6月もオンライン大会がやって来る!

2020.05.29 Friday

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     こんにちは、BakaFireです。本日は再びオンライン大会をお伝えするために筆を執らせていただきました。私どもは新型コロナウイルスの感染を憂慮して公式、準公式、公認イベントの受付を自粛しており、その代わりにオンライン上で本作を楽しむための試みの拡大を展望にて定めています

     

     本日までで公式攻略ページの補強ゆるい午後ひとコマポストカード配布ユリナ特集記事#自宅で楽しむ桜降る代シリーズなどの試みが実現しました。これらもお楽しみいただければ幸いです。

     

     そして安全のために6月までは自粛期間を継続すると決めた以上は、6月もオンライン大会があるべきでしょう。本日時点で私どもはオンライン大会を5月に4回開催し、そのいずれも成功に終わっております。本作の新しい楽しみ方としてうまく機能するやり方が生まれたことを私は嬉しく思います。

     

     オンライン大会は想像よりも好評であるため、7月以降も数を減らして開催する可能性があります。その折にはまたお知らせさせていただきます。

     

     

    もっとオンラインで決闘しよう!

     

     本作は幸いなことにオンラインで対戦する手段が、準公式以上のもので2つございます。電子版準公式シミュレーターです。オンライン大会では準公式シミュレーターを用います。もちろん優勝者には従来通りの賞品を郵送いたしますとも!

     

     管理しやすいように人数は8名に制限し、シングル・エリミネーションによるトーナメント形式で行います。その代わりに開催する回数を増やしますのでご安心ください。さらに大会進行の管理はdiscordで行います。参加にはdiscordが必要ですので、discordの公式ページよりダウンロードしてください。

     

     今月のスケジュールは以下の通りです。

     

    日程とレギュレーション

    6月13日(土):完全戦/通常選択

    6月14日(日):季節戦/通常選択

    6月20日(土):完全戦/三拾一捨

    6月21日(日):完全戦/通常選択

    6月27日(土):季節戦/通常選択

    6月28日(日):完全戦/三拾一捨

     

    定員:各8名(多くの方にご参加いただくために、6月の複数の日程への参加は禁止させていただきます。但し、人数が足りない際の補充を開催当日にツィッターで行う場合に限って可能とします)

     

    形式:シングル・エリミネーションによる3回戦トーナメント

     

    タイムテーブル:

    13:30-14:20:受付ならびに使用するメガミの提出

    14:20-14:30:トーナメント表、全参加者が使用するメガミの公開

    14:30-15:40:1回戦

    16:00-17:10:準決勝

    17:30-18:40:決勝

    眼前構築5分間、桜花決闘60分、予備時間15分で進行します。

    三拾一捨の場合はそのための時間も各3分取ります。

    時間までに着席が確認できない場合は審判がどちらかの勝利または両者の敗北として裁定を行います。

     

    必要な環境:

    ・discordを閲覧できる

    ・discord上でマイクにて対戦相手と通話できる

    ・準公式シミュレーターを操作できる(シミュレーターはこちらです。事前に自分で卓を作り、操作法を理解しておくことをお勧めします)

     

    審判の業務:

    審判はタイムテーブルに応じて試合の進行を管理します。

    審判はdiscordにログインしています。試合中にトラブルが生じたら審判をお呼びください。ログを参照しつつ事情を伺い、裁定を行います。

     

     参加する方法は簡単です。これまでの公式イベントと同様にこちらのページから参加申請を行ってください。自動返信でメールが届き、そちらにdiscordチャンネルへ招待するアドレスが記載されております。受け取りましたらチャンネルにご参加いただき、それにて受付完了となります(※)。

     

    ※ 参加申請の翌日の24:00までにdiscordにご参加いただけない場合はキャンセルとなります。ご注意ください。

     

     

     本日はここまでです。私の記事はまだお休みを頂いておりますが、#自宅で楽しむ桜降る代シリーズの第三弾の公開やストーリーの再開はもう目の前です。ご期待くださいませ!

    オンライン大会のおでましだ!

    2020.05.04 Monday

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       こんにちは、BakaFireです。本日はオンライン大会のために筆を執らせていただきました。公式としては初めての試みでございますので、お楽しみいただければ嬉しい限りです。

       

       私どもは新型コロナウイルスの感染を憂慮して公式、準公式、公認イベントの受付を自粛しており、その代わりにオンライン上で本作を楽しむための試みの拡大を展望にて定めています

       

       本日までで公式攻略ページの補強ゆるい午後ひとコマポストカード配布ユリナ特集記事#自宅で楽しむ桜降る代シリーズなどの試みが実現しました。これらもお楽しみいただければ幸いです。そして水面下ではさらなる試みも進んでおり、本日お伝えするものもそのひとつです。

       

       

       

       

      オンラインで決闘しよう!

       

       本作は幸いなことにオンラインで対戦する手段が、準公式以上のもので2つございます。電子版準公式シミュレーターです。今回の試みはそのうち、準公式シミュレーターを用いたものです(※)。シミュレーターを用いた大会を行い、その優勝者には従来通りの賞品を郵送します。この試みが成功すればイベントの自粛期間であっても、一定数であれば公式イベントの開催が可能になります。

       

      ※ 電子版を用いた試みも水面下で進んでおります。遠くないうちにお伝えできると思いますので、ご期待くださいませ。

       

       初めての試みでもありますので、管理できるよう人数は8名に制限し、シングル・エリミネーションによるトーナメント形式で行います。その代わりに開催する回数を増やしますのでご安心ください。さらに大会進行の管理はdiscordで行います。参加にはdiscordが必要ですので、discordの公式ページよりダウンロードしてください。

       

       それでは、詳細をお伝えしましょう。

       

      日程とレギュレーション

      5月16日(土):完全戦/通常選択

      5月17日(日):季節戦/通常選択

      5月23日(土):完全戦/三拾一捨

      5月24日(日):完全戦/通常選択

      5月30日(土):季節戦/通常選択

      5月31日(日):完全戦/三拾一捨

       

      定員:各8名(多くの方にご参加いただくために、複数の日程への参加は禁止させていただきます)

       

      形式:シングル・エリミネーションによる3回戦トーナメント

       

      タイムテーブル:

      13:30-14:20:受付ならびに使用するメガミの提出

      14:20-14:30:トーナメント表、全参加者が使用するメガミの公開

      14:30-15:40:1回戦

      16:00-17:10:準決勝

      17:30-18:40:決勝

      眼前構築5分間、桜花決闘60分、予備時間15分で進行します。

      三拾一捨の場合はそのための時間も各3分取ります。

      時間までに着席が確認できない場合は審判がどちらかの勝利または両者の敗北として裁定を行います。

       

      必要な環境:

      ・discordを閲覧できる

      ・discord上でマイクにて対戦相手と通話できる

      ・準公式シミュレーターを操作できる(シミュレーターはこちらです。事前に自分で卓を作り、操作法を理解しておくことをお勧めします)

       

      審判の業務:

      審判はタイムテーブルに応じて試合の進行を管理します。

      審判はdiscordにログインしています。試合中にトラブルが生じたら審判をお呼びください。ログを参照しつつ事情を伺い、裁定を行います。

       

       以上となります。参加する方法は簡単です。これまでの公式イベントと同様にこちらのページから参加申請を行ってください。自動返信でメールが届き、そちらにdiscordチャンネルへ招待するアドレスが記載されております。受け取りましたらチャンネルにご参加いただき、それにて受付完了となります(※)。

       

      ※ 参加申請の翌日の24:00までにdiscordにご参加いただけない場合はキャンセルとなります。ご注意ください。

       

       

       本日はここまでです。次回の私の記事は未定ですが、何かしらの試みの記事となる可能性が高いでしょう。もちろん#自宅で楽しむ桜降る代シリーズの第二弾と第三弾の開発も進めています。ご期待くださいませ!

      王道覇道これぞ決闘(後篇)

      2020.05.02 Saturday

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         こんにちは、BakaFireです。今回の記事はユリナ特集の後篇となります。前篇中篇をまだお読みでない方は先に読まれることをお勧めします。

         

         このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第3シリーズ第3回にして累計第12回となります。

         

         前篇ではメガミ・ユリナに関する歴史を説明し、彼女の誕生と本作全体のデザインに関する話をしました。中篇は第一幕から新幕にかけての歴史をお話しし、N1からN3のカードについてもお話ししました。従って後篇では残るカードN4から原初札を扱うことになります。

         

         それでは、さっそくはじめましょう!

         

         

         

        第二幕

         

         「居合」は単純さゆえに、最初の全力カードと言えます。ゆえに全力の歴史をお話しするべきでしょう。

         

         本作そのものをデザインする過程で見ると、全力カードの誕生はそこまで早くはありません。その誕生は集中力とほぼ同じタイミングであり、その頃にトコヨの特性が境地に定まったのはトコヨ特集でお話しした通りです。

         

         全力は2つの目的で作られました。第一にカードのデザイン空間を広げるため、第二にゲーム展開に幅を広げるためです。

         

         本作の通常札にはコストがありません。ゆえにその強さはある程度の上限があり、結果としてデザイン空間が狭まってしまいます。他方でコストの概念としてはすでにフレアが存在します。新たな概念を定めたとしても体験が似通い、また複雑さの観点から手段も限られます。通常札にもフレアの消費を持たせるという選択肢もありますが、通常札と切札を見分ける最大の尺度を失ってしまうと認知が難しくなりすぎてしまう懸念もありました(※)。

         

        ※ 加えて山札7枚、切札3枚はゲーム体験としてとても楽しく、当時の私はこれが正解だというある種の確信を持っていました。ゆえに山札を10枚にしてすべてに消費を持たせる(もちろん、大半は0でしょう)という選択肢も否定したのです。

         

         そこで私は悩んだ末に物理的なものを支払うのでなく、時間あるいは機会を支払うという方法を見出しました。そのアイデアは全力カードそのものでした。

         

         初めて全力を採用したプレイテストにおいて、全力カードは特に絶賛はされませんでした。むしろ集中力が誕生するまでの問題(詳しくはトコヨ特集で)についての議論が激しくなり、注目されなかったというべきかもしれません。

         

         しかしその苦労の結果として集中力が生まれた時、併せて私は全力カードの有意義さを感じました。全力カードを使うと集中力が使えません。ゆえに集中力の上限が2である点と小さく対立し、リソースの管理が難しくなるのです。それは裏を返すと、対戦相手としても全力カードが使われやすい予兆を感じ取れるということでもあります。即ちゲームに対話が生まれるのです。

         

         ゆえに私は全力カードをカードの特殊効果からサブタイプにまで格上げし、集中力を含めたカードリストの最新化を行いました。「居合」はもちろん最初に生まれました。最初は2-3、3/3の対応不可(当時はキーワードでなくテキスト)で、その後にバニラの2-3、4/3となりました。

         

         ここまでが第一幕までの話です。第一幕では達人の間合がなかったため「居合」は活躍しませんでした。第二幕で達人の間合が生まれ、その際に私どもは2-3、4/3では強すぎると気づいて4/2に直しました。その後は第二幕で絶妙かつ強力なカードとして活躍しました。

         

        新幕

         

         ライフの増加に伴い4/3となり、ユリナの間合におけるイメージ変更のために3-4になりました。こう書くと単純な話です。しかし後者についてはゲーム面でやや失敗であり、同時にフレーバーに関する厄介な問題が生じていました。

         

         間合2を含まず、序盤にも使えない攻撃/全力は想像以上に使いづらかったのです。ゆえにシーズン1時点で「居合」は間合2の追加が望まれていました。しかし2-4の4/3は問題がある水準であり、他方で2-3となると「居合」というカード名との齟齬が起きてしまいます。居合は大きく振りぬく動作の技なので「斬」が間合4まで届く以上は、こちらも間合4まで届くべきなのです。

         

         加えてユリナと間合2の結びつきを可能な範囲で抑えたいとも考えていました。新幕の設計では間合2にはすでにライラが存在し、同様に強力でした。そこで同じく高い攻撃力を持つユリナも間合2と高く親和してしまうと、新幕全体の体験が間合2に偏り過ぎてしまうと感じていたのです。

         

         そこでデメリットとなるテキストを追加することにしました。間合2では降りぬくのが難しいため威力が下がるのでフレーバーともかみ合い、同時に間合2を注目させ過ぎないかたちで間合2を追加し、「居合」を採用するかどうか悩ましい強さまで引き上げられました。現状の「居合」は気に入っています。

         

         

         

        第二幕

         

         ユリナの移動カード枠です。共通カードがゲームから取り除かれ、その際にメガミ一柱の持つ通常札は5枚から7枚に変更されました。移動カードを共通カードから固有のカードへと移し、メガミごとの個性を際立たせたほうがより多様なゲーム体験に結びつくと判断したのです。

         

         第一幕のユリナは間合1-2が得意なので、効率よく前進するカードとなるのは当然です。そこで「間合→ダスト:2」としてデザインされ、そのまま印刷されました。しかし中篇でもお話しした通り、当時は近距離問題が十分に理解されていませんでした。

         

         そして第二幕の途中で問題が顕在化し、「現在の間合が3以上ならば」という条件が加えられました。この調整をもって第二幕の近距離問題はひと段落し、そしてカードのバランスも適切なものに落ち着きました。この状態の「足捌き」が今は「風走り」として新幕でも活躍している通り、前進カードの基準として正しいデザインだと強く感じています。

         

        新幕

         

         しかし新幕における「足捌き」は失敗だったと悔やんでいます。シーズン1時点とシーズン2以降で効果は少し違いますが、問題点はそこではありません。火力の高いうえで間合3-4を得意としたユリナが「足捌き」を持つと中距離や遠距離への耐性が過度に高まり、万能になり過ぎてしまうのです。

         

         私の失敗は「足捌き」という存在の大きさに幻惑されてしまった点にあります。第二幕までにおいて「足捌き」は多くのプレイヤーが最初に触れる移動カードであり、ゲームの紹介やルールの解説でも頻出します。ゆえに主人公であるユリナにとって「なくてはならないもの」だと錯覚してしまったのです。

         

         移動カードを説明するという役割は「歩法」に移っています。私は改めて「足捌き」とその意義を見直すべきでした。

         

         

         

         上の失敗ゆえにシーズン5での更新で「足捌き」は「気迫」へと変更されましたが、この更新は難しいものでした。カードが強すぎるならばカードを弱めればよいのですが、「足捌き」は別段強すぎるわけではないのです。加えてシーズン4でのユリナははっきりと強く、この枠には使いづらいカードが求められていました。それでいて使いどころがまるでないようではやはり駄目で、加えてユリナらしさも失ってはなりませんでした。

         

         結論としてユリナがこれまでにできたことは広げず、攻撃の強化をもう1枚作ることにしました。その上で様々な工夫がなされました。一気にお話ししますが、実際は小さい変更を繰り返して整えられています。

         

         第一にユリナは自身の攻撃が強いため、それを自分で強化できると自己完結し、二柱を組み合わせる楽しさが霞んでしまいます。そこで強化先を他のメガミに制限します。第二にダメージの強化は「柄打ち」「気炎万丈」でなされているため、他の方向で強化して体験を広げます。特に距離拡大(近1)はサイネ、ヒミカ、トコヨのいずれと組み合わせても意味があり、『基本セット』で本作に触れたばかりのプレイヤーにとって組み合わせの楽しさを広げられると期待できました。

         

         その上でこのままでは弱すぎるというフィードバックから集中力を1得る効果が加わり、最後に「ゆらりび」との相互作用を懸念して対象が通常札へと制限されて完成となりました。

         

         個別の1枚として見るなら及第点のカードという評価に留まりますが、「月影落」で後述する制約のもとで考えるならば私どもは最善を尽くしたと自負しております。

         

         

         

        第二幕

         

         ユリナは「間合を合わせて攻撃する」という基本に注目したメガミです。しかしカードプール全てを移動と攻撃で埋めると少しばかり単調すぎます。そこで私どもはユリナの他の得意分野として様々なものを検討し、結果として第一には攻撃の強化が生き残りましたが、それだけでは通常札が1枠埋まりませんでした。

         

         併せてその頃には付与のルールが検討されていました(詳しくはシンラ特集にて)。そして付与札の上に桜花結晶を納め、展開時、展開中、破棄時と効果が分類されるという指針が固まった段階で、私どもはひとつのフレーバー的可能性を見出しました。格闘ゲームにおける隙が大きい技です。格闘ゲームで相手のキャラクターが珍妙なポーズを取り出したならばそれは悪い予兆であり、一刻も早くそいつに拳を入れなければならないでしょう。

         

         私はそのイメージを再現するようなカードを作りました。展開中効果で攻撃されたら破棄時効果を解決せずに失敗し、破棄時効果で攻撃を行う。即ち「圧気」の原型です。これは攻撃であるためユリナらしく、それでいて搦め手でもあるため体験に変化を与えるのです。

         

         しかし最初のプレイテストで問題が分かりました。プレイテスターの誰もが眉間にしわを寄せ、難解なヒエログリフを読み解くようにカードを読むのです。

         

         この挙動は平文で書くと複雑すぎました。しかし格闘ゲーム的なイメージを説明すると誰もが納得します。ゆえに効果そのものが複雑なわけではありません。そこで私は「隙」というキーワードを作り、より柔らかくした説明文を括弧の中に付け足したのです。

         

        新幕

         

         第二幕で隙は魅力的なキーワードではありましたが、小さな不満もありました。想定よりは決まりづらく、想定より極端で、それゆえに想定よりデザイン空間が狭いのです。

         

         そこで私どもは「闇昏千影の生きる道」における成功を思い出すことにしました。納4のライフだけでしか失敗しない挙動の隙は簡単には成功せず、それでいて成功率が相応にはあります。その上で消費5のリスクから雑には使えず、魅力的な塩梅でした。

         

         ゆえに新幕での隙はライフへのダメージでしか失敗しない挙動に揃えられました(※)。この点は新幕のダメージ基準も重要でした。中篇でお話しした通り第二幕ではダメージの基準があったためライフへのダメージが通りにくく、今のルールの隙には問題がありました。しかし新幕の基準ならば適切なのです。

         

        ※ 加えて、一部のメガミに極端に刺さり過ぎている点も緩和するために攻撃という制約も外しました。

         

         プレイテストの結果、そのままでは少しだけ決まりやすすぎました。序盤での利便性を緩和し、また間合を外して回避する選択肢を与えるために間合を変更し、あとはそのまま完成となりました。

         

         

         

        第二幕

         

         「圧気」で書いた通りユリナの他の得意分野が検討され、攻撃の強化という結論が見出されました。そのうえでいくつものカードがデザインされましたが、最終的には「気炎万丈」が生き残りました。

         

         なぜこうなったかは覚えていません。おそらくは当時は「他のメガミの《攻撃》」という書式は発明されていないため攻撃が多いユリナが持つにはやや単調さが勝ち、結果として面白くないという結論に至ったのでしょう。いくつか奇妙なカード案がありましたが、没になっていました。

         

         最終的には確か「すべての《攻撃》を+1/+1する」というシンプルな書式はどこかには入れたいと考え、その上で全力と決死が出そろった段階でこの形になったのだと記憶しています。ここまでが第一幕デザイン中の話です。

         

         しかし最終的には第一幕環境を完全に破壊しました。ユリナとヒミカを組み合わせ、「カードを引く」効果による焦燥から強引に決死を発動させて連続攻撃を撃ち込む立ち回りが必勝だと分かったのです。実は第一幕のプレイテストでその挙動そのものは発見されていたのですが、私どもは「浦波嵐」を3/-にして撃ち込めることを見落としていました。

         

         結果として第二幕では効果が+1/+0に修正されましたが、あまり活躍には恵まれませんでした。私の感覚としては失敗であり、悔やんでいたカードです。

         

        新幕

         

         新幕では全体的なダメージの基準が引き上げられます。第二幕での失敗も加味し、この1枚はぜひとも+1/+1に戻したいと私は熱望していました。しかしそのまま戻すと駄目だろうという確信もありました。

         

         しばらく考え、その原因は他ならないユリナ自身が優秀な攻撃を多く持っている点にあると気づきました。そして私どもは第二幕の『第弐拡張:機巧革命』と『第参拡張:陰陽事変』をデザインしている途中に「他のメガミの〜」という書式を発見していました。

         

         こうなればもはや今の「気炎万丈」が生まれるのは不思議ではないでしょう(※)。依然として使いやすい効果ではありませんが、「気炎万丈」の採用が正解となるマッチアップは確かに存在しており、私は今の仕上がりを気に入っています。

         

        ※ ちなみに「バックドラフト」も同じタイミングで考察され、同じ理屈で生まれました。

         

         

         

        第二幕

         

         大剣を持った主人公がいるならば、そこには当然必殺技があるでしょう。そして主人公の必殺技はシンプルであるべきです。ゆえに本当に最初から切札のバニラ攻撃は存在していました。その後に前篇の通り近距離の在り方が定義され、そして正しく原型とされる1枚が生まれました(7/3のあいつです)。

         

         その後の変遷はどうでしょうか? オーラの上限が生まれた時点で消費5、1-2の4/3になっており、そのまま最後まで変わりませんでした。シンプルさゆえに語ることは少ないですが、ユリナを象徴する必殺技であるゆえに存在が大きく、本作を象徴する1枚に数えられるカードです。

         

         そして第一幕ではやや問題があったため消費が6に引き上げられ、そのまま最後まで活躍しました。

         

        新幕

         

         ダメージの基準の引き上げに伴い4/4となりました。そしてライフが増えるということは利用できるフレアも増えるため、消費も7へと引き上げられます。これらの変更は正しいと評価しています。

         

         そしてもうひとつ。ユリナのイメージ変化のために適正距離も3-4に変更されました。しかしここには本当に厄介な問題が潜んでいました。ええ、本当に厄介なのです。

         

         現象そのものとしては「足捌き」と近い理由で万能性が高まってしまいました。「詩舞」などの後ろステップ対応への耐性が強まり、さらにレンジロックによる対策も困難です(※)。ゆえに私どもは「浦波嵐」の更新で解決を試みました。

         

        ※ 間合2へ移動させないようにロックすることは、期間を限れば十分に現実的です。しかし間合4はさすがに無理があるのです。

         

         しかし裏にある話はより幅広いものです。まず第一に「足捌き」と同じ解決策は取れません。「足捌き」は移動カードとして新規プレイヤーが触れる象徴でしたが、新幕では「歩法」がいます。しかし「月影落」はユリナというキャラクターの象徴であり、同時にユリナを宿して遊ぶゲーム体験の象徴(のひとつ)でもあるのです。ゆえに本作をキャラクターゲームとして見るならば別のカードにしたり、一定水準以下のカードにしてはいけません。

         

         加えて問題の発生そのものの回避も困難でした。「第二幕」のユリナがキャラクターとして必要である時点で、「月影落」もその象徴として必要になります。ならば適正距離を3-4にしたのが誤りかと言えばそれも難しく、そうしなければ少なくともライラはこの世に生まれすらしなかったでしょう。

         

         私は「浦波嵐」の更新でひとまず納得しています。しかしキャラクターゲームとして魅力を出したいという欲求を仮にすべて捨てて考えた時、「月影落」のような大技は適正距離1-2のメガミが持つべきだったという考えを否定することはできません(※)。

         

        ※ フォローしておきますと今の形がベストかどうか悩ましいだけであり、今の「月影落」は十分に魅力的で楽しいカードとして気に入っています。

         

         

         

        第二幕

         

         「月影落」は初期からずっとありましたが、他の3枚はそうではありませんでした。特に「浦波嵐」と「浮舟宿」の枠はなかなか決まらず、様々な効果が試され続けています。

         

         そこまでの「浦波または浮舟枠」で印象的だったカードをひとつ挙げましょう。次のようなものです。

         

        高速前進 消費2 行動

        間合→ダスト:1〜3

         

         前篇のように近距離を定義したならば、切札における前進カードを考えるのは自然なことです。しかしその試みは失敗でした。前進や「足捌き」と交えながら行えば一気に間合1-2に入れ、オーラの上限により辛うじて制御されていた序盤のやり取りを再び無意味にしてしまったのです。

         

         問題は消費が小さいために序盤で使いやすすぎた点にありました。後に消費を重くして試してもいましたが、どうやら魅力的ではなかったようで取り除かれます。実際消費が3や4となると、今度は序盤以外では使いにくすぎるでしょう。この問題は後に再び検討され、「大重力アトラクト」で正しく実装されました。

         

         「浦波嵐」が最終的に決まったのはベータ版の直前でした(※)。長期間にわたってユリナとヒミカには対応カードがありませんでした。しかしユリナは主人公です。その使用を通してなるべく多彩な体験に触れられるべきでしょう。他方で対応が頻発すると複雑さが少し上がり、望ましい水準を越えてしまいます。

         

         そこで対応を切札に1枚だけ用意しました。そうすればユリナだけの範囲では対応はゲームで1度だけの出来事となり、塩梅が制御されるのです。効果そのものは私の美的感覚に基づいて作成され、試してみたらプレイ感もよかったためそのまま採用されました。指針の決定後は一度も変更されていません。

         

        ※ 第一幕の発売は2016年の5月でしたが、その前のゲームマーケット2015秋に50部だけベータ版が販売されました。

         

        新幕

         

         第二幕の浦波嵐は体験として魅力的で、強さも強力ながら容認される水準でした。そしてオーラへのダメージとオーラへのダメージの軽減量が揃っている点は美的感覚から見ても正しく、同時にカードの認知も簡単にしていました。ゆえに新幕への移行においても強化も弱体化も不要と判断し、そのまま印刷されました。

         

         しかし結果として「浦波嵐」はシーズン4から5での更新で調整されました。ライフへのダメージが2以上の攻撃が増えたため、「浦波嵐」が攻撃面でも防御面でも想像を少し超えていたのは確かです。しかし「月影落」でお話しした通り動機はユリナの万能性にあり、その軽減のために「浦波嵐」から「月影落」を撃つという挙動を抑止したのが本質的な理由です。

         

         終端という便利な発明と、『基本セット』の再版という出来事が重なったのは本当に幸運でした。現在の「浦波嵐」の塩梅は適正そのものであり、とても気に入っています。

         

         

         

        第二幕

         

         「浮舟宿」も「浦波嵐」と同じく指針のなかなか決まらない1枚でした。こちらはベータ版を出した時点でも定まっておらず、当時は次のような効果でした。

         

        浮舟宿 消費4 行動

        任意の付与札を1枚選ぶ。その上の桜花結晶を3つまであなたのオーラに移す。

         

         検討されていたユリナの得意分野にはオーラの回復もありました。桜花結晶の幅広く緻密な操作はできるべきではないとしながらも、大規模な回復を切札から一度だけ行ってもよいだろうと考えられていたのです。

         

         それに加えて付与札の破壊も検討されていました。主人公は王道を行くべきであり、合わせてデザインが進められていたシンラこそがユリナにとっての最大の敵(当時のストーリー的な想像においては)にして邪道の頂点であったため、その象徴である付与札を破壊するのはユリナらしいのではないかと考えたのです。

         

         ベータ版の1枚はそれらを組み合わせたものです。しかし最終的にユリナが付与札の破壊まで持ってしまうとできることが広がり過ぎ、同時に「圧気」との相互作用も問題視されました。ゆえに単純なオーラの回復に戻り「ダスト→自オーラ:5」という効果になります。

         

         そこから第二幕で「ダスト→相オーラ:5」が加えられたのは「虚魚」の影響です。オボロ特集でお話しした通り、「虚魚」の持つ「矢印を逆にする」効果に当時の私は魅入られてしまっていました。そこでこの1枚にも逆にして意味のある矢印が加えられたのです。一応、この矢印についてはユリナ/オボロで活用されたため失敗とは言い切れません。しかし普通の構築においてこのカードを少し使いづらくしたのも確かで、評価が難しいところです。

         

        新幕

         

         新幕では「虚魚」は別の効果になりました。それゆえに第二幕での不満を直すためにも「ダスト→自オーラ:5」だけのカードとなります。

         

         そのうえでもう一工夫を加えました。中篇でお話しした通り第二幕では決死への注目が少し小さかったため、改めて決死のデザイン空間を探索しました。そこで原初札で決死を条件とした再起を用いた点に気づき、それを追加したのです。

         

         

         

        第二幕

         

         「月影落」以外の3枚は中々固まりませんでしたが、「天音揺波の底力」はその中では一番早く決まりました。タイミングは決死が生まれた瞬間です。前篇の通り決死から主人公らしさを見出していた私が、決死でなければ使用できないという切札にたどり着くのは不思議ではないでしょう。「月影落」が必殺技ならば、「底力」は超必殺技なのです。

         

         そして「底力」の話には先があります。カードそのものはこのまま変わりませんでした。しかしそこから設定の掘り下げも行われたのです。

         

         私は幼少の頃(青少年にありがちなご病気を患う頃です)にはギリシャ神話を好んでおり、その中で物語の類型として神々と英雄の物語を見出していました。ゆえに本作もまたプレイヤー自身が英雄となり、神々を宿して戦うのですからその類型に属すると感じ取ったのです。本作を作るにあたり日本神話も調べ、その中にも神々と英雄の物語を見いだせたため、それは確信に変わりました。

         

         ゆえに本作から最初の物語を見出すならば英雄が必要だと確信しました。しかしゲームの設定上、6柱のキャラクターは全員メガミでなくてはなりません。そうなれば答えは簡単です。主人公を元は人間だったという設定として、英雄からメガミになったとすればよいのです(※)。こうして武神ユリナは、もとは天音揺波だったと定められました。

         

        ※ この時点では小説『桜降る代の神語り』は構想すらありませんでした。しかしこの時点で定めた設定があったからこそ、小説の作成がスムーズになったのは間違いありません。

         

         もう少しだけ話は続きます。本作がノベルゲーム――いや、そこまで言わなくとも電子ゲームであればこの設定だけでも十分かもしれません。しかし本作はボードゲームです。ボードゲームにおいて情報の伝達は強く制限されています。ルールブックの隅に設定を書くことはできますがそれでは不十分です。プレイヤーにゲーム内での体験を通じて設定を実感させなければ、ボードゲームでキャラクターゲームを実現することはできないと私は考えています(※)。

         

        ※ 過去に『終わった世界と紺碧の追憶』というゲームをデザインしている中でこの考えに至り、そちらでも工夫を行いました。

         

         そして今回はカード名において手を加えました。カード名に人間時代の名前を加えて人間だった頃があるという点を伝え、加えてその頃のエピソードを感じさせるような言葉を添えたのです。加えて言葉を探す際に、「天音揺波の」が3−4音節であることにも気づきました。そこで続く言葉を5音にすれば都々逸の下七と座五になり、和風で響きもよくなります。

         

         こうして本作の物語は掘り下げられ、物語がこのカード自身をも魅力的にしたのです。

         

        新幕

         

         いくつかの理由から1-4になりました。説明しましょう。

         

         第一に「底力」もまた振りぬく動作なので間合4を含むべきです。第二に最大ライフが10となったため、決死の達成が少しだけ難しくなり、このカードを使うタイミングがより制約されました。第三に離脱が追加され、間合4まで逃れるのがやや簡単になりました。これらを合わせると、間合4を入れない理由はないでしょう。

         

         

         

         原初札は基本的には「メガミに挑戦!」で使用されるものです(メガミと挑戦者で対戦し、メガミ側は原初札を用いる代わりに1柱しか使えず、挑戦者は相手のメガミを見たうえで宿す2柱を選ぶ)。そのため、そのメガミ単独での戦いを実現できるようにデザインされます。特に通常札は、その戦いの円滑化が目的となります。

         

         ユリナは「間合を合わせて攻撃する」ので、通常札の範囲では王道を外れるべきではありません。加えて第二幕のユリナは、さすがに単独では攻撃カードが少しだけ不足していました。

         

         加えて「ユリナに挑戦!」は第二幕における「メガミに挑戦!」シリーズの最後に位置していました。それゆえに最後らしい1枚が必要です。私はそのためのヒントを『第参拡張:陰陽事変』から見出しました。ウツロ特集ホノカ特集にある通り、そこには収束の結末と発散の結末があります。

         

         ならば通常札は収束の結末として、原点回帰でもって納得させるべきでしょう。こうしてバニラの原初札が生まれたのです。

         

         

         

         原初札の切札も同様のコンセプトで作られますが、こちらは「刺激的で特殊な舞台を作る」ことを意識してデザインされます。そして「斬華一閃」が収束ならば、切札は発散の結末として、グランドフィナーレを感じさせるものでなくてはなりません。それでいて主人公らしさもなくてはならないのです。

         

         私がイメージの起点としたのはある漫画でした。最終話において主人公は最後の敵と対峙します。敵は圧倒的で、成長した主人公であったも勝利は難しいと感じられるものでした。しかし主人公は舞台を去った仲間たちや倒した敵たちすべての力をその身に宿し、彼ら彼女らの最強の技を次々と用いることで最後の敵を打ち倒したのです。

         

         このイメージを翻訳すると、それは全ての切札となりえる切札以外にはありえませんでした。そしてこれははっきりと要件を満たしていたのです。その上で1回限りだと少し弱く、華々しさが足りず、さらに限られたカードとしてしか使われないと感じたため決死による再起も追加し、完成となりました。

         

         

         これにてユリナ特集も閉幕となります。長らくお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。次回の記事は明後日、イベント自粛期間における試みとしてのオンライン大会についてお伝えいたします。

         

         その後は再びこのシリーズはお休みとなります。しかしご安心ください。その時間で代わりに「#自宅で楽しむ桜降る代」シリーズの第二弾と第三弾の作成を進めてまいります。ご期待くださいませ!

         

         そして第一弾「私の宿す二柱」は昨日に公開されております。私どもの技術不足ゆえに動作が少し不安定で申し訳ございませんが、お楽しみいただければ嬉しい限りです。

        王道覇道これぞ決闘(中篇)

        2020.04.27 Monday

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           こんにちは、BakaFireです。今回の記事はユリナ特集の中篇です。前篇をまだお読みでない方は、こちらから読まれることをお勧めします。

           

           このシリーズは特定のメガミに注目して、本作のデザインを語るというものです。今回は第三シリーズ第3回にして累計第12回となります。

           

           前篇ではメガミ・ユリナに関連する歴史を通し、本作全体のデザインや彼女の特性が生まれるまでの話をしました。中篇では第一幕、第二幕、そして新幕における変化をお話しします。その上で個々のカードについて第二幕、新幕両方を踏まえてお話しいたしましょう。全てのカードについて書くとあまりに長くなってしまうため、今回はN1からN3までの3枚を扱います。

           

           それでは、さっそくはじめましょう!

           

           

          第一幕から第二幕、そして近距離問題の歴史

           

           前篇で見てきた通り、第二幕までのユリナは近距離の象徴でした。同時に第二幕までの近距離は大きな問題を抱えており、ユリナの歴史は問題と隣り合わせにあったとも言えます。彼女の昔話をするならば、この問題に触れるほかありません。

           

           近距離問題とは何なのでしょうか? 本作において基本動作の前進は、意図的に後退より強く作られています。それは前篇でもお話ししたように、間合の変化をゲームの推移として活用するためです。しかしその塩梅には誤りがありました。そして結果として近距離の強力さをカードパワーの範囲で調整しきれなくなってしまっていたのです。

           

           まずは2016年5月。本作の発売まで遡り、第一幕の時代を振り返りましょう。

           

           第一幕の発売直後から近距離問題は姿を覗かせ始めました。分かりやすい影響としてユリナとユキヒは強く、オボロは環境から締め出されていました(※)。

           

          ※ より正確にはヒミカは間合10時点での過剰な火力で近距離に対抗し、トコヨとシンラはユリナ、ヒミカ双方との相互作用とサポート性能で活躍できていました。ゆえにユリナ/ユキヒ一強ではありません。ただ、簡単のためにここでは近距離問題に絞って話を進めます。

           

           当時は達人の間合がありませんでした。想像してみましょう。今の本作において間合が2に到着し、そこから離脱や後退のせめぎ合いをしながら攻撃し合う展開は良くみられます。その間合が0となれば、間合2(「影菱」)や間合3-4(「鋼糸」)が全く働かないのは当然ではないでしょうか。

           

           ユリナは間合1で戦え、さらに間合2で法外な火力を振り回せたため強力でした。その後の第二幕への移行期間においてユリナの火力が調整されましたが、今度はユキヒが前進を繰り返すだけで勝てるようになってしまいました。その際にトイレでテンションを高めた不審者により達人の間合が制定されたのはサイネ特集でお話しした通りです。この辺りの詳細を知りたい場合はサイネ特集と、第二幕への移行記事をお読みいただくとよいでしょう。

           

           

          第二幕から新幕、残された近距離問題

           

           時は流れ2016年11月。第二幕の始まりです。

           

           達人の間合により近距離問題は緩和されました。事実として2017年7月、当時の「足捌き」(現在では「風走り」と同じ効果と考えてください)に間合3以上という制約が加えられた時点で第二幕そのもののゲームバランスはひとまずの解決に至っています。その後には決定版における調整もあって第二幕は一定水準のゲームバランスを獲得し、新幕とは異なるプレイ感と楽しさを持つひとつのゲームとして完成しました。

           

           それでは近距離問題は解決したのでしょうか。いいえ、解決は不十分でした。第二幕には未来への問題が存在し、それゆえに完結させなければならなかったのです。当時の全容は新幕へ移行する際の記事をお読みいただくのがよいでしょう。ここではその記事から近距離問題まわりだけを扱います。

           

           第二幕では近距離のメガミとして、間合1-2を得意とするユリナと、間合0を得意とする(傘を開いた)ユキヒがいました(※)。そして彼女らの組み合わせ、即ちユリナ/ユキヒは許容できるバランスに収まっていました。しかしそこに新たに3柱目のメガミを加えるとなると話は別です。彼女に鮮烈な楽しさを与えながらユリナ、ユキヒ双方との組み合わせを制御するのはあまりに困難だと、当時の私どもは結論付けました。

           

          ※ やや特殊な形でハガネも存在していたとも言えます。

           

           すなわち、前進と後退の差に由来する近距離の強みは依然としてカードのデザインを強く縛っており、カードパワーによる調整を困難にしていたのです。そこで私どもは第二幕をひとつの作品として完結させ、新幕への移行に際して離脱を追加したのです。

           

           

          新幕、そして現在へ

           

           そして2018年5月に新幕が誕生し、現在に至ります。近距離問題はどうなったのでしょうか。

           

           私は解決したと考えています。なぜなら近距離、中距離、遠距離それぞれのメガミを、個性を保ったままでカードパワーの範囲で調整できるようになったからです。オリジン版に絞った話としてユキヒ、ハガネ、ライラ、ミズキの4柱はいずれも間合0、1、2あたりでの戦いに強みがあり、近距離のメガミと言えます。そして彼女らはほぼ適切(※)なバランスと個性的な体験を両立できています。

           

          ※ ここで言う適切は調整を行わないという意味ではありません。しかし仮に彼女らに行うとすればそれは上方修正になるでしょう。上方修正を行う可能性がどの程度高いかは4柱それぞれ異なっており、ここで言及するつもりはありません。何より大事なのは、上方修正を行うとしても近距離問題を理由に否決されるとは思えない点です。

           

           こうして近距離の象徴として生まれ、それゆえにユリナ(とユキヒ)と共に語られてきた近距離問題は解決しました。本作の根幹に根付いた難点であるため、根絶されたと断定するのは困難です。しかし状況が大いに改善したのは間違いありません。今は解決として、この成果を共に喜べれば嬉しい限りです。

           

           

          ユリナにとっての新幕

           

           あとはユリナ個人の話をしましょう。新幕への移行とともにユリナには大きな変更が行われました。得意な間合が1-2から3-4へと変更されたのです。

           

           その理由は2つありました。こちらも新幕への移行記事を参照しましょう。第一には近距離問題の一種としてのユリナ問題です。ユリナが高い火力を持つがゆえに近距離に問題が生じているという形で当時は近距離問題を捉えていました。第二には武器のイメージにおける問題です。刀は和風の決闘においてはそれなりには長物であり、それを至近距離に近い1-2に置いていたためにより近いイメージの武器が実装できなくなっていました。

           

           新幕への移行においてはもうひとつ大きな試みとして、各メガミの理念も振り返られました。ですがユリナについてはさほど語ることはありません。前篇でお話しした通り決死は主人公気分という理念と噛み合っており、ユリナの構成要素はほぼ全て肯定される形で実装されたからです。

           

           長くなってしまいましたが歴史の話はここまで。あとはカードについてお話ししましょう。

           

           

           

          第二幕

           

           開発段階において何の能力もない、いわゆるバニラの攻撃は1枚は存在し続けていました。しかしそれを「斬」の原型とすべきか「一閃」の原型とすべきかは難しいところです。前篇の通り1-3の3/1から始まり、1-2の3/2、2のみの3/2などを推移していきました。

           

           「斬」と「一閃」が分化したのは共通カードがなくなり、移動枠カードが加わったタイミングです。その時点でユリナはその基本性ゆえに2枚のバニラ攻撃が与えられ、カード名も「斬」と「一閃」になりました。「斬」は最初は1-3、3/1でしたが途中で1-2となり、あとは最後までそのままでした。

           

           近距離攻撃の基準として適切な1枚と今も捉えています。第二幕では特に強い1枚として活躍し、新幕では標準的な1枚として「獣爪」に姿を変えて活躍しています。

           

          新幕

           

           ユリナが得意とする間合が3-4になると定められた時点で、このカードも当然ながら3-4、3/1となりました。追加で強化する必要はないと判断しました。

           

           これはつまり第二幕サイネの「薙斬り」ですが、「薙斬り」は十分に強く、その上で離脱が追加されているためいくらか強力になっているためです。

           

           

           

          第二幕

           

           「斬」でほとんど話は終わっています。「斬」と「一閃」が分化した時点で「一閃」は2のみの3/2であり、そのまま変更されませんでした。

           

           そしてユリナが過剰な攻撃力を持っている要因として第一幕で認識され、2/2に調整されました。

           

          新幕

           

           得意な間合が3-4となり、併せて「一閃」の間合は3となりました。しかし「斬」と違って「一閃」は強化する余地があり、加えて新幕でライフが10に増加するために、どこかの攻撃を強化する必要性も生まれていました。ですが単に3/2にするのはさすがに危険です。

           

           こうなれば決死を条件として3/2になるという結論は自然なものでしょう。

           

           加えてこれは第二幕の小さな不満点も解消していました。第二幕では「遠当て」「気炎万丈」「天音揺波の底力」のいずれも使いやすいカードではなく、決死は理想的には働いていませんでした。新幕でライフが10になって決死を達成する難易度もいくらか上がって点も踏まえ、より決死に注目するようなゲームにしたかったのです。

           

           今の「一閃」は課題をすべて達成し、バランスも絶妙で、不慣れなプレイヤーも理解しやすい1枚であり、とても気に入っています。

           

           

           

           せっかく第一幕の話をこれだけしたのですから、この愚かな1枚の話もしましょう。見て分かる通り、新幕の基準から見ても疑惑を感じるカードです。

           

           このカードが生まれたのはユリナとヒミカに見直しが行われ、特性が与えられたタイミングです。彼女らは『間合を合わせて攻撃する』という本質の体現ですので攻撃カードに注目しています。ならば決死で強化される攻撃が与えられるのは当然でしょう。

           

           初期案でこの形そのままであり、そして愚かにもそのまま印刷されました(※)。

           

          ※ 一応フォローしておくと、本作のルールそのものが斬新であるゆえに、当時は近距離問題そのものですらも明白な話ではありませんでした。

           

           当然ながらユリナが過剰な攻撃力を持っている要因として第一幕で認識され、第二幕では「遠当て」に変更されます。

           

           

           

           このカードは意図的に弱めにデザインされました。結果として基本的には採用されませんでしたが、一部のマッチアップに限っては重要視され、面白い働きをしたと言えます。

           

           これが生まれた歴史の裏には、第二幕のダメージ理念がありました。次のようなものです。

           

           「1柱のメガミだけで」「5以下の共通の適正距離を持ち」「切札でも《全力》でもない攻撃の組み合わせで」「特殊な条件を満たすことなく」オーラへの合計ダメージが5を超えてはならない。

           

           この規則は第二幕の範囲では素晴らしい働きをしており、大成功だったと捉えています(※)。

           

          ※ 他方でゲーム全体を本質的には地味にしており、同時にカードのデザイン空間を制約していたため、新幕では取り除かれました。

           

           規則は未来を守るものでもありましたが、当時の本質はユリナへの直接的批判でした。事実「斬」と「一閃」で間合2でのオーラへのダメージ合計はすでに5であり、ユリナは規則を守るために改編が求められていました。他方でユリナの特性やコンセプトを鑑みると、決死を持った攻撃がこの枠には1枚必要です。

           

           理念を守るためには何かを曲げなくてはなりません。そこで私どもは「共通の適正距離を持ち」という文言を用いて、異なる間合での攻撃を追加することにしたのです。

           

           これはメガミの得意な間合からずれた間合での攻撃をカードプールに入れるという点において、初めての試みだったと言えるでしょう。そして「遠当て」の成功からその意義は認知され、現在のデザインにも活かされています。

           

           

           

           そして新幕での1枚です。この枠においては没案をお見せするべきでしょう。どこかでこの名前を見たことのある方もいらっしゃるでしょうから。

           

          大振り 攻撃 2-4 3/2

          【常時】この《攻撃》が対応されたならば、この《攻撃》を打ち消す。

           

           新幕のバランス調整におけるどこかのタイミングで何柱かのダメージが過剰であると判断され、見直しが行われました。「大振り」はその際に取り除かれています。その上で「大振り」が問題視されたのはダメージだけではありませんでした。極端な相性に関する問題です。

           

           このカードは対応の弱いメガミに対して制圧的すぎました。加えてそれらのメガミに使う前提として調整すると幅が狭く、魅力的な仕上がりになるとも思えなかったのです。このカードは後に「旋回刃」となり、正しい姿で結実しました。

           

           「大振り」が没になり、改めてユリナのN3を考える必要が生じました。「遠当て」は成功でしたが、元来の得意な間合が3-4となると微妙です。さすがに5-6や5-7は遠く、その上で火力まで弱めに設定すると貧弱すぎます。そこで私どもはむしろ1-2で使える攻撃を得意な間合からずれた攻撃として導入することにしました。

           

           これはユリナに求められているゲーム体験を鑑みても正しいものでした。ユリナは「はじまりの決闘」を終えたプレイヤーが最初に触れるメガミとして設計されています。分かりやすく、使いやすいだけでは不十分で、加えて基礎を共に学べるべきなのです。ユリナは間合を合わせて攻撃する点に注目しているため、その学びは様々な攻撃を通して行われるのが理想でしょう。

           

           そう考えれば学ぶべきものとして、攻撃の緩急が持ち上がるのは当然です。攻め合いの中では比較的安全な間合(多くの場合は2以下)に移動し、攻撃を弱めて力を貯めるターンが生まれます。その際に間合2で自然に使えて、かつ火力は控えめな1枚があれば、不慣れなプレイヤーを自然にその立ち回りへと誘導できるのです。

           

           こうして『しゃがみ』を学ぶための1枚として「柄打ち」は生まれました。目的として見ても、強さとして見ても、今の「柄打ち」には満足しています。

           

           

           本日はここまでとなります。来週はユリナ特集の後篇にて残るN4からS4と原初札の話を行います。ご期待いただければ幸いです。

          王道覇道これぞ決闘(前篇)

          2020.04.19 Sunday

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             こんにちは、BakaFireです。本日の記事は実に久方ぶりのメガミ特集でございます。私自身のスケジュールゆえに相当の期間で書けずにいて申し訳ない限りではございますが、どうにか本日から3週間にわたって連載していければと思います。

             

             このシリーズで取り扱うメガミはTwitterでのアンケートにて決められ、現在は第3シーズンの途中です。結果は次のようなものでした。

             

             

             前回までで1位のホノカ特集、2位のウツロ特集と終えましたので、今回はユリナ特集となります。これまで行ってきたトコヨ特集オボロ特集サイネ特集ヒミカ特集ハガネ特集チカゲ特集クルル特集シンラ特集サリヤ特集ホノカ特集ウツロ特集を踏まえた内容でもあります。お時間がありましたら、これらのシリーズもご一読いただけると嬉しいです。

             

             それでは、さっそくはじめましょう!

             

             

             

            今回のやり方はいかに?

             

             どのようにメガミを語るのかはこれまでと同様です。

            • 前篇ではメガミの歴史を語り、中篇と後篇では個々のカードを語る。
            • 中篇では新幕への変化も語る。
            • 第一幕での六柱を語る際は、本作そのもののゲームデザインと紐付けて語る。

             今回はまさしく第一幕の六柱にあたるため、本作そのものの話を行うべきでしょう。

             

             

            桜が降るより前の話、その5

             

             はるか太古のお話はこれまで4つの特集で取り上げてきました。しかし久方ぶりの連載でもあり、ある意味で本当に最初のメガミを話すべき時でもありますので、改めてお話ししましょう。

             

             デザイン初期の本作はそもそも和風の世界観ではありませんでした。コロシアムでラノベ風西洋ファンタジーな決闘を行うゲームだったのです。その上で32個(第二幕までは)の特別なトークンを用いることは決まっており、そのトークンを桜の花びらにするというアイデアと共に世界は和風に染まったのです。

             

             そんな最初のバージョンでは6人のキャラクター参戦していました。これまでの特集で出そろっています。2人目「銃」、3人目「盾」、4人目「スカーフ」、5人目「書」、6人目「扇」。彼ら彼女らがどうなったかは他の特集をお読みいただくこととして、ここでお話しするべきはその中でも本当の意味で最初のキャラクターです。

             

             1人目「大剣」。まずは彼女がどんなキャラクターだったのかを振り返りましょう。

             

             

            すべての はじまり

             

             本作の根幹は「間合を合わせて攻撃するゲーム」です。この根幹は最初から変わっていません。それゆえに、本当の最初には2枚が生まれました(用語などは現代語訳しています)。

             

            間合い 行動

            間合⇔自オーラ:1〜2

             

            斬撃 攻撃

            適正距離1-3、3/1

             

             「間合い」はキャラクターに関わらず使用できる共通カードです。本作の初期段階においては共通カードが5種類(段階によっては4種類)存在していました。後にメガミごとの個性を強調するために共通カードは撤廃され、移動枠と呼ばれるカードに置き換わることになります。

             

             「間合を合わせる」行為はあらゆるキャラクターが行います。ゆえに本作初となるそのためのカードは共通カードとしてデザインされました。

             

             この1枚にはいくつかの歴史が隠れています。本当に最初は基本動作が存在しなかった(クソゲー!)ため、移動用のカードは汎用性が高くなるように設計されていました。オーラが5になったらどうするのか? いえいえ、同じく最初期にはオーラの上限がなかったのです。

             

             他方で「攻撃する」部分もあらゆるキャラクターが行いますが、その部分の内容を変えることでキャラクターごとの個性を出そうとしていました。その上で本当に最初に作られたのは最も王道かつ主人公らしい、剣を用いた近接攻撃としての1-3、3/1だったのです。

             

             

            近距離VS遠距離、その初陣

             

             近距離の象徴である「大剣」を作ったら次はどうなるのか。もちろん遠距離の象徴としての「銃」が対比としてデザインされていきました。ある意味でこの2キャラクターのデザインは同時に行われたとも言えます。2人は本作で最もエッセンシャルであるゆえに特別な存在でした。

             

             本作そのものが生まれるまでのプレイテストは近距離と遠距離の対立から始まり、そして第一幕は2人の戦いを通して生まれていったといっても過言ではないでしょう。

             

             そんな最初の戦いはどう終わったのか。遠距離の勝利でした。「銃」のカードプールがちょっとおかしかったのも確かですが、遠距離のほうがアグロ(速攻)戦術としてのコンセプトがしっかりしていたのも理由かもしれません。これらの話題は詳しくはヒミカ特集でお話ししていますので、よければそちらもご覧ください。

             

             

            近距離いかにあるべし?

             

             敗戦を踏まえ、改めて近距離とは何であるのかに立ち返りました。遠距離との対比でもある以上、近距離を知るには遠距離を知らなければなりません。ヒミカ特集で書いた遠距離は以下のようなものでした。

             

            • 遠距離は先に攻撃できる。ゆえにアグロ(速攻)戦術のようなものである。
            • 速攻なので相手の間合に入る前に相手を半殺しにできる。
            • 完全に倒せてしまうとゲームにならないので、勝利まではいかないようにする。
            • 相手の間合に入られた後のフィニッシャーが別に存在する。

             

             それゆえに私は近距離を次のようにとらえました。

             

            • 近距離は中盤以降の攻撃こそが本番である。ゆえにミッドレンジ(中速)戦術のようなものである。
            • 速攻にはリードされるものなので、自分の間合に至った後は逆転できるだけの攻撃力を持つ。
            • 間合を急ぎ近づけるためのサポートカードがある。それはある種のランプ(リソース加速)戦術とも言える。

             

             ヒミカ特集での説明を繰り返しましょう。この理念の本質は、間合が近づいていくことをゲームの推移過程として捉えている点にあります。ゲームには時間経過に伴う変化が欠かせません。同じことをただ繰り返すゲームでは、仮に最初の数ターンが楽しくともいずれはつまらなくなります。多くのトレーディングカードゲームはコストの概念を導入し、ターンの経過に伴い利用できる資源が増えるという形でこれを実現しています。資源が増えればよりコストの大きいカードを使えるようになるため、ゲームが変化するのです。

             

             その点において、本作はやや独特なやり方を使っています。変化を与えている一つ目はコストと資源に近い関係にあるフレア。そしてもう一つが、今本題にしている間合です。本作の間合は最大である10から始まり、そして次第に減少していくようにデザインされています(そのために、基本動作の前進は後退より強くしています)。そして興味深いことに、間合に置かれていた桜花結晶という資源がプレイヤーの手元へと移っていくため、資源という意味での変化ももたらされているのです。

             

             つまり近距離が得意であるとはつまり、ゲームが変化するまで耐えきってから本領を発揮し、そこから逆転できることだと考えました。上述の通り本作における変化は2通りありますので、それぞれのやり方でカードが設計されます。

             

             間合の変化に目を向ける方向としては、近距離での攻撃を遠距離よりもパワフルにしました。そしてフレアの変化に目を向ける方向としては、高い消費と高いダメージを兼ね備えた大技を「大剣」に意図的に与えたのです。

             

             その結果として生まれた「大剣」のカードを見ていきましょう。

             

            斬撃 攻撃

            1-2、3/2

             

             間合が狭くなり、ダメージが増えたことでゲームの変化後に逆転するコンセプトが強くなりました。

             

            迫撃 攻撃

            1-4、2/1

            【攻撃後】間合→ダスト:1

             

             より広い間合で使用でき、ゲームの変化を加速させるカードも導入されました。当時の私はこれをランプ戦略の一種と捉えていました。

             

            必殺剣 消費4 攻撃

            1-2、7/3

             

             これこそが「月影落」の源流です。オーラへのダメージがなんかおかしいですが、それは次にお話しする内容に由来しています。

             

             

            恐怖! ゆっくりと歩いてくる侍

             

             近距離を再定義した後の戦いは(遠距離側の問題を取り除いたこともあり)近距離有利に進みました。そしてそんな間に世界には桜が降り、舞台は和風に染まりました。銃は銃であり続けましたが「大剣」はここで「刀」へと変わり、彼女にもユリナという名前が与えられます。

             

             そしてプレイテストも積み重ねられます。そんなある日、ひとつの問題が浮き彫りになっていきました。プレイテスターの中に一人、クレイジーなやつがいたのです。

             

             彼が宿していたのはユリナ(と誰かの組み合わせですが詳細は忘れました)。ゲームが開始し彼は1前進してエンド。対してこちらも1前進でエンド。その次のターンにおける彼の振る舞いはイカれていました。カードを2枚引くやいなや内容を特に見ずに裏向きで手札ごとテーブルに叩きつけ、4前進と言い放ったのです。

             

             おお神よ。楽しそうな効果を持つ様々なカードがあったならば、人間たるものカードを使ってみたいと思わないのでしょうか。彼にとってはそうではなかったようです。それどころか何を引いたかすら気にしていないようです。なんと乱暴なプレイ。こんなことでいいのでしょうか?

             

             どうやらよかったようです。連戦連勝したのは彼でした。

             

             改めて振り返るならば、彼はゲームが上手かったのでしょう。話は簡単です。他のどのメガミがカードを使って戦うよりも、手札を伏せて前進を繰り返す方が強かったのです。

             

             

             カード1枚1枚へ込めた「このように楽しませたい」という想いを吐き捨てて冷徹に捉えると、実に理にかなった戦略です。なにせこの時点ではオーラの上限がありませんでした。現在における序盤のやり取りが有意義で楽しいのはオーラの上限が5であるためです。第一に移動量が制限されます。第二にオーラが高々5では防げる攻撃に限度があり、相手の間合に踏み込むリスクが高まります。ゆえに自分や相手がどこまでなら移動しやすいのかを推し測り、その上でなるべく攻撃されずに攻撃するという目的が機能するのです。

             

             ではオーラの上限がないとどうなるか。明白でしょう。移動量は自由なので、得意な間合が近距離であるユリナはほぼ常に最大限に移動することが正解になります。相手の間合に踏み込んだとしてもオーラが8くらいあるため問題ありません。ついでに補足すると当時は達人の間合も離脱もありませんでしたので、いともたやすく間合は0になり、復帰も困難でした。

             

             こうして、最初の近距離問題(※)とも呼べる問題が明らかになり、解決のためにオーラに上限が与えられました。最初は6から試され、何度かのテストの末に5に落ち着きます。この問題はこれにてひとまずは落ち着き、近距離と遠距離の戦いはやや近距離優位というくらいで推移していきました。

             

            ※ 今となって見直すとこの一事はより多くの真実を伝えていたように思いますが、当時の私では全てを捉えることはできませんでした。

             

             

            主人公は決死にて目覚める

             

             さらに時は流れます。本作のメガミたちにはそれぞれ個性的な特性が与えられていますが、当時のユリナとヒミカには特性がありませんでした。近距離と遠距離の象徴であることそのものが個性だと捉えられていたためです。しかしメガミたちのキャラクター性が掘り下げられる中で、彼女らにも特性が必要だと方針が切り替わります。

             

             ユリナの特性は思いのほか簡単に決まりました。ユリナに求められる要素を3つほど考え、それら全てが同じ方向を指し示していたからです。

             

             第一にユリナとヒミカは本作の根幹ゆえに基本となるメガミです。特殊なギミックは入れるべきではなく、特性がゲームプレイの指針になるくらいが望ましいと言えます。いいえ、ヒミカよりさらに基本に近いユリナとしては、プレイ中に特性を忘れても問題がないくらいにしたいところです(※)。

             

            ※ ウツロ特集で述べた通り主体性という要素もまた重要だと後に発見しますが、ここで意図的に軽視していた点については改めて振り返ると正しかったと感じています。

             

             第二に近距離の理念です。近距離はゲームに変化が与えられた後に逆転していく戦い方です。ゲームの変化は間合の減少とフレアの増加を指しており、それらの挙動と連動しているとよいでしょう。

             

             第三にユリナは主人公にあたるキャラクターです。主人公を使う以上、プレイヤーもまた自分が主人公になったような気分を味わえるべきです。この辺りの感覚は当時は漠然としていましたが、あるメガミを宿したプレイヤーがどのような体験をしたいのかという点は『第二幕』の『第壱拡張:夜天会心』以降は強く意識されてきました(※)。ユリナに限っては、無意識的にその考え方がなされていたといえるでしょう。

             

            ※ 詳しくはハガネ、チカゲ、クルル、サリヤ、ホノカ、ウツロといった該当するメガミの特集をご覧ください。

             

             こうして列挙すると、決死に至るのは自然ではないでしょうか。そして出たアイデアは現在の決死そのままであり、一度も変わりませんでした。第一に決死は序盤はまず満たせず、後半は自然に満たされやすいので意識しなくてもプレイできます。第二にフレアの増加はライフの減少と紐づいていてゲームの変化後に強くなる特性であり、逆転するという理念ともかみ合います。第三にピンチに陥り、そこから逆転するのはまさしく主人公ではないでしょうか。

             

             

             こうして強い必然性と共に主人公は立ち上がりました。そして彼女は、広大な桜降る代の可能性へと歩み始めていったのです。

             

             これにてユリナが生まれるまでの話はひと段落。次回は第一幕と第二幕におけるユリナの昔話を行い、それを踏まえて新幕でどうなったっていったのかについてお話ししましょう。ご期待くださいませ。