王道覇道これぞ決闘(後篇)

2020.05.02 Saturday

0

     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はユリナ特集の後篇となります。前篇中篇をまだお読みでない方は先に読まれることをお勧めします。

     

     このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第3シリーズ第3回にして累計第12回となります。

     

     前篇ではメガミ・ユリナに関する歴史を説明し、彼女の誕生と本作全体のデザインに関する話をしました。中篇は第一幕から新幕にかけての歴史をお話しし、N1からN3のカードについてもお話ししました。従って後篇では残るカードN4から原初札を扱うことになります。

     

     それでは、さっそくはじめましょう!

     

     

     

    第二幕

     

     「居合」は単純さゆえに、最初の全力カードと言えます。ゆえに全力の歴史をお話しするべきでしょう。

     

     本作そのものをデザインする過程で見ると、全力カードの誕生はそこまで早くはありません。その誕生は集中力とほぼ同じタイミングであり、その頃にトコヨの特性が境地に定まったのはトコヨ特集でお話しした通りです。

     

     全力は2つの目的で作られました。第一にカードのデザイン空間を広げるため、第二にゲーム展開に幅を広げるためです。

     

     本作の通常札にはコストがありません。ゆえにその強さはある程度の上限があり、結果としてデザイン空間が狭まってしまいます。他方でコストの概念としてはすでにフレアが存在します。新たな概念を定めたとしても体験が似通い、また複雑さの観点から手段も限られます。通常札にもフレアの消費を持たせるという選択肢もありますが、通常札と切札を見分ける最大の尺度を失ってしまうと認知が難しくなりすぎてしまう懸念もありました(※)。

     

    ※ 加えて山札7枚、切札3枚はゲーム体験としてとても楽しく、当時の私はこれが正解だというある種の確信を持っていました。ゆえに山札を10枚にしてすべてに消費を持たせる(もちろん、大半は0でしょう)という選択肢も否定したのです。

     

     そこで私は悩んだ末に物理的なものを支払うのでなく、時間あるいは機会を支払うという方法を見出しました。そのアイデアは全力カードそのものでした。

     

     初めて全力を採用したプレイテストにおいて、全力カードは特に絶賛はされませんでした。むしろ集中力が誕生するまでの問題(詳しくはトコヨ特集で)についての議論が激しくなり、注目されなかったというべきかもしれません。

     

     しかしその苦労の結果として集中力が生まれた時、併せて私は全力カードの有意義さを感じました。全力カードを使うと集中力が使えません。ゆえに集中力の上限が2である点と小さく対立し、リソースの管理が難しくなるのです。それは裏を返すと、対戦相手としても全力カードが使われやすい予兆を感じ取れるということでもあります。即ちゲームに対話が生まれるのです。

     

     ゆえに私は全力カードをカードの特殊効果からサブタイプにまで格上げし、集中力を含めたカードリストの最新化を行いました。「居合」はもちろん最初に生まれました。最初は2-3、3/3の対応不可(当時はキーワードでなくテキスト)で、その後にバニラの2-3、4/3となりました。

     

     ここまでが第一幕までの話です。第一幕では達人の間合がなかったため「居合」は活躍しませんでした。第二幕で達人の間合が生まれ、その際に私どもは2-3、4/3では強すぎると気づいて4/2に直しました。その後は第二幕で絶妙かつ強力なカードとして活躍しました。

     

    新幕

     

     ライフの増加に伴い4/3となり、ユリナの間合におけるイメージ変更のために3-4になりました。こう書くと単純な話です。しかし後者についてはゲーム面でやや失敗であり、同時にフレーバーに関する厄介な問題が生じていました。

     

     間合2を含まず、序盤にも使えない攻撃/全力は想像以上に使いづらかったのです。ゆえにシーズン1時点で「居合」は間合2の追加が望まれていました。しかし2-4の4/3は問題がある水準であり、他方で2-3となると「居合」というカード名との齟齬が起きてしまいます。居合は大きく振りぬく動作の技なので「斬」が間合4まで届く以上は、こちらも間合4まで届くべきなのです。

     

     加えてユリナと間合2の結びつきを可能な範囲で抑えたいとも考えていました。新幕の設計では間合2にはすでにライラが存在し、同様に強力でした。そこで同じく高い攻撃力を持つユリナも間合2と高く親和してしまうと、新幕全体の体験が間合2に偏り過ぎてしまうと感じていたのです。

     

     そこでデメリットとなるテキストを追加することにしました。間合2では降りぬくのが難しいため威力が下がるのでフレーバーともかみ合い、同時に間合2を注目させ過ぎないかたちで間合2を追加し、「居合」を採用するかどうか悩ましい強さまで引き上げられました。現状の「居合」は気に入っています。

     

     

     

    第二幕

     

     ユリナの移動カード枠です。共通カードがゲームから取り除かれ、その際にメガミ一柱の持つ通常札は5枚から7枚に変更されました。移動カードを共通カードから固有のカードへと移し、メガミごとの個性を際立たせたほうがより多様なゲーム体験に結びつくと判断したのです。

     

     第一幕のユリナは間合1-2が得意なので、効率よく前進するカードとなるのは当然です。そこで「間合→ダスト:2」としてデザインされ、そのまま印刷されました。しかし中篇でもお話しした通り、当時は近距離問題が十分に理解されていませんでした。

     

     そして第二幕の途中で問題が顕在化し、「現在の間合が3以上ならば」という条件が加えられました。この調整をもって第二幕の近距離問題はひと段落し、そしてカードのバランスも適切なものに落ち着きました。この状態の「足捌き」が今は「風走り」として新幕でも活躍している通り、前進カードの基準として正しいデザインだと強く感じています。

     

    新幕

     

     しかし新幕における「足捌き」は失敗だったと悔やんでいます。シーズン1時点とシーズン2以降で効果は少し違いますが、問題点はそこではありません。火力の高いうえで間合3-4を得意としたユリナが「足捌き」を持つと中距離や遠距離への耐性が過度に高まり、万能になり過ぎてしまうのです。

     

     私の失敗は「足捌き」という存在の大きさに幻惑されてしまった点にあります。第二幕までにおいて「足捌き」は多くのプレイヤーが最初に触れる移動カードであり、ゲームの紹介やルールの解説でも頻出します。ゆえに主人公であるユリナにとって「なくてはならないもの」だと錯覚してしまったのです。

     

     移動カードを説明するという役割は「歩法」に移っています。私は改めて「足捌き」とその意義を見直すべきでした。

     

     

     

     上の失敗ゆえにシーズン5での更新で「足捌き」は「気迫」へと変更されましたが、この更新は難しいものでした。カードが強すぎるならばカードを弱めればよいのですが、「足捌き」は別段強すぎるわけではないのです。加えてシーズン4でのユリナははっきりと強く、この枠には使いづらいカードが求められていました。それでいて使いどころがまるでないようではやはり駄目で、加えてユリナらしさも失ってはなりませんでした。

     

     結論としてユリナがこれまでにできたことは広げず、攻撃の強化をもう1枚作ることにしました。その上で様々な工夫がなされました。一気にお話ししますが、実際は小さい変更を繰り返して整えられています。

     

     第一にユリナは自身の攻撃が強いため、それを自分で強化できると自己完結し、二柱を組み合わせる楽しさが霞んでしまいます。そこで強化先を他のメガミに制限します。第二にダメージの強化は「柄打ち」「気炎万丈」でなされているため、他の方向で強化して体験を広げます。特に距離拡大(近1)はサイネ、ヒミカ、トコヨのいずれと組み合わせても意味があり、『基本セット』で本作に触れたばかりのプレイヤーにとって組み合わせの楽しさを広げられると期待できました。

     

     その上でこのままでは弱すぎるというフィードバックから集中力を1得る効果が加わり、最後に「ゆらりび」との相互作用を懸念して対象が通常札へと制限されて完成となりました。

     

     個別の1枚として見るなら及第点のカードという評価に留まりますが、「月影落」で後述する制約のもとで考えるならば私どもは最善を尽くしたと自負しております。

     

     

     

    第二幕

     

     ユリナは「間合を合わせて攻撃する」という基本に注目したメガミです。しかしカードプール全てを移動と攻撃で埋めると少しばかり単調すぎます。そこで私どもはユリナの他の得意分野として様々なものを検討し、結果として第一には攻撃の強化が生き残りましたが、それだけでは通常札が1枠埋まりませんでした。

     

     併せてその頃には付与のルールが検討されていました(詳しくはシンラ特集にて)。そして付与札の上に桜花結晶を納め、展開時、展開中、破棄時と効果が分類されるという指針が固まった段階で、私どもはひとつのフレーバー的可能性を見出しました。格闘ゲームにおける隙が大きい技です。格闘ゲームで相手のキャラクターが珍妙なポーズを取り出したならばそれは悪い予兆であり、一刻も早くそいつに拳を入れなければならないでしょう。

     

     私はそのイメージを再現するようなカードを作りました。展開中効果で攻撃されたら破棄時効果を解決せずに失敗し、破棄時効果で攻撃を行う。即ち「圧気」の原型です。これは攻撃であるためユリナらしく、それでいて搦め手でもあるため体験に変化を与えるのです。

     

     しかし最初のプレイテストで問題が分かりました。プレイテスターの誰もが眉間にしわを寄せ、難解なヒエログリフを読み解くようにカードを読むのです。

     

     この挙動は平文で書くと複雑すぎました。しかし格闘ゲーム的なイメージを説明すると誰もが納得します。ゆえに効果そのものが複雑なわけではありません。そこで私は「隙」というキーワードを作り、より柔らかくした説明文を括弧の中に付け足したのです。

     

    新幕

     

     第二幕で隙は魅力的なキーワードではありましたが、小さな不満もありました。想定よりは決まりづらく、想定より極端で、それゆえに想定よりデザイン空間が狭いのです。

     

     そこで私どもは「闇昏千影の生きる道」における成功を思い出すことにしました。納4のライフだけでしか失敗しない挙動の隙は簡単には成功せず、それでいて成功率が相応にはあります。その上で消費5のリスクから雑には使えず、魅力的な塩梅でした。

     

     ゆえに新幕での隙はライフへのダメージでしか失敗しない挙動に揃えられました(※)。この点は新幕のダメージ基準も重要でした。中篇でお話しした通り第二幕ではダメージの基準があったためライフへのダメージが通りにくく、今のルールの隙には問題がありました。しかし新幕の基準ならば適切なのです。

     

    ※ 加えて、一部のメガミに極端に刺さり過ぎている点も緩和するために攻撃という制約も外しました。

     

     プレイテストの結果、そのままでは少しだけ決まりやすすぎました。序盤での利便性を緩和し、また間合を外して回避する選択肢を与えるために間合を変更し、あとはそのまま完成となりました。

     

     

     

    第二幕

     

     「圧気」で書いた通りユリナの他の得意分野が検討され、攻撃の強化という結論が見出されました。そのうえでいくつものカードがデザインされましたが、最終的には「気炎万丈」が生き残りました。

     

     なぜこうなったかは覚えていません。おそらくは当時は「他のメガミの《攻撃》」という書式は発明されていないため攻撃が多いユリナが持つにはやや単調さが勝ち、結果として面白くないという結論に至ったのでしょう。いくつか奇妙なカード案がありましたが、没になっていました。

     

     最終的には確か「すべての《攻撃》を+1/+1する」というシンプルな書式はどこかには入れたいと考え、その上で全力と決死が出そろった段階でこの形になったのだと記憶しています。ここまでが第一幕デザイン中の話です。

     

     しかし最終的には第一幕環境を完全に破壊しました。ユリナとヒミカを組み合わせ、「カードを引く」効果による焦燥から強引に決死を発動させて連続攻撃を撃ち込む立ち回りが必勝だと分かったのです。実は第一幕のプレイテストでその挙動そのものは発見されていたのですが、私どもは「浦波嵐」を3/-にして撃ち込めることを見落としていました。

     

     結果として第二幕では効果が+1/+0に修正されましたが、あまり活躍には恵まれませんでした。私の感覚としては失敗であり、悔やんでいたカードです。

     

    新幕

     

     新幕では全体的なダメージの基準が引き上げられます。第二幕での失敗も加味し、この1枚はぜひとも+1/+1に戻したいと私は熱望していました。しかしそのまま戻すと駄目だろうという確信もありました。

     

     しばらく考え、その原因は他ならないユリナ自身が優秀な攻撃を多く持っている点にあると気づきました。そして私どもは第二幕の『第弐拡張:機巧革命』と『第参拡張:陰陽事変』をデザインしている途中に「他のメガミの〜」という書式を発見していました。

     

     こうなればもはや今の「気炎万丈」が生まれるのは不思議ではないでしょう(※)。依然として使いやすい効果ではありませんが、「気炎万丈」の採用が正解となるマッチアップは確かに存在しており、私は今の仕上がりを気に入っています。

     

    ※ ちなみに「バックドラフト」も同じタイミングで考察され、同じ理屈で生まれました。

     

     

     

    第二幕

     

     大剣を持った主人公がいるならば、そこには当然必殺技があるでしょう。そして主人公の必殺技はシンプルであるべきです。ゆえに本当に最初から切札のバニラ攻撃は存在していました。その後に前篇の通り近距離の在り方が定義され、そして正しく原型とされる1枚が生まれました(7/3のあいつです)。

     

     その後の変遷はどうでしょうか? オーラの上限が生まれた時点で消費5、1-2の4/3になっており、そのまま最後まで変わりませんでした。シンプルさゆえに語ることは少ないですが、ユリナを象徴する必殺技であるゆえに存在が大きく、本作を象徴する1枚に数えられるカードです。

     

     そして第一幕ではやや問題があったため消費が6に引き上げられ、そのまま最後まで活躍しました。

     

    新幕

     

     ダメージの基準の引き上げに伴い4/4となりました。そしてライフが増えるということは利用できるフレアも増えるため、消費も7へと引き上げられます。これらの変更は正しいと評価しています。

     

     そしてもうひとつ。ユリナのイメージ変化のために適正距離も3-4に変更されました。しかしここには本当に厄介な問題が潜んでいました。ええ、本当に厄介なのです。

     

     現象そのものとしては「足捌き」と近い理由で万能性が高まってしまいました。「詩舞」などの後ろステップ対応への耐性が強まり、さらにレンジロックによる対策も困難です(※)。ゆえに私どもは「浦波嵐」の更新で解決を試みました。

     

    ※ 間合2へ移動させないようにロックすることは、期間を限れば十分に現実的です。しかし間合4はさすがに無理があるのです。

     

     しかし裏にある話はより幅広いものです。まず第一に「足捌き」と同じ解決策は取れません。「足捌き」は移動カードとして新規プレイヤーが触れる象徴でしたが、新幕では「歩法」がいます。しかし「月影落」はユリナというキャラクターの象徴であり、同時にユリナを宿して遊ぶゲーム体験の象徴(のひとつ)でもあるのです。ゆえに本作をキャラクターゲームとして見るならば別のカードにしたり、一定水準以下のカードにしてはいけません。

     

     加えて問題の発生そのものの回避も困難でした。「第二幕」のユリナがキャラクターとして必要である時点で、「月影落」もその象徴として必要になります。ならば適正距離を3-4にしたのが誤りかと言えばそれも難しく、そうしなければ少なくともライラはこの世に生まれすらしなかったでしょう。

     

     私は「浦波嵐」の更新でひとまず納得しています。しかしキャラクターゲームとして魅力を出したいという欲求を仮にすべて捨てて考えた時、「月影落」のような大技は適正距離1-2のメガミが持つべきだったという考えを否定することはできません(※)。

     

    ※ フォローしておきますと今の形がベストかどうか悩ましいだけであり、今の「月影落」は十分に魅力的で楽しいカードとして気に入っています。

     

     

     

    第二幕

     

     「月影落」は初期からずっとありましたが、他の3枚はそうではありませんでした。特に「浦波嵐」と「浮舟宿」の枠はなかなか決まらず、様々な効果が試され続けています。

     

     そこまでの「浦波または浮舟枠」で印象的だったカードをひとつ挙げましょう。次のようなものです。

     

    高速前進 消費2 行動

    間合→ダスト:1〜3

     

     前篇のように近距離を定義したならば、切札における前進カードを考えるのは自然なことです。しかしその試みは失敗でした。前進や「足捌き」と交えながら行えば一気に間合1-2に入れ、オーラの上限により辛うじて制御されていた序盤のやり取りを再び無意味にしてしまったのです。

     

     問題は消費が小さいために序盤で使いやすすぎた点にありました。後に消費を重くして試してもいましたが、どうやら魅力的ではなかったようで取り除かれます。実際消費が3や4となると、今度は序盤以外では使いにくすぎるでしょう。この問題は後に再び検討され、「大重力アトラクト」で正しく実装されました。

     

     「浦波嵐」が最終的に決まったのはベータ版の直前でした(※)。長期間にわたってユリナとヒミカには対応カードがありませんでした。しかしユリナは主人公です。その使用を通してなるべく多彩な体験に触れられるべきでしょう。他方で対応が頻発すると複雑さが少し上がり、望ましい水準を越えてしまいます。

     

     そこで対応を切札に1枚だけ用意しました。そうすればユリナだけの範囲では対応はゲームで1度だけの出来事となり、塩梅が制御されるのです。効果そのものは私の美的感覚に基づいて作成され、試してみたらプレイ感もよかったためそのまま採用されました。指針の決定後は一度も変更されていません。

     

    ※ 第一幕の発売は2016年の5月でしたが、その前のゲームマーケット2015秋に50部だけベータ版が販売されました。

     

    新幕

     

     第二幕の浦波嵐は体験として魅力的で、強さも強力ながら容認される水準でした。そしてオーラへのダメージとオーラへのダメージの軽減量が揃っている点は美的感覚から見ても正しく、同時にカードの認知も簡単にしていました。ゆえに新幕への移行においても強化も弱体化も不要と判断し、そのまま印刷されました。

     

     しかし結果として「浦波嵐」はシーズン4から5での更新で調整されました。ライフへのダメージが2以上の攻撃が増えたため、「浦波嵐」が攻撃面でも防御面でも想像を少し超えていたのは確かです。しかし「月影落」でお話しした通り動機はユリナの万能性にあり、その軽減のために「浦波嵐」から「月影落」を撃つという挙動を抑止したのが本質的な理由です。

     

     終端という便利な発明と、『基本セット』の再版という出来事が重なったのは本当に幸運でした。現在の「浦波嵐」の塩梅は適正そのものであり、とても気に入っています。

     

     

     

    第二幕

     

     「浮舟宿」も「浦波嵐」と同じく指針のなかなか決まらない1枚でした。こちらはベータ版を出した時点でも定まっておらず、当時は次のような効果でした。

     

    浮舟宿 消費4 行動

    任意の付与札を1枚選ぶ。その上の桜花結晶を3つまであなたのオーラに移す。

     

     検討されていたユリナの得意分野にはオーラの回復もありました。桜花結晶の幅広く緻密な操作はできるべきではないとしながらも、大規模な回復を切札から一度だけ行ってもよいだろうと考えられていたのです。

     

     それに加えて付与札の破壊も検討されていました。主人公は王道を行くべきであり、合わせてデザインが進められていたシンラこそがユリナにとっての最大の敵(当時のストーリー的な想像においては)にして邪道の頂点であったため、その象徴である付与札を破壊するのはユリナらしいのではないかと考えたのです。

     

     ベータ版の1枚はそれらを組み合わせたものです。しかし最終的にユリナが付与札の破壊まで持ってしまうとできることが広がり過ぎ、同時に「圧気」との相互作用も問題視されました。ゆえに単純なオーラの回復に戻り「ダスト→自オーラ:5」という効果になります。

     

     そこから第二幕で「ダスト→相オーラ:5」が加えられたのは「虚魚」の影響です。オボロ特集でお話しした通り、「虚魚」の持つ「矢印を逆にする」効果に当時の私は魅入られてしまっていました。そこでこの1枚にも逆にして意味のある矢印が加えられたのです。一応、この矢印についてはユリナ/オボロで活用されたため失敗とは言い切れません。しかし普通の構築においてこのカードを少し使いづらくしたのも確かで、評価が難しいところです。

     

    新幕

     

     新幕では「虚魚」は別の効果になりました。それゆえに第二幕での不満を直すためにも「ダスト→自オーラ:5」だけのカードとなります。

     

     そのうえでもう一工夫を加えました。中篇でお話しした通り第二幕では決死への注目が少し小さかったため、改めて決死のデザイン空間を探索しました。そこで原初札で決死を条件とした再起を用いた点に気づき、それを追加したのです。

     

     

     

    第二幕

     

     「月影落」以外の3枚は中々固まりませんでしたが、「天音揺波の底力」はその中では一番早く決まりました。タイミングは決死が生まれた瞬間です。前篇の通り決死から主人公らしさを見出していた私が、決死でなければ使用できないという切札にたどり着くのは不思議ではないでしょう。「月影落」が必殺技ならば、「底力」は超必殺技なのです。

     

     そして「底力」の話には先があります。カードそのものはこのまま変わりませんでした。しかしそこから設定の掘り下げも行われたのです。

     

     私は幼少の頃(青少年にありがちなご病気を患う頃です)にはギリシャ神話を好んでおり、その中で物語の類型として神々と英雄の物語を見出していました。ゆえに本作もまたプレイヤー自身が英雄となり、神々を宿して戦うのですからその類型に属すると感じ取ったのです。本作を作るにあたり日本神話も調べ、その中にも神々と英雄の物語を見いだせたため、それは確信に変わりました。

     

     ゆえに本作から最初の物語を見出すならば英雄が必要だと確信しました。しかしゲームの設定上、6柱のキャラクターは全員メガミでなくてはなりません。そうなれば答えは簡単です。主人公を元は人間だったという設定として、英雄からメガミになったとすればよいのです(※)。こうして武神ユリナは、もとは天音揺波だったと定められました。

     

    ※ この時点では小説『桜降る代の神語り』は構想すらありませんでした。しかしこの時点で定めた設定があったからこそ、小説の作成がスムーズになったのは間違いありません。

     

     もう少しだけ話は続きます。本作がノベルゲーム――いや、そこまで言わなくとも電子ゲームであればこの設定だけでも十分かもしれません。しかし本作はボードゲームです。ボードゲームにおいて情報の伝達は強く制限されています。ルールブックの隅に設定を書くことはできますがそれでは不十分です。プレイヤーにゲーム内での体験を通じて設定を実感させなければ、ボードゲームでキャラクターゲームを実現することはできないと私は考えています(※)。

     

    ※ 過去に『終わった世界と紺碧の追憶』というゲームをデザインしている中でこの考えに至り、そちらでも工夫を行いました。

     

     そして今回はカード名において手を加えました。カード名に人間時代の名前を加えて人間だった頃があるという点を伝え、加えてその頃のエピソードを感じさせるような言葉を添えたのです。加えて言葉を探す際に、「天音揺波の」が3−4音節であることにも気づきました。そこで続く言葉を5音にすれば都々逸の下七と座五になり、和風で響きもよくなります。

     

     こうして本作の物語は掘り下げられ、物語がこのカード自身をも魅力的にしたのです。

     

    新幕

     

     いくつかの理由から1-4になりました。説明しましょう。

     

     第一に「底力」もまた振りぬく動作なので間合4を含むべきです。第二に最大ライフが10となったため、決死の達成が少しだけ難しくなり、このカードを使うタイミングがより制約されました。第三に離脱が追加され、間合4まで逃れるのがやや簡単になりました。これらを合わせると、間合4を入れない理由はないでしょう。

     

     

     

     原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。

     

     ユリナは「間合を合わせて攻撃する」ので、通常札の範囲では王道を外れるべきではありません。加えて第二幕のユリナは、さすがに単独では攻撃カードが少しだけ不足していました。

     

     加えて「ユリナに挑戦!」は第二幕における「メガミに挑戦!」シリーズの最後に位置していました。それゆえに最後らしい1枚が必要です。私はそのためのヒントを『第参拡張:陰陽事変』から見出しました。ウツロ特集ホノカ特集にある通り、そこには収束の結末と発散の結末があります。

     

     ならば通常札は収束の結末として、原点回帰でもって納得させるべきでしょう。こうしてバニラの原初札が生まれたのです。

     

     

     

     原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。そして「斬華一閃」が収束ならば、切札は発散の結末として、グランドフィナーレを感じさせるものでなくてはなりません。それでいて主人公らしさもなくてはならないのです。

     

     私がイメージの起点としたのはある漫画でした。最終話において主人公は最後の敵と対峙します。敵は圧倒的で、成長した主人公であったも勝利は難しいと感じられるものでした。しかし主人公は舞台を去った仲間たちや倒した敵たちすべての力をその身に宿し、彼ら彼女らの最強の技を次々と用いることで最後の敵を打ち倒したのです。

     

     このイメージを翻訳すると、それは全ての切札となりえる切札以外にはありえませんでした。そしてこれははっきりと要件を満たしていたのです。その上で1回限りだと少し弱く、華々しさが足りず、さらに限られたカードとしてしか使われないと感じたため決死による再起も追加し、完成となりました。

     

     

     これにてユリナ特集も閉幕となります。長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。次回の記事は明後日、イベント自粛期間における試みとしてのオンライン大会についてお伝えいたします。

     

     その後は再びこのシリーズはお休みとなります。しかしご安心ください。その時間で代わりに「#自宅で楽しむ桜降る代」シリーズの第二弾と第三弾の作成を進めてまいります。ご期待くださいませ!

     

     そして第一弾「私の宿す二柱」は昨日に公開されております。私どもの技術不足ゆえに動作が少し不安定で申し訳ございませんが、お楽しみいただければ嬉しい限りです。