王道覇道これぞ決闘(中篇)

2020.04.27 Monday

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     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はユリナ特集の中篇です。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします。

     

     このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第三シリーズ第3回にして累計第12回となります。

     

     前篇ではメガミ・ユリナに関連する歴史を通し、本作全体のデザインや彼女の特性が生まれるまでの話をしました。中篇では第一幕、第二幕、そして新幕における変化をお話しします。その上で個々のカードについて第二幕、新幕両方を踏まえてお話しいたしましょう。全てのカードについて書くとあまりに長くなってしまうため、今回はN1からN3までの3枚を扱います。

     

     それでは、さっそくはじめましょう!

     

     

    第一幕から第二幕、そして近距離問題の歴史

     

     前篇で見てきた通り、第二幕までのユリナは近距離の象徴でした。同時に第二幕までの近距離は大きな問題を抱えており、ユリナの歴史は問題と隣り合わせにあったとも言えます。彼女の昔話をするならば、この問題に触れるほかありません。

     

     近距離問題とは何なのでしょうか? 本作において基本動作の前進は、意図的に後退より強く作られています。それは前篇でもお話ししたように、間合の変化をゲームの推移として活用するためです。しかしその塩梅には誤りがありました。そして結果として近距離の強力さをカードパワーの範囲で調整しきれなくなってしまっていたのです。

     

     まずは2016年5月。本作の発売まで遡り、第一幕の時代を振り返りましょう。

     

     第一幕の発売直後から近距離問題は姿を覗かせ始めました。分かりやすい影響としてユリナとユキヒは強く、オボロは環境から締め出されていました(※)。

     

    ※ より正確にはヒミカは間合10時点での過剰な火力で近距離に対抗し、トコヨとシンラはユリナ、ヒミカ双方との相互作用とサポート性能で活躍できていました。ゆえにユリナ/ユキヒ一強ではありません。ただ、簡単のためにここでは近距離問題に絞って話を進めます。

     

     当時は達人の間合がありませんでした。想像してみましょう。今の本作において間合が2に到着し、そこから離脱や後退のせめぎ合いをしながら攻撃し合う展開は良くみられます。その間合が0となれば、間合2(「影菱」)や間合3-4(「鋼糸」)が全く働かないのは当然ではないでしょうか。

     

     ユリナは間合1で戦え、さらに間合2で法外な火力を振り回せたため強力でした。その後の第二幕への移行期間においてユリナの火力が調整されましたが、今度はユキヒが前進を繰り返すだけで勝てるようになってしまいました。その際にトイレでテンションを高めた不審者により達人の間合が制定されたのはサイネ特集でお話しした通りです。この辺りの詳細を知りたい場合はサイネ特集と、第二幕への移行記事をお読みいただくとよいでしょう。

     

     

    第二幕から新幕、残された近距離問題

     

     時は流れ2016年11月。第二幕の始まりです。

     

     達人の間合により近距離問題は緩和されました。事実として2017年7月、当時の「足捌き」(現在では「風走り」と同じ効果と考えてください)に間合3以上という制約が加えられた時点で第二幕そのもののゲームバランスはひとまずの解決に至っています。その後には決定版における調整もあって第二幕は一定水準のゲームバランスを獲得し、新幕とは異なるプレイ感と楽しさを持つひとつのゲームとして完成しました。

     

     それでは近距離問題は解決したのでしょうか。いいえ、解決は不十分でした。第二幕には未来への問題が存在し、それゆえに完結させなければならなかったのです。当時の全容は新幕へ移行する際の記事をお読みいただくのがよいでしょう。ここではその記事から近距離問題まわりだけを扱います。

     

     第二幕では近距離のメガミとして、間合1-2を得意とするユリナと、間合0を得意とする(傘を開いた)ユキヒがいました(※)。そして彼女らの組み合わせ、即ちユリナ/ユキヒは許容できるバランスに収まっていました。しかしそこに新たに3柱目のメガミを加えるとなると話は別です。彼女に鮮烈な楽しさを与えながらユリナ、ユキヒ双方との組み合わせを制御するのはあまりに困難だと、当時の私どもは結論付けました。

     

    ※ やや特殊な形でハガネも存在していたとも言えます。

     

     すなわち、前進と後退の差に由来する近距離の強みは依然としてカードのデザインを強く縛っており、カードパワーによる調整を困難にしていたのです。そこで私どもは第二幕をひとつの作品として完結させ、新幕への移行に際して離脱を追加したのです。

     

     

    新幕、そして現在へ

     

     そして2018年5月に新幕が誕生し、現在に至ります。近距離問題はどうなったのでしょうか。

     

     私は解決したと考えています。なぜなら近距離、中距離、遠距離それぞれのメガミを、個性を保ったままでカードパワーの範囲で調整できるようになったからです。オリジン版に絞った話としてユキヒ、ハガネ、ライラ、ミズキの4柱はいずれも間合0、1、2あたりでの戦いに強みがあり、近距離のメガミと言えます。そして彼女らはほぼ適切(※)なバランスと個性的な体験を両立できています。

     

    ※ ここで言う適切は調整を行わないという意味ではありません。しかし仮に彼女らに行うとすればそれは上方修正になるでしょう。上方修正を行う可能性がどの程度高いかは4柱それぞれ異なっており、ここで言及するつもりはありません。何より大事なのは、上方修正を行うとしても近距離問題を理由に否決されるとは思えない点です。

     

     こうして近距離の象徴として生まれ、それゆえにユリナ(とユキヒ)と共に語られてきた近距離問題は解決しました。本作の根幹に根付いた難点であるため、根絶されたと断定するのは困難です。しかし状況が大いに改善したのは間違いありません。今は解決として、この成果を共に喜べれば嬉しい限りです。

     

     

    ユリナにとっての新幕

     

     あとはユリナ個人の話をしましょう。新幕への移行とともにユリナには大きな変更が行われました。得意な間合が1-2から3-4へと変更されたのです。

     

     その理由は2つありました。こちらも新幕への移行記事を参照しましょう。第一には近距離問題の一種としてのユリナ問題です。ユリナが高い火力を持つがゆえに近距離に問題が生じているという形で当時は近距離問題を捉えていました。第二には武器のイメージにおける問題です。刀は和風の決闘においてはそれなりには長物であり、それを至近距離に近い1-2に置いていたためにより近いイメージの武器が実装できなくなっていました。

     

     新幕への移行においてはもうひとつ大きな試みとして、各メガミの理念も振り返られました。ですがユリナについてはさほど語ることはありません。前篇でお話しした通り決死は主人公気分という理念と噛み合っており、ユリナの構成要素はほぼ全て肯定される形で実装されたからです。

     

     長くなってしまいましたが歴史の話はここまで。あとはカードについてお話ししましょう。

     

     

     

    第二幕

     

     開発段階において何の能力もない、いわゆるバニラの攻撃は1枚は存在し続けていました。しかしそれを「斬」の原型とすべきか「一閃」の原型とすべきかは難しいところです。前篇の通り1-3の3/1から始まり、1-2の3/2、2のみの3/2などを推移していきました。

     

     「斬」と「一閃」が分化したのは共通カードがなくなり、移動枠カードが加わったタイミングです。その時点でユリナはその基本性ゆえに2枚のバニラ攻撃が与えられ、カード名も「斬」と「一閃」になりました。「斬」は最初は1-3、3/1でしたが途中で1-2となり、あとは最後までそのままでした。

     

     近距離攻撃の基準として適切な1枚と今も捉えています。第二幕では特に強い1枚として活躍し、新幕では標準的な1枚として「獣爪」に姿を変えて活躍しています。

     

    新幕

     

     ユリナが得意とする間合が3-4になると定められた時点で、このカードも当然ながら3-4、3/1となりました。追加で強化する必要はないと判断しました。

     

     これはつまり第二幕サイネの「薙斬り」ですが、「薙斬り」は十分に強く、その上で離脱が追加されているためいくらか強力になっているためです。

     

     

     

    第二幕

     

     「斬」でほとんど話は終わっています。「斬」と「一閃」が分化した時点で「一閃」は2のみの3/2であり、そのまま変更されませんでした。

     

     そしてユリナが過剰な攻撃力を持っている要因として第一幕で認識され、2/2に調整されました。

     

    新幕

     

     得意な間合が3-4となり、併せて「一閃」の間合は3となりました。しかし「斬」と違って「一閃」は強化する余地があり、加えて新幕でライフが10に増加するために、どこかの攻撃を強化する必要性も生まれていました。ですが単に3/2にするのはさすがに危険です。

     

     こうなれば決死を条件として3/2になるという結論は自然なものでしょう。

     

     加えてこれは第二幕の小さな不満点も解消していました。第二幕では「遠当て」「気炎万丈」「天音揺波の底力」のいずれも使いやすいカードではなく、決死は理想的には働いていませんでした。新幕でライフが10になって決死を達成する難易度もいくらか上がって点も踏まえ、より決死に注目するようなゲームにしたかったのです。

     

     今の「一閃」は課題をすべて達成し、バランスも絶妙で、不慣れなプレイヤーも理解しやすい1枚であり、とても気に入っています。

     

     

     

     せっかく第一幕の話をこれだけしたのですから、この愚かな1枚の話もしましょう。見て分かる通り、新幕の基準から見ても疑惑を感じるカードです。

     

     このカードが生まれたのはユリナとヒミカに見直しが行われ、特性が与えられたタイミングです。彼女らは『間合を合わせて攻撃する』という本質の体現ですので攻撃カードに注目しています。ならば決死で強化される攻撃が与えられるのは当然でしょう。

     

     初期案でこの形そのままであり、そして愚かにもそのまま印刷されました(※)。

     

    ※ 一応フォローしておくと、本作のルールそのものが斬新であるゆえに、当時は近距離問題そのものですらも明白な話ではありませんでした。

     

     当然ながらユリナが過剰な攻撃力を持っている要因として第一幕で認識され、第二幕では「遠当て」に変更されます。

     

     

     

     このカードは意図的に弱めにデザインされました。結果として基本的には採用されませんでしたが、一部のマッチアップに限っては重要視され、面白い働きをしたと言えます。

     

     これが生まれた歴史の裏には、第二幕のダメージ理念がありました。次のようなものです。

     

     「1柱のメガミだけで」「5以下の共通の適正距離を持ち」「切札でも《全力》でもない攻撃の組み合わせで」「特殊な条件を満たすことなく」オーラへの合計ダメージが5を超えてはならない。

     

     この規則は第二幕の範囲では素晴らしい働きをしており、大成功だったと捉えています(※)。

     

    ※ 他方でゲーム全体を本質的には地味にしており、同時にカードのデザイン空間を制約していたため、新幕では取り除かれました。

     

     規則は未来を守るものでもありましたが、当時の本質はユリナへの直接的批判でした。事実「斬」と「一閃」で間合2でのオーラへのダメージ合計はすでに5であり、ユリナは規則を守るために改編が求められていました。他方でユリナの特性やコンセプトを鑑みると、決死を持った攻撃がこの枠には1枚必要です。

     

     理念を守るためには何かを曲げなくてはなりません。そこで私どもは「共通の適正距離を持ち」という文言を用いて、異なる間合での攻撃を追加することにしたのです。

     

     これはメガミの得意な間合からずれた間合での攻撃をカードプールに入れるという点において、初めての試みだったと言えるでしょう。そして「遠当て」の成功からその意義は認知され、現在のデザインにも活かされています。

     

     

     

     そして新幕での1枚です。この枠においては没案をお見せするべきでしょう。どこかでこの名前を見たことのある方もいらっしゃるでしょうから。

     

    大振り 攻撃 2-4 3/2

    【常時】この《攻撃》が対応されたならば、この《攻撃》を打ち消す。

     

     新幕のバランス調整におけるどこかのタイミングで何柱かのダメージが過剰であると判断され、見直しが行われました。「大振り」はその際に取り除かれています。その上で「大振り」が問題視されたのはダメージだけではありませんでした。極端な相性に関する問題です。

     

     このカードは対応の弱いメガミに対して制圧的すぎました。加えてそれらのメガミに使う前提として調整すると幅が狭く、魅力的な仕上がりになるとも思えなかったのです。このカードは後に「旋回刃」となり、正しい姿で結実しました。

     

     「大振り」が没になり、改めてユリナのN3を考える必要が生じました。「遠当て」は成功でしたが、元来の得意な間合が3-4となると微妙です。さすがに5-6や5-7は遠く、その上で火力まで弱めに設定すると貧弱すぎます。そこで私どもはむしろ1-2で使える攻撃を得意な間合からずれた攻撃として導入することにしました。

     

     これはユリナに求められているゲーム体験を鑑みても正しいものでした。ユリナは「はじまりの決闘」を終えたプレイヤーが最初に触れるメガミとして設計されています。分かりやすく、使いやすいだけでは不十分で、加えて基礎を共に学べるべきなのです。ユリナは間合を合わせて攻撃する点に注目しているため、その学びは様々な攻撃を通して行われるのが理想でしょう。

     

     そう考えれば学ぶべきものとして、攻撃の緩急が持ち上がるのは当然です。攻め合いの中では比較的安全な間合(多くの場合は2以下)に移動し、攻撃を弱めて力を貯めるターンが生まれます。その際に間合2で自然に使えて、かつ火力は控えめな1枚があれば、不慣れなプレイヤーを自然にその立ち回りへと誘導できるのです。

     

     こうして『しゃがみ』を学ぶための1枚として「柄打ち」は生まれました。目的として見ても、強さとして見ても、今の「柄打ち」には満足しています。

     

     

     本日はここまでとなります。来週はユリナ特集の後篇にて残るN4からS4と原初札の話を行います。ご期待いただければ幸いです。