Ride on & Open the Gate!(後篇)

2019.02.01 Friday

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    Recall of Record II

     

     

     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はサリヤ特集の後篇となります。前篇、中篇をまだお読みでない方は、こちらこちらから読まれることをお勧めします。
     
     このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第二シリーズ第4回にして累計第9回となります。

     

     前篇ではメガミ・サリヤに関する歴史を説明し、彼女のコンセプトやルールが生まれるまでの話をしました。中篇と後篇のやりかたは今回から変更されています。中篇ではまず新幕における変化を軽くお話しし、N1からN4までの4枚のカードについての歴史を書きました。従って後篇では残るカードN5から原初札までをお話しすることになります。
     
     それでは、さっそくはじめましょう!

     

     

    第二幕

     

     中篇にて、通常札の中では「Steam Cannon」が定まるのが一番遅かったと書きましたが、「Stunt」はその次、6番目に決まった通常札でした。残る5枚はサリヤのコンセプトや戦い方を実現するため、ゲームデザインから必然的にカードプールに収まりましたが、「Stunt」はそうではありません。
     
     「Stunt」はフレーバーから来たカードです。サリヤの乗騎をバイク(のようなもの)になった以上は、バイクらしい格好よさを模索したいところです。そこでバイクに乗って戦闘中にやりそうで、他のカードがやっていないことを私どもは探したのです。
     
     そして見つかったのがウィリーなどをはじめとしたスタントでした。それをしたら何が起こるのかは少し難しい問題でしたが、意気を昂揚させる効果があると判断し、2回の「宿し」を行うカードにしました。これまでにありそうでなかったカードであり、ルールが複雑であるためサリヤのカードはシンプルにしたいという方針とも合致していました。
     
     プレイテストでも魅力的と判断され、一度も変更されませんでした。
     
    新幕

     

     『第二幕』の「Stunt」は少しだけ弱めという評価を受けたと認識しています。そこで強化するために、まずは2つでなく3つの桜花結晶を「宿し」できるようにしました。
     
     しかし問題がありました。「闇昏千影の生きる道」をはじめとした特定の切札を高速で使う類のコンボデッキで、過剰な結果を出してしまったのです。序盤から3回分の行動をカード1枚で実現できるとフレアの運用が極端に早くなってしまいます。序盤の間合で攻撃できるメガミは限られるので、コンボが早すぎるだけでなく安定するのも問題でした。
     
     「闇昏千影の生きる道」に限れば他での調整も可能ですが、これは将来的なカードのデザイン空間も大きく圧迫しています。私どもはそれを問題と判断し、やり方を見直しました。
     
     そこで用いた便利な道具が「畏縮」です。畏縮は『第二幕』における「大地砕き」が好評だったことを受け、その類の効果を記録しやすく、扱いやすくしたものでした。私は大成功と評価しており、新幕における発明のひとつと考えています(※)。
     
     しかし畏縮は注意して扱うべき道具でもあったため、私どもは通常札で畏縮を使う際にはルールを定めました。それは「安易な撃ち得にしないこと」です。そのために「そのカードを使うことが安定にはつながらない」あるいは「上手く使わないと単に畏縮させるだけで終わってしまう」という2通りの方法が考えられます。
     
     「Stunt」は前者の好例です。2回の「宿し」はアドバンテージを得ますが、オーラは間違いなく2少なくなります。つまり相手の攻撃が予見されるようなタイミングでは、「Stunt」は死への特急券かもしれないのです。
     
     こうして『新幕』での「Stunt」は良い調整ができました。しかしサリヤ全体として見ると、畏縮について私どもはひとつ失敗もしていました。それについては後ほどお話ししましょう。
     
    ※ 調整において1行動分のアドバンテージをカードに付随させたいことはよくあります。しかし本作では行動回数を増やす効果(カードを引く、集中力を得る)はおまけにしては強すぎ、カードを捨てる効果は相手の行動を妨害し過ぎてこれまた強すぎます。そこで、集中力を1だけ抑制する効果はカードのデザインをやりやすくするのです。

     

     

    第二幕

     

     燃料――造花結晶は基本的には使いきりですが、回復手段はあるべきだとも判断していました。そうすることで回復手段をデッキに入れるか入れないか、ひいてはいくつの燃料で戦うつもりなのかというゲームプランを計画する楽しさが生まれるのです。
     
     デッキに入れるかどうか、検討の幅を広げるには通常札に1枚、切札に1枚作るのが良さそうです(「Thallya's Masterpiece」では後から燃料回復が追加されました)。「Roaring」はその中の通常札の枠でした。
     
     しかしながら、通常札で単に燃料回復を行うのは良いデザインとは感じられませんでした。前篇を思い返せばその理由は明白です。サリヤの問題は燃料循環の繰り返しの感覚にありました。単に「燃料を2回復する」のようなカードを作ると、あるカードで燃料を消費し、このカードでその分の燃料を回復するという循環が山札1週の中で結局起こってしまうので、繰り返しの感覚を再燃させてしまう恐れがあったのです。
     
     そのため、燃料の回復には別の要素を絡め、リスクを伴わせるようにしていました。初期案は次のようなものです。


    付与 納5
    【展開中】あなたは基本動作を行えない。
    【破棄時】あなたの燃焼済の造花結晶を全て回復する。

     

     残念ながら不自由で苦しすぎたためにフィードバックは悪く、このカードは没になりました。しかしそのエッセンスは完成版にも生きています。基本動作を封じると結果的に、集中力の使用が封じられます。ならば逆に集中力を燃料回復に投じなければならないとすれば、先の案よりもマイルドに基本動作を抑制してリスクを与えられるのです。
     
     この時点で過去のサイネがコンセプトとしていた集中力をコストとするカードへと思い至り、そのアイデアを再発明することになります。こうして「Roaring」の半分は完成しました。
     
     もう半分が作られた理由は「Julia's BlackBox」です。このカードのコンセプトは魅力的なものの、造花結晶が0になるまで消費するのに時間がかかり、戦略に組み込むのが難しいという意見が上がったのです。そこで「Roaring」でも燃料を消費する選択肢を用意し、その補助としました。
     
     では燃料を消費して得られる効果をどうするべきか。カードの認知を簡単にするためには、カードの主張は一貫しているべきです。このカードは集中力と燃料を扱うカードなので、集中力を得られるようにするのが妥当でしょう。さらにそこから、両方を行うという第3の選択肢も用意するというアイデアにも至りました。
     
     最後に、相手の集中力を失わせるという効果が加えられました。この理由はトコヨへの対策です。当時はトコヨが極めて強力であったため、彼女を安易な正解にしないために、デザインしていたメガミに彼女への対策を与えるようにしていたのです。後に私はその指針を失敗と判断し、『第二幕決定版』においてトコヨへの下方修正を行いました。


    新幕

     

     「Roaring」の評価は「Stunt」に近く、良いカードだが少しだけ弱いという程度でした。そこで『新幕』では若干の強化を行うべきです。そこで私どもはこちらでも畏縮を採用しました。
     
     「Roaring」はすでに複雑なカードなので、燃料と集中力を扱うという一貫性だけは崩してはいけません。さらに燃料を消費する方の効果であれば、安易な撃ち得にはなりません。この2点を鑑みて、畏縮は最適な選択肢だったと言えます。
     
     しかし、私どもは小さな失敗をしており、さらに「Form:YAKSHA」にも相手を畏縮させる効果を加えてしまったのは致命的な失敗でした。「Stunt」「Roaring」「Form:YAKSHA」のいずれも単独のカードとしては畏縮を持つに相応しく、問題ありません。ですがこれらが1柱のメガミに固まっているのは問題でした。これはトコヨ、そして集中力を溜めたうえで一気に動く必要のあるメガミに対して大きすぎる相性上の問題を生み出してしまいます。

     

     シーズン3の現状においては「Stunt」と「Roaring」だけならば、辛うじてセーフであると判断しています。私どもはこれからも畏縮を使っていくつもりですが、今のサリヤ以上に1柱に畏縮の手段を集めることは決して行わないでしょう。


     

     

    第二幕

     

     2つの面から必然的に生まれたカードです。第一にバイクに乗って高速戦闘を行うのならば、機動力で攻撃をかわすカードはあるべきであろうこと。第二には燃料という縛りと引き換えに、攻撃力、防御力、機動力の全てを高水準にしたかったことです。

     そこで私は通常札でありながら、前進後退両方への移動を対応で行えるカードをデザインしました。このコンセプトはまさに大正解であったようで、プレイテストでも極めて魅力的と評価され、最後まで変更されませんでした……しかし、この変更されなかったというのは少し話が違います。
     
     告白しましょう。私どもは危うく愚か極まりない過ちを犯すところでした。その時に変更されず、印刷直前まで進んでいたカードは以下のようなものでした。


    行動/対応
    燃焼
    あなたは基本動作を1回行う。

     

     今の知識で言うと誰がどう見てもおかしいカードです。『第弐拡張:機巧革命』が入稿される直前に、私は全てのカードを見直したのです。クルル特集でお話しした通り、その際には「びっぐごーれむ」の消費も引き上げられました。
     
     私はもう1枚、「Turbo Switch」が明らかにおかしいことに気付いたのです。冷静になってみればあからさまに駄目でした。そこで私は緊急的に効果を差し替え、消費される燃料が2になるようにしたのです。
     
     本当に危ないところでした。「びっぐごーれむ」については結論が出るまで多大な時間がかかりましたが、もし「Turbo Switch」をそのまま出していたら発売当日には環境は破壊されたことでしょう。幸いにして、変更後の効果は絶妙なバランスでした。

     

    新幕

     

     このカードは『第二幕』の時点で十分に強力であり、完成されていました。変更すべき理由は全く見当たりません。

     

     

    第二幕

     

     サリヤの問題が解決され、併せて「Burning Steam」や「Waving Edge」で移動と攻撃を同時に行うことで機動戦闘を表現するという指針が示されました。「Alpha-Edge」はその時の会議でデザインされた一枚で、一度も変更されませんでした。

     サリヤは複雑なルールが多いものの、本質としては分かりやすいビートダウンのメガミですので、攻撃の切札が1枚は必要です。そのやり方は大別して2つ。使いきりの大技にするか、再起を持つ連続攻撃型にするかです。
     
     騎動を行って間合をずらしながら連続攻撃するというコンセプトからも、その武器の形状からも、後者が正解なのは明白です。そして再起の条件も、騎動こそが相応しいのは明らかでしょう。
     
     一工夫したのは適正距離です。これはクルル特集でお話しした離散間合を再利用しました。額面の異常さから海の向こうという特殊性を表現できているのも魅力ですが、それ以上に「Alpha-Edge」では離散間合にきちんとした意図があるのが素晴らしいと言えます。
     
     間合が連続していないので「Alpha-Edge」を使用してから騎動を行うと「Alpha-Edge」の間合から必ず外れます。ゆえに滑らかにコンボを繋ぐには、もう一工夫が必要となるのです。他方で間合が離散して広いため、コンボの起点を固定しないので、間合を渡り歩くコンセプトも邪魔しません。

     

    新幕

     

     カードを全体的に強化する過程で、私どもは一度だけ消費を0にして試しました。結果として愚かだったため、すぐに戻りました。

     

     

    第二幕

     

     「Roaring」が通常札の燃料回復ならば、これは切札の燃料回復です。切札である以上、その効果は通常札よりも極端で、ゲームに1回しか使えない点を意識すべきです。初期案は次のようなものでした。


    消費0 行動
    あなたの燃焼済の造花結晶を全て回復する。

     

     これは燃料を12にして長めに粘るという意思表示であり、意図としては明瞭なカードでした。しかしどこか煮え切らず、プレイテストでの評価も必要性は認められるが面白いという評価は下されないというものでした。
     
     そこから「Omega-Burst」を救ったのは「Julia's BlackBox」のデザイン過程、ひいては燃料を消費することに報酬を与えるというアイデアでした。燃料消費は基本的にはデメリットであることを守りつつも、それを純粋なデメリットにしないようなカードを入れることで、より複雑で楽しいジレンマが生まれるのです。
     
     「Julia's BlackBox」の草案が完成した後、私はお風呂に入りながらぼんやりと考えていたらふと閃いたのです。その閃きは直ちに多層に渡ってアイデアを結び付け、1枚のカードが生まれました。それこそが今の「Omega-Burst」そのものだったのです。私はそれを直ちに文章に起こし、一目で大ファンになりました。複雑なジレンマが絡み合い、実に玄妙なゲーム体験が期待できそうではありませんか!
     
     そしてプレイテストでの結果も期待通りでした。当然ですが、そのまま印刷されましたとも。強いて失敗を言うならばサリヤのカードでは唯一、半歩だけバランスを壊していたことです。他の弱めのカードを少し強くして、その上で「Omega-Burst」は消費を5にしたほうが理想的だったかもしれません。

     

    新幕

     

     コンセプトが明瞭で完璧なカードなので、効果で直すべきところはありません。『第二幕』での反省と、『新幕』ではライフが2多いゆえにフレアも溜めやすいことから、消費を5にして始めました。
     
     しかしその途中で、中篇にてお話しした通り造花結晶の数が5に変更されました。こうなると「Omega-Burst」の運用は露骨に難しくなります。どうするべきかは簡単な話で、消費が4へと戻りました。

     

     

    第二幕

     

     メガミの中で元は人間であったメガミたちは、その人間時代の神髄を体現するようなカードを持っており、それらは彼女ら自身の名前を冠しています。「天音揺波の底力」「氷雨細音の果ての果て」「闇昏千影の生きる道」がその例です。
     
     このカードはサリヤの名を冠するカードであり、彼女の神髄を表現するものです。彼女が最も優れているのは運転技術であるため、それを表現するためにカードの効果をデザインしました。

     

     しかし残念ながら、私の中での評価は低いカードです。また、私が聞いた範囲のフィードバックにおいてもサリヤのカードの中では珍しく魅力的ではないというものでした。

     

     その原因としては、他のメガミの攻撃と騎動を紐付けることがメリットとなる機会が少ないということが挙げられます。攻撃できているならば当然望ましい間合にいるはずであり、そこから改めて(燃料を使ってまで)移動したい場面は少ないのです(例外は対応で攻撃する場合で、トコヨとの組み合わせでは活躍していました)。

     

    新幕

     

     『第二幕』での結果を踏まえ、私どもは「Thallya's Masterpiece」のデザインをやり直しました。しかしそれは茨の道でした。アイデアをいくら並べても絶妙なものにはならず、ともすれば最も難産となった枠かもしれません。
     
     最終的にはシーズン1における「Thallya's Masterpiece」のようなものができ、それまでのアイデアの中では最も楽しかったため、この方針で行くことになりました。

     

     新幕のシーズン3まで至って、もしかしたら問題の本質は「Julia's BlackBox」にあるのではないかと考えつつあります。この1枚が広域にわたる効果を持ちすぎているために、1柱のメガミの範囲において、もう1枚として使えるデザイン空間が狭くなっているのです。しかしながらこれはもはやコンセプトの話であるため、受け入れて最善を尽くすほかないでしょう。

     

     ここまでが悩みと反省の話です。ここからは『新幕』最大級の愚かな過ちの話をしましょう。これまでの禁止カード改訂やカード更新の記事で、これに対する謝罪はやりつくしました。折角の特集記事ですので、この先はひとつ、小噺としてお聞きくださいませ。
     
     ご存知の方も多いかもしれませんが、「Thallya's Masterpiece」はシーズン1から2においてゲームを破壊し、禁止カードとなりました。しかし最近の禁止改訂で少し触れましたがこのカード、バランス調整の間に実に4回もの下方修正を受けているのです。
     
     それでは、初期案は果たしてどれほど愚かだったのでしょうか。ご覧いただきましょう。


    消費2 行動
    【使用済】あなたの開始フェイズに、あなたは騎動を1回行ってもよい。
    【使用済】あなたが騎動を行うたびに「間合⇔ダスト:1」

     

     本作に慣れていれば慣れているほどにやばさがにじみ出てくる1枚ですが、最もやばかったのは「闇昏千影の生きる道」との組み合わせでした。当時はなぜか未使用に戻らなかった消費0の「Julia's BlackBox」も併せて、5ターン目に100%「生きる道」を成功させるデッキが生まれてしまったのです(対ヒミカは除く)。
     
     そして「生きる道」への調整のために消費が上がっていきました。しかし次は「大天空クラッシュ」との組み合わせで暴れはじめ、最終的には1つ目の効果が取り除かれことになりました。そりゃそうだ。


     

     

    第二幕

     

     前篇でお話しした通りサリヤは再編され、問題は解決し、カードプールは魅力的に整ってきました。しかし私は僅かに不足を感じていました。もう一つ、脳天を突き抜けるようなジューシーさが欲しいのです。

     

     そんなある日、ふと思いました。バイクが変形したら格好いいのではないかと。

     

     この発想はかつて、スーパーロボットたちを愛していた私の心を躍らせました。何を隠そう私は『真ゲッターロボ 世界最後の日』の大ファンなのです。3つの変形した姿を使い分ける。何と格好いいのでしょう!(※1)
     
     問題はどのように変形を実装するかですが、素晴らしいアイデアはすぐそこに転がっていました。最初期のクルルの切札は、自らに追加パーツを付けることで追加の基本動作を得る(※2)というものでした。このアイデアは切札として魅力的なバランスを見つけられなかったため没になりましたが、今回はまさに今がその時だと言えるのではないでしょうか?

     

     では、変形のための条件はどうするべきでしょうか。それはピンチ、それもスーパーピンチに陥った時に間違いありません(話は変わりますが私は『スクライド』の大ファンでもあります)。サリヤのデザインに当てはめると、造花結晶が0の時とするのが良さそうです。
     
     こうして仕上がった1枚を試してみると、素晴らしいプレイ感でした。特に燃料を消費することにメリットも見いだせるようになった点が絶妙な相互作用を生んでおり、後の「Omega-Burst」にも繋がりました。変形した3つのフォルムの内容は何度か調整されましたが、コンセプトはこのまま完成へと至ったのです!

     

    ※1 なぜ3つなのかと言えば、特に考えるまでもなく3つだと確信していました。当然ですが『ゲッターロボ』のせいです。一応後付としてゲームにおける選択は、3択にしておくと丁度よいという理屈もあります。チカゲの毒も同様ですね。

     

    ※2 そして山札の再構成で再起します。この場合の再起はデメリットですが、当時のクルルには駆動ギミックがあったため、それを活用することもできました。

     

    新幕

     

     『第二幕』では間違いなく興奮するジューシーな1枚でしたが、実際のところの強さはそこまでではなく、相手を選んだテックカードに留まりました。
     
     そこで私どもは3つのTransFormそれぞれの強さを底上げし、より積極的に変形させられるように調整しました。結果としては少しばかりやりすぎてしまったのは否めません。シーズン1→2、シーズン2→3での2回の調整を経て、今の「Julia's BlackBox」は良い塩梅に仕上がったと感じています。

     

     

     原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。
     
     サリヤの弱点は明白です。彼女のカードは強力ですが、その大半が燃料を要求します。しかし造花結晶が6つしかないという事実は変わりませんので、彼女は単独で戦うと瞬く間にガス欠に陥ってしまいます。
     
     燃料を回復する手段を増やすのが安易な解決手段です。しかし、単に燃料をいくつか回復するカードを入れた場合、何も考えずに山札1周で1回そのカードが使われるだけであり、全くもってゲーム体験が膨らまず、魅力的ではありません。
     
     さらに小さな問題として、サリヤは攻撃力も防御力も高いとはいえ、1柱の範疇を超えてはいません。サリヤ単独で戦う場合、ほんのわずかに攻撃力も防御力も不足しているのです。
     
     それらを総合して生まれたのがこの1枚です。1/1の攻撃とすることでほんのわずかな攻撃力不足を補い、対応で騎動を選べることで防御力を補いました。興味深く、またバランスを整えているのはその文面ほどには防御力は高まっていない点です。
     
     「Turbo Switch」から分かる通り、対応での騎動は極めて強力な対応です。しかしこのカードで騎動を行うと、燃料が明らかに不足するという大本の弱点を補うべきカードで燃料を回復できないという事態に陥るため、そう安易には騎動を選べないのです。

     

     

     原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。
     
     このカードはこれまでの原初札における切札を強く意識してデザインされました。それは「頭が悪く、インパクトのあるテキストを入れること」です。交流祭という舞台を盛り上げ、興奮するような体験にするには、思わず笑ってしまうようなパンチの効いたテキストが有効なのです(※)。

     

     事実、それまでで成功した原初切札は「X/Xの攻撃」「集中力と手札の最大値を変更する」「ライフへのダメージを2倍にする」そして「相手のメガミを封印する」という狂ったテキストが含まれていました。ならばサリヤはどうしましょうか。このような意識の下で日々を過ごした結果、幸いにも天啓は降りてきました。「あなたは3回TransFormする」のです。

     

     他の効果についてはそのテキストを含めたうえで、どのような効果であれば魅力的になるのかを考え、実装しました。すばらしいことに「サリヤに挑戦!」も成功しました。傑作とは呼びづらいですが、欠点もなく、まさしく佳作と呼ぶにふさわしいでしょう。

     

    ※ 当たり前ですが、より重要なのは「メガミに挑戦!」というゲームが面白いことです。ウケ狙いや奇をてらうことに執心し、より重要な課題を忘れてしまわないようにも注意していました。

     


     本日はここまでとなります。来週以降はルールガイドを完成させ、PC版サイトにおけるメガミ一覧やカードリストの最新化に向けた作業を進めるためにブログ記事としてはお休みをいただきます。

     

     皆様に対して可能な限り誠実であるため、もうひとつ簡単にお知らせいたします。現在、私は大きな転機を迎えつつあり、今はそのために必要な努力を重ねているところです。まだお話しできないのが申し訳ない限りですが、拙作にお付き合いいただいている皆様を裏切るようなことにはならないよう尽力しておりますので、なにとぞ暖かく見守って頂けるとありがたいです(※)。

     

    ※ 念のため補足しますと、『桜降る代に決闘を』シリーズの展開には影響はありません。ただ、少しばかりブログ更新に割ける時間が減るかもしれません。