『半歩先行く戦いを』第1回:前進と後退

2017.09.29 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。先日の展望でもお話ししました通り、当ブログは新たな方向性の記事を計画していました。そう、本作の攻略記事です。
     
     混乱を避けるため、対象を明確化しておきましょう。このシリーズは本作の初級者から中級者を対象に書かれています。つまり、少なくともルールは理解しており、ゲームを1回は遊んだことがあるべきです。
     
     あなたならば問題ありませんね? しかしどうでしょう。友人との対戦にせよ、大会での戦績にせよ、今一歩勝利への道筋を掴みきれないということはないでしょうか。そう感じたことが少しでもあるならば、このシリーズはまさにあなたのためのものです。シリーズで学べる様々な基礎を使いこなせば、勝率を大いに向上できる可能性があります。

     

     もしそうでないなれば、釈迦に説法という側面も出てくるでしょう。あなたがそれだけの達人でも、基本を振り返る気持ちでお読みいただいても良いかもしれません。基本は重要ですし、もしかしたら漠然とした感覚のまま用いていた技術が、うまく具体化するかもしれませんよ?

     

     さて、早速はじめましょうと言いたいところですが、実は本シリーズを書くのは私ではありません。理由は2つあります。1つ目は、ゲームデザイナーの視点から攻略を書くとデザイン上の意図やその説明に目が行ってしまい、本来の狙いからそれてしまいがちであること。2つ目は、プレイヤー皆様の実力はもはや、私を超えているということです(ええ、まだまだそう簡単に負けるつもりはないと、謎の仮面は告げていますが(誤解なきよう補足しておくと、仮面が出現するのは1年に一度程度を想定しています))。
     
     他方で記事を書くとなると実力が全てとは言えません。実力は勿論のこと、文章力や技術を理論化する力が必要です。しかしそこで、素晴らしいニュースがありました。本年8月のコミックマーケット92にて、初めて本作の攻略同人誌が出版されたのです。

     

     ここまで言えばお判りでしょう。本シリーズはその同人誌の作者である、つきのみちさんに依頼して書いていただくことになりました。それでは前置きはこのくらいにして、今度こそ始めるとしましょう。よろしくお願いします!
     



    著者紹介:つきのみち
     本作を発売から今日にかけて遊んで頂いている古株のプレイヤー。具体化された理論に裏付けられたプレイングと、丁寧なメタ読みを得意とする。2017年8月のコミックマーケット92では本作の攻略冊子を同人にて作成、頒布した。本作の攻略が理論に基づき、これほどの分量を持って文章化されたのはその冊子が初めてのことである。

     


     

    『半歩先行く戦いを』

    第1回:前進と後退

     

    著:つきのみち

     


     今回は「桜降る代に決闘を」の最も基本的な動き即ち基本行動から、「前進」と「後退」について考えてみようと思います。

     

    1. 前進と後退の基本

     

    「前進」は間合からオーラへ桜花結晶を1個動かす基本行動、「後退」はオーラから間合に桜花結晶を1個動かす基本行動です。「桜降る代に決闘を」の基本は「間合を合わせて攻撃カードを使う」ことであるため、間合を合わせるための基本行動である「前進」と「後退」は非常に重要です。

     

    「前進」「後退」は以下のような性質を持ちます。

     

    • オーラが5の時は「前進」できない(オーラ5から「前進」する場合、先にオーラに空きを作る必要がある。)
    • オーラが0の時は「後退」できない(オーラ0から「後退」する場合、先にオーラを補充する必要がある。)

     

     ここまでは「桜降る代に決闘を」を遊んだことがある方であれば、おそらく誰でも知っているルールの話です。しかし、間合が合わなければ攻撃できない仕様上、間合の移動を制するものは一方的な攻撃の権利を有するに等しく、前進と後退を如何に巧く活かすかは有利不利に直結します。そこで、「前進」「後退」の基本性質から導き出せるセオリーをいくつか解説したいと思います。

     

    2.  接近したい場合のセオリー

     

    A. 相手が中距離の場合

     

    力を溜めて駆け抜けるように

     

     「前進」を行う為にはオーラに空きが必要であるため、相手の致命的な攻撃を防げる程度のオーラを確保したらあとは空けておくと移動の自由度が上がります。まだ前進を続けたいタイミングでオーラを5にしてしまった場合、「足捌き」などの移動カードが無ければ不本意な間合に居続けなければなりません。たとえそれが相手の絶好の攻撃間合だったとしても……

     

     特にトコヨ相手に間合4オーラ5状態は最悪で、「梳流し」で一方的に攻撃される上に「前進」するには「宿し」が必要で効率が悪く、「後退」すれば相手に無償でオーラを献上してしまいます。

     

     こうならないようにするためにはどうするか。まずは相手の攻撃が届かない遠距離で「宿し」を行ってオーラに大量の空きを作っておきます。そして、集中力2、手札4枚の状態から一気に前進を行い、相手の得意間合いを駆け抜けてしまうのです。特にユリナは驚異的な前進力を誇り、5回の前進と足捌きで間合9からでも一瞬で間合2まで詰めることが可能です。

     

    B. 相手が遠距離特化の場合

     

    オーラを失うことを恐れてはいけない。

     

     主にヒミカ相手の場合に言えることですが、「マグナムカノン」などのライフ打点の高い攻撃を防ぎたい、3/1の攻撃はオーラ消費が大きいためライフで受けたい、等の理由で攻撃をライフで受け続けた結果、全く接近できずに死亡する例をよく見かけます。ヒミカ相手の場合、たとえ「マグナムカノン」を食らおうとも、相手の攻撃をどう捌くかはとりあえずオーラが0になってから考える程度で良いです。開始フェイズに得られる前進力は、特定の前進カードを除けば手札2枚と集中力1の合計3のため、最低でもオーラに3個空きを作っておかないとこのうち1回の「前進」は不可能になってしまうためです。多少のライフを失っても、攻撃で相手のオーラを巻き上げた上で2距離に貼り付いてしまえば相手はほとんど何もできません。遠距離相手には接近は最大の防御であり、多少のライフを支払ってでも行う価値があります。

     

     ただし、一部の火力の高いヒミカデッキ(ヒミカ/サリヤが筆頭として挙げられます)相手にこれを行うと驚異的な火力でライフを蒸発させられ死んでしまうため、相手は選ぶ必要があります。

     

     相手のオーラを枯らそう

     

     「後退」に必要な桜花結晶の源泉である相手のオーラを枯らしてしまえば、相手は1歩間合を離するために「纏い」「後退」を両方行わねばならなくなり、極めて間合いを離すことが難しくなります。「浦波嵐」等の強力なオーラ削り攻撃を当てて至近距離に接近すれば、勝利は目前でしょう。

     

    3. 後退したい場合のセオリー

     

    無用な攻撃は慎む

     

     「前進」はオーラに空きがなければ行えないため、攻撃で相手のオーラを減らしてしまうと、減った分だけ前進されてしまいます。相手のライフにダメージを与えられない攻撃は相手のオーラに空きを作り、前進力を高めるだけの結果しか生みません。後退を行いたいのであれば、攻撃は必ず相手のライフを削るという強い意志のもとで行うべきです。相手のライフにダメージが通らないと考えたなら、素直に様子見するか、後退しながら手札を整えましょう。

     

     オーラは命より大事

     

     相手の(2/1)程度の攻撃は、近距離を得意とするメガミの場合は後続に強力な攻撃が続かないのであればオーラで受けてライフダメージを軽減したいところです。しかし、ヒミカのような遠距離メガミがいたずらにオーラで攻撃を受け続けると「後退」に必要なオーラが切れてしまい、反撃の機会そのものが根こそぎ奪われてしまいかねません。死なない程度であれば、ライフを消費してでもオーラの消費を抑えた方が最終的に勝ちの目はあります。

     

    間合を開けることこそ最大の防御

     

     間合9〜10に留まり続けられるなら、究極的にはオーラは0になっても構いません。ヒミカ以外にこの間合でまともな攻撃を行えるメガミはそもそも存在しないからです。半端にオーラを持ち続けるよりは1歩でも「後退」しましょう。

     

    4. 「後退」より「前進」が強いのはなぜ?

     

     「桜降る代に決闘を」において、基本行動の「前進」は「後退」より明確に強くデザインされています。そのため、同じ力を持つのであれば(重要)「後退」を多く行う遠距離型メガミより、「前進」を多く行う近距離型のほうがより強力です。「前進」が「後退」より強い理由は「前進」が自らのオーラを増やすのに対し、「後退」は減らしてしまうことにあります。そのため、一般的には遠距離型のメガミほどオーラを増やしにくく、近距離型のメガミほどオーラが増やしやすくなります。「オーラの増やしやすさ」の差によって生ずる影響には、以下のようなものがあります。

     

    〜蠎蠅らの攻撃への耐性


     一部の特殊なカードを除けば、相手のオーラダメージより多くのオーラが残っている限り《攻撃》はオーラとライフのどちらかを選んでダメージを受けることができます。しかし、オーラが無くなってしまえば全ての《攻撃》をライフで受けざるを得なくなります。1/1(「ふりはらい/たぐりよせ」)や2/2(「鋼糸」、「一閃」)のような、オーラダメージの割にライフダメージが高い攻撃は、オーラがあれば少ないオーラ消費でダメージを抑えられますが、ライフでの受けを強制された場合大きなダメージを受けてしまいます。


    ▲侫譽△涼めやすさ


     フレアは「宿し」を行うことでオーラを消費して貯めることができます。「後退」にオーラを消費してしまう遠距離型では「宿し」でフレアに変換するオーラの余裕が無いため、フレアは貯めにくくなります。特に「ヒミカ」は典型的な遠距離型メガミであることに加え、「マグナムカノン」で自らのライフをフレアではなくダストに移動させてしまうため、さらにフレア状況が深刻になります。


    いずれ後退できなくなる


     相手からの攻撃などによりオーラが減っていくと、いずれは「纏い」でオーラを補充するのが精いっぱいとなり「後退」を行う余力が無くなるため、後退自体を行えなくなります。また、単純にどちらも攻撃を行わなかった場合でも、「前進」はルールが許す限り無限に行うことができますが、「後退」は自らのオーラとダストが尽きた時点で行えなくなるため、いずれにせよ「後退」を行える回数には限度があります。

     

     これらの特性を踏まえて、「後退」効果を持つカードは「前進」に比べてやや強めにデザインされています。「バックステップ」や「ヴァーミリオンフィールド」が良い例でしょう。

     

     また、同じ威力の攻撃であれば適正間合が近いほうがより強力となります。これは、同じ間合から攻撃を行いたい場合に、適正間合が遠い場合は後退してオーラを消費せねばならないのに対し、近い場合はそのままの距離か、または前進してオーラを補充することが可能なためです。

     

    5. 遠距離型メガミと近距離型メガミのデザインを読み解く

     

     先述した特徴を考えた上で、今度は遠距離型と近距離型のメガミの持つカードに注目し、どのようにメガミがデザインされているか考えてみましょう。


     今回は、最も得意な間合が0-2のメガミを「近距離型」、3-5のメガミを「中距離型」、6-10のメガミを「遠距離型」と定義します。


     近距離型のメガミにはユリナ、ユキヒ(傘開)、中距離型にはトコヨ、ユキヒ(傘閉)、オボロ、サイネ、チカゲ、遠距離型にはヒミカが挙げられます。


     ハガネは攻撃札の間合だけ見ると中距離ですが、「遠心」のため実際の挙動は近距離型のメガミに近くなります。


     サリヤは満遍ない間合の攻撃を持っているため、全ての型に当てはまります。


     クルルは攻撃を全く持っていないためどの型にも当てはまりません。


     ここで代表的な近距離型、中距離型、遠距離型のメガミとしてユリナ、サイネ、ヒミカの3柱を、その切札、特にシンプルな攻撃の切札に着目して比較してみましょう。

     

    ユリナ:月影落(消費6) 4/3
    サイネ:律動弧戟(消費4) 4/3(1/1+1/2+1/1)
    ヒミカ:レッドバレット(消費1) 3/1

     

     近距離になるほど消費が大きく、威力が高く設定される傾向にあることがわかります。これは必然的な理由があります。


     先述の通り遠距離型のメガミはフレアを貯めにくいため、仮に大威力であってもフレア消費が大きい切札は使う機会がありません。そのため、切り札として存在する価値があるのは低消費でコストパフォーマンスの良い切札となります。一方で、遠距離型のメガミは決闘の開始直後から一方的に相手を攻撃することが可能なため、近距離型のメガミは接近する頃には満身創痍です。一方でライフを消費している上に「前進」を多く行っているためフレアは潤沢にあります。このような状態で必要になるのは多くのフレアを消費してでも一撃必殺の威力を持つ逆転の切札となります。中間の間合いを持つメガミの場合は、その中間の性質にデザインされているものが多いです(「千歳の鳥」「はらりゆき」等)

     

    おわりに:決闘ルールへの誘い


     ここまで書いたことを読んで、鋭い方なら「前進が後退より強いのであれば、最も得意間合いが0に近く前進力も高いユキヒとユリナを宿して無限に前進し続ければ勝てるのではないか?」という発想に至ったかもしれません。実を言うとその通りです。第弐拡張の登場によりやや緩和されましたが、少なくとも第壱拡張までの段階においては、際限ない「前進」を許すと最終的にユリナ・ユキヒがほぼ最強になります。これはここまでで説明した「前進」が「後退」より強いことに起因します。


     この領域まで至った方には是非「決闘ルール」を遊んでみて欲しいと思います。「決闘ルール」を用いることで間合1以下への「前進」ができなくなるため、単純に近距離を得意とするメガミが強いだけとならない、奥深い決闘を楽しむことができます

     

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