始まる前の決闘録 第一回:影の翅

2019.09.11 Wednesday

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    1 はじめに


     みなさんこんにちは、「桜降る代に決闘を」ディベロップ・チームのローヴェレです。この度はディベロップ・チームの一員としての立場より記事を連載させていただくことになりました。お楽しみいただければ嬉しいです。

     

     私たちディベロップ・チーム(またはバランス調整チーム)はカードの調整部門です。別に存在するデザイン・チームからカードリストを受け取り、それを基にテストプレイと議論を繰り返します。そして発見された問題点を修正し、世に送り出しています。

     

     ディベロップ・チームの一員としての記事ではありますが、当記事は真面目にバランスについてお話することが目的ではありません。この記事は私たちがテストプレイ中の決闘のうちの選りすぐりのものをご紹介し、昔ばなしとしてお楽しみいただくためのものです。

     

     先述の通り、私たちはカードの調整のためにテストプレイを行っています。逆説的に、私たちが受け取ったカードリストにはバランス上の問題があるということです。

     

     これはデザイン・チームの力量不足などではなく、デザイン・チームはメガミとしての全体像と面白さを作るチームであること、加えて初めて作るゲームやメカニズムの適正値など誰も直感だけでは分からないからです。

     

     当然、バランス上の問題があるカードで行われるテストプレイでは時として凄まじい結果を生みます。突然死ぬのは序の口で、4ターン目に対処しようのない「闇昏千景の生きる道」が突きつけられる、全リソースをロックされる、対戦相手が無敵になる。様々な事件が発生してきました。

     

     これらの昔話はディベロップ・チームでは「シーズン0」と呼ばれています。メガミ特集の記事で時折触れられることもありますし、食事の場などで私たちが笑い話として話すこともあります。これらの話は往々にして好評であるため、そこだけで留めるにはもったいないと感じていました。そこでより多くの皆様に楽しんでいただくため、今回記事として掲載することにしました。

     

     このシリーズでは毎回1つ、古のデッキをピックアップし、その原因となったカードやデッキの構造を紹介し、そして何が起こったのかをお話しします。では、第1回をお楽しみいただければ幸いです。

     


    2 シーズン0のウツロ

     

     今回ご紹介するデッキは、2018年2月ごろ、新幕が発売される半年ほど前に存在したものでした。基本・達人セットで発売されたメガミに加え、第一拡張のメガミ・アナザーがちょうどテストプレイに追加された時期です。

     

     とはいってもまだライフが増えた新幕の適正なバランスには到底至っておらず、全体的に今よりもだいぶカードが強い時期でした。例えば、こんなカードがあり、しかも大して問題視されていませんでした。

     

     

     上記のカード自体はそうかからずにクルルの「びっぐごーれむ」でとんでもないことが分かり修正されているのですが、捻らずに使用したこの「虚魚」は当時のカードプールの中で突出していたわけではないというのが恐ろしいところです。

     

     一方で、そんな中でもウツロはとてつもない存在でした。シーズン0、およびその後の拡張のテストを含めてもディベロップ・チームが相対した圧倒的最強のメガミだったのです。

     

     

    3 影の翅

     

     そんなウツロが持っていたカードの中で2番目にカードパワーが高かったカードが現在の「影の翅」に相当するカードでした(1番は何か? ウツロ特集をご覧ください)。

     

     

     ヤバいですね。そのターン中動けなくなるとは言え、たった1枚で無限の移動を可能としてくれます。しかも相手の移動対応が一切無効になるという凄まじい効果。灰燼が10で達成になることなどどうでも良くなってきます。

     

     では何に使うと強いでしょうか? ヒミカとの組み合わせなどでも尋常ではなかったと思いますし、間合2以下を宣言すれば無限に離脱することもできます。それらを凌いで凄まじかったのが以下のデッキです。

     


    遠心撃 攻撃

    砂風塵 攻撃

    大地砕き 攻撃/全力

    円舞錬 行動

    鐘鳴らし 行動

    重圧 行動

    影の翅 付与

     

    大天空クラッシュ 攻撃

    大重力アトラクト 行動

    灰滅 行

     

    ※ 細字のカードは現状のものとしてお読みいただければ問題ありません。太字のカードは上の画像をご覧ください。


     

     上記の影の翅で間合6を指定すると何が起こるか? ターン開始時に間合4以下ならば遠心撃が打てるのです。その後どのように間合の結晶が移動しようとも、打てるのです。

     

     結果として起こったのが前進!前進!!遠心撃!!!

     

     なんと影の翅、達人の間合が変動しないため間合2から0まで前進できます。ただしルール上の間合は6、二歩前進しつつ遠心は達成している哲学的状況です。遠心撃を打つ前に演舞錬や鐘慣らし、重圧を使用することもでき、特に重圧は遠心撃と抜群の相性を誇ります。

     

     さらに後退しないと再起しないからこそバランスがとれる大重力アトラクトが前進しながら再起するため、対戦相手の立て直しも難しくなるおまけがついてしまいました。その上恐ろしいことに、間合0で放置すると次の影の翅を引かれた際にカード1枚から10/5の大天空クラッシュが放たれることとなります。

     

     食らったテストプレイヤーが過去トップクラスに長文で修正を要求したというこの理不尽な動きが許されるはずもなく、影の翅は弱体化され、現在のものへと変化していくことになりました。

     

     初期のカードプールから実に9枚ものカードが下方修正されたウツロには、頻繁にこのシリーズに登場してもらうことになりそうです。

     

     今回ご紹介した「影の翅」、現在のカードプールにあったら何ができるでしょうか。コンボデッキがお好きな方は考えてみると面白いかもしれません。

     

     始まる前の決闘録・第一回はここまで、また次回、ウツロの別のカードにまつわる話をする時までお別れとさせていただきます。

     

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