悠久不変に舞い踊れ(前篇)
2017.05.26 Friday
新たな試みへの協力に感謝!
こんにちは、BakaFireです。今回の記事に向けて、ひとつの新たな試みを行ったことをあなたはご存知でしょうか。そう、今回の内容はTwitterのアンケート機能によって決められたのです。当該のツィートはこのようなものでした。
『桜降る代に決闘を』ブログの次回の記事として、一柱のメガミに注目した特集を行います。原初札まで出ている基本のメガミから、誰の記事を読みたいか教えていただけると助かります。 #ふるよに
— BakaFire/GM2017春A32 (@BakaFire) 2017年5月12日
204票ものご協力をありがとうございました! 結果、僅差でトコヨが勝利しましたので、今回の記事はトコヨ特集となります。この記事が好評であれば同じ試みはまた行いますので、他のメガミにご投票いただいた皆様もご安心ください。
さて、一柱のメガミに注目するとなると、次のやり方が思いつきます。
- 過去の歴史を語る
- 個々のカードを語る
悩んだ結果、この記事では両方やってしまうことに決めました。しかし、1つの記事にまとめると内容が薄くなってしまうため、前後篇に分けることにします。というわけで今回は前篇であり、トコヨの歴史を語るとしましょう。
旧い話をいかに語るか?
第一幕での六柱(ユリナ、ヒミカ、トコヨ、オボロ、ユキヒ、シンラ)の歴史を語るうえで厄介なのは、彼女たちはそもそものルールと共に変遷しているということです。彼女たちの「古い」カードを1枚抜き出して語ろうにも、そのカードは現在のルールで働いているとは限らないのです。
そこで彼女らの話には、『桜降る代に決闘を』というゲームそのもののデザインにおける昔話を盛り込むことにしました。そしてこのシリーズが続くことになれば、結果としてゲームデザインの断片的情報が多数生まれます。それらを繋ぎ合わせていくのは、実にロマンティックで楽しいだろうと期待しています。お楽しみいただけたら嬉しいです。
桜が降るより前の話
トコヨを語る最初の一歩は、彼女はいつ生まれたのかという点にあります。その答えは「初めから」です。まだ名もない彼女は、本作の最初のバージョンに名を連ねていました。まずは接近戦型として「大剣」が生まれ、それと対比するように「銃」が生まれました。そして3人目として、防御型の「盾」が、6人目として回避型の「扇」が生まれたのです。
大剣? 盾? 何かがおかしいと感じたかもしれません。そう、本作は最初はそもそも和風ですらありませんでした。コロシアム的な場所で、ラノベ風西洋ファンタジーな決闘を行うゲームだったのです。しかし、32個の特別なトークンを用いることは決まっていました。それらのトークンをどのようにすれば魅力的なのかを模索し、「桜の花びら」とアイデアが出た瞬間に、世界は和風へと変化したのです。
「大剣」は直ちに「刀」になりましたが、「盾」は悩ましい立場に立たされました。思索の結果、防御型のキャラは2人も必要ないと判断し「盾」のコンセプトは「扇」へと吸収されました。もともとオリエンタルなイメージで「扇」を持っていたキャラがいたため、和風への転換は想像以上に簡単でした。
その際に、これまで武具を通した記号だったキャラクターに、幾ばくかの設定が与えられました。「扇」は芸術家としての気質を強く帯び、かくして芸術のメガミ、トコヨが誕生したのです。
折角ですので歴史のカケラとして、当時のカードをいくつかお見せしましょう。文章は敢えて原文ママにしております。これらを通し、歴史の想像をお楽しみください(こういったカードは、今とルール面で差があることにご注意を)。
盾の壁 盾 - 《対応/攻撃》
適正距離0-8 0/0 対応した攻撃を打ち消す。
深呼吸 盾 - 《行動》
ダスト⇒自オーラ:◇2
このカードを山札の一番底に置く。
カウンタースマイト 盾 コスト3 《対応/攻撃》
適正距離0-10 --/1 対応した攻撃を打ち消す。
演舞:雪 扇 コスト4 《付与》
あなたが対応を行うたび、以下を行う。
・ダスト⇒自オーラ:◇1
何かの原型として、今も生きているカードたちです。結果として死んだカードたちは、いつか日の目を見る時のため、お見せしないことにします。
風が吹き、花弁は舞う
幾らかの時が流れ、キャラクターたちは「メガミ」となり、性格を持つようになり始めました。その頃に、全てのメガミにコンセプトとなるキーワードを入れていこうという指針が定まりました。
トコヨに初めて与えられた特性は「風流」というものでした。扇で風を起こし、相手の方に桜花結晶を吹き散らすのです。正確には「自/フレア→自/オーラ、自/オーラ→間合、間合→相/オーラ、相/オーラ→相/フレア」から1つを選びます。それを聞いても、相手の方に吹くというイメージが沸かないかもしれませんね。補足として、β版のボードをご覧いただきましょう。
例えば、こんなカードがありました。
扇ぎ払い 扇 対応/攻撃
適正距離1-5 1/1 【攻撃後】風流を行ってもよい。
舞い散らし 扇 行動
風流を2回まで行ってもよい。
また、風流が逆になると極めて強力です。こんなカードもありました。何の原型かは自明でしょう。
逆さ風 扇 消費3 付与
チャージ:2
【展開中】あなたのカードの効果でマーカーを動かすとき、本来とは逆の向きに動かす。
しかし風流には問題がありました。特に問題なのは「相/オーラ→相/フレア」の部分です。無条件でオーラを削り取れると、後ろに控えている大技を確定で当てられてしまいます。これがメガミに1枚程度ある分にはそういう小技として問題ありませんが、一柱のメガミにまとまった枚数、コンセプトとして存在するには厳しいものでした。
その結果「相/オーラ→相/フレア」の部分が削られ、複数の効果から1つを選ぶという「選択」コンセプトのメガミとなりました。その部分は、今も「詩舞」あたりにそのまま残っています。
しかし、どうにもメガミのキャラクター性を体現したものではなく、さらに「選択」はカードのデザイン空間が広く、一柱のメガミに納めてしまうには相応しくありません。そういった悶々とした状態のまま、トコヨはしばらく取り残されていました。
芸術家の境地へとたどり着け
再び時は流れます。微妙な立場のまま放置されたトコヨですが、ある発明が彼女を救い出しました。それこそが「集中力」です。
疑問符を浮かべたかもしれません。そう、今では当たり前の存在である集中力ですが、意外や意外、生まれたのは比較的後のことだったのです。具体的には、β版のリリースが見え始めていた時期でした。
もちろん、基本動作が必要なのは早々に分かったため、基本動作そのものはずっと存在していました(ちなみに、本当に最初のコロセウム時代ではマジで前進も後退もありませんでした。クソゲー! 当然、最初のプレイテストで手札1枚を捨てて前進や後退ができるようになりました)。
そして、基本動作が手札だけのコストでは行動回数が少なすぎ、展開が退屈になることも早めに発見され、最初は「ターン中に1回無料で行える」「開始フェイズに1回無料で行える」などの方法でそれを補っていました。しかし、無料の基本動作をもう行ったか分からなくなったり、基本動作をやり忘れてドローしてしまったりといった問題が頻発し、解決策が模索されていました。
その結果生まれたのが集中力です。正直、本作はすでに管理すべき要素が多く、この時点ではさらに別のゲージを増やすという解決法には懐疑的でした。ですが、いざ導入してみたら、思ったよりもストレスはありませんでした。
そしてその瞬間に大きなひらめきを得ました。最大値を2にするのです。こうすることで、リソースの蓄積や運用といった、新たな考えどころをゲームに追加できます。そしてそれ以上に、これはフレーバーに即したものでした。集中力を溜める「静」の時間と、それを使って行動する「動」の時間。武道における静と動のリズムを体現できたのです。これは和風の決闘において、欠かせないと確信しました。
集中力を使うと決めたら、そこにさらなる意味を与えたくなるのは当然のことです。そして脳髄に電撃が走りました。芸術家は集中力を極限まで高め、その時に新たな境地を垣間見るものです。つまり、芸術家である彼女こそが、集中力が最大、2であるときに強化されるべきなのです。
すべてのピースが絵画へと収まった瞬間です。そして彼女は静かに微笑んでいました。
これにて芸術と永遠のメガミ、トコヨの在り方は完成へと至りました。その後もカード個々の調整は続きましたが、彼女の昔話としては、これで十分でしょう。 お楽しみいただけたら幸いです。
次回の更新は来週、トコヨ特集の後篇にて、現在のカード個別の話をさせて頂きます。ご期待くださいませ。
また、今回の特集への感想や、他に行ってほしい特集などありましたらTwitter(@BakaFire)までお伝えください。あなたの一声が、今後の記事を変えるかもしれません。お待ちしております!
この記事に関するツィートはこちらです。もしこの類の記事に魅力を感じて頂けたならば、いいねあたりを押して頂けると、好評と判断しやすくて助かります。