桜降る代のゆるい午後2:第3回

2017.11.29 Wednesday

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    ゆるい午後シーズン2は、デジタルゲーム版のメガミ紹介も兼ねているぞ!

    デジタルゲーム版も併せてよろしくよろしく。

     

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    『桜降る代の神語り』第43話:戦火の後で

    2017.11.24 Friday

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       天音揺波たちにとって、あの助けは青天の霹靂と言う他なかっただろう。
       なにせ隠れ里の窮地に、鞠つきでもして遊んでいるような子供が現れたんだ。冗談みたいだろう?
       けれどそれは、襲撃者たる叶世座一行にとっても同じこと。
       どんなに気の抜けた名を名乗っても、彼女の力は本物だったんだからね。

       

       


      「ぽ、ぽわ……? なんだって!?」
      「ユリナさんたちにこんな酷いことするなんて、許せません!」

       

       困惑の色を隠しきれない翁面に、その少女がもう一度名乗ることはなかった。代わりに露わにした憤慨は、いかに彼女が可愛らしい身なりであったとて、真剣さを噛み締めざるを得ない圧力を伴っていた。
       そんな中、少女は何かを掴むように右腕を横に突き出した。

       

      「わたしがやっつけてあげます!」

       

       すると、彼女の手の中に四方八方から桜色の光が集まっていく。それらは次第に棒状の形を成し、小さな手に握りしめられる。長さは優に彼女の身の丈を越えており、頭二つ分も飛び出ている。だが、手中に収まるのはただの棒だけではなかった。
       ひらり、と。棒の先から、光の布が尾を引いていた。さながら、桜の花びらを織り合わせたような生地が、戦火に包まれる忍の里で気高く、されど優雅に、その身を泳がせていた。

       

       カン、と少女が地面を打ち鳴らすそれは、旗。
       揺波たちミコトが思わず決闘を思い起こし、奮い立ってしまうほどに、その旗の桜色は力強い。決闘に向かう道すがら、ようやく神座桜が見えてきたときの高揚感に似ているのだと、揺波は刀を持つ手に力を込め直した。

       

      「ぽわぽわちゃん、行きます!」

       

       

       そして少女は、その旗を自分の背後から正面に向かって、思い切り振った。その軌跡からは桜吹雪がこぼれ、同時、先程翁面を襲った翅を持つ桜の光球が、洪水のように旗の指し示す方向へ突撃していった。
       光球の濁流は仮面たちを食らう蛇のように、戦場を瞬く間に駆けていく。一つ一つは微々たる衝撃でも、まとわりつかれれば急流に足を取られたように身動きはとれない。さらに、ただでさえ仮面で欠けている視界を光で潰されては、現状の把握もままならない。

       

      「う、おぉぉ……! 邪魔だ!」

       

       光の流れから、時折叫びと共に炎が吐き出される。が、光球の勢いは留まることを知らず、十は下らない数の仮面たちが無力化されていった。

       

      「この小娘がっ!」
      「ぽわぽわちゃん、危ない!」

       

       光球の誘導に気を取られていたのか、揺波が叫んだときには、少女の死角に入り込んだ仮面の男は炎を放つべく構えたあとだった。
       しかしそこで、少女の顔に焦りの色が浮かぶことはなかった。

       

      「えいっ!」

       

       咄嗟に翻した旗を、下から上へ振り上げる。地面からすくい上げるようなその動きに応えるように、足元から吹き上がった桜の光は、すんでのところで放出された炎を受け止める。
       思わぬ対応に狼狽えた仮面へ、少女は反撃の動きを作る。くるりと回転しながら一歩飛び退り、天を指した旗を仮面へと向け直せば、より強烈な勢いで光の玉が突進していく。今度は身動きを封じるどころか、弾き飛ばされた男はほうほうの体で距離をとっていった。

       

      「オォ、スゴイデス……」
      「えへへー、そんなことないですよっ」
      「えっ、ジュリアさん……!?」

       

       少女の後ろ、まだ無事な家の戸から顔を出していたのは、間違いなくジュリアその人であった。見知ったように謎の少女と言葉を交わしていることはともかく、戦闘能力のないジュリアがこの場で姿を晒していることに揺波は不安を覚える。
       しかし、彼女を守るべきか否か、その判断は無用のものとなる。
       戦場に響く嘶きは、ジュリアを守るための矛のもの。傍にあって然るべきそれは今、赤い仮面の男を追い立てながら姿を現した。

       

      「あなたは防げても、他はどうかしら!?」

       

       ひゅん、と空気を裂く音が離れた揺波に伝わってくるほど、鋭く唸るのは剣の鞭だ。しかし狙いは赤面ではなく、忍相手に立ち回る翁面である。
       回避が間に合わないと察した翁面は、本能的に腕でかばってしまう。歯車仕立ての複製機構が、留め金を外されたようにばらばらと崩れていく。
       赤面を相手にしつつ忍に加勢するサリヤだが、ヴィーナの細かな駆動は両立をきちんと叶えていた。長く尾を引く鞭は、炎の朱と桜の光を受けて艶かしく輝いている。

       

      「なんだこれは!? 聞いていないぞ!」
      「じゃあ最後まで聞いていきなさい、よッ、と!」

       

       急停止の勢いを使って放たれる剣は、桜の光に溢れる光景に戸惑う赤面に吸い込まれていくが、幾度となく阻んできた桜色の兜は未だ健在である。
       けれどサリヤには今、なかったものがある。

       

      「たああああああああああっ!」
      「ぬぅ!」

       

       猛然と駆け込んできた揺波の一刀を、地面に倒れ込むようにして回避する赤面。すかさず揺波は追撃を容赦なく突き入れるが、転がる男は首を跳ね上げて兜で受け流す。
       避けられるか受け止められるものとして体重を込めていた揺波の身体は、軸をずらされて僅かに傾ぐ。そこへ赤面は、爆発と見まごうばかりの炎を放って彼我の間合いを離した。

       

       天音揺波がいる。ヴィーナを駆るサリヤがいる。そして、桜の光を操る少女がいる。
       忍だけでは、そして各々だけでは対処しきれない相手であっても、まとまれば十分に対抗できる。桜の光の奔流は相手を倒しきれるものではなかったが、質と量を備えた相手に対する一手としては最善に近いものであった。

       

      「潮時か……」
      「撤収! 撤収!」

       

       その厄介さを認識した叶世座の動きは早かった。戦闘も破壊工作もぱったりとやめ、ある者は北の入り口へと、ある者は森の中へと、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。赤面の男だけが、森に逃げ込む直前未練がましく樹を焼いた。
       彼らの姿が見えなくなるまで、そう時間はかからなかった。
       いなくなってみれば、燃え盛る森や家々が嘘であるかのように、嫌な静けさが場に降りた。

       

      「終わ、った……?」

       

       その理不尽さに耐えかねたように、揺波はぽつりと、事実を反芻することしかできなかった。

       

       

       

       


       重点的に攻められた北側を中心に、散発的な攻撃のあった南側を始め、人との戦いが終わったあとは火災との戦いが待っていた。
       住人たちの能力の高さもあって、家屋への被害は初動の速さによってかなり抑えられている。だがその一方で森に放たれた火を鎮めるにはかなりの手間を要した。元々湿気が多く、加えてオボロの熊介がうまく樹を倒して延焼を防いでいたにも関わらず、火の手は広範囲に広がっていたからである。

       

       それでも、夕暮れ時までに一旦の消火が落ち着いたのは統率された忍の為せる技か。
       今はオボロの号令の下、治療中の者や外周の見廻りを除き、里の中央広場に全員が集められていた。

       

      「いつか血を見る事態にまで発展するのではないかと考えていた。だが、それは今日、この日に為された。犠牲となった者は少なくない。里もこの有様だ。失ったものは多い。そして、古鷹という盟友もまた、我々は失ったに等しい。それを拙者は、残念に思う」

       

       ただし、と熊介の背に乗った隻腕のオボロは続けようとする。傍で控えていたサリヤとジュリアは神妙な面持ちでそれを聞いていたが、揺波とハガネは、間にいる謎の少女のことが気になって仕方がないようであった。それは忍たちもまた同様であった。

       

      「運命の日がこの日であったことは、むしろ幸運だった。我々は、失ったと同時に、新たな戦友を得ることができた。桜の光に救われた者は、彼女に感謝す――」
      「ぽわぽわちゃんありがとー!」
      「……!」

       

       いきなり、オボロを揺波が遮って、少女に抱きついた。ハガネは少女の手を握って、彼女の名前を連呼しながらぶんぶん上下に振っている。

       

      「ほんっと、すごかった! ぽわぽわちゃん、あんなことできるなんてびっくりしました!」
      「そ、そうですか?」
      「うんうん、ふぁーって光って、だーって敵やっつけちゃうんだもん!」
      「ふ、ふぁー?」

       

       厚い感謝に困惑する少女であったが、その有様にため息をもらしたオボロは、やがて小さく笑みを作った。

       

      「改めて、拙者からも礼を言おう。助力がなければどうなっていたか――」
      「あっ」
      「あ?」

       

       今度オボロの言葉を断ち切ったのは、その少女自身だった。
       少女はそれから何も告げることなく、

       

      「あれ、消え――わたた!」

       

       突如として抱きついていた身体が失われ、倒れそうになった揺波はハガネに支えられる。
       視線を戻したとき、そこにはあの桜色の光がふわふわと浮かんでいた。

       

      「ふむ、あの顕現体を維持できるほどの力がなくなったのだろう」
      「顕現体……? って、それって」

       

       頬に擦り寄ってくる光に構いながら、揺波は引っかかった単語から得られる推論を、オボロに差し向けていた。
       オボロは揺波の意を汲みとり、

       

      「結論から言えば、それは生まれたばかりのメガミだ」
      「え……」
      「以前から気配は感じていたのだが、確証もなくてな。それに、拙者もメガミの誕生を見たのは数えるほどだ。詳しい説明は省くが、今回の場合はおそらく、人間が成ったわけではなく、メガミとして発生したメガミだろう」

       

       忍の間でどよめきが起きる。
       その様子にオボロへ質問を投げかけたのはジュリアである。

       

      「トッテモ、珍しいなんです?」
      「拙者もここに留まって長いからなんとも言えんが、最近ではそうだな。それに、こちらで生まれたメガミは、すぐに桜を通ってメガミの座に向かうのが常だ。生まれる瞬間も、生まれたメガミも、普通の人間が見ることはまずないだろう」

       

       ただ、と繋げたオボロの表情はやや渋い。

       

      「今の状況で座に向かうのはおすすめしかねる。拙者やハガネから分かる通り、何かが起きている。そんな中で強行するよりも、一段落するまでそのまま揺波の左手に宿っているのがいいだろう。――まあ、本人はそれが気に入っているようだから、問題ないようだがな」
      「ずっとユリナちゃんに宿っているのは何か問題が?」
      「分からんな。メガミをまるごと宿すなど大抵のミコトでは耐えきれたものではないが、生まれたてだからできるという可能性もある。拙者は一般論として、座に収まるのが自然だ、と言っているだけにすぎん。具体的なことは不明だ」

       

       回答を得たサリヤは、件の左手を心配そうに見つめた。揺波は揺波で、己のそれを不思議そうに眺めている。
       そんな様子を見て取ったオボロは、口元を少し緩めて、

       

      「まあそう深く考えるな。友好的であることは間違いないのだから、よくない事態に発展しそうになったら素直に伝えてくるだろう」
      「悪い子じゃないもんね!」
      「ハガネがそう言うのなら尚更だ。――しかし、拙者にも不可解なことが一つあってな」
      「……?」
      「いや、まさかとは思うのだが、あの権能がな……」

       

       顎に手をやって考えるオボロは、その推測が合っていて欲しい気持ちと、間違っていて欲しいという気持ちが同居したように複雑そうな表情を醸し出していた。
       ややあって、

       

      「もしや揺波、其奴の名は……?」

       

       オボロはそう、揺波に問うた。
       無論、揺波は迷いなく答える。

       

      「ぽわぽわちゃんです!! わたしが考えました!」

       

       胸を張って。いっそ、気迫すら放っているかと思うほどに、堂々と。

       

      「……………………」

       

       揺波とハガネ、そして本人以外、告げられたその名に固まっていた。何故か、オボロの眼鏡が、ずり落ちた。

       

      「い、いや……愛称ではなく、真名を――」
      「ぽわぽわちゃんです!!」

       

       くらり、とオボロの身体が傾いた。辛うじて一歩、踏みとどまろうとしたが、そこは不安定な熊介の背中の上である。踏み外し、滑り落ちそうになったオボロをサリヤが慌てて支える。
       この取り乱し様になお取り乱したのは忍であったが、あまりに純真な揺波に反論できる者はいるはずもなかった。

       

      「待て待て待て! もし拙者の予感が正しければ、いくらなんでもそれはあんまりだ!」
      「でも、ぽわぽわちゃんも気に入ってますし……」

       

       オボロの傍では、その名を誇るかのように桜の光が飛び回っている。
       思わず天を仰ぐオボロ。ハガネも愉快そうに笑っているし、ジュリアとサリヤは苦笑いをこぼすのみで、味方する者はいない。だが、メガミの矜持にかけてもここは譲るわけにはいかないのであった。

       

      「流石にメガミの名がそれでは問題だ! 頼む、なんとかその……ぽわぽわ! ぽわぽわというのを尊重した名にするから勘弁してくれ!」
      「えぇ……これ以上いい名前なんてないと思うんですが……」
      「ええい、しばし待て! 今考える!」

       

       不満を露わにする一人と一体を無視し、ぶつぶつと考えを口に出しながら、永き未来に渡って残る非常に重要な名を検討し始める。

       

      「ぽわぽわ……ぽわぽわとは何だ? 浮かぶ、和やかさ、可愛らしさ、あとは……ぐぅぅ、愛称から名付けるとは何たる理不尽!」
      「だからぽわぽわちゃんで……」
      「形状からも考えよう。桜、光、翅、球――本質は桜と……光もか? 光……ひかり……陽ではなく、灯りの光……浮かぶ灯り……はっ! そうか、形状や動作ではなく、光の印象! ぽわぽわした光……行灯の火のような、穏やかな光…………これだ!」

       

       腿をぽんと叩いたオボロは、難題を解き終えたような晴れやかな顔で、解答を述べる。

       

      「ホノカ。いいか、このメガミの名前はホノカだ。断じてぽわぽわちゃんではない!」

       

       普段見ることのない元祖の姿に、忍たちはまばらな拍手を送る。
       無論、不服の構えを崩さないホノカは、叶世座たちを撃退したとき以上に力強い体当たりの連打を繰り出していた。
       それに知らんぷりを通すも、揺波が少し頬を膨らませているのを見て、オボロはこれ以上平和的な解決は見込めないと悟ったのか、「決まりだ決まり!」と叫ぶと、

       

      「このホノカだが、実際その力を目の当たりにした者も多いだろう。生まれたてとはいえ、この状況下においてメガミの助力ほどありがたいものはない。連中が所構わずメガミの力を使ってきた以上、戦力的な不利は免れなかったが、局所的には解消の希望も持ち得よう」

       

       強引に畳まれようとするも、戦略的な話には揺波も口を挟むことはできず、抵抗勢力は長く垂れたオボロの髪を弄ぶホノカだけとなった。
       それに安心したのか、オボロは話をこの状況に対する大局的な所感へと変える。

       

      「ただまあ、正確な戦力差は不明だが、まあ間違いなく今のままでは押し切られてしまうだろう。今回も、誰か一人欠けていれば、ただでさえ脆かった防衛線は瓦解していただろう。故に戦力の増強をさらに推し進めねばならん。幸い、実証は叶ったのだ。神代枝の運用でかなり改善されるだろう」
      「アノ……それですが……」
      「む、どうした」

       

       おずおずと、とても言い出しにくそうに手を上げたのは、ジュリアだった。
       彼女は揺波の下に戻ったホノカを指し示しながら、こう切り出した。

       

      「ホノカ、サン……使っちゃいました。神代枝も、材料も、タクサン……半分以上デス……」
      「……!」

       

       その報告は、皆の表情を凍りつかせた。
       たった今、対抗策として挙げられたものが、なくなった。その事実は、悲惨な状況下にあって見出していた希望が、輝きを失ったかのようであった。

       

      「…………」

       

       沈黙の中、ホノカでさえもそれを汲んだかのように、揺波の頭の上で落ち着いていた。
       ぎり、と歯を噛むオボロ。けれど、その遺憾を振り落とすように、束の間、顔を伏せたかと思うと、

       

      「案ずるな! 顔を上げよ!」

       

       オボロの一喝が、広場に響き渡る。

       

      「確かに神代枝は限りあるものだ。だが、それを使ってホノカは里を救った。その事実はなんら変わり得るものではない。むしろ、蓄えを活用し、最もきわどい初撃をうまくいなしたとさえ言える。戦果のために相応の対価を払った。それだけのことだ」
      「でも、また敵サン来たら、全然足りなくなるデス!」
      「拙者の見立てでは、しばらくは奴らも仕掛けて来ないだろう。未だ仔細の分からぬ力だが、向こうはそのことを知らん。張り子だろうと虎は虎、二の足を踏ませるには十分過ぎる」

       

       淡々と挙げられていく評価に、不安げながらもジュリアは納得したようだった。
       ただ、オボロもオボロで、未来の話をすぐさま続けられない程度には、状況を判断しかねているようで、

       

      「事が起こってしまった以上、可及的速やかに指針を見直さねばならないのは間違いない。備蓄計画も先行きが不透明なままに進められていたからな。……ただ、その議論は後にしよう。皆疲れているだろう? 各自休憩をとりたまえ。その後、改めて対策会議といこう」

       

       オボロはそこで、胸の前に右手を持ってきて、何も起きないことに気づいて頭を掻いた。手を打ち鳴らそうにも、彼女の左手はないのだ。

       

      「では、解散!」

       

       

       

       

       

       号令に、三々五々散っていく一同。ちょうど夕食時であるためか、近所同士でまとまって今後の衣食住について確認し合う者も多い。雰囲気こそ暗いものの、悲観に暮れるのではなく合理的な対応を試みようとするあたり、オボロの教えが行き届いているのだと伺える。

       

      「オボロさん、ちょっといいですか?」

       

       そんな流れの中、揺波は熊介から降りて去ろうとするオボロを呼び止めた。

       

      「なんだ? 寝床であれば、以前と同様に使ってくれて構わないが」
      「あ、いえ。それもそうなんですが……さっきから探してたんですけど、千鳥さんが見当たらなくて。見廻りに行ってるならいいんですけど、ひょっとしたら……」

       

       目を伏せる揺波。そこから先は、口に出してしまったら現実になってしまうようで、続けられなかった。何しろ揺波は、自分の関わった忍の無残な姿を目の当たりにした後である。刀を納めて落ち着き始めてから、じわじわとその現実が心に這っていた。
       しかし、揺波のそれは杞憂でしかなかった。

       

      「勝手に殺してやるな。あいつなら問題ない」

       

       オボロの代わりに答えたのは、不機嫌さを隠そうともしない藤峰であった。

       

      「よかった。生きてたんですね……」
      「違う。それ以前に、そもそもあいつは――」

       

       彼の目は、揺波を見ていなかった。
       遠く、遠く。それも里を囲む森すら越えて、もっともっと遠くのどこかを、彼は見つめていた。

       

       


       そうだね。天音揺波を導いた忍の少年は、今回の動乱に巻き込まれてはいなかった。その理由を語るために、少し時を遡ることにしよう。
       天音揺波が、瑞泉驟雨が、それぞれメガミへと挑み、そして世界が一変するよりも。
       天音揺波と氷雨細音が、最後の決闘をするよりも、いくらか前。
       それは天音揺波が己の因縁に決着をつけるため、旅立った数日後。
       少年もまた、己の因縁へと向き合うために――

       

       


       のどかな街道を行く少年の手には、笹の葉に包まれた握り飯。

       

      「オボロ様には感謝しないとなあ」

       

       忍装束ではなく、どこにでもいるような旅人の格好をした彼は、他に誰もいないのをいいことに、道のど真ん中をゆったりと歩いていた。それは彼がのんびりしているというわけではなく、考え事のついでに足を動かしていたからである。

       

      「さて、まずはどうすっかな」

       

       少年は、かぶりと握り飯に食らいついた。
       

       

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      新たなメガミと未来へ拡張

      2017.11.23 Thursday

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         こんにちは、BakaFireです!
         
         さらに時は流れ、いよいよゲームマーケットまで一週間と少しになりました。ゲームマーケットでの頒布物や特典、ブース内イベントなどについては今週火曜に公開した記事でまとめておりますので、そちらをご覧ください。
         
         そしていよいよもって第弐拡張環境での大会もほとんどが終わり、第参拡張はあなたの目の前まで迫ってきております。本日はその内容について、お待ちかねの発表を行うとしましょう!

         

        総てを束ね、未来へ向かおう!

         

         その通り! 新たなメガミ、そして『第二幕』シリーズ最後のメガミの紹介です! 次はこのやりとりもどうなるのか分からないため、少しばかりさみしくはありますが、いつもの流れも抑えましょう。彼女の活躍はストーリーですでに描かれています。もちろん、他のプレビューカードもありますよ!
         
         公式ストーリー『桜降る代の神語り』では20年前、まだ人間だった天音揺波、そして彼女を取り巻く人々の戦いを通し、この桜降る代へと至るまでの物語を描いています。最近本作に触れた方も、長年遊んで頂いている方も、まだ読んだことがないのであれば触れてみてはいかがでしょうか。本作をより楽しめること請け合いです。最初から読むのであればこちらをクリックしてください。
         
         すでにお読みになったか、残念ながら時間がないならばこのままお進みください。
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         

         心の準備はよろしいですね?
         これにて世界は完成! 桜花結晶を象徴するメガミ・ホノカの降臨です!
         


         
         ホノカは桜花結晶の生成という、この世界の根幹をなす法則そのものを権能としています。そしてその力を束ねた旗を用いて、結晶を精霊として指揮することも可能です。
         
         彼女はメガミとして、まだ不完全な存在です。彼女はある偉大なメガミの権能を受け継ぎ、20年前に誕生したばかりなのです。ユリナ、サイネ、チカゲ、サリヤらも20年前に生まれたメガミではありますが、彼女らの権能は人間時代のあり方から自然に会得したものなのですでに安定しています。しかし彼女の権能は、その所以や強大さゆえに不安定であり、彼女を宿す者が決闘を通して彼女を育て、安定させなくてはならないのです。
         
         では、いかにして成長するのか。お答えしましょう。彼女は実に9枚もの追加カードを持ちます。そしてあなたが彼女のカードを使ったら、その解決後にそのカードを次の段階へと変換することを選べるのです。
         
         前置きは十分ですね? それではまとめて4枚、ご覧いただきましょう!
         

         

         

         


         
         「精霊式」を使用したならば、変換するのは明白です。しかしそれ以降はどうでしょう。あなたの狙いによっては、変換せずに止める選択もありえるのではないでしょうか? そう、重要なのはその点です。この類のカードは何も考えず変換させれば強いというわけではありません。彼女をいかに育てるのかは、その意思決定はあなたに委ねられているのです。
         
         本日は新たに4枚1組のカードを紹介しました。未来に向けて変換を制御する、メガミの育成をお楽しみいただければ幸いです。
         
         
        ルールへの補足1
         山札の底に置けるのは、変換することを選んだ場合のみです。

         

        ルールへの補足2
         シンラ/ホノカを宿している際に相手のホノカのカードを「引用」したとしても、そのカードを自分の追加札のカードと交換することはできません(総合ルールについては、再来週の頭に更新される予定です)。

         

        ルールへの補足3

         変換には名前の一致が必要です。何のためにあの一文を入れたかお分かりですね?
         
         
        最後を超えて、可能性へ

         

         ウツロの紹介でも語った通り、こちらでも拡張全体のコンセプトをお話しします。
         
         何度かお伝えした通り、『第参拡張』は起承転結の「結」を担っています。そしてウツロは原点へと帰り、基礎を新たな角度から眺め直す収束の結末を見せました。
         
         一方のホノカは未来の可能性へと向かい、拡散の結末を示唆しています。カードの変換という新たな手段を活用し、本作の基礎を改めて押し広げ、あたかもプリズムのような多様性を与えているのです。
         
         他方で、個々のカードやルールでは難しすぎることはしていません。基礎には忠実に、それでいて新しく。彼女の歩みを通して『第二幕』を振り返り、そして『供焚勝法戮悗鳩劼る大いなる一歩へと繋がることを、私は望んでいます。
         
         
        プレリリースはいよいよ今週末!

         

         ホノカが収録された『第参拡張』は12月9日(土)発売となります。さらに12月2日(土)と3日(日)のゲームマーケット2017秋でも先行頒布されます。

         

         さらに、『第参拡張』もう一柱のメガミであるウツロは、ゲームマーケットまで待たずとも使用して遊べるチャンスがあります。そう、プレリリース大会です。

         

         11月25日(土)と26日(日)をプレリリース期間とし、全国のイベントにてウツロが使用可能な大会が開催されます。前回よりも地方を拡大し、東京、大阪、北海道、名古屋、福岡、新潟の6地方でお楽しみいただけます。

         

         東京は秋葉原の「霜秋の交流祭」と上野の「コラボカフェ開幕式」、大阪の「プレリリース大会@大阪DDT」と「プレリリース大会@ひがっち」、北海道の「第参拡張プレリリース大会」、名古屋の「第三拡張プレリリース大会@愛知地区」、福岡の「福岡プレリリース大会」、新潟の「第参拡張プレリリース大会」をそれぞれチェックしてみてください。

         

         ※ 申し訳ないながら東京のイベントはすでに満席であり、リザーバーとしてのみ受け付けております。地方のイベントの中ではまだ枠があるものもございます。
         
         
         今週はここまでとなります。来週はゲームマーケット直前につき、ニュース記事はお休みをいただきます。再来週、ハガネ特集にてまたお会いしましょう!

        第参拡張とゲームマーケット2017秋

        2017.11.21 Tuesday

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           こんにちは、BakaFireです。昨日は体調を崩してしまいましたため、この記事の公開が1日遅れてしまったことをお許しください。
           
           それはさておき、本日もすばらしいニュースをお届けに参りました。そう、気付けばゲームマーケット2017秋まで、すでに2週間を切っているのです。さらに今回は12月2日(土)、3日(日)と2日間にわたる開催となります。そんな中で私どもBakaFire Partyはどうするかということですが、ご安心ください。もちろん2日とも出展させていただきますとも!
           
           本日はそちらでの新作内容や、特別イベントについてお知らせいたします。早速はじめましょう!
           
           
           
          第参拡張にて「結」来たり

           

           体調不良のため、発表が1日ずれてしまいましたが、今回の新作である『第参拡張』につきましてパッケージ、タイトル、そして内容について紹介いたしましょう。ご覧ください!

           

           

          『桜降る代に決闘を 第参拡張:陰陽事変』

           

          価格:1,800円(イベント価格1,500円)

           

          内容物

          • カード 39枚(うち修正カード8枚)
          • メガミタロット 2枚
          • ルールシート 1枚
          • カードリスト 1枚

           

           これまでの記事でも何度か触れていますが、本作の『第二幕』シリーズにおいて、基本セットは「起」を、『第壱拡張』は「承」を、『第弐拡張』は「転」をコンセプトとしていました。基本を起こし、それを順当に広げ、崩して想像を超えてきたというわけです。
           
           そして『第参拡張』のコンセプトは、当然ですが「結」となります。これまで全てのセットを踏まえ、これこそが最後のピースだと言えるメガミたちを収録いたしました。どのように実現したのか、ゲームと世界観それぞれを簡単に語らせて頂きます。
           
           ゲーム面では「全てを踏まえて原点に回帰するメガミ」と「全てを踏まえて未来に拡張するメガミ」をコンセプトに作成しました。
           
           前者は特別なルールや追加カードなどはありません。しかしこれまでを踏まえた必然の上にデザインされています。間合は中距離寄り遠距離というこれまでで唯一存在しなかった間合であり、これまで注目されてこなかった領域――ダストに注目してもいるのです。
           
           後者はルールをより滑らかに破り、未来への道を拓いています。ふたつの拡張の中で私どもは、様々なやり方で世界を広げてきました。彼女はそれらのやり方を踏まえ、本作の次へと繋がる一歩を提示しているのです。
           
           世界観ではどうでしょうか。本作の世界は公式小説『桜降る代の神語り』とリンクして進んでいますが、拡張ごとにいくらかの方向性も持っています。『第壱拡張』では物語との関わりを通して、このようなメガミもいるのだと順当に紹介しました。『第弐拡張』では科学技術というこれまで顧みていなかった箇所に光を当て、それに深く関わるメガミを登場させました。
           
           『第参拡張』ではこれまで紡がれてきた物語を踏まえ、世界の本質にあたる要素へと踏み込むことになります。そして彼女たちは本作の舞台である桜降る代という時代、そして桜花決闘という戦いの文化において、必要不可欠な存在でもあるのです(これらについて深く語ってしまうと公式小説での楽しみを奪い去ってしまうため、婉曲的な言い回しになることをお許しください)。
           
           語れることはまだありますが、この位にしておきましょう。今こそひとつの世界が完全なものとなる時です。『第参拡張』にご期待くださいませ!
           
           
          TOKIAME先生サイン会、再び開催!

           

           前回のゲームマーケット2017春で好評を頂きましたTOKIAME先生のサイン会につきまして、今回も開催させて頂きます。TOKIAME先生のご厚意により、土日両方で開催できることになりました。開始時刻はどちらも13:00ごろを予定しております。詳しくは、当日ブースの案内をご覧ください
           
           また、本ブースでのサイン会であるため、サインを行えるのは『桜降る代に決闘を』シリーズ(基本でも拡張でも大丈夫です)の外箱、カード、タロットのいずれかに限定させて頂きます。ご容赦、ご理解いただければ幸いです。

           

          会場特典でPR集中力カードを配布!

           

           今回のゲームマーケット2017秋でも、会場にお越しいただいた皆様のために素晴らしいプレゼントを用意いたしました。これまで様々なやり方で配布され、好評を博しているプロモーション集中力カードに新たな1枚が加わります。ご覧くださいませ!
           


           
           こちらのカードは今回限りの配布ではありません。今後の公式イベントや公認イベントの一部においても、参加賞として用意させて頂きます。今回残念ながらご参加いただけない方は、チャンスをお見逃しなく!


          余談
           このやり方ついては、これまでで頂いたフィードバックと私どもの想いを合わせたものです。私どもといたしましては、ゲームマーケットなどのイベントの場へとお越しいただけた皆様に、心ばかりのお礼をしたいのです。イベントの限られた時間の中で当ブースを選んで頂いたことへの感謝もございますし、少しばかりの打算を言わせていただくのならば、イベントでお越しいただける方がいなければ私どもは立ち行かなくなってしまうのです。
           
           しかしその一方で、地方の方にとって入手が厳しいというのは事実です。同時に、地方での公認イベントをより盛り上げていきたいというのもまた私どもの望みです。そこでそれらを解決するため、主に地方での公認イベントにてこれらのカードを配布することにいたしました。配布されるイベントは限定されますが、お住まいの地方のイベント状況に耳を傾け、ご参加いただければ嬉しい限りです。

           
           
          全ての方に紙袋をプレゼント
           
           前回と同じく、いずれかの製品をお求めいただいたすべての方に、本シリーズの紙袋をプレゼントいたします! 大きめのサイズに作成しており、ゲームマーケットで購入した様々な力作を収めるのには持ってこいと言えるでしょう。ぜひとも、ご利用いただければ幸いです。
           


           以上となります。今回も本ブースは様々な催しと共に、あなたをお待ちしております。ブース番号はA007 「BakaFire Party」でございます。もしあなたがゲームマーケットにお越しになるならば、会場にてお会いしましょう!
           
           間に別の記事が入りましたが、次の更新は今週金曜に、彼女についてお話しさせていただきます。ご期待くださいませ!

          イベントは次のステージへ

          2017.11.17 Friday

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             こんにちは、BakaFireです。
             前回の記事でのモニター死亡事件の影響はどうにか落ち着きつつあるものの、まだ慌ただしさの抜けないところでございます。申し訳ないことに、少しばかりやることが飽和しておりますので、今回の記事はいくらか手短にさせて頂きます。
             
             本日は今後のイベントについて、2点ほどお知らせを持ってまいりました。お楽しみいただければ幸いです。
             
             
             
            大会賞品がついに世代交代!

             

             以前より大会のページで書いておりましたが、改めてこちらにて告知させて頂きましょう。本年の長きにわたり、公式イベント、公認イベントでは賞品としてプロモーションタロットカード、トコヨをお贈りしておりました。
             
             しかしそれも本年11月末までとなります。12月からは新たなプロモーションタロットが登場し、そちらが賞品になります!
             
             改めて告知することは、と期待されている方もいらっしゃるかもしれません。ええ、こちらにてお見せしましょう。プロモーションタロットのプレミアムさを残すために、かなり縮小した画像とさせて頂きますが、その点はご容赦ください。
             
             それではご覧ください。プロモーションタロット「ユキヒ」の登場です!

             

             

             

             

             

             

             

             

             


             


             
             一方で、トコヨが賞品である期間は残りわずかですが、まだゼロではありません。今月、11月中のイベントはいずれも大きなチャンスです! 各地で25日と26日に開かれるプレリリースをはじめとして、様々なイベントが残っております。こちらのページよりチェックしてみてください!


             さらに今後の大規模イベントの上位賞品として、まだ入手する機会は計画しております。これまでよりも難しくはなりますが、機会が完全になくなる訳ではないのでご安心ください。
             

             

             

            交流祭がさらに広がるぞ!

             

             こちらの記事で書かせて頂いた通り、本年9月より公式イベントでは「戦乱之陣」と題して、よりカジュアルに遊べるフリープレイイベントを併催してまいりました。さらにそちらの好評を受け、関西と北海道でもその形式でのイベントを開いてまいりました。
             
             この形式のイベントは総じて好評であるため、より多くの方に遊べるようにしたいと考えています。そして、ここ数か月の開催により、どうにかノウハウも集まってきたと言えます。
             
             そこで来る12月より、「戦乱之陣」併催型の交流祭の実施地方をさらに広げることにいたしました! これまでは東京、大阪、北海道でしたが、そこに愛知、新潟、福岡が加わることになります!
             
             12月には第参拡張も発売いたしますので、当然ですが初期の3地方でも交流祭が開催されます。発表いたしましょう。東京では12月16日(土)大阪では12月17日(日)北海道では12月17日(日)愛知では12月16日(土)新潟では12月17日(日)福岡では12月30日(土)の開催となります! もちろんいずれの地方でも新たなメガミを使用可能ですし、プロモーション集中力カード「ヒミカ」も入手可能です!
             
             予定が立て込んでしまったため、申し訳ないながら北海道を除いてまだお申し込みはいただけない状況です。来週中には申し込みを開始し、あらためてTwitterなどで告知いたしますので、今しばらくお時間を頂ければ幸いです。

             

             


             今週はここまでとなります。来週はいよいよ、彼女についてお話しするとしましょう。ご期待くださいませ!