記事目録

2017.10.20 Friday

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    『桜降る代に決闘を』の公式サイトはこちら

     

     

    第0話:或る最果ての社にて

    序章:小さな地の小さな野望

    第一章:天音家の戦い

    第二章:ふたつの旅

     

    第36話:帰路へ

    第37話:メガミへの挑戦

     

    しばらくは週間連載です。次回は10/27(金)更新です。

     

     

    最新記事

    質疑応答の時間です

     

    過去の記事(上の記事ほど新しいです)

    決定版に向けて大調整

    これまでとこれから

    未来をつくるために(後篇)

    未来をつくるために(前篇)

    炎天は熱く熱く輝く(後篇)

    炎天は熱く熱く輝く(前篇)

    今後の展望、2017秋

    技の果てはどこまでも静か(後篇)

    技の果てはどこまでも静か(前篇)

    より楽しいイベントを目指して

    新たなメガミと怒涛の疾走

    第弐拡張やイベントの速報をお届け

    より良いゲームのための見解報告

    新たなメガミと狂気を組立

    忍の道をいざ行かん(後篇)

    忍の道をいざ行かん(前篇)

    今後の展望、2017夏

    悠久不変に舞い踊れ(後篇)

    悠久不変に舞い踊れ(前篇)

    ゲームマーケット2017春まとめ

    全国大会に向けていざ進め!

    祭札、そして様々な流れを楽しもう!

    チカゲ反省会とカード調整

    今後の展望、2017春

    新たなメガミには毒がある

    新たなメガミと世界を拡張

    第一幕の覇者たちを讃えよう!

    今後の展望、2016冬

    第二の幕開けは近い:後篇、新作発表

    第二の幕開けは近い:中篇、問題解決

    第二の幕開けは近い:前篇、問題提起

    新たなメガミをお出迎え

    今後の展望、2016秋

    楽しき代のためカード調整

    今後の展望、2016夏

     

    次回更新は11/3(金)を予定しております。

     

     

    『半歩先行く戦いを』

    第1回:前進と後退

    第2回:全力で行こう

     

    隔週連載です。第3回は10/27(金)を予定しております。

     

     

    全国大会レポート(前篇)

    全国大会レポート(後篇)

     

    第1回 第2回 第3回 第4回 第一幕最終

    第1回大乱闘 第2回大乱闘

     

    しばらくは更新予定はありません。次の大規模大会は、もちろんレポートいたしますよ!

     

     

    シーズン1 作:hounori先生

    第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回

     

    メガミの日常をまったりお届け、そんなかんじのゆるい午後。

    10月に、電源ゲーム版サイトの更新と合わせてシーズン2を開始いたします。ご期待ください。

     

    質疑応答の時間です

    2017.10.20 Friday

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       こんにちは、BakaFireです。先々週の大ニュース週間はお楽しみいただけたでしょうか。そちらではたいへん多くの情報をお伝えしましたので、それに併せて質疑応答の場を作っておきました。以下のようなツィートでした。

       

       

       そして、こちらのツィートにいくつかの質問を頂けましたので、本日はそれについて回答させて頂きます。ご質問頂いた皆様、ありがとうございました。それでは、早速はじめましょう。

       


       早速質問です!

       ゲーム外になりますが、全国にふるよにプレイヤー(大会参加者)は何人ぐらいいるんでしょうか?

       あと出来たら全国のふるよに所持者はどれくらいいるのかなぁーと、後者は無理そうだったら大丈夫ですー よろしくお願いします


       

       申し訳ないながら、私では正確な人数をお答えするのは難しいところです。

       

       私が主催している関東のイベントにご参加いただいた方は、これまでの累計ならば200から300人の間くらいかと思われます。地方のイベントについては私が管理しているわけではありませんので、正確な参加人数は把握できておりません。しかし大変うれしいことに、概ね人数は右肩上がりのようです。

       

       所持者の方については、正確な部数をここで公表すべきでないと考えます。それに加え『初版』と『第二幕』を両方手に取って頂いた方、『第二幕』を複数お持ちの方などがいらっしゃるため、正確に何人いるのかを探ることそのものも厳しそうです。

       


       これまでリリースされると発表されてきた「電源版」が「供廚暴犁鬚靴進になるということのようですが、それとは別に現行の「ふるよに機廚療展使任公式に登場する予定はあるのでしょうか?


       

       はい。『第二幕』をデジタルゲームにする予定はありません。

       

       デジタルカードゲームとして魅力的な展開を続けるには継続した拡張が不可欠であり、そのために『供焚勝法戮粒発を行うのです。逆に言うとその工夫がない限りは、多くの方々や企業のご協力を頂き、デジタルゲームとして世に出すのは難しいと言わざるを得ません。

       

       ここで誤解をしてほしくないのは、『供焚沼蝓法戮任諒儿垢魯妊献織襯押璽爐亮存修箸いΔ世韻任呂覆、ゲームそのものとしても魅力的になると私は確信している点です。つまり、デジタルゲーム化のために強要された変更ではありません。

       

       それに伴ってもう1点お伝えしておきます。私の知る限り、現在の『第二幕』については有志の方がネット対戦ツールを作成して頂いています。そちらについては「BakaFire Partyがネット対戦が可能なソフトを出したら削除していただく」としていましたが、現状でデジタルゲームになるのはあくまで『供焚勝法戮任后ゆえに、今回のデジタルゲーム化ではそちらへの削除申請は行わないことにしました。

       


      抗弁の処理について質問です。

      居合に対応して反論を使った場合、-1/0を受けるのは反論のみ、で合っていますか?


      抗弁について確認です。

      1.設置で使用した攻撃カードもカウントしますか?

      2.カウントするのは「攻撃」カードだけでいいですか?(律動弧戟は入りませんか?)3.天地反駁中は統合ルール通り、入れ替えてから-1/+0ですか?(居合の場合1/4)


      両者がシンラさんを宿して抗弁を同時に貼った場合、攻撃は-2/+0になるのでしょうか?


       

       ルールへの質問を見落としておりました。ご容赦ください。まとめて回答させて頂きます。

       

       反論のみで合っております。

       

       1はカウントされ、2はその通りで、3もその通りとなります。

       

       「抗弁」が2枚あるならば、-2/+0となります。

       


      壮語が抗弁になると納が増え森羅判証との相性が気になります


       

       「森羅判証」の価値は依然として高いままだと予測しています。そして「壮語」が前進を抑止する付与札ではなく、「森羅判証」の弾丸としての価値を中心に見られているのはカードとして望ましい形ではないと考えています。

       


      梳流しは間合い変更対応カードに弱くオボロサイネはそれを持っていない上で間合い4付近で戦うので極端に機能する例では?


       

       その通りです。そしてハガネ、チカゲも同様であり、簡単な対応手段がないうえで間合を4から大きく離せないという意味ではシンラやクルルも同様です。それに加え「梳流し」への調整がなければユリナ、ユキヒ、サリヤに対しても互角以上に戦えるとプレイテストでは判断しました。

       

       結論として、トコヨを宿せば有利を得られる相手が多いうえで、不利を被ることも少ないのです。勿論、プレイングがやや難しいという問題はありますが、そこに目をつぶれば選択肢として安定し過ぎていました。

       


      トコヨはヒミカクルルシンラあたりの苦手メガミも多く環境次第で働きはピーキーな認識ですがどうですか?


       

       こちらへの解答については、あくまで私個人の見解を話します。

       

       私としては調整前のトコヨはそれらのメガミに対して大きな不利はないと感じています。確かにこれらのメガミが相手ではトコヨのカードだけで勝てるという結果にはなりません。しかしお互いのもう1柱しだいでは、互角かそれ以上になることは十分にありえるでしょう。

       

       少なくともトコヨを宿しているというだけでこれらのメガミに対して絶望的な相性にはならず、それは調整を踏まえても変わらないと考えています。

       


      新しい修正で梳流しがかなり使い方が難しいカードになっていますが、マニュアルの「最初に遊ぶデッキ B1(トコヨ・サイネ)」の内容は変更されますか?


       

       いいえ、変更されません。

       

       これについては少し悩みましたが、ルールの挙動は難しくないので、初めて遊ぶ方でも扱えると判断しました。

       

       また、初期デッキでは「梳流し」を使いまわす動きは想定していません。「梳流し」の初期デッキでの役割は「間合4を通る際に1ダメージを稼ぐ役割」と「後半に跳ね兎と併用して1ダメージを与える役割」の2つであり、それは今の「梳流し」でも問題なくこなせると判断しました(初めて遊ぶ方は「梳流し」のケアも行わないと考えられるので、使う側の管理が十分でなくても当てる機会は存在します)。

       

       もちろん、全体的な勝率はユリナ/ヒミカ側に傾くでしょうが、ゲームの体験そのものが損なわれるとは感じません。総じて、初期デッキとしては問題なく働くと考えています。

       


      アナログゲーム版兇砲いて拡張や調整が実施された場合、デジタルゲーム版に対して同様の拡張や調整が同時期に行われる予定でしょうか?

      それとも、横断ルールではなくそれぞれ別のルールとして独立したものになりますか?


       

       今の時点で確定としてお答えすることはできません。

       

       少なくとも『供焚勝法挌売時点とデジタルゲーム版はほとんどが同一の仕様になります。しかしながら、アナログゲームとデジタルゲームでは僅かにゲームデザインを変えるべきと考えているところもあり(例えば、アナログゲームでは「任意」が向いている一方でデジタルゲームでは「強制」が向いていることは多いのです)、100%が同じとは限りません。

       

       そして、拡張や調整となると、それこそ100%の一致は難しいと考えています。しかし、大枠では一致しつづけられるようにするつもりです。例えば最近の「足捌き」「雅打ち」の修正のようなことが行われたら、それは双方で反映される見込みです。

       


      業夘朧聞澆癲峩く必要と判断されれば第二幕に対する調整は行われる」し、「当然ながら兇悗粒板イ(これらの変化に対する空間の広がりも含めて)多数行われる用意があり、調整も適宜実施される」ということでよろしいでしょうか?


       

       その通りです。

       

       調整が多いことは望ましいとは考えていません。しかし、これまで同様に強い必要性が認められれば調整は行います。頻度は落ちるでしょうが『第二幕』に対しても同様です。

       


      決定版における収録範囲(特に第一、第二拡張の有無)をお伺いできればと思います。個人的には入っている方が簡単とは思いますが、第一第二拡張が同梱、第三拡張が別売というのはそれはそれでわかりづらいのかも?

      かといって全別売としても拡張版の調整カードのみ封入という不自然なことに?


       

       決定版はあくまで基本セットであり、『第壱拡張』『第弐拡張』は同梱されていません。拡張版の調整カードのみ封入され、それについての注釈と、ハガネとクルルの訂正されたカードリストが同梱されます。

       


      デジタルゲーム版において、多数企業様が関わるモノですので独断での告知等むつかしいとは思いますが、可能であれば現在想定している収益モデル(基本無料か否か、等)がお伺いしたいです。


       

       申し訳ないながらお察しの通り、今の時点で確定としてお伝えするのは難しい質問です。

       


      今後頒布される決定版、第三拡張、設定資料および兇亡悗靴董現在時点での頒布予価等告知可能なものはありますか?


       

       決定版の価格は変わらずに3500円(税抜)となります。

       

       『第参拡張』は他の拡張と同じく1800円(税抜)で、イベント価格は1500円です。

       

       『供焚勝法戮呂泙戚つ蠅任垢、現状で把握している需要を満たすような素晴らしい頒布形態を計画しております。

       


      アナログゲーム版兇砲いて、第二幕に存在する一部お祭りルール(特に祭札関連ルール)と類似ルールが設定される予定はありますか?

      また、大発生ルール等メガミに属しないカードや、PRタロット及びPR集中力カードは兇妨澳浩がありますか?


       

       『祭札』の興犁鯣任出るかどうかというと、出したいとは考えております。しかしそれは『供焚勝法戮侶覯未出てからの話となります。

       

       大発生ルールはいまのところ『供焚勝法戮謀用しても遊べないことはないでしょうが、ベストな形になっているかはわかりません。

       

       PRタロットとPR集中力カードは『供焚勝法戮任盡澳垢靴討い泙后

       


      第二幕に対する拡張は第三拡張で終了するとのことですが、現時点において祭札で頒布されたメガミ以外の「原初札」(未作成、未公開含む)の頒布は予定されていますか?

      また、特にトコヨの原初切り札と境地のルールに関して修正等を行う予定はありませんか?


       

       全てのメガミの原初札について、少なくとも公式イベント内では必ず登場させます。すでに9月にはシンラが、10月にはサリヤが登場しています。

       

       それが『祭札2』のような形で頒布されるかというと、行いたいとは思っているものの、いくつかの克服すべき課題が残っているのが現状です。従って申し訳ないですが、今の時点では確定した予定はないと考えてください。

       

       トコヨの原初札と境地について、私としては問題はないと考えております。集中力が3では境地にならない点は仕様です。集中力2でターンを終えても集中力があふれずに獲得でき、自分のターンで無理なく集中力を1使用できるのは十分なメリットです。さらに「トコヨに挑戦!」は比較的難易度が高い「メガミに挑戦!」ですので、いくつかのカードが下方修正されたとしても十分な楽しさがあります。

       


      現在のメガミは11人ですが、胸点では12人とのことで、第三拡張では1柱のみの追加ということでしょうか?もしくは2柱追加ののち1柱が実装されないものでしょうか?


       

       重要な質問ですので、丁寧にお答えしましょう。

       

       『第参拡張』では変わらず2柱のメガミが追加されます。しかし『供焚勝法戮虜能蕕両態では『第参拡張』の2柱は存在せず、後に追加される形となります。代わりにまったく新しいメガミが1柱追加され、12柱という形になります。

       

       その理由は全ては語れません。しかし語れるものだけはお話ししておくと、『供焚勝法戮悗虜播化のために『第二幕』でのフィードバックを取り入れたいというものがあります。

       

       例えばクルルやサリヤは現状でコンセプトが明確なうえで良い仕上がりなので、『供焚勝法戮任諒儔修最も小さい2柱です。しかしそれでも『第二幕』で使用された際のフィードバックを踏まえ、いくらかの改善がなされたのです。

       

       今後追加される全く新しいメガミではそのような手法は使えません。しかし『第参拡張』の2柱は12月に発売され、そこから数か月間のフィードバックを観察する機会があります。それゆえに『供焚勝法戮任猟媛辰鮹戮蕕擦襪里砲禄淑な価値があるのです。

       

       

      大会管理システム設立と、次の大会について

       

       今回の質疑応答とは関係ありませんが、すばらしいお知らせをさせてください。本日の更新にて、大会管理システムが自動化されたのです。大会を主催頂いている方も、ご参加いただいている方も、皆様をもうお待たせすることはありません。管理画面から申請許可ボタンをワンクリックするだけで、滑らかに大会予定が更新されるのです。

       

       ええ、これまではまったくもって地獄のような日々でした。大会情報の最新化はすべて手作業なのです。そして愚か極まりないことにPC用とスマホ用の内容が異なるため、同じ更新を2回繰り返していたのです。これで絶望的な作業から解放され、これからはより魅力的な形で本作へと尽くせるようになります。もちろん、大会更新に伴う手作業でのミスもなくなり、より円滑な連絡も可能となるのです。素晴らしい!

       

       私の喜びをお分かり頂けるでしょうか。ありがとうございます。しかし申し訳ないながら、まだ万全の状態ではありません。スマートフォン版への適用と、大会の日程順の並び替えには、もう数日ほどお時間を頂く見込みです。数日間の間は移行期間ということで、ご迷惑をおかけすることをお許しください。

       

       それと折角大会関連の話題ですので、イベント関連の新ニュースもお伝えしましょう。そう、プレリリース大会です! その大会は東京では11/25(土)にイエローサブマリン秋葉原RPGショップ様にて開催されます

       

       それだけではありません。前回同様に他の地方でもプレリリースは開催されます。大阪、北海道、名古屋に加え、今回は福岡、新潟でも行われるのです。11/25(土)と26(日)がプレリリース期間となり、その間に各地方でイベントが開催されます。地方によっては2日間開かれる場所もあります。

       

       現時点で確定しているプレリリース大会はすでに大会リストに反映されております。是非とも参加をご検討くださいませ!

       

       それともうひとつ宣伝を。以前にお伝えした通り、来週末の10/29(日)には名古屋で大規模な大会が開催されます北海道でも併催イベントがございます)。豪華商品を取りそろえ、『第弐拡張』環境の総決算となる一大イベントです。定員はほとんど埋まっていますが、あと数名ほど枠がございます。この機会にあなたの実力を試してみてはいかがでしょうか。

       

       

       来週はいよいよデジタルゲーム版サイトの更新がはじまります。その準備が慌ただしいため私の記事はお休みをいただきます。デジタルゲームについての情報、そして再来週の更新をご期待くださいませ。

      『桜降る代の神語り』第37話:メガミへの挑戦

      2017.10.20 Friday

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         尋常ではない気を伴って、道端で呼び止められようものなら、次の瞬間には鍔迫り合いになっていてもおかしくない。
         けれど、天音揺波を呼び止めた童女はこれでもメガミだ。辻斬りなんかじゃあない。
         正しく相対するには、当然手段も相応のものを用意する必要があるだろう。
         そうして設けられる一席で、天音揺波はメガミという存在にどう向き合うのだろうね。

         

         


         目と鼻の先だった町を尻目に、背の高い針葉樹に覆われた小さな山を登ることしばし。陰気な山道を抜けると、幾分と開けた中腹が顔を見せる。これより先は、大地を東西に分断する山脈に繋がっており、気軽に臨めたものではない。
         無論、先導していた童女の足も止まった。

         

        「あなたはあっちね」

         

         神座桜の前で。

         

        「え……」

         

         桜の向かって左側へすたすたと歩いていく童女に、揺波は抗弁することができなかった。
         ここに至るまで、揺波が聞いた最後の言葉は『着いてきて』というもの。普通であれば不可解に過ぎて逃げ出すが道理だが、有無を言わせない童女の圧力の中で拒むことなどできようはずもない。ちろちろと、揺波の胸中に燻る炎もまた、その一助となっていた。

         

         揺波にとって神座桜とは、言うまでもなく決闘の舞台である。何者かと相対する状況下でそれを前にしたら、右手側か、左手側か、いずれかに粛々と歩を進め、相手と向き合う。それが揺波の当然である。
         しかし今、揺波の足は動かない。
         相手となるミコトが、この場に存在していないからだ。
         揺波をここへ連れてきた存在は、あくまでメガミである。

         

         と、そんな揺波の様子を見たのか、童女は緩く握り込んだ右手を横に突き出し、空に向けて開き、そして――

         

        「――!」

         

         次の瞬間には、彼女の手には大きな鉄槌が握られていた。まるで手のひらの上に極々小さなそれが乗っており、瞬く間に童女の背丈ほどの大きさに膨らんだようであった。
         左手の篭手と同じ、緑青を基調としたその大鎚。片面には、胴よりも大きな鐘のついた、奇妙なそれ。
         揺波には、その鉄槌に見覚えがあった。

         

        「その武器……もしかしてあなたは――」

         

         問いながら揺波は、粛々と童女の対面に向かって歩いていた。答えを待つまでもなく、それはまさしく最強の名を冠していた男の顕現武器であり、そして、相手がメガミということが正しければ、象徴武器ということになる。
         桜の下で振るうべき武器を桜の下で向けられた以上、揺波は位置につかざるを得なかった。

         

        「うん。あたしはハガネ。たっつー……あぁ、龍ノ宮一志に大地の力を貸してたメガミだよ」

         

         そう名乗ったハガネは、伏せがちに揺波を見やっていた。睨むというほどではないが、その瞳には暗いものがなかったかと言えば嘘になる。
         ヒミカのような殺意はない。だが、快活そうな見た目とは裏腹に、やや澱んでいる。
         そんなハガネが、相対するという意志を持って桜花決闘の舞台に導いた以上、問われるべきは一つしかない。

         

        「龍ノ宮さんのことは――」
        「あー、待って待って。言わなくていいよ」

         

         立場を明確にしておこうと口を開いた揺波を、けれどハガネは左手で制止した。

         

        「あたしはね、分からないの。たっつーが死んじゃったのはなんでか、色んな人が色んなことを言ってる。だいたいは、アマネユリナが悪い、って話だったけど……でも、あなたはたっつーのお気に入りだったってことも知ってる。だから、あたしには分からないの」
        「…………」
        「あたしはたっつーを信じたい。たっつーが信じたアマネユリナを信じたい。信じられるなら、そんなややこしい話なんてすっ飛ばして、あなたを信じられる。けど、あたしはあなたのこと、まだ知らないってことに気づいて」

         

         自分の身の丈ほどもある大鎚を、軽々片手で揺波へと向ける。

         

        「だから、あたしはあなたと決闘がしたい。決闘で、あなたのことを知りたいんだ」
        「わたしを……」
        「たっつーも、きっと……きっと、こうすると思うから」

         

         その言葉には、どろどろとした感情は含まれていなかった。眼差しもまた、純粋にただ揺波へと注がれる。
         真っ直ぐな意志に、揺波はもう必要以上に言葉を返すことはなかった。

         

        「我らがヲウカに決闘を……!」

         

         顕現させた斬華一閃の切っ先を向けることで、返答とする揺波。
         あの日について、体験してきたこと、考え続けてきたこと、知ったこと、それらをハガネに語るのは容易い。メガミに決闘で勝利するよりもずっと簡単だろう。だが、それで納得してもらうことは、勝利よりもなお遠い果てにある。
         意志を請われれば、意志をぶつけるだけ。
         その点、揺波は目の前の小さなメガミに親近感すら湧いていた。

         

        「じゃあ……行ってみようか!」

         

         その親近感も、この時この瞬間からは邪魔なものでしかない。
         己を主張するために、メガミに刃を向ける。その大事の渦中に身を置いた揺波は、静かに切っ先の向こうにハガネを見定めた。
         ――メガミへの挑戦が今、始まる。

         

         

         


         巨大な鉄槌による近接戦での圧倒的な打撃力。それは龍ノ宮戦で身に沁みていたことであり、銃によってその打撃圏内に引きずり出される戦術には苦戦を強いられた。だが何よりも厄介だったのは、後退による遠心力と共に鉄槌を巨大化させ、間合いと威力を得たことであった。
         身なりこそ童女であるが、ハガネはその槌を得物とするメガミである。必然、苦汁をなめさせられた中、遠距離への強打を警戒し、揺波は間合いを測ろうとしていた。

         

         だが、ハガネが選んだのは、前のめりとなった迷いなき前進であった。

         

        「な……!」

         

         その疾駆の最中、己も宙に浮きながらくるりと縦に一回転、鉄槌が振るわれる。揺波に直接届く間合いではないが、打撃したものは確かにあった。
         砂。そして、大気。
         凄まじい膂力で振り切られた鉄槌によって巻き上げられた砂塵が、揺波の視界を奪う。

         

        「ほらほら、ぼーっとしないでよ!」
        「くッ……!」

         

         咄嗟に揺波は、目を細めながら砂塵へと突っ込む。自分の手が封じられている状況で、自分より間合いの広く情報で優位に立つ相手に対し、間合いをとる選択はかえって危険である。
         身を打つ弾丸のような砂に守りの結晶が削られる。けれどその結晶は、ただ身を守るために消費したのではない。

         

        「いぃぃやッ!!」
        「っと」

         

         強い踏み込みと共に最上段から振り下ろした刃が、跳び上がっていたハガネの脚を掠めた。砂塵の残りと共に、ハガネの守りもまた一つ削られる。
         揺波が守ったのは、己の目である。文字通り目の前に結晶の盾を配することで、目を開けていられない砂塵の中で、辛うじてハガネの姿を捉えることができていた。

         

         対するハガネは、僅かであるが反射的に回避の姿勢を取ってしまったため、振りかぶっていた鉄槌を満足に振り下ろすことができない。
         そこで彼女が採ったのは、振るのではなく、下ろすだけ。
         跳び上がった状態で鉄槌を巨大化させれば、あっという間に大質量の打撃力が生まれる。

         

        「どーん!」
        「っ……!」

         

         一回りも二回りも大きくなった鉄槌は、ただ地面に落ちるだけで山を揺らす。直撃こそしなかったものの、間近で大地を砕かれた揺波は大きく体勢を崩した。
         しかし逆に、ハガネもまた落ちた鉄槌の柄にぶら下がったままであり、無防備に間合いに入っている。
         ここは、好機に他ならなかった。

         

        「っく――」
        「えっ……」
        「――ぁぁぁッ!」

         

         大地に縫い付けるように踏ん張り、下段にまで振り切っていた刃を、居合の形で無理やり振り上げる。
         果たしてそれは、身を捩ったハガネが回避しきる前に、胸へ深々と吸い込まれていき、結晶の霞を吹き散らした。

         

        「おぉ……!」

         

         咄嗟に鉄槌を元の大きさに戻し、地面を突いて己の身を後ろへと送るハガネ。地に足を着けると同時、勢いを稼ぐように後ろへさらに跳躍する。
         すぐさま追おうとする揺波であったが、ハガネは彼女の追従を拒絶するかのように、鉄槌を振り回しての回転を始めていた。一回転、二回転と重ねていくごとに、大地を砕いたそれよりもなお大きな槌へと変貌していく。

         

        「大・天・空――!」

         

         

         最も警戒していた、最も強烈な一撃。
         しかし揺波がこの技を受けるのは、これで二度目である。一度目までに対策を練り、一度目を辛うじて捌いたその後、もう一度受けることを考えて、胸中で幾度も対策を重ねてきた。

         

         相手は、存在からして一度目より格上。だが、全てが上位というわけではない。銃弾の雨をかいくぐった傷はなく、攻撃の流れはより素直である。
         そして何より、今の揺波に気負いはなく、武神ザンカの威風を完全に使いこなしている。
         故に――この帰結は、明々白々。

         

        「吹き荒れよ、嵐の如く!」

         

         

         先程の砂塵と遜色ない暴風が、瞬く間に戦場へ吹き荒れる。それは、最後の回転の半ばであったハガネの上体を揺らし、地面と水平だった鉄槌の軌道が僅かに空へと反れる。
         すかさず体勢を限りなく低くし、前傾の姿勢のまま、左腕に結晶を集中させた揺波は、まるで弾きあげるように鉄槌を受け流した。

         

        「――ッくっっ!」
        「うわ……!」

         

         打撃の軸を完全に外されてしまったハガネは、暴れる鉄槌に身体が持って行かれる前に、慌てて鉄槌を小さくする。
         が、それでも対策を積んだ揺波の前では、遅い。

         

        「やぁぁぁッ!!」

         

         切り込み、突き出し、斬り払う。
         鈍重な槌では防ぎきれない連撃によって、ハガネの身体から桜色の塵が傷の証として数多飛び散っていく。

         

         大きな有効打に、刀を握る揺波の手がいっそう力を孕む。
         この戦況、メガミ相手に十分戦えていると言って相違なかった。メガミという強大な存在を前に無力さを覚えたことのある揺波には、望外の状況である。
         このままいけば勝てる。
         自分の実力は、メガミとさえ戦える位置に来ている。
         勝つこと以前に、戦うことすら無謀だと考えていた揺波は、その事実にえも言われぬ喜びを感じていた。

         

        「ねえ――」

         

         けれど、

         

        「ダメだよ?」

         

         にっ、と歯を見せ、不敵に笑うハガネを相手に、それは命取りだった。
         油断にすらならないほんの僅かな気の緩み。それは、人にとっては些細であっても、メガミにとっては十分すぎる隙。

         

        「ほいっ」
        「――!」

         

         刀が、軽い返しの利いた篭手によって大きく外側へと反らされる。
         効果的な一撃を叩き込むことに集中していた揺波は、あえてその連撃を身体で受けきっていたハガネの篭手の妨害を、きちんと捌くことができなかった。しびれる手が、動きは小ささに似合わないハガネの力強さを物語っていた。
         意趣返しでもされたように動きを乱された揺波。それを尻目に再び飛び退るハガネであるが、同時、揺波が力の発露の刻までその身に宿し蓄えていた結晶が、吸い寄せられるようにハガネへと向かっていく。
         そして結晶を纏い、行われるは、無論――回転。

         

        「いっくよぉーっ!」

         

         一回転、二回転。三、四、と速度と大きさを得ていく鉄槌。
         再び、あの大技が来る。轟と風を切る大鎚は、揺波の身の丈ほどとなって暴力を形作る。
         けれど、揺波にとってこの技は三度目だ。防ぎ、捌いたからこそ、分かる。未だ五体満足な己を信じ、恐れず前へ出ればいいのだと。痛打を受けたところで、自分よりもなお多くの結晶を失っているハガネに至近し、さらなる一太刀を浴びせればいいのだと。
         だから、一歩前へ。迷わず、揺波は踏み出した。

         

        「だいッ――」
        「……!」

         

         だが、図らずともその足は、止まる。
         ハガネが、踏み切って、跳躍していた。

         

        「せんッ――」

         

         ひたすら後ろへ体重を運びながら、回転を続けていたハガネは、宙空でそれを縦とした。
         揺波が軽く見上げるほどの高さまで余裕を稼いだその身は、振り下ろした鉄槌を後ろに流す傍ら、次には叩きつけられるように半分捻っている。
         その高さでは、いくら人の背丈ほどの鉄槌でも、届ききらないだろう。

         

        「は……?」

         

         その現実味のない光景に、揺波は思わず言葉を漏らしていた。
         ハガネが後ろへ送った鉄槌は、地面を掠めたその直後から、遠心力を急に吹き込まれたように、膨張、伸長していた。

         

         ハガネの後ろには、東西を分ける山々が連なっている。
         そこに、ハガネの超巨大鉄槌が、堂々と肩を並べていた。

         

        「くうぅぅぅぅーーーーー!!!!!!!」

         

         

         背面から振り下ろされる鉄槌は、空をも覆う。
         天蓋が欠けて、落ちてきてしまったような、そんな冗談じみた一撃。旋回による遠心の力に加え、先程大地を砕いたような落下の力も加算されたそれは、人の身はおろか、どんなミコトであっても、まともに喰らえばそれだけで押しつぶされてしまうだろう。

         

         これが決闘でよかった、と呆然とする揺波は思う。
         メガミ相手に優位に事を進めているなどという驕りは、来るこの一撃によって粉砕されるに違いなかった。手応えを感じる以上のことを覚えてはならない……とても小さな、しかし大きすぎる過ちの対価は、そう胸に刻みこむのに十分過ぎた。

         

         その断罪を、甘んじて受ける。
         決闘人生で初めて敗北の覚悟を決めた揺波を、影が覆い尽くした――

         

        「っ……!」

         

         その時である。

         

        「ぇ……」

         

         影は、晴れた。
         揺波の左手から生じた桜色の光が、巨槌の影を払拭していた。

         

         それは、周囲をも照らす光量を凝縮したように収束すると、すぐさま揺波の全身を覆う。
         揺波を守るように。

         

         そして――衝撃。

         

        「うそ……」

         

         それに打ち砕かれたのは、ハガネの自信だった。
         山のようになった鉄槌の打撃は、確かに揺波に届いた。しかし、それだけで終わった。
         打撃したことによる衝撃は起きなかった。
         やや左上から打ち下ろされていた鉄槌は、揺波の頭上僅か拳一つ分のところで、止まっていた。彼女の髪の毛一本、揺るがすこともできずに。

         

        「なにが……?」

         

         呟く揺波に合わせたように、彼女を覆っていた光は霧散した。左手も、いつもと変わらないただのミコトの左手である。
         それを皮切りに、鉄槌は力を全て使い果たしたように、揺波の傍にずり落ち、胴を地面に投げ出した。取り付けられていた鐘が、ひどく鈍い悲鳴のような音を上げ、地面は唸りを上げたように揺れる。

         

        「はっ――!」

         

         唖然としていた両者であったが、未だ決着がついていないことにいち早く思い至ったのは、揺波であった。彼女の勝利への執念は、対処不可能な一撃が除かれた時点で、勢いを取り戻していた。
         駆け込む揺波に対し、ハガネの行動は限られる。大きくしすぎた鉄槌を手中に収めるまでの間があれば、揺波が距離を詰めるには容易かった。

         

        「たあぁぁッ!」

         

         そのまま駆け抜けるように、一閃。
         胴を薙ぎ切った斬華一閃が、散る桜の残滓を纏う。
         だが、ハガネが倒れる気配はない。先程のように受け止める余裕がまだあったのかと驚愕するも、揺波のやることは変わらない。
         もう一撃、叩き込む――!

         

        「――参った」
        「……!」

         

         振り向きざまの大上段が、ハガネの後頭部すれすれで止まった。
         ハガネは、その姿勢を保つ揺波へと振り向く。そして、おどけたように小さく舌を出して、

         

        「負けちゃった」

         

         そう、揺波の勝利を告げたのであった。

         

         

         


         砕いてしまった地面に向かってハガネが手をかざすと、割れ目から土が湧き上がってきた。それから自ら耕しているように、地面が脈動する。
         その様子を眺めながら、不可解な決着に未だ気を張っている揺波に対し、

         

        「あたし自身はまだ大丈夫だよ? でもさ、ミコトだったらもう結晶がなくなってるよね? 決闘を申し込んで、決闘の作法に則って、決闘をしたんだから、その勝敗はキミたちミコトの基準じゃなきゃ」
        「じ、じゃあ……」
        「だから、もうそんな怖い顔しないでよ。十分、分かったからさ」

         

         その言葉に、揺波はようやく肩の力を抜いた。役目を終えた斬華一閃が桜の花びらとなって消えていく傍ら、じわりと湧いてくる勝利の感覚を味わっていく。けれどそれはあくまでこの決闘の本題ではないことを、ハガネの一言によって思い出していた。
         地面を均し終わったハガネが、困ったように頭を掻きながら、揺波に向き合う。

         

        「うーん、ほらさ。話を聞いて分かってあげられるか分かんないから、こうして戦ったわけだし……分かったんだけど、何がどう分かったのかは、うまく言えないんだよね」
        「あー、それならなんとなく分かる気がします」
        「でしょでしょ? ……うん、そうだよね。たっつーが気に入ったんだったら、あたしが嫌いになれるわけないよね」

         

         鉄槌を手のひらに乗るまで小さくし、帯の中にしまいこんだハガネ。
         次に彼女は――揺波へ頭を下げた。

         

        「疑ってごめん!」
        「えっ、えっ……そんな!」

         

         すぐに頭は上げられたが、メガミに頭を下げられる経験などそうあるものではない。うろたえてどう返したものか思いつかない揺波に、言葉を継ぐ。

         

        「たっつーを、皆が言ってるみたいに卑怯な方法で殺しちゃうなんて、キミの太刀筋からは全然想像がつかない。ごめんね、信じられないからって、こんな試すような真似して」
        「いえ……こちらこそ、その、ごめんなさい」
        「あー辛気臭いのはナシ! いいのいいの、別に復讐しにきたとかそういうやつじゃないし。たっつーの気に入ってたユリりんが、そういう人じゃなかったって分かったんだもん、それでいいよ」
        「ユリりん……? ――わっ、ぽわぽわちゃん!」

         

         妙な呼ばれ方をしたが、突如、今まで鳴りを潜めていた旅の友が現れた。それは実に嬉しそうに揺波の周りを飛び回っている。その渾名の響きが気に入ったとでも言うように。
         ただ、この存在をハガネにはなんと説明したものか。そう少し困った揺波だったが、ハガネはふざけ半分で頬を膨らませ、揺波の傍らの桜色の光へにじり寄っていく。

         

        「あっ、そうだ! ユリりんそれずるいよぉ」
        「ずるい、ですか……?」
        「そうそう、さっきの大旋く――」

         

         言葉は、そこで打ち切られた。
         声音を断ち切る刃があるのなら、その業物によって成されたのかと思うほどに。

         

         がくり、と足を踏み出していたハガネは、突如全身の力が消失してしまったかのように、体勢を崩した。
         糸が切れたように。
         童女の身体が、生々しい音を立てて、顔から地面に倒れた。

         

        「はがね、さん……?」

         

         うめき声の一つ、聞こえない。
         あまりに突然の出来事に理解が追いつかない揺波であったが、今は決闘の直後である。死闘を繰り広げた後には何があるか分からないし、本人は否定していた上、メガミである以上薄い可能性だが、万が一ということもある。

         

        「ハガネさん! ハガネさん!」

         

         駆け寄り、背中を揺する。反応はない。
         それがもどかしくて、うつ伏せになっていたハガネを仰向けに横たえる。
         半ば祈りながらハガネの顔を見やると、意思も感じられない有様であったが、それから肩を乱暴気味に揺さぶっていると、目に光が戻ってきた。

         

        「大丈夫ですか!?」
        「ぁ……ぅ……」

         

         応じようとする意思もある。だが、喉を震わせるだけの力もなくしてしまったように、明確な声を発することができていなかった。
         目を泳がせながら発声を繰り返していくうち、ようやくまともな音が生まれる。

         

        「……ない」
        「え? なんですか!?」
        「……ないの」

         

         あまりにか細いその声に、揺波は耳を彼女の口元まで近づける。
         その声は、聞き取ることが難しくとも、震えているということだけは、はっきりと分かった。

         

        「立て、ない」
        「どこか、お怪我を……!?」

         

         揺波の問に、ほんの僅かに動かせるようになった頭を、左右に揺らすハガネ。
         そして彼女は、自分でも何を言っているのか理解しきれていないといった声音で、こう答えた。

         

        「あたし、の、ちから…………なくなっちゃった……」

         

         山の冷えた風が、びょう、と揺波の首筋を撫でていった。

         

         

         


         天音揺波は、決闘という意味でも、遺恨という意味でも、その因縁を消化した。
         こうして彼女はまた一つ、しらがみから解放されたと言えるだろう。
         しかし、消化されたとしても、その因縁の痕は更なる因縁の種になる。
         天音揺波の因縁の行き着く先は、果たしてどこにあるのだろうか。

         

        語り:カナヱ
        『桜降代之戦絵巻 第四巻』より
        作:五十嵐月夜  原案:BakaFire 挿絵:TOKIAME

         

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        『桜降る代の神語り』第二章

        2017.10.14 Saturday

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          第18話:旅立ち

          第19話:奇縁

          第20話:細音と久遠

          閑話:ある三柱の一幕

          第21話:ゆりな珍道中

          第22話:再び交わる道

          第23話:死の自覚

          第24話:渦中へ

          第25話:武神ザンカ

          閑話:ある山間の邂逅

          第26話:神渉

          第27話:奇妙な四人(揺波側)

          第28話:奇妙な四人(細音側)

          第29話:陰陽本殿跡

          第30話:大乱戦!

          第31話:異文化座談会

          第32話:忍の里へ

          第33話:里の数日間

          第34話:想い廻りて

          閑話:ある姉弟の交差

          第35話:天音揺波と氷雨細音

           

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          『半歩先行く戦いを』第2回:全力で行こう

          2017.10.13 Friday

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             こんにちは、BakaFireです。

             

             こちらの記事は二週間前に始まりました、本作の攻略記事となります。ルールは理解できているものの、今一歩勝利への道筋を掴みかねている方を対象として、理論立てられた基礎をお伝えしております。

             

             本シリーズは現在大会で活躍されているプレイヤーの中より、戦術の理論化、文章化に長けた強豪であるつきのみちさんに執筆して頂いております。それでは、早速今回も始めるとしましょう。

             


            著者紹介:つきのみち
             本作を発売から今日にかけて遊んで頂いている古株のプレイヤー。具体化された理論に裏付けられたプレイングと、丁寧なメタ読みを得意とする。2017年8月のコミックマーケット92では本作の攻略冊子を同人にて作成、頒布した。本作の攻略が理論に基づき、これほどの分量を持って文章化されたのはその冊子が初めてのことである。


             

            『半歩先行く戦いを』

            第2回:全力で行こう

             

            著:つきのみち

             

             

             前回の「前進」と「後退」に続き、今回は全力について解説しようと思います。

             

             全力カードは強大な効果を持つものが多い一方で多大なデメリットを内包しているハイリスク・ハイリターンなカードです。このデメリットを最小化しつつメリットを最大化しなければ、全力カードを使っても大きな有利を得ることは出来ません。今回は、如何に全力カードの効果を引き出すか、逆にいかにして全力の攻撃から身を守るかを考えたいと思います。 

             

            1. 全力の基本

             

             全力とは何か。「全力」と書かれた黄色いカードを使用することですが、これをルール的に厳密に解釈すると以下のような流れとなります。

             

            1. 自らのメインフェイズ開始時に「全力カードの使用」を宣言する。
            2. 手札もしくは未使用の切札からサブタイプ《全力》を持つカードを1枚使用する。
            3. カードの効果を解決し、メインフェイズを終了する。

             

            《全力》を持つカードを使用する場合、メインフェイズ開始時にしかその宣言ができないこと、カードの効果を解決すると即座にメインフェイズが終了してしまうことから、《全力》を持つカードを使用するにあたっては以下の制約が付きます。

             

            1. メインフェイズ中に当該《全力》カード1枚以外のカードを使用できない。
            2. 基本行動ができない。

             

             これらの性質により、全力を宣言したプレーヤーは以下のようなデメリットを背負うこととなります。

             

            1. 手札や集中力が溢れる
            2. 攻撃前に間合い等を調節できない(攻撃のみ)
            3. 使用後に間合い・オーラを調節できない

             これらのデメリットが及ぼす影響とその対策について、使う側と使われる側の双方から考えてみます。

             

            2. 全力カードを使いたい!

             

             単に全力カードと言っても、その効果の方向性によって使用時に注意することは変わります。そこで、大まかに3種類に全力カードを分類して考えてみたいと思います。

             

            分類1:攻撃

             カードタイプが「攻撃」である。

             

            分類2:防御

             次のどちらかの効果を持つ:「自オーラを増やす」「間合を変化させる」

             

            分類3:その他

             分類1と分類2以外の全て

             

            2.1 手札と集中を無駄にしないためには?(全分類共通)

             

             自ターン終了時に手札の枚数が2枚を上回っていた場合、2枚になるまで伏せ札にする必要があります。全力カードの使用を宣言すると、選択した全力カード1枚以外一切のカードを使用できないため、全力カードの使用を宣言した時点で手札が3枚より多く(全力の切札を使用する場合、手札を一切消費しないため2枚より多く)存在すると手札の損失が発生します。ターンの開始時に手札を2枚引くことを考えると、手札を無駄にしないためには、手札1枚以下でターンを開始する(全力切札の場合、手札無しでターンを開始する)ことが条件となります。

             

             同様に、自ターンの開始時に集中力が2だった場合、新たに集中力を得ることができず無駄にしてしまいます。次ターンの開始時に集中力を無駄にしないためには、全力カードの使用を宣言した時点で集中力が1以下である必要があります。毎ターン開始時に集中力は得られるので、全力カードを使った際に集中力を無駄にしないためには、全力カードを使う前のターンに集中力を0にしておく必要があります。

             

             ただし、これを露骨に狙うと全力カードを構えていることがバレバレになってしまうため、使用するタイミングがバレてもあまり関係のないカード以外では、手札や集中力を無駄にしてでも打つべき場面が来たら打ちましょう(確定で「つきさし」が決まる時など)。

             

             また、全力カードを使った次のターンは、原則手札4枚+集中力2の状態になります。

             

            2.2 攻撃前に間合は調整できない。オーラも削れない。手札も減らせない。(攻撃)

             

             この弱点は全力カードの構造的な都合上、全力を使用する側から解消することは難しいです。逆に、間合いを外した状態で相手にターンを渡すことで簡単に回避することができるため、全力の攻撃カードは暴虐的なまでの威力を持つことが許されているのです。

             

             全力攻撃の構造的な弱点なので解消はできないため、全力カードを持つ側としては無理に相手に全力攻撃を当てることより、全力カードの存在を利用して相手を委縮させ、代償を得ることが重要となります。例えば自分がユキヒ(閉)、相手が近接系のメガミを宿している際に、相手のオーラが3〜5程度残った状態で間合6で相手にターンを渡したとしましょう。すると、相手は前進して「ふりまわし」の間合から脱することが不可能なため、自らの集中力とオーラを勝手に消費して後退するか、前進して「ふりまわし」を受けるかの二択を迫られるのです。

             

             このように、全力の攻撃カードは撃つ前に間合を調整することはできませんが、全力の攻撃を回避するために相手に無駄な手札や集中力を消費させることで有利を取れる場合があります。

             

             (なお今回の教材には「ふりまわし」を用いましたが、熟練したプレーヤーを相手にする場合、前回の攻略記事で説明した「力を溜めて駆け抜ける」移動を応用して被害を軽減してくるため、「ふりまわし」だけではそうそう大きな有利を取らせてもらえません)

             

             「ふりまわし」以外にもう一つ例を挙げるとすると、相手に与えるプレッシャーの高いカードの最たるものとして「居合」が挙げられます。「居合」はその絶大な威力と、前進で脱出できない2-3という適正距離も相まって強烈なプレッシャーを放っており、「居合」をかわす手段を持たないメガミは常にその行動を束縛されることになります。具体的には、「居合」を回避するためのカードを抱え続けるために手札全てを消費するような大胆なコンボができない、オーラ回復を強制させられる、オーラを消費して後退させられる等、非常に窮屈な動きを相手に強いることができます。

             

             また、当然のこととして、全力攻撃前には相手の手札を見たり捨てさせするカードも使用できないため、相手が全力攻撃を打ち消したり間合をずらして回避してくる対応を持っている場合、1ターンに1枚しか使用できない全力カードをドブに捨てる事態になりかねず非常に厄介です。こういう場合は、そもそも全力攻撃カードをデッキに入れないか、相手の再構成直後を狙って「無窮の風」や「砂風塵」で捨て札に送り、相手が再構成するまでの間に全力攻撃を使うと良いでしょう。

             

            2.3 攻撃後にも何もできない(攻撃・その他 攻撃で特に重要)

             

             「雑な居合は死を招く」という格言があります。全力カードは宣言した瞬間から先、下手をすると次の自分のターンまで自分に行動の選択権が与えられない状態が続くため、「使用した次のターンに致命的な打撃を受けないか」は常に考える必要があります。特に「居合」と「斬撃乱舞」は、その適正距離範囲内に高い攻撃力のカードが集中しているため、何も考えずに使用すると致命的な反撃を受ける可能性が高く、注意が必要です。

             

            例えば雑な居合が死を招く典型例としては以下のような流れがあります。

             

            相手ライフ6、自分ライフ5で自分が「居合」を使用

            相手「浦波嵐」で対応した上でライフ受け(自分オーラに2ダメージ)

            相手ターン開始時に再構成を宣言

            (相手によってはここでさらに設置攻撃による追撃等が入る)

            相手「天音揺波の底力」使用

            オーラで受け切れないためライフ5ダメージ、敗北

             

             このようなことにならないために、防御以外の分類の全力カードを使用する際は、以下の点に留意すると良いでしょう。

             

            • 自分のオーラは十分あるか(間合の都合上相手が攻撃できない場合を除く)
            • 相手は危険な対応を持っていないか(攻撃のみ)
            • 相手の得意な間合いに居ないか
            • 手札に「対応」を抱えておくと手堅い

             

             なお、防御分類の全力カードは非常に強力な防御効果を持つものが多いため、困ったときにとりあえず使って防壁を築き、次のターンに手札4枚+集中力2を使って反撃を行ったり態勢を整えたりすることができるため、比較的雑に使っても大きな問題はありません。

             

            3. 全力攻撃から身を守りたい!

             

             全力攻撃は全力カードの中でも特にハイリスクなカードです。それ故に、オーラを全て破壊するとか、ライフに2点直撃とか(しかもこの2つの効果は両方とも同じカードが持っているのだ!)、4/2の攻撃とか、とにかくヤバい威力のカードのオンパレードです。これらは1回でもまともに受ければ体勢の立て直しだけで手一杯となり一方的に相手に主導権を握られ続ける事態となりかねません。よって、「相手に全力攻撃を使わせない」、あるいは「使われても大丈夫な盤面を構築する」ことが重要です。具体的には、2.3項で挙げた「全力攻撃すべきではない状況」に相手を追い込むことです。すなわち以下のような状態です。

             

            • 間合をずらしておく(そもそも使用させない)
            • 相手のオーラを減らしておく
            • 自分の得意間合いに居座る
            • 手札・集中力を潤沢に保つ(無理矢理攻撃してきた場合反撃で十分なリターンを得られるようにする)
            • 打ち消し・間合ずらしによる無効化ができる対応札を持つ(実際に手札に無くても、持っているフリでも効果はある)
            • 未使用の対応切札があるメガミでフレアを潤沢に用意する(実際に切札に無くても、入れているフリでも効果はある)

             

             特に間合をずらしておくことと、相手のオーラを減らしておくのは重要です。ただし、間合いをずらすことで自身の集中力や手札・オーラを無駄遣いするくらいなら積極的に相手のオーラを削ったほうが得をします。オーラを減らした場合相手はオーラを補充するために手札や集中力を消費するハメになりますが、不自然な間合ずらしは相手に何ら消費を強いることができないためです。相手のオーラさえ削っておけば、仮に相手が全力攻撃を使ってきた場合でも、(場合によっては攻撃のライフ受けで増えた潤沢なフレアを使って)オーラの減った相手を攻め立てれば致命打を与えることができるでしょう。

             

             また、対応カードを持っている(フリでもよい!)ことも重要です。相手は1ターンに1枚しかカードを使えないのにそれが無効化されては大損ですので、手控えさせることができるかもしれません。

             

             

             全力カードについての攻略は以上となります。

             次回は「切札」について攻略しようと思います。

             

             

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