終焉ノ宿命ニ禊ノ刻ヲ(前篇)

2019.08.09 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。今週はイベント関連の記事をお伝えすると予告しておりましたが、少しばかり調整が必要そうですので予定を変更し、来週に予定していたメガミ特集をお送りいたします。

     

     したがって本日の記事は好評のシリーズ、メガミ特集の11回目となります。このシリーズで取り扱うメガミはTwitterでのアンケートにて決められ、現在は第3シーズンの途中です。結果をご覧いただきましょう。

     


     前回は第1位だったホノカ特集でしたので、今回は第2位のウツロ特集となります。これまで行ってきたトコヨ特集オボロ特集サイネ特集ヒミカ特集ハガネ特集チカゲ特集クルル特集シンラ特集サリヤ特集ホノカ特集を踏まえた内容でもあります。お時間がありましたら、これらのシリーズもご一読いただけると嬉しいです。

     

     それでは、さっそくはじめましょう!

     

     



    第二幕第参拡張の流れ2回目

     

     彼女の語り方はまったくもってホノカ特集、すなわち『第弐拡張』と同様です。何度か当ブログでも書いた通り『第二幕』において印刷コストの問題を解決するために『第弐拡張』と『第参拡張』は同時にデザインされ、印刷されました。したがって時代の話としても同様です。

     

     それは本作を続けるために当時はやむを得ないものであり、判断そのものは誤りではない一方で、いくつかの歪みと失敗も生んでしまいました。ホノカほどに失敗は多くはありませんが、ウツロにもいくらかの失敗はあるため、中篇か後篇にはその点にも触れるでしょう。

     

     さておき、やり方は以下の通りになります。

     

    • 前篇ではメガミの歴史を語る。
    • 歴史については2017年2月から6月ごろ、彼女がデザインされた頃の話をする。
    • 中篇では新幕における大枠での変化を語る。
    • 中篇と後篇にわたり、『第二幕』と『新幕』それぞれのカードを並べて、カードの歴史と変化について語る。

     

     また、ウツロは本シリーズではじめて執筆時にアナザー版メガミが存在するメガミではありますが、本シリーズではアナザー版は扱わないものとします。ただでさえ分量が多くなりがちなので、そこまで触れると収拾がつかなくなるからです。アナザー版についてはいつの日か特集を組むことにしましょう。

     

     

    強大なる敵を物語に

     

     ウツロがどこから来たかといえば、いくつか同時に膨らんでいった想像が結び付き、必然として生まれたというべきでしょう。それは2017年の1月ごろから物語とゲームシステム、それぞれで同時並行的に起こっていました。ゆえに切り分けてお話しするとしましょう。

     

     まずは物語です。今でこそ2番目に基本的なメガミと捉えられているサイネですが、『第一幕』から『第二幕』においては初の追加メガミとして7柱目に登場したメガミでもありました。そして彼女以降のメガミは、常にストーリー『桜降る代の神語り』の流れと共に考案されてもいたのです(※)。

     

    ※ ちなみに『桜降る代の神語り』はすでに完結しており、KADOKAWAのドラゴンノベルス様より書籍版も発売しております。興味がありましたらこの機会にいかがでしょうか(宣伝)。また新たな物語シリーズ『八葉鏡の徒桜』もまた現在連載中です。こちらもご覧いただければ嬉しいです。

     その中のウツロを語るためには、まずはクルルを振り返らなくてはいけません。クルル特集で書いた通り、その時点での『神語り』の計画では魅力的な敵方が不足しており、ゆえに物語のパワーバランスにも問題がありました。

     主人公である天音揺波は第三章を迎えるころにはこの地で有数の実力者になってしまいます。ゆえに我らが大敵である瑞泉驟雨はその頃には計画を結実させ、主人公を圧倒する大悪になってもらわなければ困るのです。

     その方法が「敵方のメガミ」であり、クルルでした。カラクリ、すなわち発明品を用いて恐るべき現象を引き起こせる彼女の助力は瑞泉の野望を大きく助け、より多彩な物語の可能性を生み出したと言えるでしょう。

     しかしそれだけでは不完全に感じられました。幼少期からのアニメーションなどの影響もあり、私には魅力的な敵の形として二人組の敵幹部というあり方が刷り込まれていたのです。それは例えばしゃべる猫を連れた悪の団員であったり、オカマ狼と変な忍者であったり、まあそんな感じです。事実、一人の強大な敵がいるよりも、並び立つ二人が掛け合うほうがキャラクターとして魅力的になるというものでしょう。

     

     そこで私はクルルとコンビを組ませるような「敵方のメガミ」をデザインすると決め、ウツロのイメージを膨らませていきました(※)。

     クルルは悪の科学者として技術の面からその計画を助けます。では、悪の組織の観点から対になるものはなにか。私はそれを武力だと考えました。一般的な悪の組織ならば筋骨隆々としたゴリラが該当しますがメガミには相応しくありません。そこでウツロには旧い強大なメガミが封印された姿という設定を与えることにしました。そうすれば対人において絶対的武力になると同時に、封印が解ければメガミにとっても絶対的な武力となり、悪の組織を本当の脅威にできるのです。

     

     同時に封印された旧い存在は物語に謎ももたらします。悪の陰謀はすべてが明らかになっているより、物語の終盤まで謎が残されていたほうが魅力的と言うものでしょう。さらにこの在り方は彼女の人格からも必然的でした。クルルと同様にメガミが純粋に悪であることは望ましくありません。ゆえにこの在り方を活用し、ウツロには存在が封じられているゆえのまっさらな人格と、それ故に悪にも染まりうる無垢さが与えられたのです。

     こうして、物語における第二の敵方のメガミとして、ウツロの立ち位置が定まりました。

     

     

    ※ 最終的にメガミという存在の強大さゆえに私の想像していた役割からは少しずれ、その枠にはより便利な二人組として架崎と浮雲が収まることになります。しかしながら『神語り』の第17話第21話からは当時考えていたイメージの片鱗が見て取れます。

     

     

    灰よ塵よ集いて呑み込め

     

     次はゲームシステムの話へと移りましょう。ウツロの特性である「灰塵」は、ウツロの特性をデザインしようとしたわけではなく、純粋なアイデアとして生まれてきました。

     私どものデザインチーム(当時はバランス調整チームも兼任)にはすばらしい協力者が多数いますが、その中でもアイデアマンとしての能力が優れた人物がいます。正直にお伝えしますとウツロの「灰塵」、そして最近ではコルヌの「凍結」はほぼ100%彼のデザインによるものなのです。

     灰塵が生まれた過程には何も特別なものはありません。彼の単純な創造力の産物で、最初の時点では妄想とすら言えるかもしれません。当時の私どもは様々なやり取りをサイボウズで行っており、その中にはカードやメガミの妄想をするための掲示板も存在していました。そこで彼はユリナやサイネなどの特定条件でいくつかのカードが強化されるメガミと同様のやり方で「ダストが一定値以上だと強化される」のもあり得るのではないかと提言したのです。

     それを聞いたとき、私は「確かにあり得るな」と考えました。なぜならこれは、この類の特性が満たすべき「主体性」と「普遍性」を共に満たしていたからです。いくつかのデザインを没にする過程で、私はこの2条件を発見していました。説明しましょう。

     「主体性」とは、そのメガミを宿したプレイヤーが努力と意思決定でその条件を満たせることを指します。主体性があるからこそプレイヤーはその条件に向き合い、そのメガミらしい戦い方を楽しめるのです。

     「八相」「連火」は言うまでもありません。「境地」は自動で満たされますが効果を工夫すれば、集中力なしで間合を合わせるよう努力したり、集中力を2のままターンを終えるという意思決定を行ったりできます。「決死」は相手の攻撃をいかに受けるかという意思決定がかかわるため、かろうじて問題がないという評価です。

     主体性を理由に没にした特性の例は「相手のオーラが5ならばいくつかのカードが強化される」です。これを満たす努力は一部のカードでしかできないため、プレイヤーは制御できない気持ち悪さを味わってしまい、結局相手のプレイングを縛るだけになってゲームが面白くならないのです(※)。

     

    ※ しかしこの特性が「凍結」との相性を見出され、コルヌの補助輪として蘇ったのは私としても意外でした。それも「凍結」と併せた彼の発明品であり、その素晴らしい着眼点には賞賛以外ありえないでしょう。

     

     「普遍性」とはそれが大半のゲームにおいて参照されうることを指します。ライフ、オーラ、カードの使用、集中力。そのどれもあらゆるゲームで登場し、重要な役割を担います。

     普遍性が重要なのは、本作が二柱を組み合わせるゲームだからです。普遍性があるからこそ特性と他のメガミとの間に相互作用が生まれやすくなり、多彩な発見がゲームを彩るのです。逆にそれが不足すればメガミは自らの戦い方のために自らのカードを求め、自己閉塞的になります。その類のカードは一部ならば魅力的ですが、メガミ全体(特にオリジン版の)がそうあることは避けなくてはなりません。

     ここまででお分かりの通り、(まだ名前はついていませんでしたが)「灰塵」は明らかに魅力的な特性です。しかしその時点ではハガネにもチカゲにも合ってはおらず、まあ期待できる特性だと感じた程度でした。

     しかしここで物語が追い付きます。物語は旧く原初的で、敵方の、封印された強大な力を持つメガミを求めました。ここであまりにも自明に閃きます。ダストはゲームの根幹にあり、条件を満たすと強化される特性は基本的です。ゆえにこれらは原初的と言えるでしょう。そしてダストには負のイメージがあるゆえに敵方らしく、ゲームが進むにつれて増える傾向にあるゆえに封印が解けていくような恐ろしさがあるのです。

     おお、なんとあまりにも完璧な偶然でしょうか! そのようにして驚くほど滑らかにウツロの特性「灰塵」は世に生れ出たのでした。

     

     

     

    遠距離2柱目への挑戦

     

     そして少しばかり時は流れ、ウツロのカードプールを実際にデザインする時がやってきました。クルルはまだ「駆動」で、サリヤも「冠花結晶」を操り、ホノカは存在すらしませんでしたが、ウツロはすでに「灰塵」を持っていました。

     

     そこから手を進めた要因は何でしょうか。それは、間合における制限、あるいは挑戦でした。

     『第二幕』が起承転結の計画となっていることはすでに何度もお話ししておりますが、それゆえに『第二幕』基本セットを発売した時点で、私は『第参拡張:陰陽事変』で本作を終える計画を立てていました。ゆえにメガミは全13柱であるため、私はその範囲で可能な限り多様な展開を提供できるようにしたかったのです。

     多様性には様々な側面がありますが、その中で「間合」は本作の中核にある要素であり、同時に数値情報であるために整理しやすいものです。その時点での整理は次のようなものでした。


    ユリナ:至近〜近距離
    ヒミカ:遠距離
    トコヨ:中距離
    オボロ:近〜中距離
    ユキヒ:至近距離&中距離
    シンラ:近〜遠距離(攻撃主体ではない)
    サイネ:中距離
    ハガネ:(構造的に)近距離
    チカゲ:至近〜近距離(※のちに調整で中距離へ)
    クルル:離散(※のちに攻撃が消滅)
    サリヤ:近〜中距離(※のちに離散へ)

     

     

     シンラが攻撃主体でないメガミである点も加味すると明らかに遠距離が不足しています。そこでウツロ(またはまだ見ぬホノカ)は中〜遠距離にしたいというゲーム全体から見た要請が生じます。

     しかしながら遠距離のデザインには制限がありました。『第二幕』でデザイン空間の問題から『新幕』への移行を宣言した際にはっきりと整理されましたが、遠距離には瞬殺問題が存在し、ウツロを始めてデザインした当初でさえもその片鱗を私どもは認識していました。

     ですがそこで私は気づきます。「灰塵」はその問題を回避し、中〜遠距離のメガミをデザインする足場になりうるのではないでしょうか。第一にゲーム開始時にはダストはありません。それゆえに灰塵を条件とした火力は相手を瞬殺しづらく、ゲームをやる前にゲームを決着させづらいものです。それに加えて中遠距離にいるということは間合に桜花結晶が置かれているため、灰塵もまた満たしづらくなっているのです。この面もまた安全弁としての機能が期待できます。

     これらの理由よりウツロが遠距離のメガミであることには一定の必然性があると判断し、私は挑戦に乗り出しました。

     その結末は半分成功、半分失敗といったところでしょうか。最終的に(こちらは勝ちづらいほうで発売前の微調整を要してしまいましたが)『第二幕』でのウツロは上級者向けながら独自の強みを持つ魅力的なメガミになりましたし、ヒミカ/ウツロは十分に一線級ながらゲームを破壊しませんでした。しかし一方で中遠距離の戦い方を活かすという方向で幅広い組み合わせや構築が実現したとは言えなかったのも確かでしょう。

     しかし課題こそ残しつつも『第二幕』のウツロは熱狂的なファンを生み出すだけの力を秘めた、すばらしい成功も納めています。課題は未来の課題(※)として、まずは偉大なる魔王の誕生をここに祝うとしましょう!

    ※ ウツロに限った話ではなく、この中距離から遠距離にまつわる課題は『新幕』の今に至ってもまだ解決されていません。いいえ。むしろ正確には私どもはそれを目下最大の課題とみなし、『第四拡張』にて解決を宣言すべく今まさに尽力しているところだと言うべきでしょうか。

     


     本日はここまでとなります。来週は本来今週に予定していたイベントに関する話か、ウツロ特集の中篇をお送りする見込みです。ご期待くださいませ!