『桜降る代の神語り』第63話:影の中枢へ

2018.09.07 Friday

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     闇昏千影らのひとつの戦いが終わった以上、もうひとつの戦場へと舞台が移るのは必然だ。
     しかし、先程垣間見せた危機……そこから物語を紡いでも難解に過ぎるというものだろうね。

     

     ここはひとつ、時を遡るとしよう。
    闇昏千影らが研究所へと潜入してからおよそ一刻ーー天音揺波らが瑞泉城へと到着したそのときから始めるとしようか。

     


     空に、怪鳥が舞っていた。
     立派な双翼を生やしたヴィーナは、揺波たち五人を乗せて夜の空に威容を示していた。とはいえ、人気の少ない河の方角から飛んできたこともそうだが、非常識極まりない謎の飛翔物相手に地上が騒がしくなるということはなかった。
    だが、誰もが見間違いで済ませようとした怪鳥は、瑞泉城の敷地へと突き刺さるような姿勢で、地面に引きつけられつつあった。

     

    「みんな備えてッ!」

     

     大気を裂く音に負けじと声を張り上げるサリヤに、ぎゅっと抱きつくジュリア。後部の臨時座席に残りの三人がしがみついている状況だが、地面への進入角度の深さは軟着陸とは程遠い。
    もはや激突待ったなしの状況で、真っ先に飛び降りたのは揺波だった。そこに顔を青くした千鳥と佐伯が続き、各々土に塗れながらも大地に立つ。
     そして僅かに遅れ、ガンッ! とヴィーナの車輪が地面に打ち付けられた。

     

    「……っ!」

     

     着地の衝撃は、間に合わせでしつらえた後部座席を破壊し、勢い余って地面に着いた翼の先端をばらばらにしてしまう。しかし、乗っていたサリヤとジュリアが投げ出されることもなければ、ヴィーナ本体はサリヤの求めに応じて、きぃと叫びながら車輪の回転を必死に押し留めており、あっという間に速度を減じさせていた。

     

    「大丈夫だった!?」

     

     瞬く間に体勢を立て直したヴィーナを駆り、生身で降りた三人の下へと近寄る。ジュリアは衝撃に頭を揺らされたようで、サリヤの背中でややぐったりとしていた。ガシャリ、ガシャリ、と軋みを上げながら、翼が元の位置に格納されていく。
    最も土汚れの少ない千鳥が、冷や汗をかきながら、

     

    「あの、なんというか、もうちょっと優しい感じに着陸とか、できたら嬉しかったなーなんて……」
    「ごめんなさいね。ここまでの運用をしたのは初めてだったから……」
    「あ、いや……! みんな無傷みたいだし、それだけで十分ですよ! こうして、予定通り城に乗り込めたわけだし」

     

     そう言う千鳥が見上げるは、敵の居城であった。
     一行が降り立ったのは、城へと続く門の前の広場であった。塀に囲まれているという圧迫感こそあるが、人間を百人単位で並べられそうなほど広い空間だ。今は衛兵の類の姿は見えず、降り立った五人だけである。

     

    「すぐに誰かが駆けつけてくるでしょう。急がないと」
    「ですね。目の前に降りられてよかっーー」

     

     佐伯の言葉に同意する揺波であったが、突然その言葉を自ら遮った。
     そして佩いた刀に手をかけると、

     

    「……! 避けてッ!」

     

     

     短い警句を発し、遮二無二その場から離れようと駆け出した。他の者も、揺波に従って即座に散開する。急発進したヴィーナの唸り声だけが、一行から上がった悲鳴のようだった。
     揺波が感づいた現象は、足元から発露していた。地面に落ちた夜闇から溢れ出した影色の茨が、生ある者を中に引きずり込もうとするように揺波たちに追いすがっていたのである。

     

    「な、なんだこれ……!?」

     

     塀の上に退避した千鳥は、それでも延々追ってきた茨がようやく諦めた様子を見て、不本意にも荒げた息を整える。
    結果として、茨に飲まれた者はいなかった。走って振り切ることができる程度には、この空間が広かったのも幸いだっただろう。斬っても手応えのないそれに、揺波もひたすら距離を取る他なかった。

     

     と、唐突に湧いた敵意ある現象に喘ぐ中、佐伯の口からこぼれ落ちたそれは、絶望であった。

     

    「最悪だ……」

     

     彼の視線の先にあるもの。
     それは、影だった。
     薄く開いた大きな門から、身を滑り込ませるようにして姿を晒していたのは、人の形をした影に灰をかぶせたような少女。その特徴はもとより、夜闇の中にあってなお、門の篝火に淡く照らされてもなお、目を離すことができないほど重くのしかかる圧は、彼女の正体を皆に悟らせる。

     

     ウツロ。瑞泉に与する、強大なメガミ。
     作戦中最も恐るべき障壁が、今ここで現れたという事実に、揺波たちは息を呑んでいた。

     

    「うそ、だろ……だって……」

     

     呆然とする千鳥。ウツロという大きな脅威に対しては、オボロが何かしら対処の手配を進めているはずだった。だが、札がまだ切られていないのか、それとも無駄だったのか、判然としない中でなおさら後ずさる足を止めることはできない。そしてそれは、サリヤの乗るヴィーナもまた同様だった。
     初めてメガミの威圧感に晒されたサリヤは、背中の主をウツロから隠すよう、咄嗟に向きを変えながら後退させた。自然と佐伯に並ぶ形となったが、彼は小さく震える指先で眼鏡の位置を直していた。

     

     存在するだけで気圧されるというのに、とつ、とつ、と歩いて向かってくるウツロの姿は悪夢でしかない。不幸なのは、これが現実の出来事ということ。一同は恐れから、それぞれ得物を構える。


     あとはただ、蹂躙の開始を待つばかりーーそう、誰もが覚悟していた。
     たった一人を除いては。

     

    「天音……!?」

     

     驚愕する千鳥の視線の先で、揺波は彼とは逆に、一歩を踏み出していた。
     千鳥が声を上げた理由はそれだけではない。
     揺波の刀は地面を向き、戦いに挑む気迫は欠片も見当たらなかったのだ。

     

    「ウツロさん、ですよね」

     

     静かで、およそ敵に対するものとは程遠い、語りかけるような声色。その誰何に、ウツロは立ち止まり、ややあってから僅かに首を縦に振った。
     以前とは違い、少しでも反応があったことにほっとした揺波は、

     

    「あのときは、結局答えてくれませんでしたね」
    「…………」
    「どうして、こんなことに手を貸しているんですか?」

     

     古鷹の舞台での邂逅。そのときに投げかけた疑問を、もう一度繰り返す。

     

    「そんなこと訊いてる場合じゃーー」

     

     やきもきしていた千鳥が一見無駄な揺波の行いを止めようとするが、それに佐伯が静止の手を向ける。揺波はそんな彼らに目礼する。
     その様子も、ウツロはただ黙って眺めるだけだった。
     揺波はさらに、言葉を重ねる。

     

    「ウツロさんが瑞泉に手を貸す理由だけが、どうしても分かりませんでした。酷いことを喜んでやっているようには見えない。でも、嫌々従ってるようにも見えない……ぽわぽわちゃんも、わたしも、ウツロさんが悪いメガミだとは感じられないんです」

     

     自らの内に宿る幼きメガミと意志を共にするように、緩く握った左手を胸に当てる。
     そして、真っ直ぐな問いを、彼女へ向ける。

     

    「ウツロさんは……何が、したいんですか?」

     

     それが、揺波がウツロを知るための道の途中、何故、を考えた果ての行き止まりにあった疑問だった。
     じっ、とウツロは変わることなく無感情なまま、揺波を見返していた。
     はっきりと。己に向いたその意志を、揺波の瞳の中に見出すように。

     

     ただ、それも長くは続かない。
     揺波から目をそらしたウツロは、そのまま目を伏せてしまった。初めて揺波が目にした、もっともらしいウツロの意志であったが、なんと声をかけたらいいものか迷ってしまう。
     と、

     

    「……ない」
    「え……?」

     

     闇に溶け込んでしまいそうな小さな声を、揺波の耳が捉えそこねた。
     ウツロは目線を落としたまま、今度はもう少しはっきりと、言葉を作った。

     

    「私は、ないの。何も、ない。空虚。私がしたいことは……何もない」
    「何もない、って……」

     

     予想外の答えに詰まる揺波。
     しかし、「でも」と続けたウツロは、前掛けの端を甘く握りながら、

     

    「負けたらだめ。それだけは、感じる」

     

     相手や具体性に欠けた物言いに、揺波は戸惑いながらも問いを重ねていく。

     

    「負けたら、って……何に、どうして……?」
    「分からない。でも、私が言ってるの」

     

     何故だろうか。ウツロの示す自身は、どこか自分とは違う誰かを指しているように聞こえた。

     

    「負けるのは嫌。負けるのは怖い。もう……私がなくなるのは、嫌……!」

     

     

     ぎゅっと、その手が握りしめられる。それは、今までの彼女の態度からは想像できないほどに強い、感情の発露と言って相違なかった。
     万人を恐れさせる側の存在が、恐れを抱いている。その事実は成り行きを見守っていた佐伯からして感覚を裏切られたようで、眉をひそめて疑いの視線をウツロへと注いでいた。

     

     一方で、揺波が作ったのは、笑みだった。
     分かりあえるものが見つかったという、安堵の笑みだ。

     

    「負けたくない……分かります。わたしも負けるのは嫌です。今までずーっと、決闘で負けてきませんでした。これからもずーっと、勝ち続けたい……負けたときのことなんて考えられないくらい、わたしも負けたくなんてないです。一緒ですね」

     

     共通項を頼りに、対話を続けていく。ウツロへの理解の先には、手と手を取り合う未来だってありえる。現状の悲惨さを憂う気持ちはもとより、ホノカと交わしあったウツロへの印象は、瑞泉に与しないよう説得できる可能性を無視できるようなものではなかった。
     だが、

     

    「……話しすぎた」

     

     緩く頭を振ったウツロは、拒絶を形と成した。
     飲み込まれそうな敵意と共に、彼女の手に影の大鎌が現れたのだ。

     

    「だから、ここでも負けられない。……消えて」
    「……わたしだって、負けませーー」
    「馬鹿か天音! 貴様が張り合ってどうする!」

     

     今度こそ、佐伯が揺波を止めに入った。勝ち負けが示す結末を想うまでもなく、付け加えられた物騒な台詞は武器を構え直す理由としては十分すぎた。
     経緯も理由もどうあれ、目の前のメガミは敵。
     結局、その現実は変わらなかったのだ。
     そして何より、ここはまだ大命を遂げるための道中なのである。

     

    「そ、そうだよ! ここで天音が消耗しちゃうのは流石にまずいだろ! 瑞泉のために温存させないと……」
    「で、でも……」

     

     千鳥の意見は、ウツロ相手に足止めを買って出ることを意味している。
     逡巡する揺波であったが、サリヤたちも千鳥に追随するように、

     

    「ユリナちゃん、ここは私たちに任せて!」
    「先行ってクダサイ! ダイジョブです!」

     

     計画通り、最も高い戦力を誇る揺波を大将の下へ送るべく、戦闘能力を持たないジュリアでさえも、重圧に負けないようウツロに敵意を向ける。
     揺波の逡巡は、大局に向け直された意志に飲まれ、消えていった。

     

    「はいっ……!」

     

     ウツロから大きく距離を取るように、門へと駆け出す揺波。幾ばくかの名残惜しさを覆い隠すように、警戒心を最大にまで高める。それを援護すべく千鳥たちは身構えた。
     けれど、千鳥の構えた苦無が、宙を裂くことはなかった。
     ウツロは、動かなかったのだ。

     

    「え……」

     

     不思議に思いながらも、無傷で門の向こうへと消えていく揺波。
     それを背に見送ってか、ウツロは残る四人に向き直る。

     

    「アマネユリナは、いい。でも、あなたたちは、通せない」

     

     門を遮るように立ち位置を変えた彼女は、その体躯とは対照的に、圧倒的な存在感を持つ門番と化した。

     

    「忍、覚悟は決めたか?」
    「なーに、これでも子供の扱いは慣れてるんだ、任せてくださいよ」

     

     煽る佐伯も、軽口を叩く千鳥も、謳われしメガミを前にして口は全く笑っていない。
     それはサリヤも同様だったが、ジュリアだけは心なしか口端が歪んでいた。

     

    「サリヤ、出し惜しみムヨウです!」
    「はい……! ――I AM THE SERPENT, I CURSE YOU...」

     

     サリヤの操作に応じるように、光を孕むヴィーナ。先程までのように翼を生やすのではない。光に包まれているのはヴィーナの前半分と後部座席である。
     うつ伏せになった人間が膝立ちになるかのように、前輪が軸を折り曲げるように中心にまで移動し、代わりにサリヤたちの座席が鎌首をもたげるかのように持ち上げられる。そして後部座席は、爬虫類を思わせる尻尾のように伸ばされていく。

     

    「TRANSFORM FORM:NAGA!!」

     

     宣言と同時、突き出た操縦席の前面が、双眸のように赤く光る。

     

    「…………」

     

     しかし、それでもウツロは動じることはなかった。
     戦力にして、一柱対三人。
     どれだけ武装を揃えようとも、その対比が意味するものは、無謀。

     

    「ん……」

     

     ウツロの手にした鎌が、希望を刈り取る形となって、四人に向けられる。

     

     

     

     

     


     抜刀したまま城内を進む揺波だったが、その刀が振るわれることはなかった。
     人が、いないのだ。

     

    「こっちかな……」

     

     気配がないわけではない。けれど、敵陣に突入した段階になって、行く手を阻む者が一向に現れないというのは不気味ですらあった。来たこともない大きな城ということもあり、差し込める月明かりといくらかの行灯だけという薄暗さも相まって、抱えていたはずの強い意志が端から少しずつ削れていくようだ。
     上階にいると目される瑞泉は、襲撃を冷静に受け止めている節があるように揺波には思えた。ウツロが通してくれたこともそうだが、どうにも誘われているようでならないのである。

     

     揺波を招き入れる理由ははっきりとしている。揺波が宿すホノカーー瑞泉曰く、ヲウカの力を手に入れるためだ。彼が古鷹の亡骸を前に語った内容は、未だ揺波の中で消化しきれていないものの、彼の究極の目的のために必要とされていることだけは理解している。
     万全の状態で瑞泉と会敵できれば最上だ。けれど、たとえそれが叶ったとしても、だからこそ一筋縄ではいかないような気がするのである。

     そんな不安を抱きながら、階段を一つ上りきったときである。

     

    「ようこそ、天音の娘」
    「……!」

     

     いきなりかけられた声に、咄嗟に刀を向ける。
     その先ーー大人が二人、並んで両腕を広げてもなお余裕がありそうな廊下に、枯木のような老人がぽつんと佇んでいた。薄闇ということもあって、どきりとしてしまう光景である。
     紋付袴姿の彼に、揺波は見覚えがあった。ただ、大家会合で見たことがある、というところまでしか思い出せず、次第に眉をひそめていく。
     そんな彼女の様子に、かか、と笑った老人は、

     

    「まともに覚えとらなんだか。ーー儂は瑞泉海玄。息子の驟雨が世話になっとる」
    「あ、はい……天音揺波です」

     

     一応名乗り返す揺波は、少しばかりやりづらさを覚えていた。
     海玄は、確かに彼女の行く手を阻むように立ちはだかっている。けれど、今にも飛びかかってきそうな気迫は感じられない。しかし一方で、それをただ、老人だから、の一言で済ませられない剣呑な空気だけが、揺波に刀を構えさせている。

     

    「あの……通してもらえたりは……しませんか?」

     

     ウツロの例もあり、期待がなかったかというと嘘になる。
     ただ、海玄はその問いをまるっきり無視し、

     

    「儂はな。これでもメガミ様は敬うべき存在だと思うとる」
    「え……」
    「なんだその意外そうな顔は。まあ、言いたいことは分かる。驟雨のやつがやっていることは、罰当たりも甚だしい。メガミ様に害をなすなぞ遺憾の極みよ。よもや儂がそれに加担する日が来るとは思わなんだ」

     

     だが、と海玄はほくそ笑んだ。

     

    「儂は敬虔なメガミ様の信徒である前に、一人の父親だ。息子が野望を成り遂げようとしている姿を、どうして夢見ずにいられようか!」
    「な……!」

     

     絶句する揺波。その価値観の差は、嗤う海玄との間で明白だった。

     

    「そ、そんなことでみんなを……!」
    「そんなこと? おぉ、おぉ、よりにもよって天音の者に謗られるとは。近年稀に見る野心家だった天音がなあ」
    「わ、わたしは、別に……」

     

     否定する揺波に、海玄は口端を吊り上げる。

     

    「何も揺波、お前さんのことを言ってるわけじゃあない。今は父親の話をしているんだ。……そう、時忠殿だ。ある意味、あやつも儂と同じだったと思わないか? 野心はあった、だがそれ以上に……揺波、お前さんの才能に夢を見ていたんだよ、あれは」
    「違う……お父様を、あなたたちなんかと一緒にしないでっ!」
    「くかかかっ!」

     

     挑発だということは理解できていた。けれど、海玄の言葉に真意しか含まれていないこともまた、理解できてしまっていた。
     もはや言葉を交わすことは無意味だった。ウツロにはまだ希望があったが、海玄は違う。あまりに違う方向を向いている以上ーーいや、自身というものを横に置いてなお、瑞泉驟雨が目指す先を見ようとしている以上、戦いは避けられそうにない。

     

     しっかりと、切っ先を海玄へと向ける。いかに枯れた身体であろうとも、若手のミコトをなぎ倒す老齢のミコトなんて珍しくもないのだから、見た目で油断することはできなかった。
     けれど、海玄はその構えに待ったをかけた。

     

    「奥の手、あるんだろう? 使っておいたほうが懸命だと思うが」

     

     そう言うと海玄は、羽織を脱ぎ捨てる。
     その下に現れたのは、両腕に取り付けられた複製装置であった。骨ばった腕のせいで、まるで歯車が回るたびに活力が吸い上げられていっているような錯覚に陥る。

     

    「こいつはな、複製装置<雫>と<滅>ーー儂が宿していたメガミ様の力を引き出してくれる」
    「自分の……メガミを……」
    「そうだ。故に、その力の使い方は熟知しておる。くれぐれも、古鷹の芸人風情とは比べてくれるなよ」

     

     そして、と継いだ彼は、

     

    「双方がメガミの力を借りれば、それはもう桜花決闘に違いあるまいて。仕合いたいのだろう、お前さんは。その望みを叶えてやろうというのだ。もちろん、勝てば道を譲ってやろう。メガミの力も使わぬ小娘に、できるとは思えんがの。くくく」
    「っ……」

     

     歯噛みする揺波に、実質的に選択権はなかった。複製装置を使う相手に、メガミの力抜きで戦うのはあまりに厳しい。むしろ、戦闘中にどうやって使うか、という駆け引きの手間を省いてくれただけ、有情とも言える。……神代枝が、貴重な物資であることを除けば、だが。
     全てを分かった上で、彼は使用を強いている。
     そんな、自分の預かり知らぬところで整えられた舞台で行う決闘に、揺波は既視感を覚えてしまっていた。

     

    「ザンカ……ぽわぽわちゃん……お願い」

     

     言われた通り、神代枝を砕く。普段遣いの刀を納め、手に握り込むのは斬華一閃。その肉厚の刀身を掲げ、この決戦の地で唱えるはずのなかった誓いを口にする。

     

    「天音揺波。我らがヲウカに決闘を」
    「瑞泉海玄。我らがヲウカに決闘を」

     

     神座桜があるはずもない暗い城内で、異例の桜花決闘が幕を開ける。

     

     

     

     

     


     先に動きを見せたのは、海玄であった。一方で、彼の足は止まったままである。

     

    「…………」

     

     静かに様子を伺う揺波の視線の先では、一抱えほどもありそうな水球、そして不吉な予感を禁じ得ない黒い霧が、海玄の周囲を固めるように宙に揺蕩っていた。
     一歩、また一歩。じりじりと距離を詰める。
     水球は三つに増え、黒い霧も範囲を少しずつ拡大しつつある。そんな中、単身飛び込むのは蛮勇というものだ。
     故に、

     

    「む……」

     

     揺波は斬華一閃を手放し、虚空を掴んで振り抜かんとする。光と消えた刀の代わりに彼女の手に収まっていたのは、薄暗い廊下を照らすように淡く輝く桜色の旗だ。

     

    「やッ!」

     

     振るわれた旗は、その軌跡から煌く流れを生み出した。その輝きの一粒一粒は桜花結晶そのものである。
     勢いよく送り出された桜吹雪は、主の手の届かない間合いで泰然と構える海玄へと迫り、守りの一つであった水球がその身代わりとなって弾けた。
     ただ、それを攻撃の皮切りとしたところで、海玄の次の動きに虚を突かれる。

     

    「ふん……!」
    「……!」

     

     海玄は、顔をしかめながらも前へ踏み出したのだ。
     距離を保ちながらの戦いを志向するとばかり考えていた揺波は、さらに警戒心を高めながらも同じく前進を選んだ。

     

    「ほぅれ」

     

     その僅かな動揺を押し広げようと、海玄が浮かべていた一つの水球を源にして、鉄砲水が猛々しく揺波へと襲いかかる。
     揺波の勘は、足を止めてはならないと叫んでいた。後ろへと回避するのではなく、選択したのは防御だ。手首で旗を小さく振り落とし、生じた軌跡の光によって水流を防ぐことで進路を保つことで、さらに一歩二歩と間合いを詰めていく。
     得手とする距離に入った揺波の手に、再び斬華一閃が握られた。

     

    「や、ぁアッ!」

     

     浅く飛び込むような踏み込みと共に、鼻先をかすめるような斬撃が放たれる。近距離戦での先手をまず取りに行くような、流れの礎となる牽制じみた一撃だ。
     これに海玄は一歩足を引き、その身を黒い霧の中に隠すように躱した。近くで見る霧は意外なほどに濃く、手応えがないことだけが、有効打にならなかったという事実を教えてくれた。

     

     それでも、刃の届く範囲を脱されたわけではないことは、隠しきれていない足元が保証していた。
     だからこそ揺波は、霧の危険性を承知で、二の太刀を浴びせにかかった。
     不吉さを薙ぎ払うような、一閃ーー

     

    「はッ……!」
    「ぬ、ぅ……!」

     

     命中した。
     手応えは、間違いなく海玄を捉えていた。
     このまま何もさせずに押し切る……そう、意思を固めたほどには、気持ちがいいくらいの快打であった。

     

     だが……次の手を繰り出そうとする揺波の視界に、異物が映った。
     ばしゃり、と。床を濡らす水の音だけであれば、海玄の操る水のせいだと無視することもできただろう。
     その場で踏ん張る海玄の足元に、撒き散らされたソレ。

     

    「ぇ……」

     

     赤。
     この満足に明かりのない廊下でも分かる、鮮やかな赤。
     本来、桜花決闘では目にすることがない、赤。
     気づかなければ、そのまま連撃も成せていただろう。
     気づいてしまったからこそ、一刀を振り切ったところで、揺波は固まってしまった。

     

     それが、海玄の血であることに。
     相手には、身体を護る桜花結晶が、ないということに。
     この戦いはーー誓いが空虚になるほどの、偽りの桜花決闘だということに。

     

    「ひ、ひっ……」

     

     ぬるり、と。
     額に脂汗を浮かべた老骨が、黒い霧の中から姿を現した。生身の脇腹が受け止めた刃を頼りにするように、傷がさらに深くなることも構わず、揺波の懐へと潜り込む。
     いつの間にか、その手には立派な簪が一つ。
     まるで、その一歩を踏み出させた歪な執念が宿るように、黒い霧をまとった簪の切っ先が、揺波の胸を指し示す。
     老人に、嗤う骸骨が重なって見えたような気がした。

     

    滅灯揺灯 ほろびのゆらりび

     

     

     迷いのない一突きが、揺波の心臓を貫いた。

     

    「あ……がッ……!」
    「くく……くひひ……ひひぁ……!」

     

     今まで受けたことのない衝撃と激痛に、頭が真っ白になる。脂肪も、肉も、骨も、本来それを守るはずの部位の悉くを無視し、心臓への一撃という死への誘いを成就させた海玄は、叩き込んだ死を示すかのように不吉に嗤う。
     ただ、彼が返り血を浴びているということはなかった。
     人間としての守りを全て突破されようとも、揺波は今、少なくとも彼女自身は、桜花決闘の場に相応しい力を携えている。体内の桜花結晶が、死に至る刺突を肩代わりしたために、揺波の肉体は無傷のままであった。

     

     死を想起させられた彼女は、自身の状況を理解して、さらに冷や汗を流した。
     あと一つ。それが、体内に残った結晶の数だった。
     二度目など、当然許されるはずがない。

     

    「は……あぁッ!」
    「がッ……」

     

     簪を押し込み続けようとする海玄を、打ち払うように刀を引いた。死を運んだ老人には、もうそれに抗うだけの力は残されていなかった。

     

    「……!」

     

     上段に構えようとしていたことに気づいて、揺波はその手を止めた。
     たたらを踏んだ海玄は立っていることもままならず、膝から崩れ落ち、そして倒れ伏した。飛び散った血が、彼の粘つくような感情を代弁するように、揺波の脚に着いた。
     顔を狂喜に歪ませたまま、海玄は床に命を吐き出すだけの物と化した。

     

     下ろした斬華一閃の先から、ぽた、ぽた、と先程まで彼の中で巡っていた血が滴り落ちる。
     整えられた舞台は、その既視感通りに再演を終えた。まるで演者の亡霊が、ゆめ忘れるなと彼女に悲惨な結末を見せつけているかのようだった。彼がそんな人間ではないとは分かっていても、血溜まりに倒れる姿に幻視するなというほうが無理だった。

     

     手の震えに、刃先に溜まる血が小さく波を打つ。
     ぎゅっと、揺波は胸を押さえた。

     

     

     

     


     上へ、上へ。
     それが本当に正解かも分からないのに、ただひたすら上を目指した。
     障壁はもはやなく、これが奇襲の効果だとすれば作戦の妙に喜ぶべきだが、不自然なまでに人気のない城に、捨て身の狂気に晒されたということもあって、揺波は奇妙さに息苦しさをやや感じていた。
     引き込まれている。後戻りも許されないよう、手を、脚を、見えない手が掴んでは奥に連れ込もうとする。そんな不気味な不可視の意志に後押しされながらの行軍に、不安を覚えないというのも無理な話であった。
    けれど、引きずり込まれきったその先で、不安は無用なものとなる。

     

     階段を上った揺波は、開け放たれたふすまの向こうに、この階唯一にして最大の部屋を認めた。
     他に廊下の類は見受けられず、最上階に違いない。ただ、現れた部屋は、地上から見上げるほどの高さにあるというにはあまりに広い。畳敷きのそこは、決闘をするにもなお余裕のある、無駄な空間を作っている。

     

     特筆すべきは明るさだ。火を用いた灯りは一切ないというのに、この夜の最中にあって、夜明けを思わせるほどに視界は明瞭だった。仄かに桜色めいた光に目を移せば、城と肩を並べる巨大な神座桜の結晶たちが、一方の壁一面に大きく誂えられた、雲のような曲線形の窓の向こうに覗いていた。他方から差し込める月明かりが、誰も居ない廻縁を照らしている。

     

     そして、その最奥。
     逃げも隠れもせず、彼はそこにいた。
     戦場にふさわしくない堂々たる態度が、しかし揺波には妙な納得感をもたらす。

     

    「ようこそ」

     

     瑞泉驟雨。
     打倒すべき元凶。
     脇息にもたれかかり、余裕ある笑みを浮かべた彼は、ただ一言、現れた揺波を歓迎した。

     

     

     

     


     ウツロを仲間に任せ、瑞泉海玄を打破し、ついに天音揺波は瑞泉驟雨と相対することになった。
     そう、まずは作戦は成功といってよいだろう。こうして、英雄は敵将と向き合うこととなったのだからね。

     ただし、天音揺波はもはやただ一人。そして、この状況を望んだのが天音揺波たちの方だけとは、限らない。

     さあさあ、いよいよ今こそが真価が問われる大一番だ!
     この戦いの趨勢を決める、一大決戦に括目あれ。

     

    語り:カナヱ
    『桜降代之戦絵巻 第五巻』より
    作:五十嵐月夜  原案:BakaFire  挿絵:TOKIAME

     

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    コラボカフェ期間変更のお知らせ

    2018.09.04 Tuesday

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       こんにちは、BakaFireです。いつも『桜降る代に決闘を』を楽しんで頂き、誠にありがとうございます。このようなことでブログを書かなければならないことを大変悲しく思いますが、あなたにお伝えしなくてはならないことがあり、筆を執らせて頂きました。
       
       ボードゲームカフェ・ムスビヨリ様にて開催中のコラボカフェにつきまして、重要な告知を行わせて頂きます。

       

       この度、ムスビヨリ様を運営している創作集団タルヲシル株式会社様のSNS上での騒動を受けまして、本作を遊んで頂いている方々から、コラボカフェの利用やイベントへの参加を躊躇し、不安を感じる声を受け取っております。

       

       この現状を踏まえ、創作集団タルヲシル株式会社様とのコラボカフェについての話し合いの場を設けました。そして上記の理由や、地理的な理由でイベントに参加するつもりのない方までもが不安を覚えてしまっているという現状を強く憂慮し、コラボカフェの開催期間の変更と、予定されていたイベントの会場変更を行うことを決定いたしました。

       


      コラボカフェ開催期間の変更

       

       当初、9月24日(日)まで開催予定であったコラボカフェにつきましては、9月10日(月)の営業をもって、終了とさせて頂きます。約一週間の猶予期間は、この記事に気づかずにお越しいただいた方が楽しめないという事態を、可能な範囲で減らすためのものです。

       

       9月10日(月)までの営業期間は、通常通り、コラボメニューの提供、限定コースターの配布を継続いたします。

       

       また、コラボカフェにて配布しておりました「限定コースター」は例外的に限定という枠組みを外すことにします。これらのコースターはBakaFire Partyが買い取った上で、今後なにかしらの方法で入手頂けるよう検討しております。

       

       同様に現在メニューに含まれている「集中力クッキー」も同様に買い取り、イベントへの参加賞などの形で活用していく見込みです。

       

       

      「中間祭:縁結ぶドラフト大会」開催場所の変更

       

       9月8日(土)に開催を予定されていた「中間祭:縁結ぶドラフト大会」につきましては開催場所を変更し、行わせて頂きます。現在はイベントページは変更済みの上、参加予約をされた全ての方にはメールをお送りしております。

       

      東京都台東区東上野4-10-1 浅野ビル1F
      上野入谷口会議室
      開始時刻:13:00
      参加費:1500円(カフェの場合の参加料と同額です。コラボメニューが注文できない代わりにランダムなコースター3枚と集中力クッキーが参加賞として付属します)

       

       コースターと集中力クッキーにつきましてはBakaFire Partyが買い取りましたものの中から、本イベントへの参加賞として配布させて頂きます。

       

       

       BakaFire Partyといたしましては、創作集団タルヲシル株式会社様の一連の騒動につきましては完全な第三者であるため、中立の立場を取ることは変わりありません。
       
       しかしながら、この度の騒動における創作集団タルヲシル株式会社様の言動は私どもの信頼を失わせるには十分なものであり、また私どもの作品を遊んで頂いている皆様に強い不安を与えるに足るものだと判断いたしました。
       
       この騒動の決着がつかないままコラボカフェを継続することは、遊んで頂いている皆様が本作を心から応援し、楽しみづらくしてしまうと考え、この度の措置を取らせて頂くことにいたしました。

       

       急な変更となってしまい、大変申し訳ございません。イベントへとお申込みいただいた方、参加を検討してくださった全ての方に重ねてお詫び申し上げます。ご理解、ご容赦を頂ければ幸いです。

      2018年9月禁止改定

      2018.09.03 Monday

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         私どもはバランス調整の宣言と、それに基づく理念(PC版)(スマートフォン版)に従い毎月第一月曜日にカードの禁止改訂を行います。この記事はその2018年9月のものです。禁止カードを出すことそのものについて疑問や不安を感じる方は、こちらよりリンクしている宣言か、それを要約した理念をご一読いただければ幸いです。

         

         

        2018年9月禁止カード

         

        全体で禁止

        Thallya's Masterpiece

         

        トコヨ/ユキヒで禁止

        二重奏:吹弾陽明

         

         これらの禁止はシーズン2の間、即ち11月下旬まで継続し、『第弐拡張』でのカード更新を通して解除されます。

         


         こんにちは、BakaFireです。シーズン2も無事に始まり、新たな環境をお楽しみ頂けていれば嬉しい限りです。今週末には大規模大会をはじめとし、シーズン2をより盛り上げるための今後の展望もお話しいたしますのでご期待ください。
         
         シーズン最初の禁止改訂となりますので、まずは現状の環境への見解をお話ししましょう。
         

         

        シーズン2バランスの現状評価

         

         シーズン1と比べ、シーズン2のゲームバランスや環境は大きく改善したと考えております。
         
         シーズン1には多くの問題のあるカードがあり、それゆえに問題として取り上げられてもおかしくないデッキが多数存在していました(※1)。その上で、そのようなデッキが多すぎたことと、そのようなデッキ同士の対戦ではそれなり以上には楽しめるゲームとなっていたため、禁止は出さない形で進めていました。
         
         しかしシーズン1からシーズン2でのカード更新はそれらの問題の大半を解決し、多くのメガミが輝ける環境を作り出しました。私どもは今回の環境をもって、『新幕』のバランスは『第二幕』の最終段階へとほぼ追いついたと言って良いと感じております。それに加え、インフレーションによる鮮烈な魅力、アナザー版などの新たな試みによる魅力、豊富なデザイン空間を得られており、未来は明るいと感じています。
         
         もちろん、現時点のバランスでもやや勝ち易いメガミと勝ち辛いメガミが存在するとは考えています。しかしこの水準の差は『第二幕』の最終段階でも存在しており、今後のカード更新で整えていけば解決する小さな課題と考えれば十分と捉えております。


        ※1 オボロ/ライラ、サイネ/シンラ、サイネ/クルル、オボロ/クルル、サリヤ関連の全てのデッキなどがそれらの例です。これらのデッキは、環境上に同等のデッキが存在していなければ禁止カードで措置されるべきであったと考えています。サイネ/シンラは特に分かりやすい例であり、オボロ、サリヤ、ライラのバランスがもし適切だったならば、間違いなく禁止カードを必要としたと言えるでしょう。

         


        新たな禁止カードの背景

         

         ここまでは私どもが『第壱拡張』のカード更新や大半の新カードでうまくやり、魅力的な環境を作れたと捉えているというポジティブな見解をお話ししてまいりました。
         
         しかし誠に申し訳ないながら、本日お話ししなければならないのはそれだけではありません。新たなカード1枚のバランス調整に幾ばくかの誤りがあり、結果として問題のあるデッキが1つ生まれてしまったのです。
         
         さらに先述の通り、シーズン1での問題はほとんど解決され、問題と呼ぶべきと捉えられうるデッキはもはやほとんど存在していません(※2)。その結果として数少ない問題のあるデッキが、その問題を強く発揮できる状況が整ってしまっています。
         
         『新幕』のバランスは『第二幕』の最終段階へと「ほぼ」追いついたというのはまさにそういう理由であり、問題のあるデッキへの解決を図らなければ、正しく追いついたとは言えない状況なのです。
         
         それゆえに私どもは、組み合わせを限定した形での禁止カードを1枚出さざるを得ないと判断しました。


        ※2 もしかしたら問題と捉えるべきかもしれないという程度のデッキはいくつか存在しており、私どもはそれらの動向を注視しています。しかし禁止カードが必要なほどとは考えておらず、環境上の有力な選択肢のひとつに過ぎないと捉えています。現時点ではそれらのデッキのために禁止カードを出す可能性は高くないと考えていますが、10月の禁止改訂で判断を覆す可能性もまた存在しています。

         

         

        どのような問題が起こったのか

         

         問題となるデッキはアナザー版である「旅芸人」トコヨとユキヒを組み合わせたクリンチロック型のコントロールデッキです。具体的な動きは、「二重奏:吹弾陽明」を使用し、毎ターン「ふりはらい/たぐりよせ」「ひきあし/もぐりこみ」「要返し」「ふりまわし/つきさし」の中から必要なカードを戻し、間合0近傍を維持し続けるというものです(※3)。


        ※3 相手によっては傘を閉じたうえで「跳ね兎」などを戻し、間合5近傍を維持する方向で立ち回ることもあります。


         このデッキの問題は以下の4つに整理できます。それぞれ説明しましょう。
         
        1:強力である。
        2:相性が極端すぎる。
        3:本作の王道を否定し過ぎている。
        4:感情面での問題が生まれがちである。


        1:強力である。

         

         禁止の必要性を判断する大前提として、このデッキは十分に強力です。しかし他のデッキの全てを打倒し、環境の唯一の正解になるほどではありません。それ以外の問題も組み合わせて考える必要があります。
         
        2:相性が極端すぎる。

         

         このデッキの弱点は分かりやすく、シンラかクルルを使用すれば大体の場合は五分以上のゲームを行えます。しかしそれらを宿していないデッキはほぼ必敗であり、豊富すぎる間合のコントロール手段に押しつぶされることとなります。
         
         これはゲームをメガミを公開した時点で決定づけすぎてしまい、特に大会などのイベントではゲームの魅力を著しく損ねてしまいます。
         
         どのような組み合わせにも、相性は必ず存在し、それは否定すべきではありません。しかし、このデッキのように極端すぎる場合は問題として取り上げるべきでしょう。
         
        3:本作の王道を否定し過ぎている。

         

         2で説明した必敗のデッキとは即ち「間合を合わせて攻撃する」デッキ全般のことを指します。つまりこのデッキは本作の王道にあたるデッキに対して強力過ぎるのです。
         
         これは本作の本作らしい部分に楽しさを感じて頂いたプレイヤーの方に取って苦しすぎる環境を作ってしまいます。特に本作を始めたばかりの方の多くはそういった戦い方こそが全てであり、それを圧倒的な相性で潰される体験は心地よいものとは言えないでしょう。
         
        4:感情面での問題が生まれがちである。

         

         このデッキはロック寄りのコントロールであるために勝利まで時間がかかり、延々と同じ動作を繰り返し続けるという特徴があります。こういったデッキは対戦相手に強い不快感を与える恐れがあり、こちらについても始めたばかりのプレイヤーへの悪い影響を懸念するに足る問題だと言えるでしょう。
         
         『第二幕』での「審美眼」を禁止しようとした際の失敗を反省しているため、私どもは不快感だけを理由にカードを禁止することは絶対にありません。しかし今回のように1や2の問題がまずある場合は、3や4はそれを後押しする副次的な理由として働くべきと考えています。
         
         
        なぜ組み合わせ単位での禁止なのか

         

         「Thallya's Masterpiece」が全体で禁止であるのに対し、「二重奏:吹弾陽明」はなぜトコヨ/ユキヒだけでの禁止なのでしょうか。そちらについても説明いたします。
         
         「Thallya's Masterpiece」は「Form:YAKSHA」との組み合わせにより、サリヤ単独での高い自己完結性を持っています。ゆえにこのパッケージが存在する限りはサリヤを用いた組み合わせが環境の正解となり続けてしまう恐れがあります。これを解決するにはパッケージそのものを崩すしかありません。
         
         他方で「二重奏:吹弾陽明」はカード更新で整えるべき点こそありますが、環境に君臨するほどの強さは持っていません。トコヨ/ユキヒ以外のデッキでも有力なものはありますが、いずれもいくつかの欠点や不器用さを抱えており、大きな問題と呼べる水準のものは見つかっていません。
         
         それどころか、環境の多様性にも一役買っています。現在、ビートダウンやコンボでも強力なデッキは多数存在していますが、コントロールを好むプレイヤーが強力なコントロールデッキを使う権利もまた当然あってしかるべきです(※4)。
         
         「旅芸人」トコヨは強力なコントロールデッキの一柱として高い存在感を発揮できており、彼女を軸にしたコントロールデッキは環境に魅力的な選択肢をもたらしているのです。これらを踏まえると全体で禁止し、彼女を用いたデッキの大半を取り除いてしまうのは最善の選択とは思えません。
         
         以上より、問題であるトコヨ/ユキヒに限定した禁止を行わせて頂くことにしたのです。


        ※4 これはシーズン1において成し遂げられておらず、大きな失敗だったと私どもは捉えています。

         


        お詫びと今後の改善策

         

         最後に、今回の私どもの失敗についてお話しするとともにお詫びを行い、今後の改善策をお話しします。
         
         今回の失敗は、単純に私どもバランス調整チームの力不足というほかありません。シーズン1における攻撃的な環境とトコヨの弱さに感覚を麻痺させられてしまい、「二重奏:吹弾陽明」の強力な使い方に気づくことができませんでした。私どもの力不足を反省し、お詫び申し上げます。
         
         改善策については、先月お伝えした「Thallya's Masterpiece」の禁止の際の改善策と同様のものを今回も提示いたします。「次の拡張に向けたカードのバランス調整」と「カードの更新」の両方を1つのチームで見ようとしたため、両方に中途半端な部分があったことは否めません。
         
         現在はバランス調整チームは次の拡張を集中的に見るようにして、カード更新についてはバランス調整チームは軽く意見を出す程度にとどめ、ゲストテスターの意見をより深く取り入れられるように手配を進めています。

         


         本日は以上となります。次回の禁止改訂は10月1日(月)となります。上記の※2にある通り、私どもはいくつかのデッキへと注目を続けているため、そちらへの最終的な結論をご報告差し上げることになるでしょう。

        『桜降る代の神語り』第62話:サイネ新生

        2018.08.17 Friday

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           動乱の末、氷雨細音を救出した闇昏千影たち。
           しかもそれだけじゃあない。目覚めた彼女はまさしく異様。その力は要注意とされていた赤面の男ーー五条綴を圧倒するほどだった。闇昏千影一行にとっては、それはある意味最高の誤算だっただろうね。


           そしてそれが計算外だったのは彼女らだけじゃあない。相対する彼女にとっても、同じだったのさ。

           


           メガミとは、人よりも格の高い存在ーー彼女たちの持つ強大な力を、この地の人々は見て、聞いて、触れて、あるいはその身に受け、あるいはその身に宿し、畏敬すべき存在としてメガミを認識する。
           どれだけそのメガミが友好的であろうとも、人々の心の底にその認識が広がっている以上、メガミと対等たろうと振る舞うには限界がある。

           

          「おー……。ーーおぉ……?」
          「…………」

           

           しかし細音は、突き破った隠し扉を挟んで、興味津々といった視線を向けてくるクルルに対して毅然と向かい合っていた。

           


           クルルが千影の持つ滅灯毒に向けていた興味は完全に失せたようで、粘つくような、身体の内側まで観察していそうな泥のような好奇心は、真っ直ぐ細音に注がれている。人差し指をぽかんと開けた口に当てながらという姿であっても、その粘度は以前細音が浴びせられたものよりもなお高い。

           

           間で挟まれている千影が、興味の対象から外れたことに喜んでいられない程度には、クルルの不気味な威圧感は沈黙と共に場に広がっている。
           だが、千影が小刀を握るので精一杯だった本当の理由は、反対側からーーつまり細音から、僅かにでも触れたら断ち切られそうな、そんな薄氷のような刃を思わせる異様な気配が漏れ広がっているからであった。

           

          「うむー……むー、やっぱりホントみたいですねえ。流石にこれを見間違えるほど、くるるんあいは節穴ではありません」

           

           クルルは、「ぱちぱちぱち」と口に出しながら手を叩くと、

           

          「おめでとーございます、にゅーふれんず。あなたはーーくるるんもこれ知りませんけどーーこの世で何番目かに誕生したメガミみたいなんで、とりあえずお名前訊いといてもいいですかね?」
          「め、メガミ……!?」

           

           驚愕し、細音へと振り向く千影。けれど、細音は眉を僅かにひそめながら、端的に己の名を返すのみであった。
           メガミは新たに生まれるものということは人々に知られているものの、その過程は謎に包まれている。しかし、もっともらしく伝承されている数少ない過程に、メガミ成りーーミコトがメガミに成るというものがある。子供でも知っているそれは、昔話の中に盛り込まれるほどの題材であり、常識として刷り込まれているものだ。

           

           けれど、あくまで昔話は昔話。人間だったメガミ本人も実在していこそすれ、実現を目指す者の語り口は夢物語を紡ぐそれと変わらない。何よりその条件も、ヲウカ様に認められるような大業を成す、という具体性に欠けたものしか語られることはない。
           だからこそ、見知るミコトがメガミであると、メガミたるクルルから告げられたことによる衝撃は大きい。

           

           それでも千影が否定の声を挙げられなかったのは、細音の気配に息を呑んだ事実があったからだ。
           ここにいるのは千影の知るミコト・氷雨細音ではなく、メガミ・サイネであるという現実が、千影の中にじわじわと浸透していった。

           

          「さいね、さいね……さいねん、さいねーん……。うん、ばっちりー! ですよ」
          「そうですか……」
          「とゆわけでですね。くるるんとしては、ちょろーっと……いや、がっつりー? メガミ成りした身体がどうなってるのか、調べるのに協力して欲しいのですよ」

           

           目を閉じるサイネに対して、クルルは、えっへっへー、とわざとらしく手を揉みながら、

           

          「もちろん、さいねんじゃないとダメな理由はありますよ? メガミ成りって言いましたけど……たぶんあなた、まだ座には着いてないですよね。神渉装置でふぃっしんしちゃったおかげなんですけど、きっと影響は出てると思うんです」
          「…………」
          「ただ顕現体を調べたいなら、それこそこのくるるんぼでーを使えばいいです。けど、不完全なメガミなんて初めてさんですからね。その差から、顕現体にはどんな感じに本質が詰まってるのか、分かることがあるはずなんですよぅ。だから……ね? くるるん一生のお・ね・が・い、ですから……!」

           

           両手を合わせ、顔の前でくねくねとくねらせながら懇願するクルル。その姿に覚えた気味の悪さの源泉は、他人のことを好奇心を満たす部品としてしか見ていなかったようなメガミが、対等の相手に願い出ているというその光景そのものだった。
           左右に首を振って反応を伺うクルルだったが、そこに小さくサイネが口を開く。

           

          「……ですか」
          「うい? 今なんと?」
          「馬鹿ですか、と訊いたんですッ!」

           

           光を映さない瞳は怒りを湛え、まごうことなくクルルに向けられていた。バキ、と木板の折れた音は、怒声だけでは表しきれない感情が、薙刀の石突に込められて床を破壊した音であった。
           彼女は薙刀の切っ先で、床に転がっている五条を指し示すと、

           

          「そこの男との決闘で私を実験台にしてくれたというのに、一体どの口でもう一度実験台になれと頼めるのですか!? 冗談にしても限度というものがありますよ……!」
          「冗談……? くるるんはいつだって本気も本気ですよ……?」
          「それが、なおさらたちが悪いというのが分からないのですか? 名前も知らないミコトたちを散々いいように使ってきた、あなたのその『本気』とやら……理解に苦しみます」

           

           あっけらかんと返されたサイネは、刃をクルルに向け直す。クルルはどうしてここまで反発されているのか理解に苦しんでいるようで、頬に指を当てながら首をひねっていた。
           今にも踏み切りそうなサイネの勢いに、千影は同じく構えることしかできない。サイネの存在によって生存率は上がったものの、生身の彼女にとってはメガミ同士の衝突などという爆心地に居続けることそのものが看過できない危機である。さりとてその威圧感に口を挟むこともできず、胸の内でひたすら保身の道を探り続けていた。

           

           刺すような敵意が、サイネから一方的に放たれる。
           一触即発の状況の中、入れ違うように隠し部屋に逃げ込もう……そう、千影が腹を決めたときだった。

           

           木板の割れる音が、今度は天井から響いた。

           

          「間に合ったか!?」

           

           天井から千影の隣に落ちてくるのは、クルルによって分断されていた藤峰だった。
           彼は着地する前に、握っていた神代枝を宙に放る。桜色の輝きが優しく千影と藤峰を包み込み、込められていた力は二人にメガミの権能を貸し与える礎となった。
           文字通り降って湧いた助けに、千影は急ぎユキノの傘を顕現させる。一方で藤峰は常用している苦無を構えるのみ。彼が宿すミズキからは力を得られず、僅かに引き出せるオボロの力を体術の助けにするだけで精一杯だった。

           

          「うーん……?」

           

           しかし、ここに人数差は生まれた。
           クルル一柱に対し、サイネ、千影、藤峰。ミコト二人は時間に限りがあるとはいえ、いかにメガミであっても障害と数えざるを得ない。それどころか、サイネという主力が居る以上、撃破も絵空事ではなくなった。あの千影の中ですら、だ。

           

           数の利を理解したサイネがじり、じり、と距離を詰め、壊れた隠し扉の手前までにじり寄ってくる。
           ただ……そんな三人に敵視されるクルルが、臨戦態勢になることはなかった。

           

          「……めんどーですぅ」

           

           唇を尖らせてそう呟くと、くるりと踵を返した。そのまま、相対していた空気を無視するかのようにとぼとぼと廊下を戻っていこうとする。その手のひらの上には、まるで手慰みのようになんらかの装置が組み上がりつつあった。
           一瞬、あっけにとられた三人だが、

           

          「待ちなさいッ!」
          「えぇー……」

           

           目にも留まらぬ速さで飛び出したサイネの薙刀が、嫌そうな顔で振り返るクルルを捉えた。その刃はクルルの背中を浅く裂き、返す刀で脚を断ち切ろうとするが、現れた部品の山に弾かれる。
           渋々といった様子でさらに間合いを離そうとするクルルには、千影と藤峰が放つ苦無が襲いかかる。一本は避けられたものの、もう一本は肩口に深々と突き刺さった。それを見て、千影は藤峰と目を合わせて頷き、前に出るべく脚に力を溜める。

           

          「氷雨、右手のものを……!」
          「はいっ!」

           

           行方を阻むがらくたを振り払うサイネへ、千影の指示が飛ぶ。サイネの耳にとってはがらくたと同じかもしれなくとも、クルルの手で組み上がりつつあるその寄木細工の小箱は、このような事態に陥る元凶たる転移の絡繰に他ならない。
           木と木が重なり合っていく音を頼りに、サイネは八相の構えからクルルの右腕を両断せんと刃を振り下ろす。
           だが、

           

          「……っ!?」

           

           刃は、クルルの存在する空間に侵入することを阻まれたかのように弾き返された。なにもないはずだった宙空では、六角形を敷き詰めた薄い緑の光の壁が、全うした役割を示すかのように存在を主張していた。
           絡繰をはたき落とした次の一太刀で首を狙おうとしていたサイネも、予想外の防御に体勢を崩してしまう。

           

           その間に完成した小箱が、クルルを包むように淡桃の煙を吐き出していく。周囲の空間が明らかにぐにゃりと歪んでいくのが、皮肉にもクルルの用意したであろう光の防壁ではっきりと見て取れる。

           

          「下がってくださいッ!」
          「ふー……ではまた来週〜」

           

           そんな適当な別れの言葉を残し、クルルは歪みの向こうへ消えていく。ある瞬間からその気配もぱったりとなくなり、やがて煙が晴れた廊下に彼女の姿を見つけることはできなかった。

           

           しん、と静寂を取り戻した廊下で、サイネはクルルのいた場所に薙刀を振り落とした。
           刃は、主を助け出した寄木細工の小箱を、真っ二つに断ち切っていた。
           狂気は去ったのだ。取り逃がした、という形で。

           

           

           

           


          「お、終わったー?」

           

           ぴりぴりとした空気が霧散していくその頃合いを見計らってか、隠し部屋の奥から楢橋が顔を出す。左腕を抑えながら脂汗を滲ませており、流血の度合いからしても傷が浅くはないことがありありと分かる。
           そんな彼の登場に、戦闘の余韻を全て吹き飛ばされた者がいる。

           

          「ほっ、ホロビ! ホロビはどこですかッ……!」
          「いたたたたた痛い痛い! 千影ちゃんやめて揺さぶらないで、目に入らないかもしんないけどめっちゃ怪我してるから!」
          「居たんでしょう!? 氷雨の隣に、ほろび……ホロビはっ……!」
          「ま、待って、落ち着いて……!」

           

           全ての障害を乗り越えたその反動のせいか、取り乱す千影。
           しかし、彼女は次の楢橋の一言で凍りついた。

           

          「ここにはいなかった……いなかったんだってば!」
          「え……」

           

           そんな、という言葉を作ろうとして、失敗した。楢橋の肩を掴んでいた手が、脱力したように離される。
           ちら、と幽鬼のように視線を隠し部屋の奥へと向ける千影だが、一歩を踏み出そうとしたところで、藤峰に肩に手を置かれてやんわりと止められた。
           彼は徒労感を追い出すように一つ、息を吐いてから、

           

          「こいつの言っていることはおそらく正しい。捨てられていた書の中に、ホロビ移送の指示書を見つけた。先日までここに捕らえられていたことは間違いないが……一足遅かったな。いや、言っても詮無いことか」
          「そう……ですか。ホロビは、どこに……」
          「瑞泉城内の研究施設だ。いくつかあるようだが、中でも桜に近い所だそうだ。研究員に吐かせた」
          「ふひ……ひひ……」

           

           俯いて笑う千影に、楢橋もどう声をかけたらいいものか分からない。
           だから彼から藤峰に投げかけられた疑問は、場を取り繕うものに他ならなかった。

           

          「と、ところでさ。細音サンは助けられたんだし、この研究所どうするの? ……えーと、ほら。あのヤバそうなメガミはどっか行っちゃったんでしょ? 動きやすくはなったと思うし、貰い物するにはちょうどよさそうだけど……」

           

           だが、それとなく奪取の提案をする楢橋に答えたのは、暗い笑みを浮かべた千影本人だった。

           

          「そんな暇、ありませんよ」
          「え……? あ、いや……」

           

           彼女の目が光を失っているということはなかった。

           

          「何度も言いましたよね? 千影は、ホロビを助けにここまで来たんです。それより優先されるものはありませんし、ホロビがここにいないのならまた探しに行くだけです。行き先も分かってるんですから」
          「そう、だけどさ……」

           

           予想外にしっかりとした返答に、楢橋は言葉に詰まる。
           千影はさらに、

           

          「一石二鳥じゃないですか。どうせ城では今頃天音や千鳥たちが戦ってるんです。最初から援護に向かう計画だったんですから、ついでにホロビへの道をこじ開ける手伝いもしてもらいましょう。ただ、さっさと援護に行かないと、それも叶わず全滅もありえますが」
          「あちらの戦況次第だが、早々にホロビ救出に人員を割く手もないわけではないな。メガミという戦力の追加という魅力は、やはり無視できるものではない」

           

           そう語る藤峰の目は、少し離れた位置で薙刀の感触を確かめていたサイネに向けられている。
           サイネはその気配を感じ取ったのか、

           

          「……どうもまだ面映いですね。これまでになく力が漲るこの感覚には、わりと納得しているのですが、理解はいまいち追いついていませんし……。目が覚めたらメガミになってるだなんて言われても、この通り普段と変わりない姿なものですから」
          「戸惑われている中、さらにこちらの都合に巻き込むようで大変申し訳ありません。ですが、何卒お力添えいただけないでしょうか」

           

           歩み寄るサイネへ、藤峰の頭が下げられる。
           そんな彼を援護するかのように、壁にもたれかかった楢橋が言葉を継ぐ。

           

          「細音サン、頼むよぉ。色々やばいみたいでさ。この平太クンの手も借りなきゃならないくらい、大変な戦いになってんのよー」
          「まあ……そうでしょうね。クルルと敵対しているくらいですから、大事の渦中であることは分かります。知らない間に事態は悪い方向に進んでいたようですね」
          「だからオレからもお願い……細音サンがいれば百人力だから……!」

           

           右手で力なく手刀を掲げたところで、サイネが形を捉えることはない。
           そして、

           

          「氷雨……い、いえ、サイネとお呼びしたほうがいいでしょうか」

           

           装備を再確認しながら、千影は極力サイネと目を合わせないようにそう切り出した。
           怯えはある。過去、危害を加えた相手が、強大なメガミとなって再び現れた以上、千影の生存本能はずっとくすぐられていた。出した言葉が相手を刺激しないか、気が気でないことは否定のしようもなかった。
           けれど、次の千影の言葉だけは、震えることなく真っ直ぐサイネに届く。

           

          「手を貸してください。ホロビを、助けるために」

           

           燃えるような意思ではない。昏い決意の底から、千影は目指す場所への最短経路に手を伸ばす。
           それから、僅かな沈黙があった。ただ、

           

          「ふふっ」
          「……なにか?」

           

           静寂をサイネの小さな笑いが破る。
           すみません、とサイネは謝罪を前置いてから、

           

          「あのときと同じ声なのに、雰囲気が別人みたいで……随分と変わられましたね」
          「そ、その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。もう別存在じゃないですか」
          「ですね」

           

           零した苦笑いが、承諾の証だった。
           ほっとする千影は、次の瞬間には顔が引き締められている。瑞泉城という本拠地に移送された以上、ホロビへの道はこれが最後にして最大の困難である。現状の最善手を打てたところで、死地に赴かなければならない事実には変わらないのだ。

           

          「急ぎましょう。天音もいるのでしょう?」
          「はい。詳しい話は失礼ながら道中にて」

           

           藤峰の先導によって、四人はその場を後にした。
           メガミも加え、同じ方向を向いた彼女たちは、一路、最終決戦の地・瑞泉城へと走った。

           

           

           

           


           こうして、ホロビこそ発見できなかったものの、サイネを救出した闇昏千影たち。
           やはり作戦は順調。英雄たちの勝利は近い。


           ……そう思うかい? ああ、カナヱもここまでならそう思うよ。

           だが、君は忘れていないかい?


           敵はあまりにも強大で、そしてその本命は、未だ姿すら現していないということを。
           闇昏千影らが研究所を後にしたその時、同時刻ーー

           

           

           

           

           


          「はぁ……は、あぁっ……」

           

           そびえ立つ城、そして奥で咲き誇る神座桜。二つの威容に見下されながら、ヴィーナを駆るサリヤは、水気を失った荒い息に、喉を張り付かせていた。
           走行時は半ば抱きつくように乗る本来のヴィーナだが、今のサリヤの視界は高い。それは彼女が背を伸ばしているからではなく、ヴィーナの首元に操舵席が移動しているためだ。鎌首をもたげた蛇のように変形した黒い車体は、その両目にあたる部分を定期的に怪しく光らせている。

           

           しかし、だ。威圧的な姿となったヴィーナとは対照的に、騎手であるサリヤは歯を食いしばって姿勢を保つのが精一杯の、弱々しい有様だった。傷つき、体力は奪われ、もはや意地と意志だけが彼女を支えているようである。

           

          「サ、リヤぁ……」

           

           名を呼ぶジュリアの声が震える。従者への信頼までもが、怯えに削り取られているようだ。
           それでも、へたり込むジュリアはサリヤへ希望を抱き続ける他ない。
           倒れ伏して小さく呻くだけとなった千鳥。
           塀に背中から叩きつけられ、ぐったりとしている佐伯。
           この場で意志を燃やし続けることができているのは、サリヤただ一人だけだった。

           

          「…………」

           

           そんな彼女が相対するのは、たった一つの寡黙な影。灰色の髪の少女の形をしたその影は、同じく影を寄せ集めたような大きな不定形の鎌を携え、城内へ通じる最後の門の前で、たった一人、無感動に立っていた。

           

           否、たった一人、ではない。
           一柱。

           


           塵と化し、灰に帰した結晶を身に纏うそのメガミ・ウツロは、己の作り出した惨状の中でただ一柱、静かにサリヤの動きを待っていた。

           

           しかしーーウツロの目には、三人目であるサリヤ、そして怯える四人目のジュリアまでしか映っていない。
           天音揺波の姿は、どこにもなかった。

           

          語り:カナヱ
          『桜降代之戦絵巻 第五巻』より
          作:五十嵐月夜  原案:BakaFire  挿絵:TOKIAME

           

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          炎熱の大交流祭レポート

          2018.08.08 Wednesday

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             こんにちは、BakaFireです。『新幕 第壱拡張』の発売も迫り、本作はイベントラッシュのさなかにあります。翌週10日から12日はコミックマーケット94にて第壱拡張の先行販売、そして18日からはコラボカフェが開催されます。

             これらのイベントの先陣を切ったのは、7月28日に開催された大規模大会「炎熱の大交流祭」でした。『新幕』最初のシーズン1を締めくくる一大決戦、果たしてどんな結果になったのでしょうか。本日はそちらのレポートを書かせて頂きます。

             本作初となる定員128名の大会でしたが、皆様の応援のおかげで無事に満員御礼となりました。残念ながら当日は台風が接近していた影響もあり116名の参加に留まりましたが、ご参加いただいた全ての方にも、参加が難しかった方にもこの場でお礼を伝えさせてください。本当にありがとうございました。

             それでは早速、レポートを始めましょう!

             

             

            多数のご来場に深く感謝!

            (これまでの顔に六角形を付けるやり方だと人がたくさんいるように見えないと気づいたため、今回よりモザイク処理にします)

             

            受け付けです。TOKIAME先生の当日ペーパーも配布!


            まずはサプライズでカード公開!

             

             さて、まずは開会式と言うところですが、今回はここでサプライズを用意していました。『第壱拡張』で登場するユリナのアナザー版である『第一章』ユリナのカードを全て公開したのです。

             さらにこれらのカードはプロキシカードとして印刷され、大会を途中で離脱してフリープレイへと移動した方に配布されました。そう、今回のイベントでは大会で戦い続け、勝利を目指す形で楽しめるだけはありません。もし2敗して大会でのやる気がなくなったとしても、フリープレイで新メガミを体験するという形で楽しめたのです。

             実はこのアイデアは私のものではありません。地元、大阪での大会を実に2年近く盛り上げ続けている準公式イベントの主催、珊瑚さんからご提案頂いたものです。素晴らしいアイデアをありがとうございます。実によいやり方でしたので、今後の大規模大会でも取り入れていきたいと考えています。

             

             おおっと忘れてはいけません。まだカードを見たことのない方のために、こちらにてカード画像もお見せしましょう。

             

            神語り、氷雨細音との最初の決闘で用いられ、二人の間に因縁を作りました。

             

            神語り、龍ノ宮一志との決闘の中で天音揺波は新たな力を見出し、今の技の原型とします。


            初参加の皆様に心からの感謝を!

             

             大会が始まり、激戦が繰り広げられます。これまでにない人数であるため、会場全体の熱気もすさまじいものでした。特に3連勝を成し遂げたプレイヤー同士が戦う、4回戦以降の全勝卓は全てが渾身の戦いだったと言えるでしょう。

             環境そのものについては『第壱拡張』先行発売直後のカード更新の詳細に関する記事で詳しく述べますが、三拾一捨であるがゆえに環境が程よく変容し、実に魅力的な戦いになったと言えます。

             ここまではこれまでのレポートでもよくお伝えしてきたことです。今回はそれに加え、心から喜ばしかったこともお伝えさせて頂きます。

             これまでの大会で見たことのないお名前の『新幕』から参加されたプレイヤーが多数いらっしゃったことです。新しいプレイヤーが入らないゲームに未来はありません。本作に関心を持ち、手に取り、そしてこの場へとお越しいただき本当にありがとうございます。これからも末永くお楽しみいただけると嬉しい限りです。

             

            試合開始! 新たにご参加いただいた新鋭も、古参の強豪も真剣勝負です!

             

            素敵な自作コンポーネントを作っていた方も!

             

            本作のコスプレをして頂いた方……も……!!!???

            (公式小説のキャラクターです)


            4回戦が終わり、ベスト8が決定!

             

             戦いは進み4回戦。全勝はあかさきさん、あるめたさん、きくしょーさん、金曜東ヒ42b(つきのみち)さん、さんろさん、そねさん、そらさん、テイワズさん、totさん、ぷよまん通さん、のわさん、のんのんびよりさん、ユー子さん、ライしか言えないなぞのライラ仮面さん、ライムさんの15名と絞られます。

             そしてその中からあかさきさん、あるめたさん、さんろさん、totさん、きくしょーさん、ユー子さん、のわさん、ぷよまん通さんが勝ち上がり、ベスト8が出揃いました。

             そしていよいよ5回戦。ベスト8同士が競う4試合での勝者が決勝トーナメントへの進出します。

             最初に決着したのはのわさんとぷよまん通さんの戦いでした。宿しているメガミはのわさんがユリナ/ヒミカ、ぷよまん通さんがユリナ/ライラです。

             まずは遠距離から「バックステップ」「レッドバレット」「ラピッドファイア」「マグナムカノン」と放ちのわさんが先制します。しかしぷよまん通さんも負けてはいません。ひとたび接近した後の火力はユリナ/ライラの方が圧倒的に上。怒涛の連撃でライフをイーブンに戻します。

             近距離での連撃は続きます。しかしのわさんは放たれた「斬」「一閃」をともにライフ受け。ライフを3に入れて決死を発動させます。そして返しのターンに「柄打ち」「クリムゾンゼロ」「斬」「一閃」と放ち怒涛の勝利です! 

             次はさんろさんとtotさんの戦いです。さんろさんはチカゲ/ライラ、totさんはオボロ/ライラを宿します。

             こちらも共に攻撃的な組み合わせです。遠距離での攻撃手段に乏しいため主戦場は間合2。どちらもライラのカードで殴り合う攻撃的な展開ですが、攻撃力はtotさんの方が上、「鋼糸」「流転爪」「風雷撃」で攻め立てます。

             対するさんろさんは毒の妨害を絡めていく形です。攻撃力こそ劣りますが毒で相手の攻めを弱め、「毒霧」などの使いやすいカードでゲージを稼ぎ、風雷ゲージの値ではリードを取ります。

             お互い、強烈なリーサルコンボを準備してにらみ合います。この競り合いを制したのはtotさんでした。「風雷撃」「風神爪」「鋼糸」から「風魔招来孔」。そして2連続の「風魔旋風」でリーサルです! オーラ1のさんろさんに対し、「鋼糸」の間合3から間合2に移動して「風魔旋風」を放ち、「遁術」をケアしているなど細部も抜かりがありません。

             

             攻撃的な2試合が終わり、残る2試合は共にコントロールによる長期戦になりました。先に終わったのはあかさきさんとあるめたさんの試合です。あかさきさんはユリナ/シンラを、あるめたさんはユキヒ/チカゲを宿します。

             

             あるめたさんは毒で相手の動きを妨害しつつ「ふりはらい/たぐりよせ」と「抜き足」によるクリンチ戦法から「ゆらりび」によるリーサルを狙う戦い方。しかしあかさきさんは序盤の攻防でそれを見抜き、「完全論破」で「ふりはらい/たぐりよせ」を封印します。

             こうなるとあるめたさんはクリンチ手段が半減し、苦しい展開になります。あかさきさんは「反論」「引用」でコントロールし、「斬」で少しずつリードを広げます。

             戦いも末期に至り、あるめたさんは廻ってきたチャンスに「抜き足」で間合0へ。そして「叛旗の纏毒」で「浦波嵐」を封じ、「ゆらりび」でリーサルを狙います。しかし届きません。あかさきさんは「煽動」でそれを回避。そのまま返す刀で決着です。

             相手のクリンチ手段を半減させたからこそ余裕をもって「煽動」を構えられました。あかさきさんの長期的な戦略眼による勝利と言えるでしょう。

             最後に残ったのはきくしょーさんとユー子さんの試合です。きくしょーさんはユリナ/ユキヒ、ユー子さんはオボロ/ハガネを宿します。

             ユキヒとハガネ。どちらも間合0や1といった至近距離で戦えるメガミであるがゆえに、この試合ではクリンチが合意されます。きくしょーさんは「ふりはらい/たぐりよせ」、ユー子さんは「大重力アトラクト」で自分に都合のいいタイミングで至近距離へと潜り込もうとします。

             きくしょーさんは「しこみばり」「つきさし」でライフを取っていきます。他方でユー子さんは「遠心撃」でそれを返し、さらにその過程で「超反発」「円舞錬」によりフレアを剥奪。ユリナやユキヒの持つ強力な切札によるリーサルを妨害します。

             両者にらみ合う長期戦。きくしょーさんが「ふくみばり」「一閃」を絡めた連撃でライフリードを取り、そこから数ターン後に時間切れ。ターンを抱えていたきくしょーさんは間合を6にしてオボロの設置、ハガネの「遠心撃」の双方を封じます。

             ユー子さんはライフを取る手段がありません。ライフ差による判定で、きくしょーさんが準決勝へと歩を進めました。

             

            5回戦が終わり、4勝1敗以上全員(とBakaFire)で記念撮影! 勝者たちに乾杯!

             

            準決勝も熱い戦いが続く!

             

             こうして5回戦が全て終わり、ベスト4が決定しました。ここからは上位4名による決勝トーナメントになります。抽選の結果、きくしょーさんとのわさん、あかさきさんとtotさんの対戦に決まります。

             

            準決勝第一試合 きくしょー VS のわ

             

             まずはきくしょーさんとのわさんの対戦です。三拾一捨の結果、きくしょーさんはユリナ/ユキヒ/ライラからユリナ/ライラが、のわさんはユリナ/ヒミカ/オボロからユリナ/オボロが選出されます。

             こちらの結果はまさに、怒涛の決着と呼ぶべきでしょう。ユリナ/ライラとユリナ/オボロはどちらも攻撃的な組み合わせ。両者ともに宿しを絡めながら前進し、攻撃の機会を伺います。

             先手を取ったのはきくしょーさん。足捌きで一気に間合を詰め、ユリナの攻撃カードでのわさんを攻め立てます。返しにのわさんは設置による「影菱」を打ち込み、同じく「斬」で反撃。

             その後、きくしょーさんは再構成。次の攻撃のチャンスを狙い、リソースを溜めることを選びます。しかしその機会は訪れません。のわさんは何と2ターン連続での再構成を強行。そのまま再び「影菱」を放ち、「斬」「一閃」「壬蔓」「月影落」と叩き込みます。まさに怒涛の連撃。わずか4ターンの攻防でのわさんが勝利を掴みました!

             一見すると一方的な試合にも見えますが、きくしょーさんは的確にユリナのカードを使用し、風神ゲージを十分に溜めています。手札の整い方から見ても、このターンをしのげば逆にリーサルも十分に可能。実のところ、1ターンの差が明暗を分けました。

             

            準決勝第二試合 あかさき VS tot


             

             次はあかさきさんとtotさんの対戦です。三拾一捨の結果、あかさきさんはユリナ/オボロ/シンラからオボロ/シンラが、totさんはオボロ/サリヤ/ライラからサリヤ/ライラが選出されます。

             どちらも中長期戦を十全にこなせる組み合わせですが、短期での決着は少しばかり難しい組み合わせ。必然的に前半はじわじわとした攻防になります。

             先に小競り合いを仕掛けたのはあかさきさん。「引用」でtotさんのカードを削ったうえで、次のターンに「反論」「壬蔓」でオーラを削り、「鋼糸」でライフを2点取って先制します。

             返すtotさんは「Thallya's Masterpiece」を使用済に。そこから「Burning Steam」などのサリヤの攻撃カードを駆使して間合をコントロールし、連続攻撃で反撃を図ります。対するあかさきさんは「完全論破」でtotさんの攻撃手段を削り、さらに次のターンで設置からの「影菱」と「斬撃乱舞」。結果としてライフはあかさきさんがリードしたまま、ゲームは後半戦の様相を呈します。

             ライフに差を付けられて苦しい展開ながら、totさんは「Julia's BlackBox」を使用して「Form:YAKSYA」へとTransForm! ここからBeta-Edgeによる騎動前進と「Thallya's Masterpiece」の前進を駆使して間合を0へと移し、設置を捌きつつダメージを与え、ライフ差を詰めていきます。

             あかさきさんはリーサル手段の「影菱」をなかなか引けず苦しい展開。totさんはこれを機にBeta-Edgeを中心に攻め続けます。しかしあかさきさんも負けじと連撃の要点に「煽動」を差し込み阻害。そしてその次のターン、totさんがリーサルを狙って再び攻めますがあかさきさんは再構成から引き直した「煽動」! 先程までの不幸を解消します。

             そして返しのターンで「鋼糸」から「鳶影」経由の「影菱」でリーサル! あかさきさんの勝利となります! もうひと試合とは対照的に、こちらは11ターンにもわたる熱戦でした。

             


            決勝! シーズン1の頂点に立つのは果たして……!

             

             

             準決勝が終わり、いよいよ最終決戦の舞台に立つ二名が決定しました。のわさんとあかさきさんです。決勝戦は三拾一捨の結果、のわさんはユリナ/ヒミカ/オボロからユリナ/ヒミカが、あかさきさんはユリナ/オボロ/シンラからユリナ/オボロが選出されます。

             

             このマッチアップはどちらも攻撃的で、広いリーサル圏を持っているのが特徴です。決闘そのものの間合だけでなく、致死の間合をも見極めながら戦いを進めなくてはなりません。肌が焼けるような緊張感の中、戦いが始まります。

             あかさきさんはヒミカの攻撃によるダメージを最小限に抑えるために第1ターンから足捌きを使用して間合5へ。結果としてのわさんは若干の無駄が生じてしまいます。しかし的確に「バックステップ」から銃による連続攻撃を打ち込み、3ライフを削ります。さらに両者前進してからの「斬」でライフはのわさんが大きくリードします。

             対するあかさきさんは返す設置からの「影菱」でライフ差を縮めます。このまま手札の攻撃カードで連撃を重ねるか。そう思われたところであかさきさんは長考に入り、そして呟きました。「これ、攻撃振ったら僕負けるんですよ」

             

            決勝、のわ vs あかさき 手に汗握る攻防が続きます


             あかさきさんはユリナ/ヒミカの爆発力、そして広いリーサル圏を十分に把握していました。ここでこれ以上の攻撃を行い、相手にフレアを与えると敗北のリスクが高いと判断したのです。そのターンは残るリソースで宿し、纏いと行いターンを返します。

             のわさんはゲームプランが崩され、リーサルを仕掛けられません。フレアを溜めるために同じく宿し、纏い。あかさきさんの次のターンも宿し、纏い。過激な序盤戦から一転、静かな競り合いになりました。しかし両者、必殺の間合を探り続けているのです。

             沈黙を先に破ったのはのわさん。「柄打ち」「斬」であかさきさんのライフを削ります。しかし返しに再構成であかさきさんのライフは3! 決死に入ってからの設置「鋼糸」、「柄打ち」から3/-の「浦波嵐」! のわさんも「浦波嵐」で返しますがのわさんのオーラは4! 離脱、宿し、「誘導」からの「月影落」が残るライフを吹き飛ばします!

             必殺の間合を正しく見切り、勝利を手繰り寄せたのはあかさきさんでした! 優勝です!

             

            決着! 間合を見切り、勝利を手にしたのはあかさきさんです!

             

            優勝賞品の色紙と共に記念撮影!

            (お面は自前です)

             

             こうして、今回の大交流祭は幕を閉じました。優勝したあかさきさん、準優勝ののわさん、ベスト4のきくしょーさん、totさん、おめでとうございます!

             

             


            炎熱の大交流祭

             

            優勝
            あかさき
            ユリナ/オボロ/シンラ

             

            準優勝
            のわ
            ユリナ/ヒミカ/オボロ

             

            ベスト4

            きくしょー
            ユリナ/ユキヒ/ライラ

             

            tot
            オボロ/サリヤ/ライラ

             

            上位賞(4-1)

            あるめた
            シンラ/チカゲ/ライラ

             

            ガソタム
            サイネ/クルル/サリヤ

             

            km
            ヒミカ/オボロ/サリヤ

             

            かよーだ
            ユリナ/シンラ/ライラ

             

            金曜東ヒ42b(つきのみち)
            ヒミカ/サリヤ/ライラ

             

            グリコ
            オボロ/チカゲ/ライラ

             

            さんろ
            チカゲ/サリヤ/ライラ

             

            赤面の男〜一体何条綴なんだ〜
            オボロ/クルル/ライラ

             

            そら
            ユリナ/ユキヒ/ライラ

             

            テイワズ
            ユキヒ/クルル/ライラ

             

            とりすたん
            ユリナ/トコヨ/オボロ

             

            抜け忍
            チカゲ/サリヤ/ライラ

             

            のんのんびより
            ヒミカ/ハガネ/サリヤ

             

            ふぇりる
            オボロ/チカゲ/サリヤ

             

            ぷよまん通
            ユリナ/サリヤ/ライラ

             

            ライしか言えないなぞのライラ仮面
            ユリナ/サリヤ/ライラ

             

            ルミニエラ
            ユリナ/ユキヒ/サリヤ

             

            ユー子
            オボロ/ユキヒ/ハガネ

             

             

            メタレポートをお届けザマス

             

             今大会の環境は現状の環境を大きく反映しており、良好で魅力的である一方で、改善できる余地は多分にある環境だと捉えています。このあたりは最近のゲームバランスに関する記事でもお伝えしているため、これ以上繰り返す必要はないでしょう。

            他方で、三拾一捨というルールの巧妙さをより実感できます。改善すべき点である幾ばくかの理不尽さは大きく緩和され、より正しく実力が評価される魅力的な大会だと感じました。特に、三拾一捨ゆえにユリナの大きく躍進した点は驚くべきところです。

             

             大会後のインタビューでは4名に選択した3柱の理由をそれぞれ伺いました。解答はそれぞれ

             

            あかさき「シンラを活躍させたかった」

            のわ「ユリナ/ヒミカはウツロの欠片みたいなものなので実質ウツロ(???)」

            きくしょー「ユリナ/ユキヒを使いたいので三拾一捨でそれが帰ってくるような構築にした」

            tot「近接ビートが好きなので必ず近接ビートになるようにした」

             

            といったものでした。『新幕』として始まったばかりのため、申し訳ないながら環境バランスに乱れは存在したシーズンだったとは考え、いくつかの面で反省しています。しかしそれでも自分の好きな戦い方や好きなメガミを貫き、実力と研究で勝利を目指せるバランスだったことは本当にうれしく思います。さらに、全てのメガミが4-1以上を達成できている点も喜ばしいところです。

             

             次のシーズンではカード更新を通してより良好なゲームバランスを実現し、魅力的な体験をお届けできるよう尽力してまいります。次もまた、お付き合いいただけると嬉しい限りです。


            それでは、ご覧くださいませ!

             


            使用メガミ一覧

             

            ユリナ/サイネ/ヒミカ    1
            ユリナ/サイネ/オボロ    2
            ユリナ/サイネ/ユキヒ    2
            ユリナ/サイネ/サリヤ    1
            ユリナ/ヒミカ/オボロ    1
            ユリナ/トコヨ/オボロ    1
            ユリナ/トコヨ/ユキヒ    1
            ユリナ/トコヨ/サリヤ    1
            ユリナ/オボロ/シンラ    1
            ユリナ/オボロ/サリヤ    4
            ユリナ/オボロ/ライラ    1
            ユリナ/ユキヒ/シンラ    3
            ユリナ/ユキヒ/サリヤ    3
            ユリナ/ユキヒ/ライラ    6
            ユリナ/シンラ/ライラ    1
            ユリナ/チカゲ/ライラ    1
            ユリナ/サリヤ/ライラ    4
            サイネ/ヒミカ/オボロ    2
            サイネ/ヒミカ/サリヤ    3
            サイネ/トコヨ/オボロ    1
            サイネ/トコヨ/チカゲ    1
            サイネ/トコヨ/ライラ    1
            サイネ/オボロ/クルル    1
            サイネ/オボロ/サリヤ    2
            サイネ/オボロ/ライラ    2
            サイネ/ユキヒ/チカゲ    1
            サイネ/ユキヒ/サリヤ    1
            サイネ/ユキヒ/ライラ    2
            サイネ/シンラ/クルル    1
            サイネ/シンラ/ライラ    1
            サイネ/チカゲ/サリヤ    1
            サイネ/クルル/サリヤ    2
            ヒミカ/トコヨ/ライラ    1
            ヒミカ/オボロ/チカゲ    1
            ヒミカ/オボロ/クルル    1
            ヒミカ/オボロ/サリヤ    2
            ヒミカ/ユキヒ/ライラ    1
            ヒミカ/ハガネ/サリヤ    1
            ヒミカ/クルル/ライラ    1
            ヒミカ/サリヤ/ライラ    3
            トコヨ/オボロ/ユキヒ    1
            トコヨ/ユキヒ/シンラ    1
            オボロ/ユキヒ/シンラ    1
            オボロ/ユキヒ/ハガネ    1
            オボロ/ユキヒ/チカゲ    4
            オボロ/ユキヒ/クルル    1
            オボロ/ハガネ/チカゲ    1
            オボロ/チカゲ/サリヤ    4
            オボロ/チカゲ/ライラ    2
            オボロ/クルル/サリヤ    2
            オボロ/クルル/ライラ    3
            オボロ/サリヤ/ライラ    5
            ユキヒ/ハガネ/サリヤ    2
            ユキヒ/チカゲ/サリヤ    2
            ユキヒ/チカゲ/ライラ    1
            ユキヒ/クルル/サリヤ    2
            ユキヒ/クルル/ライラ    1
            ユキヒ/サリヤ/ライラ    2
            シンラ/チカゲ/ライラ    1
            シンラ/クルル/ライラ    1
            ハガネ/チカゲ/サリヤ    1
            チカゲ/サリヤ/ライラ    7
            クルル/サリヤ/ライラ    2

             

            メガミ使用率・上位率

             

            使用人数 使用率 上位人数 上位率
            ユリナ 34 30% 9 27%

            サイネ

            28 24% 1 4%
            ヒミカ 18 16% 4 22%
            トコヨ 9 8% 1 11%
            オボロ 47 41% 9 19%
            ユキヒ 39 34% 5 13%
            シンラ 11 10% 3 27%
            ハガネ 6 5% 2 33%
            チカゲ 28 24% 5 18%
            クルル 18 16% 3 17%
            サリヤ 57 50% 11 19%
            ライラ 50 44% 13 26%


             これにて今回の大規模大会は終わりとなります。そしてシーズン1もいよいよ終了。8月17日からは新たなメガミ、アナザー版メガミ、カード更新を迎えてシーズン2が開始します。もちろん、シーズン2でも大規模大会を予定しておりますのでご期待くださいませ。その辺りの予定は9月の今後の展望にて書かせて頂きます。

             それでは、次の大規模大会でお会いしましょう!

             

             

            (2018/08/09 修正)

            私の誤りにより、はすおとさんとあるめたさんのお名前を誤って記載してしまいました。この場にてお二方に深くお詫び申し上げます。大変な失礼、誠に申し訳ございませんでした。

            (2018/08/17 更新)

            準決勝の動画を追加しました。

            (2018/08/24 更新)

            決勝の動画を追加しました。