全ての攻撃だけでなく、サイネなどにも影響が波及するため、変更すべき枚数が多すぎるのです。

             

            問題1−2:クリンチ問題

             

             基本動作の後退は前進と比べて弱いものです。ゆえに0距離でのクリンチは常に問題でした。一時的にコントロールのために密接距離へ行くのは構いませんが、クリンチが決まり続けるのは単純につまらないのです。

             

             『第二幕』で改善されましたが、前進カードを飽和して使われるとそれでも厳しいものです。そして近接型のメガミは、構造上前進カードを持っていなければ問題となります。ゆえに、近接2柱を組み合わせるとクリンチのリスクが生まれるため、近接攻撃のメガミを作るには強い縛りが生じています。

             

             今のユリナとユキヒの組み合わせに問題がないことからも分かりますが、繊細に調整すれば回避できない問題ではありません。しかし、繊細な調整と斬新な楽しさの両立が、いつまでも続けられるかというとはなはだ疑問なのです。

             

            問題2:瞬殺問題

             

             これは4つの問題の中で一番の小物です。しかしまあ、紹介に値するほどには問題です。

             

             本作は、遠距離攻撃(間合6-10程度)を得意とするメガミをやや作り辛い状況にあります。ヒミカ特集で、ゲームとしての対話が行われる前に決着が頻発するようでは問題だと書きましたが、遠距離2柱を組み合わせるとその危険が高まるのです。

             

             実際、ヒミカとヒミカを組み合わせるとゲームは壊れます。とはいえこれは遠距離火力だけでなく、「カードを引く」が2つ掛け合わさるゆえの問題という側面も強く、一概に遠距離すべてが縛られているとは言えません。

             

             今の見解ではこの問題は「マグナムカノン」の適正距離が6-10から5-7になった時点で半分は解決していると考えています。しかしながら、完全に無視するわけにもいかないのです。

             

            問題3:ライフの価値問題

             

             『第二幕』ではライフ1点の価値が少しばかり高すぎます。ライフは額面上は8点ですが、実際は2、3回の再構成を行うため5、6点しかありません。これでは1点のダメージが重すぎるため、ゲームがいかに1点を通すかという点に集中し過ぎてしまいます。

             

             そこから生じる縛りを説明しましょう。大別して3つあります。

             

            問題3−1:-/1問題

             

             ダメージが-/1である攻撃は想定を超えて強力過ぎました。それはもう、開発当初の想定を超えて強力だと思っていたら、その超えた想定すらも越えて強力なくらいに強力なのです。

             

             きちんと説明すると、いかに1ダメージを通すかというゲームであるためにオーラを無視するためには相当の縛りが必要なのです。それゆえに「-/1」の攻撃や「ライフに1ダメージを与える」効果のデザインは難しく、強い制限を与えざるを得ません。

             

            問題3−2:再構成問題

             

             再構成1回あたりの影響も大きすぎます。特に防御的なメガミが強力な時は問題が大きくなります。カードを使っていかにダメージを与えたかを競うのではなく、何回再構成したのかを競うようなゲームは健全でないと言えるでしょう。

             

             ゆえに、多くの対応や妨害により防御的にふるまうことができ、さらに山札を回復できるようなメガミをデザインするには制限が大きくなります。

             

             お察し頂けているかもしれませんが、トコヨはこの問題3−1と3−2を共に満たしています。彼女は問題3という構造に愛され過ぎており、それゆえに『第二幕』での強さには問題があるのです。

             

            問題3−3:ダメージ制限問題

             

             現在の《攻撃》カードのライフへのダメージは大半が1です。2はそれなりには存在しますが、3以上となるとほとんど存在しません。

             

             それは当然の話で、今のライフだと2や3のダメージが頻発したらゲームがすぐ終わってしまい、魅力的なゲーム展開にならないのです。しかし、この制限はカードのデザイン空間を明確に縛っています。

             

            問題4:デフレーション問題

             

             本作におけるカードの強さは、デフレーションの方向に向かっています。即ち、本質的には地味なカードでないと作り辛いのです。

             

             『初版』は問題のあるゲームでしたが、『初版』を最後まで遊んでくださったプレイヤーの中には『第二幕』になって自分のためのゲームではなくなったと評価している方もいらっしゃいました。その原因は劇的な展開が少なくなり地味になったためではないかと推測しています。それ以前にもこの点に疑惑を感じてはいましたが、その意見を受けて、これは問題として確かに存在していると認識したのです。

             

             この問題は他の3つの問題の結果として生まれているとも言えます。近距離への移動が抑制され、遠距離での速攻が抑制され、そもそもの火力も抑制されています。まとめると、これまでの問題が複合した結果、派手なカードを作りづらいという縛りが生まれているということです。

             

             『第弐拡張』ではやや複雑なルールを用いた結果ではありますが、この問題から逃れて拡張できたと考えています。しかしそれをいつまでも続けられるかというと、そうもいかないでしょう。

             

            4:変化の具体的な内容

             

             ここまでで本作の抱えている潜在的問題を説明し終えました。ここからは、それらを打開するために私どもが『供焚沼蝓法戮撚燭鯤僂┐襪里を説明しましょう。

             

             変更点は3つあります。まだ開発中のゲームであるため、この変更は100%これでいくと断言することはできません。しかしながら、八割方これで問題ないだろうというところまでは進められています。

             

            変更点1:ライフを10にする。

             

             問題3や問題4を考慮すると、ライフ8が足りていないと結論付けるのは当然です。そこでライフを10にすることにしました。これは問題2に対するアプローチにもなっています。

             

             まず、-/1の攻撃は問題なく作成できるようになります。最たる理由はライフへのダメージが2以上の攻撃が増える点にあります。-/1を持つメガミは山札1周あたり、比較的簡単に1ダメージを与えられます。その一方で相手に2/2などの攻撃が多くあるならば、その攻撃を防げなければ逆転を許してしまうのです。

             

             そのせめぎ合いはまさにゲームであると言えるでしょう。そしてこの争いはトコヨ、シンラなどのコントロール的なメガミと、ユリナ、サイネなどのビートダウン的なメガミの正しい形での戦いだと考えています。

             

             あとは明白な話ですが、再構成によるダメージの度合いは軽減されるので、よりカードでダメージを与えることに重きを置いたゲームになります。ライフへのダメージが2や3のカードを増やすこともできるため、カードのデザイン空間も広がります。そして展開も派手で鮮烈なものとできます。まずはダメージの面でカードパワーのデフレーションを止め、適度なインフレーションへと舵を切れるのです。

             

            変更点2:基本動作:離脱を追加する

             

             問題1への解答です。『第二幕』では現在の間合が2以下であれば、基本動作:前進が行えなくなるというルールが追加され、それ自体は良いものでした。事実(「足捌き」の調整が必要ではありましたが)ユリナ/ユキヒの強さは適切なものとなり、今の枠内では十分なものです。

             

             しかしここまで見てきたとおり、この先のカードを追加するには、これでは不十分だと分かりました。

             

             それを受けて私どもが至った結論は、「ダスト→間合」という動きの基本動作:離脱を追加するというものです。しかしお察しの通り、安易に行うには以下のような問題があります。

             

            • 基本動作に関するルールを複雑にしすぎると、遊ぶに堪えない煩雑さになる。特に『第二幕』のルールに加え、全く別の特殊ルールまで加わるとなると明らかに問題である。
            • 「ダスト→間合」がいつでもできると、いつまでも近づけず遠距離から殺されるのは『初版』プレイテストの時点ですら分かっている。

             

             これらすべてを解決する方法は『第二幕』のルールにありました。そう、新たな変更点を『第二幕』ルールに紐付けてしまえば良いのです。つまりこういうことです!

             

            • 現在の間合が2以下ならば、全てのプレイヤーの基本動作:前進は基本動作:離脱に変化する。

             

             これによって、間合2以下へと近づかれた際に、間合3以上へ戻しやすくなります。そして離脱に対抗するために正しく強力な前進カードを作れるようになり、結果として近距離型のメガミもデザインできるようになるのです。

             

            変更点3:間合のバランスを見直す

             

             問題1−1への解答であるとともに、変更点2の補助でもあります。変更点2が実行されると、間合の持つバランスは大きく変動します。そのため全てのメガミについて、彼女にとって適切な適正距離がいくつであるのかを見直されることになります。さらに、間合ごとにどの程度のダメージが妥当な強さなのかも再検討されます。

             

             当然ですが、大きく変化するのはユリナです。彼女は『供焚沼蝓法戮任牢峭3-4を得意とするメガミになります。そして薙刀は刀よりは遠くから攻撃できるため、サイネは間合4-5を得意とするようになります。

             

             一方で間合1-2の強みは今よりも小さなものになりますが、基本動作:前進は依然として強力なため地位が落ちすぎるということはありません。結論として『第二幕』のユリナでは攻撃力が過剰であり、傘を開いたユキヒでは過小です。今のところ、この間合での攻撃は2/1にいくらかのメリットが付いたものが適切だと考えています。

             

             この変更はフレーバー面からも歓迎されます。本作が昔はラノベ風西洋ファンタジーな世界観だったのはメガミ特集でお伝えした通りですが、和風に切り替わる際に安易に大剣を刀にしたのは失敗でした。西洋ファンタジーならば魔法やらなんやらあるのですが、和風となると刀より間合が遠い武器は少なく、他方で間合が近い武器はそれなりにあるのです。

             

             刀の間合が3-4と再定義されれば、そこより遠い間合も、近い間合も程よいバランスで存在します。結果として、より多彩な象徴武器を持つメガミをデザインできるようになります。

             

             

             

             半年後の変更について今お伝えできることは、これですべて終わりました。そしてこれらの変更点は『初版』が『第二幕』となった時と比べても、なお大きいものです。現在本作には11×11=121(簡単のため例外は除く)種類のカードが存在しますが、『供焚沼蝓法戮離ードリストで挙動が一切変わっていないのは現時点でも僅かに40種類しかありません。

             

             この変化の大きさ、そして『第二幕』がゲームとしては十分に魅力的な仕上がりであることを踏まえ、最初にお伝えした結論へと至ったのです。

             

             結果として『第二幕』にも改善すべき点がありました。私どもの力不足のために、このような変化を必要としてしまい誠に申し訳ございません。しかし本作が段々とつまらなくなっていく可能性を予見したにもかかわらず、そこにメスを入れないということは私にはできませんでした。どうかこの変更が必要なものであり、より魅力的な未来をつくるためのものであると同意して頂ければ、この上なく嬉しく思います。

             

             これで2本目の記事も終わりになります。3本目の記事ではそれらを踏まえた今後の製品計画や、本作をより魅力的にするために私どもがどう変化するのかをお伝えいたします。