王道覇道これぞ決闘(前篇)

2020.04.19 Sunday

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     こんにちは、BakaFireです。本日の記事は実に久方ぶりのメガミ特集でございます。私自身のスケジュールゆえに相当の期間で書けずにいて申し訳ない限りではございますが、どうにか本日から3週間にわたって連載していければと思います。

     

     このシリーズで取り扱うメガミはTwitterでのアンケートにて決められ、現在は第3シーズンの途中です。結果は次のようなものでした。

     

     

     前回までで1位のホノカ特集、2位のウツロ特集と終えましたので、今回はユリナ特集となります。これまで行ってきたトコヨ特集オボロ特集サイネ特集ヒミカ特集ハガネ特集チカゲ特集クルル特集シンラ特集サリヤ特集ホノカ特集ウツロ特集を踏まえた内容でもあります。お時間がありましたら、これらのシリーズもご一読いただけると嬉しいです。

     

     それでは、さっそくはじめましょう!

     

     

     

    今回のやり方はいかに?

     

     どのようにメガミを語るのかはこれまでと同様です。

    • 前篇ではメガミの歴史を語り、中篇と後篇では個々のカードを語る。
    • 中篇では新幕への変化も語る。
    • 第一幕での六柱を語る際は、本作そのもののゲームデザインと紐付けて語る。

     今回はまさしく第一幕の六柱にあたるため、本作そのものの話を行うべきでしょう。

     

     

    桜が降るより前の話、その5

     

     はるか太古のお話はこれまで4つの特集で取り上げてきました。しかし久方ぶりの連載でもあり、ある意味で本当に最初のメガミを話すべき時でもありますので、改めてお話ししましょう。

     

     デザイン初期の本作はそもそも和風の世界観ではありませんでした。コロシアムでラノベ風西洋ファンタジーな決闘を行うゲームだったのです。その上で32個(第二幕までは)の特別なトークンを用いることは決まっており、そのトークンを桜の花びらにするというアイデアと共に世界は和風に染まったのです。

     

     そんな最初のバージョンでは6人のキャラクター参戦していました。これまでの特集で出そろっています。2人目「銃」、3人目「盾」、4人目「スカーフ」、5人目「書」、6人目「扇」。彼ら彼女らがどうなったかは他の特集をお読みいただくこととして、ここでお話しするべきはその中でも本当の意味で最初のキャラクターです。

     

     1人目「大剣」。まずは彼女がどんなキャラクターだったのかを振り返りましょう。

     

     

    すべての はじまり

     

     本作の根幹は「間合を合わせて攻撃するゲーム」です。この根幹は最初から変わっていません。それゆえに、本当の最初には2枚が生まれました(用語などは現代語訳しています)。

     

    間合い 行動

    間合⇔自オーラ:1〜2

     

    斬撃 攻撃

    適正距離1-3、3/1

     

     「間合い」はキャラクターに関わらず使用できる共通カードです。本作の初期段階においては共通カードが5種類(段階によっては4種類)存在していました。後にメガミごとの個性を強調するために共通カードは撤廃され、移動枠と呼ばれるカードに置き換わることになります。

     

     「間合を合わせる」行為はあらゆるキャラクターが行います。ゆえに本作初となるそのためのカードは共通カードとしてデザインされました。

     

     この1枚にはいくつかの歴史が隠れています。本当に最初は基本動作が存在しなかった(クソゲー!)ため、移動用のカードは汎用性が高くなるように設計されていました。オーラが5になったらどうするのか? いえいえ、同じく最初期にはオーラの上限がなかったのです。

     

     他方で「攻撃する」部分もあらゆるキャラクターが行いますが、その部分の内容を変えることでキャラクターごとの個性を出そうとしていました。その上で本当に最初に作られたのは最も王道かつ主人公らしい、剣を用いた近接攻撃としての1-3、3/1だったのです。

     

     

    近距離VS遠距離、その初陣

     

     近距離の象徴である「大剣」を作ったら次はどうなるのか。もちろん遠距離の象徴としての「銃」が対比としてデザインされていきました。ある意味でこの2キャラクターのデザインは同時に行われたとも言えます。2人は本作で最もエッセンシャルであるゆえに特別な存在でした。

     

     本作そのものが生まれるまでのプレイテストは近距離と遠距離の対立から始まり、そして第一幕は2人の戦いを通して生まれていったといっても過言ではないでしょう。

     

     そんな最初の戦いはどう終わったのか。遠距離の勝利でした。「銃」のカードプールがちょっとおかしかったのも確かですが、遠距離のほうがアグロ(速攻)戦術としてのコンセプトがしっかりしていたのも理由かもしれません。これらの話題は詳しくはヒミカ特集でお話ししていますので、よければそちらもご覧ください。

     

     

    近距離いかにあるべし?

     

     敗戦を踏まえ、改めて近距離とは何であるのかに立ち返りました。遠距離との対比でもある以上、近距離を知るには遠距離を知らなければなりません。ヒミカ特集で書いた遠距離は以下のようなものでした。

     

    • 遠距離は先に攻撃できる。ゆえにアグロ(速攻)戦術のようなものである。
    • 速攻なので相手の間合に入る前に相手を半殺しにできる。
    • 完全に倒せてしまうとゲームにならないので、勝利まではいかないようにする。
    • 相手の間合に入られた後のフィニッシャーが別に存在する。

     

     それゆえに私は近距離を次のようにとらえました。

     

    • 近距離は中盤以降の攻撃こそが本番である。ゆえにミッドレンジ(中速)戦術のようなものである。
    • 速攻にはリードされるものなので、自分の間合に至った後は逆転できるだけの攻撃力を持つ。
    • 間合を急ぎ近づけるためのサポートカードがある。それはある種のランプ(リソース加速)戦術とも言える。

     

     ヒミカ特集での説明を繰り返しましょう。この理念の本質は、間合が近づいていくことをゲームの推移過程として捉えている点にあります。ゲームには時間経過に伴う変化が欠かせません。同じことをただ繰り返すゲームでは、仮に最初の数ターンが楽しくともいずれはつまらなくなります。多くのトレーディングカードゲームはコストの概念を導入し、ターンの経過に伴い利用できる資源が増えるという形でこれを実現しています。資源が増えればよりコストの大きいカードを使えるようになるため、ゲームが変化するのです。

     

     その点において、本作はやや独特なやり方を使っています。変化を与えている一つ目はコストと資源に近い関係にあるフレア。そしてもう一つが、今本題にしている間合です。本作の間合は最大である10から始まり、そして次第に減少していくようにデザインされています(そのために、基本動作の前進は後退より強くしています)。そして興味深いことに、間合に置かれていた桜花結晶という資源がプレイヤーの手元へと移っていくため、資源という意味での変化ももたらされているのです。

     

     つまり近距離が得意であるとはつまり、ゲームが変化するまで耐えきってから本領を発揮し、そこから逆転できることだと考えました。上述の通り本作における変化は2通りありますので、それぞれのやり方でカードが設計されます。

     

     間合の変化に目を向ける方向としては、近距離での攻撃を遠距離よりもパワフルにしました。そしてフレアの変化に目を向ける方向としては、高い消費と高いダメージを兼ね備えた大技を「大剣」に意図的に与えたのです。

     

     その結果として生まれた「大剣」のカードを見ていきましょう。

     

    斬撃 攻撃

    1-2、3/2

     

     間合が狭くなり、ダメージが増えたことでゲームの変化後に逆転するコンセプトが強くなりました。

     

    迫撃 攻撃

    1-4、2/1

    【攻撃後】間合→ダスト:1

     

     より広い間合で使用でき、ゲームの変化を加速させるカードも導入されました。当時の私はこれをランプ戦略の一種と捉えていました。

     

    必殺剣 消費4 攻撃

    1-2、7/3

     

     これこそが「月影落」の源流です。オーラへのダメージがなんかおかしいですが、それは次にお話しする内容に由来しています。

     

     

    恐怖! ゆっくりと歩いてくる侍

     

     近距離を再定義した後の戦いは(遠距離側の問題を取り除いたこともあり)近距離有利に進みました。そしてそんな間に世界には桜が降り、舞台は和風に染まりました。銃は銃であり続けましたが「大剣」はここで「刀」へと変わり、彼女にもユリナという名前が与えられます。

     

     そしてプレイテストも積み重ねられます。そんなある日、ひとつの問題が浮き彫りになっていきました。プレイテスターの中に一人、クレイジーなやつがいたのです。

     

     彼が宿していたのはユリナ(と誰かの組み合わせですが詳細は忘れました)。ゲームが開始し彼は1前進してエンド。対してこちらも1前進でエンド。その次のターンにおける彼の振る舞いはイカれていました。カードを2枚引くやいなや内容を特に見ずに裏向きで手札ごとテーブルに叩きつけ、4前進と言い放ったのです。

     

     おお神よ。楽しそうな効果を持つ様々なカードがあったならば、人間たるものカードを使ってみたいと思わないのでしょうか。彼にとってはそうではなかったようです。それどころか何を引いたかすら気にしていないようです。なんと乱暴なプレイ。こんなことでいいのでしょうか?

     

     どうやらよかったようです。連戦連勝したのは彼でした。

     

     改めて振り返るならば、彼はゲームが上手かったのでしょう。話は簡単です。他のどのメガミがカードを使って戦うよりも、手札を伏せて前進を繰り返す方が強かったのです。

     

     

     カード1枚1枚へ込めた「このように楽しませたい」という想いを吐き捨てて冷徹に捉えると、実に理にかなった戦略です。なにせこの時点ではオーラの上限がありませんでした。現在における序盤のやり取りが有意義で楽しいのはオーラの上限が5であるためです。第一に移動量が制限されます。第二にオーラが高々5では防げる攻撃に限度があり、相手の間合に踏み込むリスクが高まります。ゆえに自分や相手がどこまでなら移動しやすいのかを推し測り、その上でなるべく攻撃されずに攻撃するという目的が機能するのです。

     

     ではオーラの上限がないとどうなるか。明白でしょう。移動量は自由なので、得意な間合が近距離であるユリナはほぼ常に最大限に移動することが正解になります。相手の間合に踏み込んだとしてもオーラが8くらいあるため問題ありません。ついでに補足すると当時は達人の間合も離脱もありませんでしたので、いともたやすく間合は0になり、復帰も困難でした。

     

     こうして、最初の近距離問題(※)とも呼べる問題が明らかになり、解決のためにオーラに上限が与えられました。最初は6から試され、何度かのテストの末に5に落ち着きます。この問題はこれにてひとまずは落ち着き、近距離と遠距離の戦いはやや近距離優位というくらいで推移していきました。

     

    ※ 今となって見直すとこの一事はより多くの真実を伝えていたように思いますが、当時の私では全てを捉えることはできませんでした。

     

     

    主人公は決死にて目覚める

     

     さらに時は流れます。本作のメガミたちにはそれぞれ個性的な特性が与えられていますが、当時のユリナとヒミカには特性がありませんでした。近距離と遠距離の象徴であることそのものが個性だと捉えられていたためです。しかしメガミたちのキャラクター性が掘り下げられる中で、彼女らにも特性が必要だと方針が切り替わります。

     

     ユリナの特性は思いのほか簡単に決まりました。ユリナに求められる要素を3つほど考え、それら全てが同じ方向を指し示していたからです。

     

     第一にユリナとヒミカは本作の根幹ゆえに基本となるメガミです。特殊なギミックは入れるべきではなく、特性がゲームプレイの指針になるくらいが望ましいと言えます。いいえ、ヒミカよりさらに基本に近いユリナとしては、プレイ中に特性を忘れても問題がないくらいにしたいところです(※)。

     

    ※ ウツロ特集で述べた通り主体性という要素もまた重要だと後に発見しますが、ここで意図的に軽視していた点については改めて振り返ると正しかったと感じています。

     

     第二に近距離の理念です。近距離はゲームに変化が与えられた後に逆転していく戦い方です。ゲームの変化は間合の減少とフレアの増加を指しており、それらの挙動と連動しているとよいでしょう。

     

     第三にユリナは主人公にあたるキャラクターです。主人公を使う以上、プレイヤーもまた自分が主人公になったような気分を味わえるべきです。この辺りの感覚は当時は漠然としていましたが、あるメガミを宿したプレイヤーがどのような体験をしたいのかという点は『第二幕』の『第壱拡張:夜天会心』以降は強く意識されてきました(※)。ユリナに限っては、無意識的にその考え方がなされていたといえるでしょう。

     

    ※ 詳しくはハガネ、チカゲ、クルル、サリヤ、ホノカ、ウツロといった該当するメガミの特集をご覧ください。

     

     こうして列挙すると、決死に至るのは自然ではないでしょうか。そして出たアイデアは現在の決死そのままであり、一度も変わりませんでした。第一に決死は序盤はまず満たせず、後半は自然に満たされやすいので意識しなくてもプレイできます。第二にフレアの増加はライフの減少と紐づいていてゲームの変化後に強くなる特性であり、逆転するという理念ともかみ合います。第三にピンチに陥り、そこから逆転するのはまさしく主人公ではないでしょうか。

     

     

     こうして強い必然性と共に主人公は立ち上がりました。そして彼女は、広大な桜降る代の可能性へと歩み始めていったのです。

     

     これにてユリナが生まれるまでの話はひと段落。次回は第一幕と第二幕におけるユリナの昔話を行い、それを踏まえて新幕でどうなったっていったのかについてお話ししましょう。ご期待くださいませ。