雄大な地に鐘が鳴る(後篇)

2018.01.05 Friday

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    大地脈動しそして目覚める

     

     

     こんにちは、BakaFireです。今回の記事はハガネ特集の後篇となります。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします。

     

     このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回で第5回となり、好評を頂けておりますので、今後も継続していくつもりです。

     

     前篇ではメガミ・ハガネに関する歴史を説明し、彼女のキーワード「遠心」が生まれるまでの話をしました。後篇では個々のカードに注目し、それらを通して彼女を語ることにしましょう。

     

    カードの何に注目するか

     

     やり方もこれまでのものを踏襲します。以下にてまとめましょう。

     

    • カードの歴史と評価に注目する
    • 歴史とはカードが生まれた経緯を指す。
    • 歴史においてルールの変化が重要ならばそれも語る。
    • 評価はゲームにおける魅力、バランスの適切さ、メガミの気質の体現性の3点を見て行う。
    • 現在問題視している箇所や、カードへの否定的な見解も書く(出版から時間が経ち、皆様からのフィードバックを頂くと至らなかった点も見えてくるのです)
    • 否定的に書き、修正を匂わせたとしても、修正を急ぐつもりはない。

     

     さすがは拡張のメガミであり、さらに決定版の調整が入っているためハガネについては、現時点では大きな反省点はありません。過去の評価点と反省点を含め、デザインの歴史を語ることにします。

     

     また、ハガネは当時の環境や知見を強く意識してカードがデザインされた初めてのメガミと言えます。その点を鑑みて、当時の環境についても触れておきましょう。

     

     

    厳格なる絶対王政の時代

     

     『第一幕』は世紀末のサムライガンマンたちにより全てが焦土へと化していましたが、『第二幕』発足に伴い彼らは駆逐されていきました。そして、全てが新しく始まったのです。

     

     環境の変遷の末に現れたのは、厳しい絶対王政の時代でした。君臨する王者ユリナ/トコヨはトコヨの圧倒的な防御力と中距離への制圧能力で、オボロ、サイネを完全に抹殺。残る近距離の代表ユリナ/ユキヒと遠距離の代表ヒミカ/シンラに対しても眼前構築を工夫すれば互角以上に立ち回れます。

     

     しかし強さ以上に問題なのはトコヨの防御性能です。上手いプレイヤーの用いるユリナ/トコヨは致命傷を避けきれてしまうためダメージが通らず、ゲームが進まないのです。『第二幕』最初期はゲームが時間切れになる頻度は今よりもなお多く、そしてゲーム中何度の再構成を行ったかどうかが強く注目されていました。

     

     『第一幕』と比べてゲームとしての競技性はまっとうなものになったため改善はしていますが、『第二幕』最初期もまた、別の理由から褒められたものではありませんでした。人によってはこちらのほうが楽しくないという方もいたと思います。

     

     他方で、再び下方修正をするのもはばかられます。『第二幕』で大きな調整をしたばかりですし、2017年3月には『第壱拡張』が予定されていたため、この環境は僅かに3か月しかありません。ならば『第壱拡張』まで含めた状況が明らかになってから考えたほうが、妥当な判断が下せます。

     

     結論として、『第壱拡張』のメガミたちにはトコヨへの耐性が望まれていました。露骨すぎる対策はあまり魅力的ではありませんが、当時のサイネのように耐性がゼロでは、同じ轍を踏むのみだったのです。

     

     環境についてはこんなところでしょうか。それでは、カードたちの物語をはじめましょう!

     

     

     

     まさにハガネを象徴する1枚です。前篇からも分かる通り、ハガネのデザインはこの1枚から始まったといっても過言ではありません。間合と《攻撃》は切っても切れない関係にあります。ならば間合を変化させることに注目するとしても、間合の変化を条件とする《攻撃》が作られるのは当然でしょう。

     

     最初は間合を2動かして3/1という性能でしたが、前篇で語った通り没になり、そしてよりパワフルな形で蘇ることになります。

     

     その際に同時に遠心は設置と同じようなキーワード能力になりました。理由は簡単で、遠心の条件をカードに平文で書くと、テキストが長すぎて読みづらいのです。また、このような複雑な条件が多発するとゲームは遊ぶに堪えないものになりますが、メガミ1柱の軸として注目し、同じ条件を使いまわすならばむしろ魅力になります。この面でも、キーワードにしてメガミタロットに文章を逃がすやり方は正解と言えました。

     

     蘇った遠心撃は最初は4/2で、攻撃後にフェイズが終わるだけでした。この時点で楽しさは明確にあり、ハガネのコンセプトとして合格となったわけですが、プレイテストを重ねるうちに僅かな不満が生まれ始めていました。ダメージが微妙にライフへと届かないのです。そして今ほどの研究は当然されていませんが、遠心を満たすには相応のリソースを支払い、リスクも背負っているのです。プレイテスターの間で、どこかリスクにリターンが見合っていない感覚が降り積もっていきました。

     

     そしてある日、その不満はこの一言に集約しました。

     

     「もしかしてこれ、5/2でもいいんじゃない?」

     

     そこから議論は紛糾します。通常札に5/2というのは前代未聞であり、さらに言うならば当時は『第一幕』という暴力の時代からようやく脱したところです。リスクを恐れるのは当然でしょう。最終的に、慎重なプレイテストが重ねられた結果「もしかしたら5/2でもいいかもしれない」という結論が得られました。

     

     しかし確信とまでは至りません。さらにもう一つ懸念もありました。ハガネは開発時点では、トコヨとの組み合わせが警戒されていたのです。理由の1つは「跳ね兎」や「風舞台」です。2歩の後退を円滑に実現するこれらのカードは遠心と相性が良く、ここからの「遠心撃」は4/2でも強力でした。

     

     これらを総合的に考え、私どもは結論へと至りました。5/2なのは構わない。しかし、トコヨとの相性を阻害するようなデメリットを付けよ、と。幾つかの案がありましたが、採用されたのは「手札を全て伏せ札にする」というものでした。「遠心撃」の前に基本動作のコストにしてしまえばよいので、致命的すぎるデメリットではありません。しかし対応カードを構えたいトコヨにとっては痛手となります。

     

     さらにこのデメリットは、全てのエネルギーを放出しているハガネらしい感じを補強し、ある種の気風の良さ、爽快感が感じられるものでもありました。最終的に最善の形に至ったという自信があり、『第二幕』での素晴らしいデザインの一角に数えられるカードと感じています。

     

     

     前篇で書いた通り、このカードの原型も最初期から存在していました。ほとんど調整も入らず、最後まで生き残っています。

     

     このカードにはハガネの防御手段という目的がありました。ハガネは素直な気質があり、同時に大きな鉄槌でパワフルに動くというイメージもあります。それ故にデザインの初期から《対応》カードは持たないという個性が定められていました。しかし全体の方向性から見て、同じく《対応》を持たないヒミカのように速攻ができるわけでもありません。そこでハガネには独自の防御として、相手に対して牽制が行えるようになったのです。

     

     間合の変化への注目が遠心によりなされるようになっていく中、このカードを遠心にする案も考えられましたが、すぐに没になりました。このカードが最も活躍できるのは序盤に前進しながら牽制する時であり、その楽しさを捨てるべきではないと判断されたのです。

     

     

     このカードも最初期から存在していました。しかしこれまでの2枚と違い、これはメガミのイメージ面から生まれています。大地を震わせるほどの巨大な鉄槌を持っているならば、実際に大地を震わせる技を持つべきでしょう。大地を砕き相手の体勢を崩すことで、オーラも集中力も奪い去るのです。

     

     また、このカードはトコヨへの対策という側面もありました。核となる集中力を奪う機能を付けることで、ハガネのトコヨへの耐性を高めようとしたのです。

     

     コンセプトは最後まで変わりませんでしたが、数値調整は一悶着ありました。最初は対応ができる代わりに0-2の3/-から始まり、途中で0-3の2/-に移り、しばらく行ったり来たりを繰り返していました。主に注目されていたのはシンラの「天地反駁」との組み合わせであり、コンボの破壊力と安定性が議論されました。

     

     しかし最終的にはそれは全く関係なく、根本的な問題に気付いたことから解決しました。ハガネには間合1や0に潜り続ける方法は(当時は)ありません。つまり間合2で撃つほかないのですが、どちらにせよ「雅打ち」や「詩舞」であっさり止まってしまうのです。トコヨへの耐性を上げようにも、これでは全く機能していません。

     

     そこで「対応できない」ことにして0-2の2/-としました。結果として絶妙な調整であり、「遠心撃」から続くこれら3枚の仕上がりは本作の中でもトップクラスの完成度と考えています。

     

     

     ハガネの移動カード枠です。最初期は次のようなものでした。

     

    跳ね飛ばし    行動

    現在の間合とターン開始時の間合が共に0ならば、「相/フレア→間合:◇2」

     

     ある意味で格闘ゲームの投げのような技です。自力で間合0に行く手段に乏しいというのになんだかよくわからない効果ですが、この案の本質はクリンチ対策です。『第二幕』となり少しはマシになったのですが、当時はまだまだクリンチは頻発し、それを恐れていました(大体は、調整前の「足捌き」のせいです)。

     

     間合への移動もとが相手のフレアであるのも新しいところです。これは『第一幕』でのクリンチ戦略がリソースをフレアへと溜め続けることでダストを枯渇させることを狙っていたためであり、そこを攻めなければクリンチから脱出できないと考えたためでした。

     

     しかしプレイテストを重ねるにつれて、遠心を満たすためにもっとストレスなく後退できるべきだと分かったので閾値の間合が2になり、代わりに動く桜花結晶は1つになりました。そしてそもそもターンの開始時を参照する必要はないと気づき、今の形に落ち着いたのです。

     

     

     『決定版』調整のため、現在と過去で効果が違います。昔の効果は以下のようなものでした。

     

    円舞錬 行動

    遠心

    捨て札から《全力》でないカード1枚を選び、そのカードを使用してもよい。

     

     生まれた経緯として、ハガネらしい動きを補強するのが狙いでした。つまり力を溜めて、ビッグな一撃をどかーんということです。

     

     「遠心撃」のパワフルさをより刺激的にしたいと考え、「次の攻撃を強化する《行動》カード」というやり方に至りました。遠心の仕様から連続攻撃はできません。ならば放つ一発の攻撃をさらに重くするのです。この挙動はハガネらしく、体験としても心地よいものです。

     

     つまり、後退、後退、バフ、バフ、5/4! 超気持ちE! ということです。

     

     具体的な強化のやり方としては「鐘鳴らし」が十分に多機能なので「円舞錬」はそれをもう1回使えるようにしました。それだけのカードだとつまらないので、《全力》以外は何でも使えるようにして応用の幅を広げました。

     

     しかし残念ながら大失敗とまではいかないまでも、良い結果ではありませんでした。実際気持ちいいのは確かです。しかし、想像よりも実戦的でなかったのは誤算でした。

     

     そこまでのリソースを払い、リスクを背負って得られる結果としては微妙なのです。また遠心のリスクをいくらか見ていたため実際は応用の幅も狭く、最終的にデッキに入らず、圧力もないカードとなってしまいました。

     

     こういった経緯があり、『決定版』では調整が入りました。今の「円舞錬」はかなり気に入っていますが、昔の「円舞錬」も体験としては気に入っています。しかし悲しきかな、カードパワーが足りなかったのです。

     

     

     次の攻撃を強化するカードが生まれた経緯は「円舞錬」で語った通りです。では、問題はどのように強化するかどうかです。これについては上下どちらの効果も一悶着ありました。それぞれお話ししましょう。

     

     上の効果は最初は「対応されない」というものでした。しかし「対応されない」効果にはある種の理不尽さが付きまとうため、ゲームのバランスを壊しうるのです。特に切札にも付くとなると危険であり、未来のデザイン空間への影響も大きくなります。

     

     そこで私どもはリスクを避けるため「打ち消されない」効果にしました。しかしながら、「円舞錬」同様に遠心のリスクを過小評価していたため、「鐘鳴らし」も(弱くはないものの)微妙なカードとなってしまいました。

     

     ではこの判断が誤りだったかというと、それは「分からない」としか答えようがありません。「対応されない」効果はやはりリスクがあります。私どもがゲーム内の問題を未然に取り除けていたのか。それとも1枚のカードを少し弱くしてしまったのかどうかは、両方を研究しない限り結論は出ないでしょう(そして「対応されない」による問題は、一朝一夕の研究では見つからないと予見できるのです)。

     

     下の効果は絶妙な仕上がりでしたが、主にトコヨとの相性で問題視されていました。デザイン当時の効果では「梳流し」が-/2となっていたのです。そこで私どもはそれを巧妙な言い回しで解決しました。このやり方はうまいもので、後に「影の壁」でも逆の形で応用されることになります。

     

     

     『決定版』調整のため、現在と過去でカードが変更されています。元のカードは以下のようなものでした。

     

    地脈収束 付与/全力

    【展開時】ダスト⇒自/オーラ:2

    【破棄時】基本動作を2回行う。

     

     カードが変更されている点から分かる通り、このカードは悲しきかな企画倒れでした。ではなぜ生まれたのか、経緯をお話ししましょう。

     

     第一のアイデアはイメージ的な方向からやってきました。力を溜め、その動作を邪魔されなければ大きなパワーが発揮されるのです。鉄槌を持ち、大地のパワーを扱うキャラクターが格闘ゲームにいるならば、このような動きはいかにもありそうではないでしょうか。

     

     そこで、《全力》の隙カードとしました。しかしこれではあまりにリスクが大きすぎるので、最低保証を付けることにしました。大地の力をその身に宿すので、動作を行う時点でオーラが高まるのです。他方で成功時のリターンとしては大きな攻撃もありえましたが、すでに「遠心撃」があるのでその補助や、様々な動作と結びつくように基本動作としました。

     

     結果として大失敗でしたが、悪かった点は複合的なものだと考えています。まず、リターンが見合っていなかったのは確かでしょう。そして《全力》かつ隙という構造が想像より弱かったのも確かです。この点は隙そのもののルールに改善点があった可能性もあると考えています(『第二幕』で隙のルールを変える予定はありませんが)。

     

     

     ハガネは間合の変化に注目します。ゆえに、必殺技にあたる切札攻撃はこのような効果にするべきでしょう。遠心が蘇ったころにカードリストに加わり、最後まで残り続けました。途中で消費は5から4へ、そしてYの値が切り捨てから切り上げに変更されています。

     

     このカードに行った工夫は、「変数による注目は切札1枚で行うべし」というものです。ある要素に注目するやり方は閾値と変数の2種類があります。閾値はある値以上(以下)ならば適用されるもので、変数はその値に応じて流動的に効果が変わるというのもです。

     

     ハガネでは遠心は閾値で、このカードは変数です。しかし変数には問題があります。数値ごとに効果が変わり続けるので認知が難しく、ゲームが複雑化するのです。他方で変数には独自の魅力があり、規格外の結果を出せることからも芳醇なゲーム体験に繋がるのです。

     

     そこで本作では、通常札は閾値で、そして切札のうち1種類を変数でというやり方にしました。通常札はゲーム中で何度も参照するため閾値が相応しく、切札は一度だけなので変数でも認知できるのです。このやり方は後に「Omega-Burst」や「灰滅」でも応用されました。

     

     

     「大天空クラッシュ」と同時期にデザインされ、そして存在し続けていました。消費が2から3になった以外は変更されていません。

     

     経緯としては、イメージ面、バランス面、システム面の全てからデザインされたカードです。イメージ面は単純に、大地を象徴するからには回復能力はあってもおかしくないだろうということです。地水火風の元素で考えると、回復は地か水が持つのは自然な話です。バランス面では「砂風塵」と同様に、ハガネの防御手段としてデザインされました。

     

     そしてシステム面としては、回復カードへの挑戦という目的がありました。本作のようなゲームで、回復カードは危険な存在です。第一に、下手な作り方をするとゲームがいつまでも終わらなくなってしまいます。少なくとも切札である必要があるでしょう。

     

     第二に単純に強力で、安易に使うのが正解になりすぎるのです。本作のライフはダメージによってフレアへと向かうため、単純な回復カードはリソースの供給にもなるのですから。他方で相手を倒せるわけではないので、消費を重くしすぎると魅力に乏しいカードになります。

     

     基本セットで回復効果を持つ「森羅判証」はこれらを巧妙に解決していますが、回復カードというイメージはありません。そこで私は純粋な回復カードに挑戦することにしたのです。

     

     そのためのやり方が「他の切札が全て使用済ならば」というアイデアです。こうすれば序盤に安易に使えなくなるので、消費は魅力的な値まで下げられます。さらに本作で切札の正体を曝すのは弱い行為です。ゆえに残りの2枚をいつ曝し、そしてメガロベルを撃つのかというジレンマが生まれます。当然抱え落ちをするリスクも生まれており、ゲームとして面白いせめぎ合いになるのです。また回復によるリソース供給も、普通であれば残りの切札がないため活かされないことになります。そこで一工夫するという相互作用もまた、ゲームを魅力的にすると言えるでしょう。

     

     アイデアが素晴らしい形で生きたカードとして、とても気に入っています。そしてこのアイデアは、同時期のプレイテストであるカードを救うことになります。これはまた、然るべき時に語りましょう。

     

     

     デザインの末期にカードリストに加わり、一度も変更されませんでした。その前にあったカードは正直魅力的ではなかったので取り除かれ、しばらくこの枠は空席だったのです。

     

     生まれたきっかけはヒミカとの対戦でした。ハガネは遠心を活用するため、少なくとも一度は接近する必要があります。しかしその対戦では全く近づけず、切ない思いを抱きながら射殺されました。

     

     これによりハガネには一気に前進するカードが必要と判断されました。通常札ではクリンチが怖いので切札とすべきです。しかし問題があります。例えば3歩前進するカードの消費は強さだけ見ると1か2が妥当です。しかしその消費では最序盤から使用できるため、様々な狙いをあまりに簡単に打ち砕いてしまいます。

     

     そこで素晴らしいひらめきが得られました。消費を4にして、桜花結晶の行先をフレアにするのです。そうすれば実質的には消費を1にできる一方で、初動は遅くできます。結果としてお互いのやりたいことができる気持ちの良いゲームになるのです。

     

     

     手札を1枚持ち越し、必要な時に使えるカードというコンセプトでデザインしました。

     

     ハガネが力を溜め、「鐘鳴らし」「(旧)円舞錬」でバフしてどーん! この動きを行うにあたり、本来のドローだけでは手札の管理が難しいことに気付きました。しかし「カードを引く」効果は危険性が高く、安易には使えません。そこでこのようなやり方を取ったのです。

     

     残念なのは、カードパワーが不足していたことです。私は『ドミニオン』のプレイヤーでもあるため「停泊所」のような効果と、それによるデッキの圧縮に強みを見出しており、またそれを(いい意味で)悪用するプレイヤーが生まれるだろうという予測をしていました。そのためリスクを緩和するため《全力》を付けておいたのです。

     

     しかしどうやらそのリスクは杞憂だったようで、結果として残念なカードになってしまいました。とはいえ《全力》を外して安心できるかというと疑問です。

     

     ただ、少なくとも消費は0にするべきでしょう。『決定版』調整の際にも候補には上がったのですが、それを行ったところで本質的にハガネが救済されるのかと言われるとNOであったため、見送られることになりました(調整できる枚数にも限りがあるのです)。

     

     

     原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。

     

     ハガネはいったん近づき、そしてその後に後退する必要があります。「大重力アトラクト」が生まれた経緯から分かるように、ハガネ単独で戦うにあたっては前進能力が不足しています。そしてトコヨとの相性が警戒されていたことから見ても、後退能力もまた求められているのです。

     

     そこで極めてシンプルに解決することにしました。シンプルな書式ながら、普通のカードとしては許されない強さであり、絶妙なカードと言えるでしょう。

     

     

     原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。通常札がシンプルかつ、攻撃的でない形で動作をなめらかにしたため、こちらでは攻撃的な形で刺激を与える必要がありました。

     

     まず浮かぶのが強力な《攻撃》カードですが、少し考えた結果、これではハガネの個性を殺してしまうと判断しました。ハガネは「遠心撃」と「大天空クラッシュ」に攻撃を絞っており、それゆえに大技に特化した魅力が感じられるのです。

     

     そこでハガネの個性である、攻撃を強化するカードにすることにしました。原初札の切札に相応しい修正値がなかなか見つけられず悩んでいましたが、幸いにも天啓が下りてきました。ライフへのダメージを2倍にすればいいのです! 2倍! 普通のカードでは危険すぎて使えないテキストですが、ここならば使えるではありませんか。

     

     2倍にできるとしたら次に人間はどう考えるでしょうか。そう、4倍にしたくなるのです! そこでターン中に使える形での再起効果を入れることにしました。

     

     この再起効果はゲームのスリルを保つ働きもしてくれました。原初ハガネの一撃は大体6/6くらいにはなりますが、一撃目を止めるのは難しくはありません。しかし、このカードが再起するゆえにゲームのスリルが持続し、いつ次の一撃で死ぬか分からない魅力的な展開となるのです。

     

     

     

     これにてハガネ特集は閉幕となります。様々なカードに秘められた物語をお楽しみいただけたら嬉しい限りです。今回の特集への感想や、他に行ってほしい特集などありましたらTwitter(@BakaFire)までお伝えください。

     

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     来週は1週お休みをいただきます。そしてその翌週は大規模大会か公式通販、あるいはその両方についての記事をお届けすることになるでしょう。ご期待くださいませ!