炎天は熱く熱く輝く(前篇)

2017.09.22 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。定期的にお送りしているメガミ特集も第4回を迎えました。以前までに行ったトコヨ特集オボロ特集サイネ特集を一部踏まえた内容となっておりますので、お時間があるならば先にお読みになることをお勧めします。

     

     前回お伝えした通り、しばらくの間はアンケートは行いません。これまで結果に基づいた順番で進め、今回はヒミカ特集となります。

     

     

     それでは、早速はじめましょう!

     

    やり方は前回まで通りに

     

     どのようにメガミを語るかは、これまでのものを踏襲します。どういうものか、簡単にまとめておきましょう。

     

    • 前篇ではメガミの歴史を語り、後篇では個々のカードを語る。
    • 第一幕での六柱を語る際は、本作そのもののゲームデザインと紐付けて語る。

     

     サイネ特集とは違い、今回はこのやり方がそのまま使えそうです。

     

    桜が降るより前の話、その3

     

     トコヨ特集でお話しした通り、本作は最初はライトノベル風西洋ファンタジーな世界観でした。そしてその中で最初に生まれたキャラクターの1人目が「大剣」で、2人目が「銃」でした。明らかなことですが、ヒミカはその「銃」を起源としています。

     

     それ以外では3人目「盾」、4人目「スカーフ」、6人目「扇」は既に紹介しています。しかしながら、この2人はそれら3人を大きく超え、殊更に特別な存在でした。

     

     本作が生まれた時点でほとんどの領域は今のまま存在し、そして当然のことながら「間合」もまた存在していました。つまり、最初のプレイテストの時点で本作の本質は「間合を合わせて攻撃するゲーム」だったのです。

     

     そうなれば、2人の特別性も見えてきます。2人は即ち「近距離の象徴」と「遠距離の象徴」であり、本作の最もエッセンシャルな部分を体現しているのです。本作の最初のテストは、それこそ遠距離と近距離の戦いからはじまりました。そしてそれから長く長く続いたプレイテストは、2人の戦いの歴史でもあったのです。

     

     かなり初期のカードをお見せしましょう。最初のプレイテストを終え、最低限の基本動作として前進と後退が生まれた直後の状態です。この時点で、ヒミカの片鱗は見え始めています。

     

    銃撃    銃    《攻撃》

    適正距離0-10    2/1

     

     シュートの原型です。ここから紆余曲折はありましたが、近い位置に帰ってきたようです。

     

    連射    銃    《攻撃》

    適正距離0-9    1/1

    カードを1枚引く。

     

     この時点でカードを引く能力は銃に与えられていました。しかしながら、流石に攻撃しつつカードを引くのはダメでした。

     

    跳躍    銃    《行動》

    相手オーラ⇒距離:◇1

     

     移動カード枠が作られるより前に銃は追加の移動カードを持っていました。そしてこれは最終的にはシンラの手中に収まります。オーラへの攻撃手段を持つメガミが、オーラを削る手段を持ち合わせるのは問題があったのです。

     

    天啓    銃    《行動》

    カードを2枚引く。

     

     恐ろしいことに通常札です。どうなったかはご存知の通りです。

     

    零距離射撃    銃    コスト2    《攻撃》

    適正距離0    -/2

    この攻撃は対応されない。

     

     このアイデアも最初からありました。

     

     

    遠距離いかにあるべし?

     

     それでは遠距離の話をはじめましょう。そのためには、本作における遠距離という概念を明確化しておく必要があります。当初は以下のように考えていました。

     

    • 遠距離は先に攻撃できる。ゆえにアグロ(速攻)戦術のようなものである。
    • 速攻なので相手の間合に入る前に相手を半殺しにできる。
    • 完全に倒せてしまうとゲームにならないので、勝利まではいかないようにする。
    • 相手の間合に入られた後のフィニッシャーが別に存在する。

     

     説明しましょう。この理念の本質は、間合が近づいていくことをゲームの推移過程として捉えている点にあります。ゲームには時間経過に伴う変化が欠かせません。同じことをただ繰り返すゲームでは、仮に最初の数ターンが楽しくともいずれはつまらなくなります。多くのトレーディングカードゲームはコストの概念を導入し、ターンの経過に伴い利用できる資源が増えるという形でこれを実現しています。資源が増えればよりコストの大きいカードを使えるようになるため、ゲームが変化するのです。

     

     その点において、本作はやや独特なやり方を使っています。変化を与えている一つ目はコストと資源に近い関係にあるフレア。そしてもう一つが、今本題にしている間合です。本作の間合は最大である10から始まり、そして次第に減少していくようにデザインされています(そのために、基本動作の前進は後退より強くしています)。そして興味深いことに、間合に置かれていた桜花結晶という資源がプレイヤーの手元へと移っていくため、資源という意味での変化ももたらされているのです。

     

     ここまでの整理を終えると、遠距離攻撃が得意であるとはつまり、ゲームに変化が与えられるより前に、ゲームを決定づけるだけの攻撃を相手に加えられることだと分かってきます。これは他のゲームにも例えられます。『マジック』や『ハースストーン』における多くのアグロ戦略では、両者の資源が乏しいうちに盤面をクリーチャー(ミニオン)で制圧し、相手のライフ(ヘルス)を削りきるのです。

     

     この種の戦略が存在することはゲームに多様性を与え、魅力的なものです。しかし他方でゲームを押し付けがましいものにしてしまう恐れもあります。アグロ戦略が強い環境では、大半のゲームが変化するより前に終わってしまい、序盤以外の展開を楽しみづらくなります。これは他の戦略を嗜好するプレイヤーにとってはストレスであり、本作もそれを留意しておく必要があります。ゆえに上述した初期案でもダメージは押さえられ、かわりに最も終盤にあたる間合0で使えるフィニッシャーとして、零距離射撃が与えられていました。

     

     この理念は多くの点で今も使えるものです。しかし、間合という概念は存外に奥深く、ゲームデザインで正しく活用するのは難しいものでした。今の私から見て正直にお伝えするならば、第一幕の時点では不十分としか言いようがなく、第二幕作成当時でも至らない点が目立ちます。最近になって、ようやく正しい活用ができるようになってきたかといったところでしょうか。

     

     

    楽しい楽しいシーソーゲーム

     

     プレイテストは、2人の戦いの歴史でもあった。先ほどそうお伝えした通り、遠距離と近距離の戦いは苛烈を極めました。実に厄介だったのは、たいていの場合はどちらかの圧勝に終わっていたのです。そしてどちらかを修正したら、今度はシーソーが逆転してしまっていました。

     

     今回は、遠距離が圧勝した時に絞って話をさせて頂きましょう。 近距離が圧勝した時の歴史や、その際の対策は未来のユリナ特集に取っておくことにします(お察し頂けるかもしれませんが、こちらの方が問題点も多く、話題も多いものです)。

     

     

     遠距離が圧勝するとはつまり、アグロ戦略が強い環境を指します。上述した初期案から立ち上るダメさを感じ取った方には明らかかもしれませんが、まずは遠距離の勝利から始まりました。明白な原因は2つあります。1つ目は0-10という間合です。アグロ戦略は序盤での強さと引き換えに、後半では弱いものです。しかしこの間合では、序盤では強く、後半でも悪くはないという万能さが出てしまいました。そこで間合はまずは6-10に改められ、5以下の間合では攻撃できないようになりました。

     

     2つ目は「カードを引く」、いわゆるドロー効果です。これは明らかに強さを支えていましたが、他方で不思議と文句は出ませんでした。この辺りは後篇、カード個別の話で語らせて頂きましょう。しかしまあ、物事には限度というものがあり、たとえば通常札に「スカーレットイマジン」があるのは当然許されませんでした。

     

     その後しばらくは近距離が優位でした(シーソーは時折動き、そのたびに微調整は行われていましたが)。そしてかなりの時が流れ、α版も近づいてきた辺りで火力全般に大きなてこ入れが入りました。概ねの理由は、遠距離でしか撃てないのだから火力が高くてもよいだろうという理屈と、後述する特性がらみの話でカード全体に見直しが入ったことが理由です。

     

     結果それは良い方向に働きました。しかしながらバランス調整は中々に厄介であり、後篇では様々なカードの調整について話すことになると思われます。実際、末期でさえユキヒと組み合わせ、理論上3ターンで8ダメージを必ず出せるデッキ(まあユキヒ側にも問題が多分にあったのですが)が発見されたりもしました。

     

     そして一年半に及ぶ開発期間の結果、シーソーはそこまで悪くないバランスに仕上がりました。事実、バランスが崩壊していた第一幕ですが、ユリナとヒミカの戦いと考えるとそこまで絶対的な差はありませんでした。ユリナが問題のある火力を叩き付ける他方で、ヒミカもまたその火力より前に十分な攻撃を加えられたのです。最終的にこの2柱は手を組み、邪悪の権化のようなミュータントが誕生してしまったのですが、それはまあ、別の話ということでひとつ。

     

    火が連鎖して炎をなす話

     

     おおっと忘れるところでした。ヒミカの特性にまつわる話もしておきましょう。舞台が和風となり、銃は銃のままで存続することになりました。そしてヒミカという名が与えられ、感情を愛し、人情に溢れ、そして残念ながらバカというキャラクター性も与えられました。

     

     しかしヒミカ(とユリナ)には最初は特性は与えられませんでした。この2柱は最も基本的な近距離攻撃と遠距離攻撃の象徴としてデザインされたため、特性は必要ないと考えられたのです。

     

     ところがトコヨやオボロの特性が定まりつつあるあたりで、ヒミカとユリナにも特性があるべきではないかという方針に切り替えられました(それに伴い、カード全体にも見直しが入っています)。基本的なメガミなので、特殊なギミックは入れたくありません。むしろ、特性がプレイの指針を与えるくらいの方が望ましいと言えます。その結果「ある条件を達成したら、いくつかのカードが強化される」という形式の特性が生まれることになりました。

     

     それではヒミカにはどういう条件が必要でしょうか。ヒミカらしく、同時にアグロ的な戦略を推進する必要があります。ヒミカ、そしてアグロ戦略は行動を推奨します。つまり条件も行動に報酬を与えるものである必要があるのです。

     

     最初に作られたのは「手札が0枚ならば、いくつかのカードが強化される」というものでした。かなり長い間この案で進められていましたが、私はどこか問題を感じていました。そしてある日、ゲーム全体の分析をしていたら気づきました。この条件では単調で簡単すぎるのです。他のゲームではコストの兼ね合いで手札をなくすことは障壁になりえます。しかし、本作には基本動作があるため、伏せ札にして手札をなくすのは簡単なのです。さらに毎ターン引いたカードを使うか伏せるかするのが正解となり易く、単調なゲームプレイにも繋がっていました。

     

     そこで代案を考えたら、驚くほどあっさりと今の案にたどり着きました。行動を推進するなら、カードを使うことを条件にすればよいのです。そして適切な障壁を考えると、3枚目以降というのは妥当な落としどころです。さらにカードを伏せるのは簡単ですが、間合や状況の兼ね合いゆえに、カードを使うのは簡単ではないのです。そして雑に手札を使うだけでなく、手札を溜めるターンも必要となります。結果として、あらゆる面でゲームプレイも魅力的になりました。

     

     

     このようにしてゲームの根幹のひとつ、遠距離とそれに伴う戦略は掘り下げられました。そしてその化身として、炎のメガミが生まれたのです。まだ本当に苛酷なバランス調整の話はしていません。しかしまあ、前篇はこのくらいにしておいた方が無難でしょう。

     

     

     次回の更新は来週、ヒミカ特集の後篇にて、現在のカード個別の話をさせて頂きます。ご期待くださいませ。

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