悠久不変に舞い踊れ(後篇)

2017.06.02 Friday

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    舞の続きをご覧あれ

     

     

     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はトコヨ特集の後篇となります。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします。

     

     これらの記事は本ブログ初の試みとなります。あなたにニュースをお届けするのではなく、特定のメガミに注目して、本作のデザインについてを語るのです。どのメガミに注目すべきかはTwitterのアンケート機能で決められました。結果、トコヨが1位となったので、今はトコヨ特集を行っています。

     

     前篇ではメガミ・トコヨに関する歴史を説明し、彼女のキーワード「境地」が生まれるまでの話をしました。後篇では個々のカードに注目し、それらを通して彼女を語ることにしましょう。

     

    カードの何に注目するか

     

     カードのどこに注目するのか、ある程度のルールを決めておきましょう。この記事では「カードの歴史」と「カードへの評価」に注目することにします。

     

     歴史とは、どのような経緯を経て現在のカードが生まれたかを意味します。この際、最初の6柱が持つカードはルールの調整と併せて変化していたことにはご注意ください(トコヨもその中の1柱です)。また、本作は初版から第二幕の間でも大きな調整が行われています。必要であれば、そこにも触れることでしょう。

     

     評価は、現在そのカードを振り返ってみて、私がどのように感じているかを意味します。主に以下の3点より評価します。

    • そのカードはゲームを魅力的にしているか
    • そのカードのバランスは適切か
    • そのカードはメガミの気質を体現しているか

     印刷に至るまでの間、私どもは個々のカードを最善のものとできるよう努力を重ねておりますし、現在も多くのカードに満足しています。しかし残念ながら、出版から時間が流れ、コメントや大会の結果といった多くのフィードバックを頂いていくと、私どもの至らなかった部分もまた見えてくるものです。

     

     したがってこの記事では、カードに対して否定的なことも書きます(特にトコヨは他と比べて反省点の多いメガミです)。だからといって、それらのカードが直ちに調整されるわけではありません。私どもはゲームをより魅力的にしていく計画を持っていますが、急ぎ過ぎるべきではないとも考えています。

     

     前置きはこのくらいにして、早速はじめましょう。

     

     

     防御的なメガミをデザインする上で難しいのは、ただ防御的にしてしまうとゲームが停滞するだけで面白くないことにあります。ゆえに彼女には、他の攻撃的なメガミとは違う印象の攻撃性が必要でした。

     

     その結果「蝶のように舞い、蜂のように刺す」というコンセプトへと至りました。それを実現するのが直撃攻撃(オーラへのダメージが「-」である攻撃)でした。相手の隙を突き、防御を無視してダメージを与えるのです。代わりに隙間を縫うような巧妙さが必要ですので、適正距離は細く、簡単には戻り辛い4となりました。

     

     また、《攻撃》カードの枚数を少なくすることで彼女の個性を強調しました。しかしそうなると彼女を攻撃戦略のメインに採用しづらくなるため「梳流し」には使いまわしの効果が与えられたのです。

     

     これらの個性は舞踏らしさを感じられ、芸術を体現しています。伝統的な芸術は繰り返しの美学でもあるのです。実に彼女に相応しいものと言えるでしょう。

     

     魅力的である一方、「梳流し」はいくばくかの問題を抱えているとも感じています。第一幕では適正距離4があまりにも弱かったため見過ごされてしまいましたが、私どもは直撃攻撃の強さをいくらか見誤っていました。ただ、ゲームを破壊するほどの強さではなく、さらにトコヨが自らの戦略をゲームを終わらせる方向に用いる重要なパーツであるため、大きく問題視はしていません。

     

     

     彼女が「盾」であったころから存在してきたカードです。防御的なメガミとして生まれてから、《攻撃》を打ち消すもっとも基本的なカードとしてカードプールに存在していました(たまにいなくなったりしましたが、最後は帰ってきています)。

     

     カードの存在意義や、彼女らしさについては言うことのないカードです。彼女は堅物の芸術家であり批評家なので、打ち消すのは大得意なのです。

     

     他方で、数多くの調整がなされたカードでもありました。主な調整は適正距離とダメージで、それと並行して打ち消しに条件が与えられることもありました。1/1では攻撃としての魅力が低いこと、トコヨは適正距離3-4というデザイン指針であったこと、複雑性を下げられることなどの理由で現在の形に落ち着きました。

     

     しかしどうやら、それは誤った決断だったようです。「雅打ち 」は大きめの問題を抱えています。それは強さというよりも、環境を悪い形で歪めてしまっていることにあります。

     

     初版から比べて3柱ものメガミが追加され、さらに第二幕のルールが反映された結果として、適正距離が3や4である《攻撃》はより重要かつ魅力的なものとなりました。しかし「雅打ち」はそれらのカードを咎めすぎています。結果、それらの戦略がやり辛くなりすぎてしまい、ゲームの可能性を狭めてしまっているのです。

     

     調整の回数が多いことを私どもは反省しています。それさえなければ、この問題は急ぎ解決したいと考えています。理想をいえば第二幕の時点で調整されるべきでしたが、当時はより暴虐的な暴力に支配された世界であったため、このカードまで考えが至りませんでした。これは大いに反省すべき個所と捉えています。

     

     

     トコヨの移動カード枠です。移動カード枠? ええ、説明しましょう。

     

     実はあるタイミングまでメガミ固有の通常札は5枚であり、代わりにどのメガミでも使用できる共通カードが存在していました。その中には「前進」や「後退」をより効率的に行うカードも含まれていました。

     

     しかしプレイテストを重ねた結果、共通カードは不要と判断されました。そしてメガミ固有の通常札を増やし、そこに「移動カード枠」を作った方がメガミごとの個性が強調され、多様なゲーム展開が楽しめると分かったのです。

     

     トコヨは間合3や4で戦うため、後退が必要です。そこで2歩の後退を彼女に与えることにしました。しかしそれがいつでも行えると、相手はいつまでも前進できずにストレスを感じることは分かっていました。ゆえに間合の制限が加えられたのです。

     

     それ以降の調整はありませんでした。仕上がりにも満足しています。舞踏のような動きであると同時に、慌てて跳ねるように動くという動作は、彼女の子供らしさを強調しています。彼女は永遠性ゆえに、老練な芸術家であると同時に、たいへん子供らしい精神も持ち合わせているのです。

     

     

     詩舞の歴史は前篇でも触れています。これは元々、風流というコンセプトのカードでした。風流に問題があると分かり、それらのカードは2つに分かれました(ところでその片方は「詩舞」であるわけですが、もう片方が何なのか分かるでしょうか?)。

     

     そして、このカードの持つ2つの効果を意味あるものとするために対応が付けられ、そこからはカードプールにずっと存在しつづけました。

     

     環境を観察して得られた後付の着想ではありますが、このカードこそが彼女を対応のメガミたらしめていると考えています。《対応》カードは「打ち消し」「回避」「防御」に区分できますが、「雅打ち」とこのカードで3区分全てをカバーしているのです。代わりにこのカードは2区分を強い形でこなしてはいません。その辺りまで含めて、よい塩梅のカードです。

     

     

     私は全てのカードを愛していますが、このカードは特に好きなものの一つです。私は『ハースストーン』のプレイヤーでもありますが、一番好きな瞬間はウォリアーとしてアーマーを積む瞬間です。「盾」のキャラクターをデザインするに際し、そういう気分になるカードを必ず作ろうと考えていました。そうすれば私と近い気質のプレイヤーは必ず喜ぶはずです。

     

     そのためのアプローチは、オーラの回復と山札の回復でした。事実、その類のカードは最初の最初からずっと存在していたのです。しかし、オーラを回復し続けるといつまでも攻撃が通らず鬱陶しすぎ、山札の回復は複数種類があると容易にループするため、今後のデザイン空間を狭めすぎていました。

     

     そんな中で《全力》カードという発明がなされました(《全力》の登場も集中力と同じくらいには新しいものなのです)。結果、両方のアプローチを無理なく共存させられたのです。トコヨらしさとして見ても、芸術家として精神を整え、繰り返しを実現するという意味でそれらしいものとなっています。

     

     

     トコヨを《対応》のメガミとすると決めた時点で、対応することにより何かを誘発させるカードはずっと存在していました。それにより「対応デッキ」が存在するようにしたかったのです。例えばしばらくの間は、対応するたびにオーラを回復するというものでした。

     

     それでは魅力に乏しかったためいくつかのバージョンを経て、現在の形に落ち着きました。ライフにダメージが入るとなれば、メリットは十分です。やや強力過ぎたため境地の条件をつけることにしました。相手のターンで参照されるようにすれば境地の縛りを強調できるため(次のターンに集中力を得られないというデメリットも生まれる)、良くかみ合っています。

     

     しかし結果としては失敗だと考えています。対応デッキは成立しませんでした。ライフへのダメージほどのデメリットがあるとなると、攻撃しないことが正解になるのです。そもそも効果が誘発しなければ、コンセプトとしてお話になっていません。

     

     現在では優位に蓋をするカードとして評価されてはいます。しかし、攻撃を大きく抑止し過ぎるためにゲームを遅延させ、快適なゲーム体験を妨げているとも感じられます。致命的な問題か言われるとそうではないのですが、可能であれば改善したい箇所の一つです。

     

     

     舞踏家のステップを体現するカードです。また、展開時効果と破棄時効果の時間差から魅力を出すことを狙ってもいます。

     

     β版では全く異なるカードで「再構成のダメージを増やす」ものでした。しかしこれは実質1ダメージのようなもので、特殊な制限のない1ダメージはゲームの魅力にならないと我々は判断しました。そこで空いたカード枠に収まるよう、動きのイメージからカードをデザインしたのです。

     

     第二幕でのルール変更により、前進効果は間合2よりも前への前進を可能になったため、独特の魅力が生まれました。もともと面白みのあるデザインになっていたのが、追加のルールにてようやく適切に働くようになったと言えるでしょう。現状の仕上がりには満足しています。

     

     

     「雅打ち」同様、「盾」であったころからずっと存在したカードです。そしてこちらは正真正銘、一度もリストから外れずに残り続けました。

     

     対応は攻撃にのみ行えるというルールになった時点で、切札含めたあらゆる攻撃を打ち消せる切札は必ず存在すべきでしょう。しかし問題として、相手の大技を打ち消すため、ゲームを遅延させる可能性がありました。そこでライフに1ダメージも与えられるようにして、ゲーム展開を前に進めるようにしたのです。

     

     本当の最初から、一度も効果は変更されませんでした。唯一変化したのは消費です。3から始まり直ちに4になり、そしてしばらくの時間を経てから5になりました。

     

     必然性から生まれたカードではありますが、まさしく彼女を体現したカードです。未来永劫、このままあり続けるカードだと信じています。

     

     

     繰り返しを好む永遠性という彼女の気質や、防御的な要素を入れるというデザイン方針から、トコヨは山札回復をサブコンセプトとしたメガミでもありました。

     

     そのため「あなたの山札を再構成する」というテキストのカードは定期的にリストに入っていました。しかしこの効果は存外に扱いが難しいものでした。単にそれしか行わないのでは魅力に乏しく、かといって再起を付けたらゲームを著しく遅延させてしまいます。

     

     解決方法は単純で、攻撃に付けて攻撃後効果にするというものでした。攻撃しているのでゲームは前に進み、間合の制限があるので撃ちたい時に撃てるとも限らない、程よい塩梅のカードに仕上がったと考えています。

     

     

     前篇で語った通り、かつては「逆さ風」というカードが切札に存在していました。そしてメガミの設定を煮詰めるに際し、トコヨの切札の名前が花鳥風月に整えられた際に、そのまま風の枠へと収まりました。

     

     しかし風流は没になり。「逆さ風」は然るべきどこかへと移住することになり、風をイメージとしたカードをカード名から考える必要が生じました。その結果として生まれたのがこのカードです。急な突風で攪乱し、相手の選択肢を削ぎ落すのです。

     

     魅力的なことにこのカードは、境地を絶妙な形で生かしています。切札として1回撃つだけでは魅力的ではないですが、使いまわせるとなると見事な鬱陶しさを与えます。しかしカードの使用と再起でフレア1と集中力1を支払っているため、ただ乱用しただけではアドバンテージにはつながりません。使用者の実力がしっかり出るカードになっているのです。

     

     気になる点もあります。これは対応への対策となるカードです。対応への対策を、対応が得意なメガミが持つのが正しいのでしょうか。今も私の中で答えは出ていません。境地との相性や、カード単独の出来から、今はこのままであるべきと判断を保留しています。

     

     

     前篇で集中力が生まれるまでを語りました。このカードは勿論、それに伴って生まれたものです。トコヨは集中力を2に保ちたいメガミですが、それでも基本動作をしたい場面はあり得ます。このカードがあれば、それを実現できるのです。

     

     しかしながら、現状を見るとやや魅力に乏しいカードになってしまったと考えています。「梳流し」のコンボを円滑にできるため、出番が全くないわけではないのですが、もう少し何かのおまけをつけるべきでした。

     

     

     原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。

     

     トコヨの問題はダメージソースの不足にあります。彼女はダメージをライフに直撃させるのが得意なので、そういった効果になりました。しかし、単にダメージを飛ばすだけでは無粋ですので、付与札の破棄時効果としました。展開中効果は防御的なものとして、彼女の「蝶のように舞い、蜂のように刺す」を強調したつくりにしたのです。

     

     

     原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。トコヨが最も注目するのは集中力なので、その部分のルールを打ち破る効果になりました。また、《対応》カードを構えるのも彼女らしいところなので、手札のルールも打ち破ります。

     

     喜ばしいことにどちらも上限は2なので、どちらも3にするという形で流麗かつ分かり易いものとできました。カードとしての美学や、彼女らしい美的センスから見ても重要なところです。

     

     これだけでは原初札としては弱いので、逆の効果を相手に与えることにしました。これによって、挑戦者は異なるゲームをやっている感覚を得られ、挑戦がより魅力的なものになります。

     

     結果「トコヨに挑戦!」はこれまでの中で最も適切なバランスで魅力的なものとなったと考えています。

     

     

     これにてトコヨ特集は閉幕となります。様々なカードに秘められた物語をお楽しみいただけたら嬉しい限りです。今回の特集への感想や、他に行ってほしい特集などありましたらTwitter(@BakaFire)までお伝えください(前回はコメントありがとうございました!)。

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     次回の更新は来週、今後の展望、2017夏でお会いしましょう。