『桜降る代の神語り』第0話:或る最果ての社にて

2016.09.30 Friday

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     やあ、はじめまして。そう、君。そこの君だよ。
    今、カナヱは君に呼びかけている。
    こんな果て、僻地の社まで来る変わり者の君に、だ。

     

     カナヱはカナヱ。かの古より伝えられし、最古の三柱が一人。
    歴史と伝承のメガミ。

     

     ……信じていないな?

     

     最近は書物なんてものが発展したからか、直に話を聞きに来るやつなんていやしない。おかげでこの社も随分と寂れてしまった。だが、君みたいな変わり者に物を語るには十分。しかも君はミコトだろう? こうして、その桜花結晶を通じて語りかけられるのだから十二分だ。

     

     さて……折角の御縁だ。物語を聞いていかないかい?

     

     遡ること百年にも満たぬその昔、世界を大きく揺り動かした者たちがいた。数多の英雄と、数多のメガミが織りなしたその軌跡……。

     

     君たちの間では、五巻立ての戦絵巻として残されている。しかし、あくまでそれは断片を紡いだだけのうわべの物語だ。聞きたくはないか? 生きた本当の物語を。総てを見聞きし、歴史を紡ぐ、カナヱだから語れる英雄譚を。

     

     ……ふふ。君なら、首を縦に振ると思っていたぞ。


    途端、眼前に光が満ちた。目が眩むようだが、不快ではない。光はすぐに収束し、そこには少女が立っていた。神々しく、他方で異常な奇妙さを持った存在感。あなたは確信する。彼女こそがかの歴史のメガミであると。
    そして、彼女は語り始めた。


     それでは、今こそ語り継ごうじゃあないか。

      天音揺波 あまねゆりな の英雄譚を!

     

     

    どこにも記されていない物語

    作:五十嵐月夜   原案:BakaFire  挿絵:TOKIAME

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