シーズン5→6カード更新

2020.08.04 Tuesday

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     こんにちは、BakaFireです。新型コロナウイルスの影響もあり長期に渡ったシーズン5ですが、昨日9月10日にいよいよ幕を下ろし、本日よりシーズン6が開始します。それに伴い8枚のカードに更新が行われますので、本日の記事ではそれらについてお話いたします。
     
     この記事の流れを説明します。まずは本作が全体として向かっている方向を明確にします。その上で全てのメガミに対してコメントを行い、更新があるメガミについてはその理由を説明します。

     

     

    ゲームバランスに向けた現在のスタンス

     

    方針1:環境や体験の変化を重要視し、その手段として強力なメガミの追加を目指す。

     

     私は『第四拡張』から追加するメガミをより強力にする方針を取っています。理由は4つあります。いずれも『第四拡張』『第伍拡張』やそれらにおけるカード更新で共通した考えであり、禁止改定の場などでも断片的に述べていますが、ここで改めて整理します。
     
     1つ目の理由はバランス調整理念に従うためです。私どもは全てのメガミが「強い」と感じられ、その強みの方向性が異なって感じられる状態を目指しています。そのためにも各メガミがきちんと強いことは必要な条件です。
     
     2つ目は本作で提供する体験を望む方向へと動かすためです。私は気持ちいい瞬間を感じられるようにメガミをデザイン、調整しています。気持ちいいとは知恵を絞り、意思決定を繰り返し、その結果として充実感を感じられることです。しかし気持ちいいためには、充実感を感じる際の動きがきちんと強くなくてはなりません。
     
     強い動きがうまく決まった瞬間は一見して理不尽です。ですがそもそも強いカードとは須らくどこか理不尽なものです。そして両者が互いに強い動きを持ち合い、それを狙い合うのであればお互いに理不尽さを(笑顔かどうかは分かりかねますが)許し合い、総合的にはより楽しい体験に繋がると私は信じています。そしてもちろん勝者には気持ちよくなる権利が与えられます。
     
     3つ目の理由はゲームに競技的挑戦と勝利を求めるプレイヤーのためです。大会の環境が変化し、その結果としてゲーム全体の体験が前のシーズンから変化してこそ、それらのプレイヤーに新しい挑戦を提供できます。これはシーズン3から4において十分な変化を提供できなかった点を強く反省しています。
     
     4つ目の理由は失敗した際のダメージの問題です。私はここまで4年半にわたって本作を作り続けてきましたが、特定のメガミが強すぎるよりも弱すぎるほうがダメージが大きいと評価しています。
     
     第一に本作のキャラクターゲームにおける面での批判がより大きなものとなります。第二に後の調整が困難になる傾向があります。強すぎる際には使用率の高いカードを弱めればよいですが、弱すぎる際には方針が定め辛く、一部のカードだけが強くなりすぎるリスクを鑑みると調整枚数がかさみやすく、調整内容もどこか強引なものとなりやすくなります。少し弱い程度であればそこまでの問題にはならないので、もし極端に悪いほうに傾いてもその水準で済むように保険をかけておきたいのです。

     

     この方針はカード更新においても全面的に適用されています。カードの下方修正は本当にやむを得ない場合にのみ行い、更新は常に上方修正を優先する形で行われます。
     
    補足:『第参拡張』について
     
     この方針は『第参拡張』への私の中での評価の変化により強まっています。私は『第参拡張』を発売直後にはかつてないほどの大成功と表現しましたが、実態は異なり、学びとするべき失敗が含まれていました。但し、デザインの楽しさという面では成功しており、発売直後の素晴らしい評判もまた事実だったと考えます。

     

     『第参拡張』は『第弐拡張』におけるホノカの大失敗からメガミの強化を意識しつつも、シーズン1や2での問題を恐れ、本質的には「強く作る」方針を根幹に据えてはいませんでした。
     
     その結果、一見して弱すぎはせず、騒がれるような問題の気配もありませんでした。しかし今となって思えば、問題の気配がないとは即ち活躍の気配もないということでした。実体としてはコルヌもヤツハも上方修正が必要であり、(アナザー版ライラがあまりに存在感の大きい失敗であるために惑わされそうですが)総合的には『第四拡張』の方が成功したと今は評価しています。

     

     

    方針2:王道と対比して邪道のアプローチを行い、両者が輝けるようにしていく

     

     こちらの方針は『第四拡張』から始まったものであり、『第伍拡張』でもそれは引き継がれています。歴史的な経緯を含めて説明しましょう。
     
     この指針はシーズン4における失敗から始まっています。シーズン4ではユリナを中心とした王道の戦い方が強力すぎました。その結果として王道が邪道を駆逐し、ゲームの体験において多様性が失われてしまったのです。
     
     それを踏まえて私はカード更新を行いましたが、それと共に王道とは何であるのかを考え続けていました。そして現在に至り、今では王道とは以下の3要素からなると結論付けました。

     

    王道1:王道とは間合を2に近づけることで優位を取れる立ち回りである。
    王道2:王道とはなるべく多くの攻撃カードを採用する立ち回りである。
    王道3:王道とは相手のオーラを破り、ライフにダメージを通す立ち回りである。

     

     いずれも自然に強くなりやすい立ち回りですが、強くなる理由は異なります。1は本作の根幹を成す《前進》は《後退》より強いという構造から自然に由来するもので、2と3は本作の基本となる体験を「間合を合わせて攻撃するゲーム」からずらしすぎないために意図的に攻撃カードが強くデザインされるためです。
     
     これら3要素を切り分けることは有意義です。王道はゲームの軸に据えられているからこそ強いのであり、王道が邪道を駆逐しているからといって無理に全ての王道を毛嫌いしては本作は本作らしさを失ってしまいます。
     
     王道を破るためにメガミをデザインする上でも考えやすくなります。デザインにあたってどの王道を破るつもりでデザインするかを考えれば、無理をし過ぎずにメガミを設計できるのです。
     
     王道を破るかどうかは緻密に見るならば度合いの問題でもあります。ユリナは王道2と3に完全に従う一方、王道1には概ね従っているという程度です(彼女の攻撃力が最も高まるのは間合3です)。しかし私自身の意志という荒い尺度で述べるならば、ユリナは全ての王道に従っていると捉えられます。
     
     『第四拡張』では私は王道1への徹底的な抵抗を試みました。王道1はゲームの構造から自然に生まれているために強固であり、強い意志を持って取り組まなければ破れません。少なくともこの試みは成功だと評価しており、ハツミやアナザー版サリヤを私は高く評価しています。
     
     そして『第伍拡張』ではこれらの試みをさらに進めました。まずメグミは王道1への抵抗を推し進める役割を持ちます。王道1と競技的環境で競り合うには、王道1を破ろうとするメガミが三拾一捨を組める十分な数だけ存在しなくてはなりません。加えて王道2を適度に破る意図もあります。
     
     カナヱは王道3を破る可能性が生じるようにデザインされました。王道3は他の王道と比べて頻繁に破られるべきものではなく、また破るにしてもどこまで破るのかを繊細に判断する必要があります。その上で今回はクルル以来の適切な機会と判断し、本作らしくないゲーム体験の提供に力を入れました。
     
     今回のカード更新でも王道に関するこれらの考えを踏襲しています。ただしカード更新では王道を破ろうとする方向だけを向いているわけではありません。邪道が輝くためには、一方で強い王道もまた必要だと私は考えています。


     今の私が向かおうとしている方角は以上のようなものです。ここからは個々のメガミの話を行いましょう。
     
     
    ユリナ

     

     私は今のユリナにオリジン版、アナザー版ともに満足しています。彼女が第一線で戦えるほどに強く、「斬」「一閃」「月影落」などの攻撃が強くて気持ちよいのは新規のプレイヤーに安心感を与える面でも、王道をプレイヤーに認知させる面でも正しく働きます。
     
     その一方でユリナを宿せば、ユリナを宿していないプレイヤーに勝ちやすいという安易な状況ではもはやありません。間合やフレアの制御による抵抗はやりやすくなり、ユリナを超える瞬間火力を持つメガミも増えました。ユリナを宿して勝ち続けるには十分に考え、意思決定を重ねる必要があります。
     
     感覚として「月影落」への抵抗は(シーズン4と比べて大いに改善したものの)もう少しだけやりやすくてもよいと感じています。しかしそれはユリナの弱体化でなされるべきとは今は考えていません。
     
     今のユリナはシーズン4→5で唱えたトコヨ、サリヤらの立つ基準の位置に落ち着いていると私は評価します。
     

     

    サイネ

     

     今現在の20柱において、サイネは私を最も悩ませているメガミです。前回の「圏域」の調整そのものは小さな成功とは捉えています。しかしそれによってサイネが満足できる状況になったとは言えません。ここでオリジン版を強さの面でどう考えているか言及するつもりはありませんが、少なくとも体験の面で不満があります。

     

     アナザー版はより悪い状況です。2つとも強さのみならず、アナザー版で優先されるべき体験の段階で問題を抱えているのは明白です。しかしアナザー版に安易に手を入れる以前に考えるべきことがあると捉えています。
     
     実のところ、適切に感じているアイデアはすでに頭の中にはあります。しかし実行には少なくとも4枚、アナザー版まで手を入れるなら6、7枚の更新が必要であり、今回行うには負担が大きすぎると判断しました。
     
     ここで言う負担とはユーザーの皆様の心理面の負担や、私の予算面の負担など様々なものを総合したものです。今回の『第伍拡張』発売は単なる新製品という意味には留まらず、新型コロナウイルスの感染拡大という災禍を本作が乗り越え、これからも存続していくための第一歩という意味を持ちます。サイネへのアイデアは、その中で押し通すにはリスクが大きいものでした。

     


    ヒミカ

     

     私はヒミカの現状に強く満足しています。シーズン4→5での調整は一部の問題がある組み合わせを適切な立ち位置まで整えながら、ヒミカ全体の地位は保たれました。
     
     そして『第四拡張』から行われた王道1への徹底抗戦はヒミカの境遇への喜ばしい変化をもたらしました。シーズン4ではヒミカそのものは強力にもかかわらず、相方が不足して三拾一捨で活躍するには難しい側面がありましたが、それが改善しつつあるのです。『第伍拡張』でその試みはより推し進められ、ヒミカはより良い状況となると期待しています。
     
     総じて、ヒミカもまた基準の位置にいると評価します。
     
     アナザー版については体験の面では大いに満足しています。オリジン版の更新が不要となるか、あるいはアナザー版のための大きな改革を行うべき好機が訪れるならば、いくらかの上方修正を行う可能性はあります。

     


    トコヨ

     

     今のところ私はトコヨにはシーズン4→5での見方を維持しています。つまり適切な強さにあり、下方修正も上方修正も行う理由はないということです。
     
     しかしシーズン5においてトコヨは特に活躍に恵まれませんでした。これは周囲の強化や流行の戦略の変化に伴うものだと評価していますが、彼女が本当に基準の位置に立っているのかどうか観察の必要性を示す要素でもあります。
     
     今シーズンには新たなアナザー版が追加され、トコヨはオリジン版とは異なる強みを持った姿と共に、実質3柱分が環境内で考慮されます。私はその動向を強く注視するつもりです。

     


    オボロ

     

     オリジン版のオボロには絶対的な強みと、適切な弱みが両立していると評価しています。オリジン版オボロの強みは王道1に従っているゆえの強みです。ゆえに王道が支配していたシーズン4の段階では下方修正の可能性を捨てきれていませんでした。
     
     しかし王道1へと反発する方向に物事を揺り動かした結果として、オボロの弱みもまた強調され始めてきました。今ではオリジン版オボロへの下方修正は不要だと判断し、オボロもまた基準の位置に落ち着いたと評価します。
     
     ひとつ個別のカードで特記しておくことがあります。「壬蔓」です。『第伍拡張』の開発において何度か「壬蔓」との相互作用を加味するとゲームを破壊する(そして弱体化して直すと「壬蔓」前提になってしまう)カードが生まれました。即ち「壬蔓」はゲームのデザイン空間を大きく狭めています。
     
     ゆえに「壬蔓」は「第4類:環境を整えるための方向性の調整」の調整候補として俎上に乗せられました。しかし、ならばどう変更するのかとなると答えが出ませんでした。
     
     「壬蔓」は1枚のカードとしては大成功しています。「壬蔓」があるからこそ楽しく強力なデッキが多数存在し、ゲームの体験の幅を広げています。少なくとも今の時点では調整が必要なほど強力な組み合わせも生まれていません。「壬蔓」の問題を回避し、「壬蔓」と同等に体験や相互作用における楽しさを際立たせたカードを私はデザインできませんでした。この問題は「壬蔓」の問題というよりも、カードプールの拡大とゲームの骨格に伴って回避不能の問題が顕在化したのかもしれません。
     
     最終的に私は、発売日時点の禁止改定で組み合わせ禁止を出す方がゲームをより良い方向に向かわせると決断しました。組み合わせ禁止の基準や位置づけについてもバランス調整理念の更新に伴い即したものとなっています。従って今後は「壬蔓」と開発段階で問題を起こしたものは組み合わせ禁止で対処されます(※)。

     

    ※ 『第伍拡張』の当該カードは「壬蔓」とは関係のない理由で変更されたため、最終的に今回は発売時点での組み合わせ禁止は行っていません。

     

     アナザー版オボロはオリジン版オボロと同様に強力です。そしてオリジン版オボロの弱みが強調されるような環境の変化に伴って、今ではどちらかと言えばこちらが主流になっていると捉えています。私はその強さは基準の範囲に収まっていると考えており、少なくとも今回の下方修正は行いません。

     


    ユキヒ

     

     ユキヒへの見解はシーズン4→5での認識を維持しており、カード更新は不要であると結論付けました。王道1を破る方向に向かうにあたり、王道1からまさしく外れた2種類の間合を使い分けられる彼女の強みには独自性と絶対性があります。
     
     アナザー版についても私は高く評価しています。オリジン版ほど間合を制御できない反面で独自の強みがあり、成功しているアナザー版です。

     

     総じて、ユキヒも基準の位置にいると評価します。

     


    シンラ

     

     これまで考えてきたあらゆる要素がシンラの上方修正を肯定しています。
     
     まずシーズン3→4、4→5において私はシンラの調整を保留し続けていました。4→5においては更新枚数における問題もありましたが、シンラの調整に慎重である他の理由もありました。
     
     彼女の強みは確かなものである反面で王道に対して脆弱です。ゆえに彼女は王道2や3を相応の水準で破る邪道のメガミであると同時に、何かしらの方向で王道を破るメガミに対して強みを持つ邪道に強いメガミでもあるのです。

     

     ゆえに彼女の強化は邪道の強化であると同時に、王道への揺り戻しという効果も予想されます。特に「完全論破」はその側面を強めに持ちます(※)。従って実際の更新には2つの心理的な壁がありました。第一にいずれかの王道を破るような邪道の働きがある程度は形になってから行いたく、第二に彼女が上方修正するべきではない水準の強さをすでに持ち合わせていたらとしたら状況の悪化を招く懸念がありました。
     
     そして1シーズンを観察して、どちらの理由も解消されました。王道1は緩やかに崩されはじめ、邪道のあり方は定まりつつあります。そして彼女は(ユリナやオボロを相手にするような悲惨なことにはならない)多くのメガミに対しても互角か相応程度に有利に過ぎないと分かり、ヤツハという新しい天敵にも遭遇するようになりました。

     

    ※ 「完全論破」以外を更新する選択肢ももちろん考慮されましたが、他の選択肢はゲームを破壊するかシンラらしさを失わせるか強引で汚いかのいずれかでした。そして単純なカードパワーだけを見ても「完全論破」ははっきりと力不足でした。

     

     アナザー版への見解も概ね変わりません。体験の面には独自の楽しさがあり、アナザー版ヒミカと近しい位置にあるメガミだと認識しています。今回の更新はアナザー版にも影響があるため、双方の改善に繋がることを期待しています。

     

     以降の「完全論破」の説明では、達人セットの記事における説明を繰り返します。

     

     

     「完全論破」の消費は2になります。 

     

     この更新案はシーズン4→5の時点で決定に近い位置まで進んでいました。しかし開発末期にホノカへと2枚の調整を行う意義が示唆され、その時点では面付けの問題から枚数の変更が効かなかったためにシンラの更新は見送られ、ユリナやオボロの下方修正による影響を加味する意味でも次の1シーズンは様子を見るという判断が下されました。

     

     ゆえに「完全論破」は開発初期の時点から次のカード更新における最有力候補でした。その上でシーズン5におけるシンラの活躍も十分とは言えず、アナザー版ライラの過剰な強さや『第伍拡張』の内容などの周辺事情を加味した考察を進めたとしても、候補としての位置は覆されませんでした。

     

     「完全論破」は独立した1枚のカードとして力不足ですが、機能やテキストの独自性には強い魅力があります。シンラの直接的な勝ち筋の調整が困難ならば、この1枚を実用的な水準まで引き上げるべきだと私どもは判断しました。これはシンラの眼前構築をより悩ましいものとし、シンラを扱うプレイヤーの体験をより楽しいものとするでしょう。

     

     

    ハガネ

     

     ハガネへのシーズン4→5のカード更新は成功したと評価しています。そしてハガネそのものの強みという面では十分な水準に至ったのではないかと類推しています。但し彼女もシーズン5では活躍できていません。
     
     これが環境の問題なのか、根本的な力不足なのかはトコヨと同様に観察されます。アナザー版は追加されはしますが、あまり同じメガミとしては考えないほうが良いだろうと推測しています。

     

     

    チカゲ

     

     チカゲへのシーズン4→5のカード更新は成功したと評価しています。「遁術」更新は彼女の攻防の両面における骨組みを支え、極端な弱みを補いました。
     
     そもそも彼女の持つ毒という強みは唯一無二のものであり、十二分な意義がありました。特定の手札を揃える行為に依存したメガミたちにとって彼女は常に脅威であり、様々な戦略への耐性としてチカゲは確固たる立ち位置を持ちます。
     
     彼女の問題は王道1、2(、3)を全て守るメガミへの明確な弱みでした。彼女らは引いた手札をそのまま使い切り《前進》《宿し》、攻撃カードの使用を繰り返すことが正解になりやすく、それらの相手には毒が機能しづらいのです。
     
     その課題がはっきり解決し、王道のいくつかを破るメガミが台頭し始めると予測される今、チカゲもまた基準の位置にいると評価します。
     
     アナザー版はオリジン版と比べて僅かに見劣りして感じられ、期待していた体験も少し不足しています。オリジン版を優先する指針ゆえに保留していますが、アナザー版ヒミカと同様に機会があれば更新が検討されるでしょう。

     

     

    クルル

     

     クルルへのシーズン4→5のカード更新は成功したと評価しています。より多彩なカラクリの組み立てが現実的になり、カウントダウン戦略が機能し、幅広い体験を楽しめるようになりました。
     
     クルルに最も求められるのは体験そのものです。彼女の魅力は本作のメガミでありながら『桜降る代に決闘を』ではないゲームを行おうとする点にあります。その上で勝利の目途が立たないようでは話になりませんが、今の彼女は十分に勝利でき、大会に勝つつもりで持ち込めうる水準です。
     
     そして王道2、3に全面的に反する彼女が強さの面で環境の最先端に立ってはいけません。本作を遊ぶプレイヤーは基本的には本作らしい体験を求めて遊んでいます。ゆえに彼女が与える体験が本作の主流になってしまうと、本作のゲームとしての本質が変貌してしまいます(※)。
     
     存在するメガミの増加と環境の拡大に伴って彼女の戦略は多様化を続けています。それゆえに正直に申し上げて自信はありませんが、おそらく今の彼女は基準の位置にいるのではないかと考えます。
     
     アナザー版は(信じがたいことですが)全てのアナザー版の中で最大の成功を収めているのかもしれません。オリジン版とは異なる独自の体験があり、大会環境でも検討でき、ゲームバランスを壊してもいません。

     

    ※ 過去のアナザー版ウツロは強さ以上に、その面を兼ね備えていた点に問題がありました。

     

     

    サリヤ

     

     オリジン版サリヤへの見解は全く変わっていません。彼女は基準の位置に立ち続けています。
     
     アナザー版サリヤは禁止カードを解除するために下方修正が行われます。
     
     禁止改定でもお伝えした通り、後述するアナザー版ライラと異なり彼女の失敗を私は結果論としてのみ捉えています。当時の説明を繰り返します。
     
     アナザー版サリヤは覚悟と意図のもとで出版しています。私はバランス調整チームからアナザー版サリヤを安全だと自信を持てる水準まで調整することは不可能だというフィードバックを受け取っていました。その上で私は強い状態のまま出版するよう決定しました。第一にゲームデザインの観点でアナザー版サリヤがとても楽しいものになっていたこと、第二に使いこなすのが殊更に難しいためにプレイヤーの解析にも時間がかかり、熟練には間違いなく数か月の期間を要すると捉えられたことが理由です。

     

     仮にバランスを壊すリスクがあったとしても3月までであれば探求する楽しさが勝り、下手に弱めて使い勝手に乏しいものを出版するよりも楽しい結果になるだろうと当時の私は考えました。その考えは今も変わってはおりません。プレイヤーの探求速度は私の想像を越えていましたが、3月までは辛うじて楽しさが勝っていたと評価しています。新型コロナウイルスに伴う問題ゆえに大規模イベントを実施できなかった点を私は心から悔しく思います。
     
     最終的に禁止となった一点には確かな失敗があります。しかし私はその失敗は過ちに基づいたものではないと考えています。そして探求とゲームプレイの双方に楽しさを引き出した面ですばらしい成功であるとも捉えています。本作のバランス調整は難しく、挑戦しなければゲームは魅力的になりません。アナザー版サリヤの失敗については結果を受け入れ、そのうえで私どもは畏縮せずに魅力的なゲームに向けて挑戦し続けていく意向です。

     
     その上でアナザー版サリヤの何を問題視し、どのような更新が行われるのかを説明します。
     

     

     「Form:ASURA」は変形時効果が変更され、Sigma-Driveから適正距離1が削除されます。
     
     2種類の更新それぞれについて説明しましょう。
     
     前者には一部の組み合わせにおける過度な強みを抑制する狙いがあります。Sigma-Driveは一見して強力すぎるように見えますが、実際に運用すると適正距離2の不在や自身への畏縮ゆえにリソースの不足に陥り、山札1巡目から先んじて「Form:ASURA」へとTransFormしても勝ちに結びつきづらいと言えます。この範囲に限れば「Form:ASURA」はカード更新が不要な水準のカードです。
     
     しかしリソースの損耗を補えるか、リソースが損耗しきるより前に相手を倒しきれるメガミとの組み合わせに限って山札1巡目から「Form:ASURA」へとTransFormできます。
     
     その際に「Form:ASURA」は別の強みを発揮します。山札1巡目は盤面の一定さと手札の引き直しゆえに概ね想定した動きができるため、多くのデッキはその中で間合を近づけ攻撃し、山札1巡目としての打点を想定できます。しかし「Form:ASURA」へとTransFormされると手札1枚と概ね2枚分の計画された山札を失うため、デッキが機能不全に陥るのです。
     
     さらにアナザー版サリヤはTransFormを重ねるほどに強化され、長期戦を得意とします。ゆえに手札破壊の際に間合を離すことも肯定され、山札1巡目の計画をより崩しやすいのです。他の手札破壊においても「無窮ノ風」はオーラを空ける上にカードタイプでのケアができ、「引用」はカードタイプのケアに加えて《宿し》《前進》で手札を使い切る対策が肯定されやすいシンラのカードであり、「砂風塵」は効果だけは理不尽ですがその際にハガネ側に《前進》が要求され、「残光」は相手の総リソースを減らしません。
     
     後者はアナザー版サリヤの爆発力と汎用性を和らげる狙いがあります。時おり交えられる「Shield Charge」とSigma-Driveの組み合わせは他にも十分な強みがあるカードが持つにしては過剰です。そして間合1でSigma-Driveが使えるゆえに間合を近づける方向での対策もやりづらく、アナザー版サリヤの汎用性が高まり過ぎていました。

     

     

    ライラ

     

     ライラへのシーズン4→5のカード更新は成功したと評価しています。「円環輪廻旋」は十分に強力であり、ライラの強さを引き上げました。オリジン版ライラが抱える最大の不幸はアナザー版ライラが存在したことです。
     
     ゆえに私はオリジン版ライラの強さを正確に測れている自信がありません。従ってトコヨ、ハガネらと同様にもう1シーズンだけ様子を見ます。
     
     また、オリジン版ライラはシーズン1と3に最前線で輝けており、アナザー版ライラは今シーズンも一定以上の活躍はすると想定しています。ゆえにキャラクターゲームの観点から、過去も含めて輝けていないメガミのカード更新はより優先されます。
     
     アナザー版ライラは純粋な強さという面では最大の失敗です。私は追加するメガミを常に強くする方向で調整を進めていますが、ここまでの事態になっていないかどうかをバランス調整に関わる全ての協力者たちに強く確認して進めるようにしています。
     
     更新内容を説明します。
     

     

     暴風は適正距離が2-3となり、攻撃後に風神ゲージが上がらなくなります。
     
     更新枚数には限度があるため、アナザー版ライラは次のシーズンでも強力なメガミという水準は保たれると予想しています。その上で王道と邪道の駆け引きにおいてアナザー版ライラをどの位置に落ち着かせるのかどうかを私は重く考えました。
     
     結論として、アナザー版ライラは強力な王道の位置を目指すべく調整されます。そもそもオリジン版の段階でライラは王道1、3を忠実に守っており、王道2も破るというほどではありません。
     
     そうなると間合4を除くのは有意義です。まず間合を3まで近づけなくてはならない点において、より王道の立ち回りを順守しなくてはならなくなります。さらに邪道の抵抗手段が増えます。間合4から風1の嵐の力を使用される流れがなくなるため、間合による対処がいくらかやりやすくなるのです。
     
     攻撃後に風神ゲージが上がっていたのは、どこかおかしかったため取り除きます。

     

     

     嵐の力には多くの変更が行われます。
     
     アナザー版ライラのカードはすべてにどこか過剰な点がありますが、問題の根幹に位置しているのは嵐の力そのものです。ゆえにカードの更新枚数を抑える目的でも、嵐の力そのものに手を入れるのが最も正しいと判断します。
     
     雷3は明らかな問題ですが、風2と雷2にも修正するべき水準の問題があり、風3は修正が必須ではないものの強力な選択肢でした。風1と雷1についてはそのまま維持して問題ないと考えます。
     
     その結果、雷2と風2は効果をそのままに消費するゲージを雷3と風3へと引き上げ、雷3と風3は効果を弱めたうえで雷2と風2の位置に置かれます。
     
     この更新では嵐の力としての楽しさを失わせないことを重視しました。即ち6つの能力いずれも有効となる機会があり、その中でジレンマを楽しむというものです。むしろ際立って強力だった雷3が大きく弱体化するため、意思決定の楽しさとしても向上すると期待しています。

     


    ウツロ

     

     ウツロへのシーズン4→5のカード更新は成功したと評価しています。彼女は独自の戦略を正しく確立し、絶妙な位置で強みを発揮していると感じます。もう少し観察は続けますが、おそらくは基準の位置に落ち着いていると考えています。少なくとも今シーズンに更新を行う理由はありません。
     
     アナザー版にも満足しています。体験面での斬新な楽しさは言うまでもなく、メガミの総数が増えるに従って、再び(許容できる範囲の強さで)終焉の影を蘇らせうる組み合わせが表れ始めている点を私は嬉しく思います。

     

     

    ホノカ

     

     これまでのホノカへのカード更新はようやく実を結んだと評価しています。最終的には結果こそ残しませんでしたがオンライン大決戦でも理を以て彼女を選んだプレイヤーは存在し、今の彼女は大会で勝つために選ばれうる存在です。
     
     シーズン4→5の更新で打ち立てた彼女の在り方も正しく機能しているように見えます。彼女は全てが一線級ではないため単独では力不足ですが、全ての戦略を併せ持つために高い柔軟性とオールラウンダーとしての対応力を持っています。
     
     最初期の失敗が大きすぎたためにまだ警戒心は強く、これで十分だとは中々断言しづらいのですが、彼女もまた今シーズンでアナザー版が追加されます。これら2柱の活躍をトコヨ、ハガネ、ライラと同様に観察するつもりです。

     

     

    コルヌ

     

     シーズン4と5にわたるコルヌの状況を踏まえ、コルヌには上方修正が必要だと結論付けました。『第参拡張』発売直後はコルヌは強力なメガミだと認識され、実際に結果も出していました。しかし時が進むにつれて対コルヌの立ち回りが洗練され、それに伴ってコルヌ側が立ち回りを工夫しても打開できない水準の欠点を抱えていると分かりました。
     
     今回の更新はそれらの弱点を緩和し、立ち回りの工夫により弱点を補えるようにすることと、使い勝手に乏しいカードを変更して眼前構築の選択肢を増やすことを意識して行われています。
     
     コルヌは王道1に反する貴重な一員でもあります。今回の彼女の上方修正が彼女らの層を厚くし、三拾一捨における選択を悩ましくすることを望みます。
     

     

    「凍縛場」は新しいカード「霜の茨」になります。

     

     コルヌの弱点は2種類あります。1つ目はオーラを低く保つ戦い方です。コルヌは「剣の舞」さえあれば十分な攻撃力を持ちますが、それが2/1のままだとメガミ全体としての攻撃力が不足します。もちろん相手は相応に凍結しますが、それを無視してメガミの地力としての攻撃力勝負を挑めばコルヌに競り勝ててしまうのです。
     
     この更新はその戦い方にリスクを与えます。相手がターン開始時にオーラを低く保っているならば、このカードで強化した攻撃で打点を補えるのです。さらにオーラが低いならば大量の凍結を狙うチャンスでもあります。そして相手を解除できないほどに凍結させてしまえばこの1枚はさらなるボーナスをもたらします。
     
     「かじかみ」との相互作用も強力です。しかし、付与を2枚採用するといざという時に手札の攻撃が不足するリスクが生まれるため、安易な正解とは限りません。その面でこの1枚は眼前構築をより悩ましく、楽しいものにすると期待しています。

     

     

     

    「ポルチャルトー」は名前は維持されますが、全面的に別の効果になります。

     

     コルヌの2つ目の弱点は、攻撃を全てライフで受け、大技の切札を撃ち込む戦い方です。「剣の舞」が機能していたとしても、コルヌの攻撃は相手を倒しきれるほどには強くありません。コルヌには凍結など他の強みがあるため当然の話です。
     
     しかしそこに注目し、全ての攻撃をライフで受けて凍結を完全に無視し、反撃でライフを削りながら溜め込んだフレアで大技を叩きつければコルヌに勝ててしまいます。例えばユリナです。彼女は適度な攻撃と「月影落」だけでコルヌを打倒します。
     
     私は元来、凍結によるフレア阻害があるためにコルヌは大技への婉曲的耐性があると評価していました。しかし凍結を完全に無視し、その上で勝ててしまうならば話は違います。現状のコルヌは大技への耐性は全くありません。
     
     私はコルヌは大技への直接的耐性を持つべきだと判断を変えました。ポルチャルトーは第一にそのために更新されています。しかし「久遠ノ花」のような何かを安易に追加しすぎてはメガミの没個性化と体験の画一化を招いてしまいます。

     

     「ポルチャルトー」はそれを避けるために独自の使い勝手や相互作用を持ち、その上で工夫のない大技を躱せるように設計されています。さらに凍った地面を作り出すという技のフレーバーも維持しています。

     

     

    ヤツハ

     

     シーズン4時点におけるヤツハの構造面での問題は大きく、シーズン4→5での彼女への更新はやや強引なものであったと評価しています。その一方でヤツハの構造と表現したい魅力を維持しながら行う更新としては最善を尽くせていたとも考えており、賛否両論となるのは当然だと認識しながらも、私個人としては成功だと考えています。
     
     ヤツハは今は大会で勝つために持ち込める有力な立ち位置にいます。彼女の強さが下方修正に値するとは今のところ考えておらず、いくばくかの歪さを受け入れたうえでヤツハもまた基準の位置に落ち着いたと捉えています。

     

     

    ハツミ

     

     ハツミは史上まれにみる大成功でした。王道1だけに反する強力なメガミを追加し、それらのメガミを三拾一捨で機能させるための頭数として寄与させるという目的を彼女は完遂し、その上で独自の体験としても強みとしても文句のない仕上がりです。
     
     本当にごく枝葉に目を向けると(他のあらゆるメガミと同様に)より良くできそうなところも見えはしますが、そこにいちいち目を向けるのが野暮なほどにハツミは上手くいきました。
     
     彼女は基準の位置にすでに納まっていると評価します。

     

     

    ミズキ

     

     ミズキには上方修正が必要です。その上でまず、今の彼女について掘り下げましょう。

     

     ミズキのコンセプトの部分は成功を収めています。キャラクターから考慮して彼女には対応カードを駆使した高い防御力が求められていました。しかしそのようなメガミはすでにトコヨが存在します。ミズキは何よりも防御的メガミの体験としてトコヨと差別化しなくてはなりません。
     
     それこそが瞬間防御力と継続防御力の違いです。ミズキの対応カードの大半に終端を付けることで特定の1ターンの防御力を引き下げ、代わりに毎ターンに渡って対応カードを使い続けやすいようにしたのです。
     
     これによりミズキの体験は異なるものになりました。そして防御力も上がり過ぎないように整えられました。防御方面のインフレーションはゲームとして絶対に避けなくてはなりません。終わらないゲームはただ退屈なのです。
     
     これらを踏まえるとミズキの防御面は調整するべきではありません。今回はミズキらしい戦い方を強調する方向で防御以外の側面を向上しました。

     

     

     

    「反攻」はダメージの強化幅が+2/+1と+1/+1になります。

     

     ミズキは戦い方としてカウンターパンチが想定されています。相手からの攻撃を対応で妨害し、それを条件として自分のターンにパワフルな攻撃を撃ち込むのです。しかし今のミズキはコンセプトを上手く達成したとしても、得られる成果がそれに見合っていません。
     
     少し別の面に目を向けると、ミズキは王道1と3を順守し、王道2をそこまでは破っていない王道寄りのメガミです。『第四拡張』の時点で邪道を推し進める中、王道もまた異なるやり方で追加する必要を私は感じていました。加えて不動には逆説的に王道1への反発を推進する働きもあり、今の計画に相応しいものでした。
     
     しかし私は王道の強さを過信し、適正距離2-3の3/2を用意することをためらってしまいました。ミズキの条件は想定より難しく、2-3の3/2はそれに見合った正しい報酬と言えます。
     
     もうひとつ、より未来に向けた補足も行います。コルヌ、ハツミ、メグミ、そして今回の更新によるミズキと、本作は条件を満たして3/2を使用するという体験が増えつつあります。これは適正な塩梅で面白さを生む便利な方法ではありますが、多用しすぎると退屈になるリスクがあります。
     
     私はその懸念を認識しており、カナヱや今回の3柱のアナザー版メガミでは意図的に避けています。『第六拡張』でも意識して行わないようにするでしょう。

     

     

     

     「制圧前進」は名前と方向性は維持されますが、概ね別の効果になります。

     

     ミズキのもう一つの要点は兵員です。カウンターパンチは兵員との連携があればやりやすくなり、構築によっては大量の兵員を一度に叩きつける立ち回りも存在します。
     
     しかし今のミズキの徴兵カード、特に「制圧前進」はカードパワーが不足しています。この更新は望むならば大量の徴兵を可能とし、オーラの回復を常に選べることで全力の隙を緩和し、間合を一度に詰める手段として間合2の王道で相手を圧殺する助けにもなります。
     
     
     今回の更新はここまでとなります。お読みいただきありがとうございました。本作の新たなシーズンと、苦しい状況を抜けた新たな門出をお楽しみいただければ幸いです。
     
     本日は禁止改定と季節戦の記事も掲載しておりますので、良ければそちらもご覧ください。今後しばらくは『第伍拡張』に合わせた公式サイトの更新を行い、記事としては次回は来週、今後の展望2020秋やスタッフクレジットに関する変更をお話しします。
     

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