未来をつくるために(後篇)

2017.10.05 Thursday

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     この記事は大ニュース週間のうち2つ目の記事であり、前後篇の後篇です。最初から読みたい場合はこちらよりどうぞ。

     

     前篇では大きな変更の概要や指針、そして歴史的な動機を説明しました。後篇では具体的な潜在的問題と、それらへの解答についてお話しします。

     

     

    3:変化を必要とする具体的な理由

     

     早速、潜在的問題について説明しましょう。私どもはこの問題への分析を行い、以下の4つに分類できると分かりました。それぞれ紹介し、説明させて頂きます。

     

    • 問題1:近距離問題
    • 問題2:瞬殺問題
    • 問題3:ライフの価値問題
    • 問題4:デフレーション問題

     

    問題1:近距離問題

     

     今の本作は近接攻撃(間合0-2程度)を得意とするメガミを極めて作り辛い状況にあります。修正前のチカゲに触れたことがある方は、思い出して頂ければと思います。あのような悪夢を繰り返してはいけません。

     

     この事態に陥っている原因は2つあります。細分化してみましょう。

     

    問題1−1:ユリナ問題

     

     『第二幕』のユリナはどうにか妥当なバランスにたどり着き、魅力的なメガミになったと考えています。しかしその一方で、潜在的問題の元凶でもあります。

     

     『初版』の時点から本作はある意味で最大の失敗を犯していました。それこそが「斬」と「月影落」です。間合1-2はゲームのルールから見て強力な間合であり、そこに3/1や4/3といった強力なダメージの攻撃を置くべきではありませんでした。結果、ユリナと組み合わせるとゲームが崩壊する恐れがあるため、近接攻撃を行うメガミを作るには大きな縛りが生じています。

     

     他方で解決が困難な問題でもあります。解決手段は「ダメージ」か「適正距離」の変更が妥当です。しかしダメージを安易に下げるのはイメージ面で問題がありすぎます。和風の決闘の花形で、切れ味もパワーもある刀という武器の攻撃力が低い。その状況は受け入れられるものでしょうか? 他方で適正距離を変えるとなると影響が大きすぎます。ユリナの全ての攻撃だけでなく、サイネなどにも影響が波及するため、変更すべき枚数が多すぎるのです。

     

    問題1−2:クリンチ問題

     

     基本動作の後退は前進と比べて弱いものです。ゆえに0距離でのクリンチは常に問題でした。一時的にコントロールのために密接距離へ行くのは構いませんが、クリンチが決まり続けるのは単純につまらないのです。

     

     『第二幕』で改善されましたが、前進カードを飽和して使われるとそれでも厳しいものです。そして近接型のメガミは、構造上前進カードを持っていなければ問題となります。ゆえに、近接2柱を組み合わせるとクリンチのリスクが生まれるため、近接攻撃のメガミを作るには強い縛りが生じています。

     

     今のユリナとユキヒの組み合わせに問題がないことからも分かりますが、繊細に調整すれば回避できない問題ではありません。しかし、繊細な調整と斬新な楽しさの両立が、いつまでも続けられるかというとはなはだ疑問なのです。

     

    問題2:瞬殺問題

     

     これは4つの問題の中で一番の小物です。しかしまあ、紹介に値するほどには問題です。

     

     本作は、遠距離攻撃(間合6-10程度)を得意とするメガミをやや作り辛い状況にあります。ヒミカ特集で、ゲームとしての対話が行われる前に決着が頻発するようでは問題だと書きましたが、遠距離2柱を組み合わせるとその危険が高まるのです。

     

     実際、ヒミカとヒミカを組み合わせるとゲームは壊れます。とはいえこれは遠距離火力だけでなく、「カードを引く」が2つ掛け合わさるゆえの問題という側面も強く、一概に遠距離すべてが縛られているとは言えません。

     

     今の見解ではこの問題は「マグナムカノン」の適正距離が6-10から5-7になった時点で半分は解決していると考えています。しかしながら、完全に無視するわけにもいかないのです。

     

    問題3:ライフの価値問題

     

     『第二幕』ではライフ1点の価値が少しばかり高すぎます。ライフは額面上は8点ですが、実際は2、3回の再構成を行うため5、6点しかありません。これでは1点のダメージが重すぎるため、ゲームがいかに1点を通すかという点に集中し過ぎてしまいます。

     

     そこから生じる縛りを説明しましょう。大別して3つあります。

     

    問題3−1:-/1問題

     

     ダメージが-/1である攻撃は想定を超えて強力過ぎました。それはもう、開発当初の想定を超えて強力だと思っていたら、その超えた想定すらも越えて強力なくらいに強力なのです。

     

     きちんと説明すると、いかに1ダメージを通すかというゲームであるためにオーラを無視するためには相当の縛りが必要なのです。それゆえに「-/1」の攻撃や「ライフに1ダメージを与える」効果のデザインは難しく、強い制限を与えざるを得ません。

     

    問題3−2:再構成問題

     

     再構成1回あたりの影響も大きすぎます。特に防御的なメガミが強力な時は問題が大きくなります。カードを使っていかにダメージを与えたかを競うのではなく、何回再構成したのかを競うようなゲームは健全でないと言えるでしょう。

     

     ゆえに、多くの対応や妨害により防御的にふるまうことができ、さらに山札を回復できるようなメガミをデザインするには制限が大きくなります。

     

     お察し頂けているかもしれませんが、トコヨはこの問題3−1と3−2を共に満たしています。彼女は問題3という構造に愛され過ぎており、それゆえに『第二幕』での強さには問題があるのです。

     

    問題3−3:ダメージ制限問題

     

     現在の《攻撃》カードのライフへのダメージは大半が1です。2はそれなりには存在しますが、3以上となるとほとんど存在しません。

     

     それは当然の話で、今のライフだと2や3のダメージが頻発したらゲームがすぐ終わってしまい、魅力的なゲーム展開にならないのです。しかし、この制限はカードのデザイン空間を明確に縛っています。

     

    問題4:デフレーション問題

     

     本作におけるカードの強さは、デフレーションの方向に向かっています。即ち、本質的には地味なカードでないと作り辛いのです。

     

     『初版』は問題のあるゲームでしたが、『初版』を最後まで遊んでくださったプレイヤーの中には『第二幕』になって自分のためのゲームではなくなったと評価している方もいらっしゃいました。その原因は劇的な展開が少なくなり地味になったためではないかと推測しています。それ以前にもこの点に疑惑を感じてはいましたが、その意見を受けて、これは問題として確かに存在していると認識したのです。

     

     この問題は他の3つの問題の結果として生まれているとも言えます。近距離への移動が抑制され、遠距離での速攻が抑制され、そもそもの火力も抑制されています。まとめると、これまでの問題が複合した結果、派手なカードを作りづらいという縛りが生まれているということです。

     

     『第弐拡張』ではやや複雑なルールを用いた結果ではありますが、この問題から逃れて拡張できたと考えています。しかしそれをいつまでも続けられるかというと、そうもいかないでしょう。

     

    4:変化の具体的な内容

     

     ここまでで本作の抱えている潜在的問題を説明し終えました。ここからは、それらを打開するために私どもが『供焚沼蝓法戮撚燭鯤僂┐襪里を説明しましょう。

     

     変更点は3つあります。まだ開発中のゲームであるため、この変更は100%これでいくと断言することはできません。しかしながら、八割方これで問題ないだろうというところまでは進められています。

     

    変更点1:ライフを10にする。

     

     問題3や問題4を考慮すると、ライフ8が足りていないと結論付けるのは当然です。そこでライフを10にすることにしました。これは問題2に対するアプローチにもなっています。

     

     まず、-/1の攻撃は問題なく作成できるようになります。最たる理由はライフへのダメージが2以上の攻撃が増える点にあります。-/1を持つメガミは山札1周あたり、比較的簡単に1ダメージを与えられます。その一方で相手に2/2などの攻撃が多くあるならば、その攻撃を防げなければ逆転を許してしまうのです。

     

     そのせめぎ合いはまさにゲームであると言えるでしょう。そしてこの争いはトコヨ、シンラなどのコントロール的なメガミと、ユリナ、サイネなどのビートダウン的なメガミの正しい形での戦いだと考えています。

     

     あとは明白な話ですが、再構成によるダメージの度合いは軽減されるので、よりカードでダメージを与えることに重きを置いたゲームになります。ライフへのダメージが2や3のカードを増やすこともできるため、カードのデザイン空間も広がります。そして展開も派手で鮮烈なものとできます。まずはダメージの面でカードパワーのデフレーションを止め、適度なインフレーションへと舵を切れるのです。

     

    変更点2:基本動作:離脱を追加する

     

     問題1への解答です。『第二幕』では現在の間合が2以下であれば、基本動作:前進が行えなくなるというルールが追加され、それ自体は良いものでした。事実(「足捌き」の調整が必要ではありましたが)ユリナ/ユキヒの強さは適切なものとなり、今の枠内では十分なものです。

     

     しかしここまで見てきたとおり、この先のカードを追加するには、これでは不十分だと分かりました。

     

     それを受けて私どもが至った結論は、「ダスト→間合」という動きの基本動作:離脱を追加するというものです。しかしお察しの通り、安易に行うには以下のような問題があります。

     

    • 基本動作に関するルールを複雑にしすぎると、遊ぶに堪えない煩雑さになる。特に『第二幕』のルールに加え、全く別の特殊ルールまで加わるとなると明らかに問題である。
    • 「ダスト→間合」がいつでもできると、いつまでも近づけず遠距離から殺されるのは『初版』プレイテストの時点ですら分かっている。

     

     これらすべてを解決する方法は『第二幕』のルールにありました。そう、新たな変更点を『第二幕』ルールに紐付けてしまえば良いのです。つまりこういうことです!

     

    • 現在の間合が2以下ならば、全てのプレイヤーの基本動作:前進は基本動作:離脱に変化する。

     

     これによって、間合2以下へと近づかれた際に、間合3以上へ戻しやすくなります。そして離脱に対抗するために正しく強力な前進カードを作れるようになり、結果として近距離型のメガミもデザインできるようになるのです。

     

    変更点3:間合のバランスを見直す

     

     問題1−1への解答であるとともに、変更点2の補助でもあります。変更点2が実行されると、間合の持つバランスは大きく変動します。そのため全てのメガミについて、彼女にとって適切な適正距離がいくつであるのかを見直されることになります。さらに、間合ごとにどの程度のダメージが妥当な強さなのかも再検討されます。

     

     当然ですが、大きく変化するのはユリナです。彼女は『供焚沼蝓法戮任牢峭3-4を得意とするメガミになります。そして薙刀は刀よりは遠くから攻撃できるため、サイネは間合4-5を得意とするようになります。

     

     一方で間合1-2の強みは今よりも小さなものになりますが、基本動作:前進は依然として強力なため地位が落ちすぎるということはありません。結論として『第二幕』のユリナでは攻撃力が過剰であり、傘を開いたユキヒでは過小です。今のところ、この間合での攻撃は2/1にいくらかのメリットが付いたものが適切だと考えています。

     

     この変更はフレーバー面からも歓迎されます。本作が昔はラノベ風西洋ファンタジーな世界観だったのはメガミ特集でお伝えした通りですが、和風に切り替わる際に安易に大剣を刀にしたのは失敗でした。西洋ファンタジーならば魔法やらなんやらあるのですが、和風となると刀より間合が遠い武器は少なく、他方で間合が近い武器はそれなりにあるのです。

     

     刀の間合が3-4と再定義されれば、そこより遠い間合も、近い間合も程よいバランスで存在します。結果として、より多彩な象徴武器を持つメガミをデザインできるようになります。

     

     

     

     半年後の変更について今お伝えできることは、これですべて終わりました。そしてこれらの変更点は『初版』が『第二幕』となった時と比べても、なお大きいものです。現在本作には11×11=121(簡単のため例外は除く)種類のカードが存在しますが、『供焚沼蝓法戮離ードリストで挙動が一切変わっていないのは現時点でも僅かに40種類しかありません。

     

     この変化の大きさ、そして『第二幕』がゲームとしては十分に魅力的な仕上がりであることを踏まえ、最初にお伝えした結論へと至ったのです。

     

     結果として『第二幕』にも改善すべき点がありました。私どもの力不足のために、このような変化を必要としてしまい誠に申し訳ございません。しかし本作が段々とつまらなくなっていく可能性を予見したにもかかわらず、そこにメスを入れないということは私にはできませんでした。どうかこの変更が必要なものであり、より魅力的な未来をつくるためのものであると同意して頂ければ、この上なく嬉しく思います。

     

     これで2本目の記事も終わりになります。3本目の記事ではそれらを踏まえた今後の製品計画や、本作をより魅力的にするために私どもがどう変化するのかをお伝えいたします。