始まる前の決闘録 第十回:特別編「被害者の会」

2020.02.26 Wednesday

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    1.ディベロップ・チームのゆるい午後

     

     皆さんこんにちは、ローヴェレです。来る『第伍拡張』のディベロップの開始などもあり前回の掲載から1か月が開いてしまいご無沙汰しております。楽しみにしていただいた方には申し訳ありませんでした。

     

     さて、毎度おなじみディベロップ・チームですが、ご存じの通り、その仕事はバランスの調整です。バランス調整のためのテストプレイでは、バランスを破壊している可能性があるデッキを構築し、実際に試してみるところからスタートします。

     

     結果として発生したえげつないデッキの数々をこれまでに本連載で紹介させていただいてきました。当然といえば当然ですが、相手をコテンパンにしている側は楽しいんですよね。

     

     一方、裏を返せば、同じ数だけ手も足も出ず完封されてきた被害者が存在するわけです。特に初期のテストプレイはお互いにめちゃくちゃなデッキをぶつけ合い、『桜降る代のゆるい午後』シリーズのようなゆるーい空気で行っています。

     

     さて、前書きが長くなりましたが、今回はこのシリーズの第十回を記念し、実際にとんでもデッキを食らった側の方々からエッセイを寄せていただきました。

     

     

    2.totさん 被害デッキ:【第一回】影の翅

     

    前進撃を打たれた後に「あれこれアトラクト再起するんじゃね?」と言われたときの納得のいかなさと絶望感が凄まじかったです。

     

    翅クラッシュの即死を避けるために離脱・後退をしても、前進撃とアトラクトのループですぐに間合0に戻される様には、穴を掘って埋めるような空しさを感じました。ついでのようにダストを大量に散らかしていくのがやるせなさを加速させます。せめて片付けくらいは自分でやってくれ。

     

    それでもめげずに穴掘りと穴埋めの合間をぬってクロックを刻んでいきます。時折作業現場が大地砕きで粉砕されることもありましたが、相手のライフは徐々に削れていき、終わらないように思えた苦行にも一筋の光明が見えてきます。もしかしたら何とか勝てるのでは?―そんな想いが頭をよぎった直後、翅クラッシュ雑ぶっぱによるオーラ削りからの灰滅(当時消費20!!)で負けこの世の理不尽を味わいました。

     

    シビアすぎるオーラ・間合管理に加えてダストのケアまで要求するのは無理がある。悪魔の3段クルーンか。

     

    記事のトップバッターを飾るにふさわしい圧倒的な強さと不愉快さを兼ね備えたこのインチキデッキが世に出なくて本当に良かったと思います。

     

     

    3.やもドラさん 被害デッキ:【第八回】Form:ASURA

     

    はじめまして。やもドラと申します。ふるよに自体は細々と長く遊ばせてもらっていますが、縁あって『第四拡張』の開発からはディべロップ・チームの一員として活動しています。

     

    さて読者の皆様はゲームで負けたとき、構築やプレイを反省するより前に「壊れ!オリカかよ!刷った奴出てこい!」と相手のカードにキレ散らかしたくなることがおありでしょうか。私はあります。

     

    ではそれが本当に壊れていて、刷った奴の顔が見えたとしたらキレないで済むかというとそんなことはありません。普通にキレます。何かというと、テストプレイ中の話です。

     

    ディべロップ・チームは、ふるよにのゲーム自体やキャラクターを愛し、かつプレイに真摯で人の良いミコト揃いです。それ故にテストプレイはいつも非常に楽しい時間なのですが、それでもしばしば誰かが笑いながらブチキレています。

     

    カードに問題が見つかった時など、ディべロップ・チームが便宜的にカードをデザインする事もしばしばあるのですが、自分たちが考えたカードに対しても、時にはキレます。

     

    キレたくなるようなポイントを直すのがテスターの仕事ではあるのですが、それはそれとしてキレます。そんなもんです。

     

    その中でも、私が経験した今期最大のブチキレ対象はアイツです。第八回でも紹介された「Form:ASURA」。記事を読まれた方はご存知でしょうが、畏縮解除から連射できる「Sigma-Drive」はひどい性能でした。では集中力を得る効果のないメガミと組んだらマシだったかと言うと、そんなことはありません。私が対面したサリヤA/ライラはその悪例です。

     

    変形ギミックで稼いだゲージから「風魔招来孔」を開け、毎ターン間合2で飛んでくる「Sigma-Drive」と消費2の「雷螺風神爪」に、「風魔旋風」「風雷撃」「Zeta-Voice」が混じってさあ大変。

     

    そのライフ2点攻撃ラッシュはさながら、肌を焼き、指を折り、爪を剥がす拷問のようでした。今でも「Form:ASURA」のカードを見るたび、適正間合1,3,5を確認して安心することを繰り返しています。今はアイツ居ないんだ、と理性で分かっていても、本能で納得してないところがあります。マジトラウマ。

     

    ディべロップ・チームでの決闘は、さながら大乱闘。突然謎のカードで理不尽に死ぬ。新入隊員である私がはじめて、そう思い知らされた経験でした。

     

     

    4. 風輝さん 被害デッキ:未紹介(全盛期ミズキ)

     

    はじめましての方ははじめまして。風輝です。

     

    突然ですが、皆さんは"対話拒否"と聞いてどのようなデッキを思いつくでしょうか。例えば、一切の対応を許さず6ターンで確実に相手を屠るデッキや毎ターン3/2攻撃を与えてテンポを奪い続けるデッキなど多種多様なタイプが存在するジャンルですが、今回の調整で僕が遭遇したのはOTK(ワンターンキル)というカテゴリのデッキでした。

     

    ふるよには相手のライフにダメージを与えることで勝利に近づきつつも、相手の使えるフレアが増えて逆転の目が増える、といったジレンマが魅力のゲームです。そんな中、一切の攻撃を行わずに相手のライフを一撃で削り取る準備を完成させるOTKは相当ムカつくデッキタイプであることは間違いないでしょう。もちろん、だからこそ普通のOTKには厳しい条件が課せられています。

     

    さて、今回の壊れデッキはミズキが主体となって作られていました。ミズキは防御のメガミだし膨大な火力は内包していないのでは、とたかを括って眼前構築を済ませた僕は「山城水津城の鬨の声」によって吹き飛ばされることになります。

     

    今でこそテクニカルな一枚として存在感を放つこのカード、なんと(僕が見た限りは)効果が変更されていません。では、何が破壊の限りを尽くしたのでしょうか。それは、今より大量に徴兵できた兵員たちです。

     

    ……1ターン1回しか使用できないため通常のプレイにはそこまで影響はありませんが、「山城水津城の鬨の声」によるOTKでは話が違います。単純に手数が増えますし、展開後の防御力も段違いに上がります。

     

    まぁ、徴兵できる兵員が多くても揃えるまでの手間が大変じゃない?とお思いの方もいるでしょう。しかし、このシリーズをご愛読の方々はご存知のはず。その頃は徴兵できる数もめちゃくちゃに多かったのです。

     

    とはいえ、槍兵のダメージだけで死ぬようなデッキはテストプレイの場にはなかなか現れません。僕が使っていたデッキもレンジロックを成立させながら殆どの対面を7ターンで葬ってお蔵入りにされた狂ったデッキでした。しかし、そんなデッキをも瞬殺できる凶悪な火力が用意されていました。

     

    それが、「三重膝丸櫓」です。今の効果と違う点は、1ターン何度でも使えること、終端を持たない兵員でも再起することです。

    これは単純にフレアさえあれば兵員を使うたびに3/1の切札攻撃が飛んでくるという禍々しい性能であり、さらに「風魔纏廻」でコストを下げることで抵抗不能の暴威が相手を襲うことになりました。

     

    このデッキの埒外な点は、リーサル時のライフダメージが12点ほど存在したため、それまでにやることが…兵する▲瀬好箸鮓呂蕕 のみで良いところです。相手からしてみればこれはゲームとは呼べないもので、僕は当時のテストログに「桜花決闘への冒瀆」と書き残すほどのトラウマを負い、カード効果を変えるよう主張したのでした。

     

     

    5.ローヴェレ 被害デッキ:【第五回】単純にすごく強いビート

     

     皆さんこんにちは、ローヴェレです。いかがお過ごしでしょうか。さて、今回の連載は……、ではなく、僕もまた被害者となっていることをお伝えしようと思いワンコーナーをせしめました。

     

     普段からお付き合いいただいているミコトの皆様ならお分かりかも知れませんが、私はデッキビルドが得意な、ディベロップ・チームでは「加害者」に回ることの多いミコトです。実際に、今回totさん、やもドラさんが紹介しているエピソードの対戦相手は私でした。

     

     しかし私が常に加害者でしょうか? いいえ、そんなことはございません。初期のテストプレイでは、私のようなデッキビルドが得意なプレイヤーは全力でスーパーコンボデッキを組みに行きます。

     

    これに対し、食らう側は丸腰で食らいに行くかというと、そんなことはございません。彼らも当然、新カードリストを見て最強の攻撃カードを使ったデッキで立ち向かってくるのです。

     

    その好例が第五回でご紹介したシーズン0のオボロ/ライラによるビートダウンでしょう。これに現実であれば高速クラス、即ち6ターンキル程度のコンボデッキをぶつけたところで粉みじんにされるのがオチでしょう。事実、私はシーズン0のテストプレイで大幅に負け越し、確か勝率は4割を切るぐらいであったと思います。

     

     もちろん、私が組んだデッキがテンで強くないというケースもままあるのですが、それなりに強く、実際に並のデッキなら粉砕できるコンボデッキを組み上げ、動作を検証し、持ち込んだうえで理不尽に粉砕される感覚はなかなか理不尽です。私のほうが壊れデッキを作ったはずなのに……?

     

     まぁ、こういったケースは、1週間後には喧嘩両成敗のごとくともに弱体化されるというオチが付くものです。だからと言って納得できるものでもありません。テストプレイで明らかに強すぎるデッキは一度しか使えません。次には弱体化されるからです。このデッキならあのtotさんを粉砕できる、そう思ったデッキで返り討ちに合う挫折感はなかなか味わえないものでしょう。

     

     

    6.おわりに

     

     今回は第10回特別編ということで4名の方のエッセイを掲載させていただきました。ディベロップ・チームが普段どのようなテストプレイを行っているか、なんとなくわかっていただけたでしょうか?

     

     もちろん、細かい数字を詰める、終盤のテストプレイも非常に重要なもので、毎回多くのテストプレイと議論を重ねています。ですがそれらはなかなか地味で、記事のネタになるものでもありません。

     

     私たち自身は頑張っているつもりでも、必ずしも正解に到達したうえで拡張を出せるとは限らないのがこの仕事の心苦しいところです。それでも私たちディベロップ・チームはよりよい拡張のために今後も努力を重ねていく所存です。

     

     今後も「桜降る代に決闘を」、およびディベロップ・チームをささやかでも応援していただければ、これほどうれしいことはありません。

     

     始まる前の決闘録・第十回はここまで、また次回「本当にすごかった兵員」の話を再びする時までお別れとさせていただきます。

     

     

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