『半歩先行く戦いを』第3回:切札は秘めてこそ

2017.10.27 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。

     

     こちらの記事は本作の攻略記事の第3回となります。ルールは理解できているものの、今一歩勝利への道筋を掴みかねている方を対象として、理論立てられた基礎をお伝えしております。

     

     本シリーズは現在大会で活躍されているプレイヤーの中より、戦術の理論化、文章化に長けた強豪であるつきのみちさんに執筆して頂いております。それでは、早速今回も始めるとしましょう。

     


    著者紹介:つきのみち
    本作を発売から今日にかけて遊んで頂いている古株のプレイヤー。具体化された理論に裏付けられたプレイングと、丁寧なメタ読みを得意とする。2017年8月のコミックマーケット92では本作の攻略冊子を同人にて作成、頒布した。本作の攻略が理論に基づき、これほどの分量を持って文章化されたのはその冊子が初めてのことである。


     

    『半歩先行く戦いを』

    第3回:切札は秘めてこそ

     

    著:つきのみち

     

     

    ※今回はやや難しい話が含まれます

     

     今回は切札と圧力について考えてみようと思います。「切札」はご存知の通り、通常札7枚と別に構築を行いフレアを支払って使用する3枚の札です。「圧力」とは何か?それは後程説明することとします。

     

    1. 切札の基本

     

     切札の基本は「切札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を持て」というとある漫画の名言がそのまま当てはまります。先に発動することで持続的に効果を得られるものを除けば、基本的に切札は「自分のライフが0になる時」か、「相手のライフを0にできる時(正確には、自身の勝利を確定できる時)」以外には使わない方が良いです。その理由は以下の通りです。

     

    .侫譽△鮠暖颪垢襪海箸納らの行動の選択肢が減る

    攻撃札であれば、相手にフレアを与えてしまう

    切り札を公開することで情報を失う

     

    各々について少し詳しく説明します。

     

    .侫譽△鮠暖颪垢襪海箸納らの行動の選択肢が減る

     

     例えば自分がユリナを宿していると仮定したとき、自フレア6から「月影落」を使用したとします。こうして自分のフレアが0になった状態で相手にターンを渡してしまうと、自フレアが0のため「浦波嵐」によって相手の攻撃を軽減するという選択肢を自ら放棄しているのです。すると相手は容赦なく強力な攻撃切り札を使用可能となってしまいます。相手もユリナを宿しているとするならば、自オーラ5からでも「一閃」をオーラで受けた瞬間に「月影落」をライフに直撃されてしまいます(「月影落」で済めばまだマシで、下手をすれば「天音揺波の底力」の直撃を食らって即死します※1)。

     

     攻撃札であれば、相手にフレアを与えてしまう

     

     相手のライフにダメージを与えることと相手のフレアを増加させることはほぼイコールです。強力な切札攻撃は当然相手に大量のフレアを供給するため、相手の選択肢を増やします。,塙腓錣擦襪函∩蠎蠅料択肢を拡大して自分の選択肢を狭めることになり、総合的には不利となることが多いです。

     

     攻撃をライフで受ければいつでもフレアは貯まるのだから、殊更切札を強調する必要は無いのでは?と思われたかも知れませんが、攻撃をライフに通しても相手のフレアが貯まらない瞬間は、実は全てのメガミに等しく与えられています。相手のライフを0にする瞬間です。相手にいくらフレアがあろうとも、使う機会が無ければ無いに等しいのです。それゆえに、強大な威力を持つ切札攻撃はできる限り相手のライフを0にする瞬間に使い、相手のフレアを大量に無駄にさせることが重要です。

     

     ただし、消費フレアが少なく威力も低い切札攻撃であれば上記´△良塒は少ないため、先に打つのも一つの手です。特に、消費フレアが少なく威力が低めの切札は中距離・遠距離に多く存在するため(そのメカニズムについては、第一回を参照すると理解が深まるでしょう)、打てる機会を逃すと次に機会があるかどうか分からない場合には、先に打つのも手でしょう。

     

     例えば、「千歳の鳥」ならば山札が空で間合3-4かつ相手が防御不能というタイミングは1回の決闘で1回あるかどうかですし、「レッドバレット」は間合5まで離れる必要があるため、メガミや切札の組み合わせによっては打つタイミングを一度逸すると次は難しい場合があります。

     

     ただし、これらのような切札は先に打つことで上記´△砲茲詆塒は比較的少ないですが(全く無い訳ではないので注意)、次のの理由による不利は変わらず受けることを考慮する必要があります。

     

    切り札を公開することで情報を失う

     

     伏せられた切札は、その正体が分からないがゆえに相手に対処を強いることができます。特にこれが顕著なのはサイネなので、サイネを例に説明します。

     

     サイネの切札は、単純な攻撃カードである「律動弧戟」を除けば癖が強く、対処を万全に整えれば被害は少ないものの、対処を怠れば致命的被害を受けかねない危険なカード揃いです。例えばユリナ/サイネを宿していて、相手の切札が2枚以上残っている際に起こり得る即死シナリオはおぞましいほどに多彩です。

     

    ・オーラが少ない状態で攻撃している場合

      →「音無砕氷」でターンを飛ばされ、「律動弧戟」「月影落」等の強力な切り札攻撃で死亡

      →切札攻撃ならば「氷雨細音の果ての果て」の直撃を受け即死

     

    ・オーラ5で2間合でターン終了

      →「響鳴共振」でオーラを削られ、「薙斬り」「八方振り」「遠当て」「律動弧戟」等を立て続けに食らい死亡

     

    (切札3枚ならさらに追加で「浦波嵐」が入ることすらある)

     

     これらは、各々のカード1枚を防ぐだけであれば極めて簡単です。「響鳴共振」はオーラを4にしておけば良いし、「音無砕氷」は集中力と手札をあらかじめ適切に使用してオーラや間合いを調節した上で攻撃すれば良い。「氷雨細音の果ての果て」はオーラを5にして切札を使えばライフにはダメージが通りません。

     

     しかし、切札が伏せられている場合は相手はこれらすべての可能性を考慮しなければなりません。考慮しなければ死ぬからです。切札が伏せられているだけで、相手はあるかどうかも分からない切札への対策の為に集中力や手札を無駄に消費したり、敢えて防御を手薄にしたり、打てば倒せるタイミングの切札を打ち損ねたりします。これらは自らの集中力も手札も消費することなく相手の手を曲げさせる(相手が本来やりたかったことを妨害する)ことが可能なためとても強力です。

     

    2. 「 圧力」を意識しよう

     

     切札の基本を説明したところで、冒頭で説明を保留した「圧力」の話をしようと思います。「圧力」とは何か。それは先の「切り札を先に使ってはいけない理由」ので挙げた「自らは何ら消費せず相手の手を曲げさせる」力です。

     

     例えば、自分がユリナ/チカゲ、相手がオボロ/トコヨを宿している状態で、次のようなボード状況を仮定します(説明のための図ですので、実現可能性については目を瞑ってください)。相手の手札は1枚、こちらの手札は「飛苦無」「斬」「一閃」、自集中力は1とします。相手は伏せ札が6枚あり、相手の切札は「壬蔓」1枚が開いているのみとします。

     

     

     自分はオーラが万全かつ手札も攻撃カードが3枚揃っているため、「飛苦無」→前進→「斬」「一閃」と畳みかけて相手のオーラとライフを削りたいところです。

     

     しかし、「飛苦無」の後の「斬」に対応で「詩舞」を使われてしまうと、自分は集中力0、間合3、オーラ5となってしまい、間合3-4から脱出することが不可能になります。もし、次のターンに相手が再構成をせずに「熊介(伏せ札6枚)」を使用したならば、ライフに4〜5点という致命的な大ダメージを受けてしまいます。

     

     これを未然に防ぐためには、2距離で「斬」を使わずに1ターン待ち、相手が再構成を終えて伏せ札が無くなる、もしくは自分の手札と集中力が充実し、相手が「詩舞」を使っても2距離か5距離に逃れられる状況となるのを待つ必要があります。

     

     これは「熊介」の持つ「圧力」によって、本来行いたかった「「斬」「一閃」で攻撃する」という手を、「「斬」「一閃」を手札に抱えて2距離に留まる」という形に曲げさせられたこととなります。仮に相手の切札に熊介が入っていなければ、あるいは相手の手札に「詩舞」が入っていなければ、強気に攻撃を振った方が得です。しかし、入っていた場合の致命度が高いために、退却を強いられることになります※2。この「入っていた場合の致命度の高さ」が高いほど、相手に与える「圧力」が強まるため、如何に「致命度が高い(ように見える)盤面を構成するか」が「圧力」の高い盤面を構成する上で重要です。

     

     「素直に打ちたい手を打つと致命的な状況が起こり得る」状況を作り出し、相手を自ら退かせることが「圧力」の本質です。 私の個人的な対戦経験から言いますと、強豪プレーヤーほどこの「圧力」の扱いに長けています。「圧力」の高い盤面を構築し続ける力が、中級と上級の境界であると私は考えています。

     

    3. 相手の「圧力」が高い!

     

     相手の切札や見えない手札の「圧力」が高くて手を曲げさせられ続け勝ちを逸した、以前は大技を躊躇なく決めて勝てていたのに、最近は僅差で勝ちを逃すことが増えてきた。そのような経験が、ある程度経験を積んだプレーヤーならあるかもしれません(ない人も多いと思います)。しかし、相手の「圧力」に屈して負けるからといって、決してあなたが絶対的に弱いわけではありません。相手から「圧力」を受けているということは、少なくともあなたが相手の手札や切札1枚1枚が脅威であることを把握し、闇雲に攻めない慎重さを身に着けている証だからです。自分のやりたいことばかりを考えて相手がどんな恐ろしい攻め手を繰り出してくるかに全く考えを巡らせていない段階よりは明らかに強いと言えるでしょう。

     

     しかし、相手の「圧力」に怯えて手控えているだけでは一方的に不利を押し付けられ敗北するのは道理なのもまた事実です。そこで、相手の「圧力」をどうやってかわすかを考える必要があります。方法はいくらかありますが、例を挙げると以下の2つが考えられます(他にもあります)。

     

    〜蠎蠅亮蠅鮴騎里貌匹濱擇蝓許容できるラインを見極める

    逆に「圧力」をかけて拮抗させる(やられたらやり返せる盤面を作る)

     

    少し詳しく説明します。

     

    〜蠎蠅亮蠅鮴騎里貌匹濱擇蝓許容できるラインを見極める

     

     まず、そもそも相手の手に入っていないカードに怯えていないでしょうか?相手が今までに使ったカードをきちんと把握し、相手のデッキに入っていないカードに怯えないようにしましょう。相手のデッキが割れれば、そのデッキと相性の悪いカードは入っていないと読むことができ、そのカードからの「圧力」を無視することができます。

     

     また相手の場を観察し、捨て札や手札の枚数、集中力を数えて相手の放てる最大の手を計算しましょう。その上で、ギリギリ許容できる範囲までしか手数を支払わないようにすれば、「圧力」に屈した場合でも損失を抑えられます。例えばヒミカを宿している時は間合を離せば離すほど安全になりますが、離れるために攻撃カードを全て伏せてしまっては意味がありません。相手の攻撃が避けられるギリギリのラインを見極め、残りの手札は反撃の為に残しておく必要があるのです。

     

    逆に圧力をかけて拮抗させる(やられたらやり返せる盤面を作る)

     

     2.で説明した盤面において、自分がユリナ/チカゲではなくユリナ/オボロを宿していた場合、仮に2距離で「斬」や「一閃」を「詩舞」で防がれて間合3から脱出不可能になったとしても、相手は早々「熊介」を振ることはできません。「熊介」を振った場合、「熊介」をライフで受けて増加したフレアを活用して「浦波嵐」でオーラを減らされた上に設置「鋼糸」からの「天音揺波の底力」でライフを7点削られて即死するためです。このように、より脅威度の高い盤面を作り上げる(つまり、やられてもやりかえせる盤面を構築しておく)ことで逆に相手に「圧力」を与え、相手から受ける「圧力」と拮抗させて不利を回避することができます。

     

    補足. 奥の手を忍ばせよう

     

     「切札は先に見せるな、見せるなら更に奥の手を持て」と最初に言いましたが、奥の手がある場合に関しては切札を先に使っても良い場合があります。

     

     例えば、自分がユキヒ/ハガネを、相手が後退力に乏しいメガミを宿していて相手のライフが4以下の時に、敢えてオーラ受け前提の「ゆらりび」を放ったとしましょう。これは切札を先に見せてしまう悪手とも考えられます。しかし、ここでオーラを砕いた上でさらに「大破鐘メガロベル」でライフを回復させたとすると、あとは「めぐりあい」「大地砕き」あたりを連打しているだけで相手は一生0距離から抜け出すことができず、「大破鐘メガロベル」でついたライフ差を逆転できません。オーラの辛さゆえに、その場にとどまってオーラを回復させれば「つきさし」、後退すれば「遠心撃」の直撃という非常に厳しい二択を迫ることができます。これは0距離貼り付きと「大破鐘メガロベル」によるライフ回復による圧倒的な盤面の優位という「奥の手」を忍ばせることで、切札を先に見せることを許容しているのです。

     

     切札を先に見せたいときは、構築時点で奥の手を仕込んでおきましょう。

     「切札と圧力」についての攻略は以上となります。次回は「守りの基本」について攻略しようと思います。

     

     ※1 互いにフレア6の状態から、プレーヤーAが手札と集中力を使い切った状態で「月影落」を打った場合、プレーヤーBが「浦波嵐」を使ってライフで受けると、プレーヤーBがフレア6、プレーヤーAがフレア0、オーラが3以下となるため、プレーヤーBが「底力」を使うとプレーヤーAは直撃を受けて死にます。

     

     ※2 非常に高度な戦法ですが、「熊介」が入ってないと決めつけて強気に攻めるという選択肢もあります。ただし闇雲に守りを切り捨てるのではなく、平素の打ち筋から相手の精神構造を分析し、どのようなデッキを組んでいるのか逆算した上で決めつけましょう。相手のデッキを決めつけることで、その範囲外のカードから受ける圧力を減らすことが可能です。全国上位レベルの強さを目指すならこの辺の情報戦、所謂メタ読みも視野に入るでしょう。なお、私は記事の連載を始めてから露骨なメタ読みを通されて負けることが増えました。

     

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