Ride on & Open the Gate!(中篇)

2019.01.18 Friday

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    Recall of Record

     

     

     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はサリヤ特集の中篇となります。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします。

     

     このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第二シリーズ第4回にして累計第9回となります。

     

     前篇ではメガミ・サリヤに関する歴史を説明し、彼女のコンセプトやルールが生まれるまでの話をしました。中篇と後篇のやりかたは今回から少しだけ変更し、中篇ではまず新幕における変化を軽くお話しします。その上で個々のカードについて第二幕、新幕両方を踏まえてお話しするのです。全てのカードについて書くとあまりに長くなってしまうため、今回はN1からN4までの4枚を扱います。
     
     
    5→6

     

     『第二幕』においてサリヤが持つ造花結晶の数は6でした。これはどのように決まったかと言えば、特筆するほどの理由はありません。単純にこのくらいが強くて気持ちよく、また適正なバランスだと判断したためです。
     
     前篇でお話しした全ての問題解決が終わり、サリヤの概要が固まった後の話です。最初は桜の花のイメージから造花結晶5つから試しましたが、どうにも不自由さを感じて気持ちの良いゲーム展開になりませんでした。そこで単純に燃料を6にしたところ、丁度よい感覚が得られたのです。
     
     そして『第弐拡張:機巧革命』が発売し、フィードバックが届き始めました。何度か触れてきましたが、最初のフィードバックにおいてサリヤは強力過ぎるという意見が多数を占めました(逆にクルルは弱すぎるという意見が目立ちました)(※)。以前にも書いたと思いますが、当時の私はひどくナーバスになったものです。
     
     その際には多くのプレイヤーからサリヤの調整についての意見も届きました。当時の私の中で最も有力な案は「Omega-Burst」の消費を5にするというものでしたが、その中には造花結晶の個数を5にするという意見もありました。
     
     多くのプレイヤーが調整はもはや前提という感覚を示しており、私もまたそのつもりでいたのです。(チカゲで犯した失敗と違い)プレイヤーは幸いにして楽しんではいたため、1、2ヶ月様子を見て、最終的な調整案を発表するつもりでした。

     

     しかしサリヤへの見解は思いもよらない方向に進みました。その数か月間の間にプレイヤーの間での「対サリヤ」において燃料を無駄にするための立ち回りが研究され、結果としてサリヤの強さが実は適正であったことが明らかにされていったのです。最終的に『第二幕』のサリヤには一度の調整も入らず、完璧なバランスでした。
     
     今回のサリヤとクルルの騒動から、私は「受け手のリテラシー」と「使い手のリテラシー」という要素を大きく学びました。つまりサリヤは使い方がやや簡単で受け方が難しいメガミであり、クルルは使い方が難しいメガミだったということです。今ではこれらの要素はゲームバランスの調整においても重要だと捉えております。
     
    ※ その弱すぎるクルルが、初期には見向きもされなかった「びっぐごーれむ」を駆使して『第二幕』最終段階の環境を大きく荒らしていたのですから面白いものです。『第二幕』のクルルは禁止や早急な修正が必要なものではありませんが、今のようにカード更新というシステムがあったならば、間違いなく更新されたでしょう。

     


    6→5

     

     そして時は流れ『新幕』のバランス調整が始まりました。サリヤはクルルと同様に、コンセプトが明確かつ大成功しているメガミです。それゆえその在り方はほとんど変わらないことは明らかです。私どもは火力をどこで上げるべきか。そして僅かに存在していた使い辛いカードをいかに魅力的にすべきかに焦点を置いていました。
     
     しかしその中で、バランス調整チームから大きな提言がなされました。造花結晶を今回は5にしてはどうかというものです。過去においては結果として必要なかった案でしたが、確かに可能性としては納得した案でもあります。そうなると、確かに今回こそありえるのかもしれません。私はその提言はなぜ行われたのか、そしてどのような効果を狙ったものなのかについて傾聴しました。
     
     その根幹には『新幕』の思想である、全体的なゲームスピードの向上がありました。『第二幕』は間違いなく魅力的なゲームですが、(特にデジタルゲーム化するにあたっては)少しばかりゲーム時間の長さに難があると私どもは判断していたのです。
     
     実際のところ、シーズン1やそれ以前であるプレイテスト中のバージョンではゲームスピードは明白に早いものでした。それゆえにゲームは山札3周目の頭にはほぼ決着していました。
     
     しかしこうなるとサリヤには幾ばくかの問題があります。『第二幕』においてサリヤの燃料が6で絶妙だったのは、長いゲームが多く、それゆえに燃料を消費する機会が多かったためです。ゲームスピードがここまで早いと、燃料を使い切る頃に相手を倒すか、あるいは倒されているかという2択しかなく、燃料のジレンマが消えてしまっていたのです。

     

     これらの理由に私は納得し、燃料は実に1年以上の時を経て5へと戻ることになりました。シーズン2や3に向けたカード更新を経た結果としてゲームスピードの話においては幾ばくかの怪しさが生まれていますが、造花結晶を5にしたことそのものは正しかったと今は考えております。

     

     


     

     

    第二幕

     

     問題解決を終えてサリヤのコンセプトが明確になると共にデザインされ、一度も変更されませんでした。
     
     燃料の制限があるためにカードは強力であるべきです。それは攻撃カードを強くするという意味でもありますし、フレーバーから明らかに高い移動力を持つゆえに移動カードを強くするという意味でもあります。
     
     しかし、ただ強力な攻撃カードと移動カードをデザインしても魅力的になるとは思えません。『第二幕』に残されたデザイン空間では容認できるバランスのカードがあまりにも作り辛く、さらにそれらのペアを手札に揃えて連続で使うことが明らかな正解になってしまい、ゲームがワンパターンにもなってしまうのです。
     
     そこで至った結論は攻撃+移動というカードです。どちらのカードとしても弱めながらぎりぎり及第点の強さにした上で、その両方を行えるようにするのです。そして移動を騎動で行うことで、燃料も必ず消費するよう整えました。
     
     これは前篇で書いた「騎動を強調するために間合を離散的にする」という指針ともかみ合ったものです。これなら離散した間合を渡り歩きながら攻撃でき、コンボ技を決めるような感覚も鮮明なものになります。さらに騎動した結果としてもう一柱の間合に踏み込めればさらに利得を得られるため、二柱を組み合わせる感覚も強くなるのです。
     
     間合を離散させるため、3枚の攻撃カードは同じ間合をもってはいけません。そこでこのカードは4-5を担当し、シンプルにコンセプトを見せられるようになりました。結果はご存知の通り、大成功と言えるでしょう。
     
    新幕

     

     新幕では適正距離が3-5に広がりました。新幕では攻撃カードは全体的に強力にするべきですが、何も考えずにライフへのダメージを上げ続けると愚かなことになります。特にサリヤは連続攻撃が得意であるため、そのリスクは大きいものでした。
     
     他方で、一部のカードだけ強くするという手段も駄目です。『第二幕』のサリヤの攻撃は絶妙なバランスに整っていたため、その手段を取ると強化されたカードは明らかに強く、されていないカードは『新幕』についていけなくなってしまうのです。
     
     そこで、私どもは全ての攻撃に対してそれぞれが許されるやり方で小さな強化をばら撒くやり方を選びました。このカードは間合を拡大し、より連続攻撃をやりやすくしました。離散した間合というコンセプトについても、3枚の攻撃が1ずつしか重ならないよう散っていれば『新幕』のカードパワーの基準では筋が通っていると判断しています。

     

     

     

    第二幕

     

     「Burning Steam」と同時にデザインされ、これまた一度も変更されませんでした。離散した間合として「Burning Steam」が4-5を担当するならば、これは必然的に2-3を担当し、デザインを明確にするために同じテキストを持つことになります。
     
     しかし適正距離4-5と2-3を並べると、明らかに2-3のほうが強力です。前進は後退よりも強いため、間合は2の近傍に収束します。さらに『第二幕』では離脱がなかったため、その働きは『新幕』よりも大きなものなのです。
     
     そこでその差を埋めるため、燃焼という一言を付け加えました。これはバランスを取ると同時に燃料管理というコンセプトを際立たせるためのものです。結果はこれまた成功でした、さらに言うならば対サリヤの立ち回りにおいては「Waving Edge」で燃料が2消費されることが重要であるため、私どもの設計していた燃料管理は最終的なバランスにおいても絶妙なものであったと言えます。
     
    新幕

     

     「Burning Steam」同様に小さな強化が加えられました。適正距離が1-3となり、3/1になっています。それぞれ説明しましょう。

     4-5が3-5になるのとは違い、2-3が1-3になってもさほど撃ちやすさに変化はありません。これにはカードの相互作用を増やすという狙いがあります。「Waving Edge」で間合0に行けるようになれば、サリヤと間合0を活用するメガミを組み合わせる面白みが増すと考えたのです。
     
     ダメージについては総合的な判断によるものです。造花結晶が5になった点、離脱の追加で2-3と4-5の間の差は『第二幕』よりは小さくなった点、間合1の追加はそこまでの強化ではない点、サリヤのライフへのダメージを増やすことへのリスクの大きさなどを鑑みて、3/1こそが適切と考えたのです。


     

     

    第二幕

     

     離散的な間合で連続攻撃というコンセプトを考えると、攻撃が2枚だけというのは少ないと言えます。しかしすでに2-3と4-5は使っており、6-7としてしまうとあまりに使える組み合わせが限られてしまいます(そしてヒミカとの組み合わせで明らかな火薬臭がします)。
     
     加えて、少しばかり時間を遡りましょう。前篇でお見せした通り、昔のサリヤには乗騎で突撃するという要素がありました。これは実に格好よく、サリヤらしいものです。
     
     この2つの要素を総合的に鑑みて、私はひとつの確信を得ました。今こそチカゲの「毒針」での失敗へのリベンジを果たす時です。そう、間合1への再挑戦です。今回は「毒針」のように何となくで決めたわけではありません。間合は2-3とも4-5とも重なってはならず、そして突撃した瞬間の間合は極めて近いものです。構造としても、フレーバーとしても間合1が望まれていました。
     
     しかしチカゲでの失敗は余りにも痛烈であったため、私はさらに深く考え込むことにしました。結果として3つの要件が浮かび上がりました。
     
     第一にクリンチ戦略を増長させてはいけません。「毒針」最大の失敗を繰り返すことだけは避けなくてはならないのです。離脱なき『第二幕』においては間合0や1はあまりにも危険な領域でした。
     
     第二に「Burning Steam」や「Waving Edge」と同様に移動カードとしても働くべきです。サリヤの移動しながら連続攻撃するコンセプトは一貫しなくてはなりません。
     
     第三にはサリヤ自身が間合1に行く手段を持っている一方で、簡単であってはならないというものです。手段が必要なのは「クリムゾンゼロ」の失敗から明らかです(※)。他方で簡単にすると自己完結性が高まりすぎてしまいます。他のメガミの力を借りれば簡単になるからこそ、2柱を組み合わせる楽しさが高まるのです。

     

     そしてそれら全ての要件を満たすように知恵を絞った結果がこれです。幸いなことに私の定義した要件は正しかったようで、この1枚も見事な大成功でした。
     
    ※ 『第二幕』で間合2以下で前進できなくなった結果としてヒミカは自力で「クリムゾンゼロ」を撃てなくなり、「クリムゾンゼロ」はほとんど使われないカードになってしまいました。

     

    新幕

     

     『第二幕』でのコンセプトから見ても間合は広げられません。また、この効果は実に整っており、どのように変更しても不自然さが付きまといます。
     
     他方で「Sceild Charge」は連続攻撃に活用し辛いカードであるため、この1枚はライフへのダメージを上げてもリスクは低いと考えられます。こうなれば、3/2にする以外ありえないでしょう。


     

     

    第二幕

     

     サリヤの問題を解決した後、私どもは7枚の通常札について考え、必要な骨格とフレーバーの両面からカードのコンセプトを決めていきました。結果として6枚は滑らかに決まったのですが、残り1枚に関してはこれだと確信できる案に至れずにいました。それこそがN4、「Steam Cannon」の存在している枠です。
     
     そこで私どもは他の6枚を見て、それらが存在するという制限を踏まえて必要なカードを逆算したのです。まず注目したのはカードタイプとサブタイプです。4枚目の全力でない攻撃にはリスクがあり、また4枚目の行動カードはもはや不要です。「Turbo Switch」と「Omega-Burst」はいかにも強力そうなので対応カードもやめておくべきでしょう。他方で、付与カードがない点も注目すべきです。
     
     結論として、カードタイプとサブタイプは攻撃/全力、付与、付与/全力の3択になりました。1枚は付与があるべきではないかという感覚からいくつかの付与カードを先に考えましたが、しっくりくる案にはなりませんでした。
     
     その理由は2つありました。第一には「Julia's BlackBox」が存在していたこと。そして第二に騎動で2ターンに渡る間合変化が起こることがすでに付与札的な挙動であり、同時に通常札の付与カードに相応する複雑さを生んでいたことです。
     
     第二の理由は特に重要なものでした。サリヤの持つルールは初期案から見ると実にスマートになっていましたが、それでもまだ複雑なのです。サリヤを遊びやすく楽しいメガミにするためには、その分カードはシンプルであるべきです。そして付与カードはその構造ゆえに複雑になりやすいのです。
     
     そして私どもは付与カードを取りやめ、シンプルな攻撃/全力のカードをデザインするという道を選びました。結果として、広い適正距離を持ちつつ高めの素直な打撃力を持つという、ありそうでなかった攻撃カードが誕生したのです。

     

    新幕

     

     この1枚もまたテキストを下手に加えると美しくなく、サリヤが難しすぎるメガミになってしまう懸念もありました。間合も元から十二分に広いため広げる意味はありません。
     
     他方で全力であるために連続攻撃の懸念は小さなものです。ならば「Sceild Charge」と同様に、この位置こそがライフへのダメージを上げるべき場所でしょう。
     
     サリヤはシーズン1において実に愚かな過ちを犯した(詳しくは後篇で)メガミではありますが、こと攻撃カードの強化のやり方という面では大成功だったと判断しています。ライフへのダメージを上げるべきカードとそうでないカードを適切に見極めたからこそ、オボロやライラのように火力面で問題を引き起こさなかったと言えるでしょう。
     
     
     本日はここまでとなります。全国大会関連で慌ただしいことと、来週はルールガイドを完成させたいことから記事はお休みをいただきます。そして再来週にはサリヤ特集の後篇にて残り9枚のカードと3つのTransFormの話をいたしましょう。ご期待くださいませ!