記事目録

2017.04.21 Friday

0

    『桜降る代に決闘を』の公式サイトはこちら

     

     

    第0話:或る最果ての社にて

    序章:小さな地の小さな野望

    第一章:天音家の戦い

     

    第18話:旅立ち

    第19話:奇縁

    第20話:細音と久遠

     

    次回更新は5/5(金)です。しばらくは隔週更新となります。

     

     

    最新記事

    祭札、そして様々な流れを楽しもう!

     

    過去の記事(上の記事ほど新しいです)

    チカゲ反省会とカード調整

    今後の展望、2017春

    新たなメガミには毒がある

    新たなメガミと世界を拡張

    第一幕の覇者たちを讃えよう!

    今後の展望、2016冬

    第二の幕開けは近い:後篇、新作発表

    第二の幕開けは近い:中篇、問題解決

    第二の幕開けは近い:前篇、問題提起

    新たなメガミをお出迎え

    今後の展望、2016秋

    楽しき代のためカード調整

    今後の展望、2016夏

     

    次回更新は4/28(金)を予定しております。

     

     

    シーズン1 作:hounori先生

    第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回

     

    メガミの日常をまったりお届け、そんなかんじのゆるい午後。

    アンソロジー的に様々な先生に、桜降る代を描いて頂いています。シーズン2の開始は6月頃を予定しております。

     

     

    第1回 第2回 第3回 第4回 第一幕最終

    第1回大乱闘 第2回大乱闘

     

    ゲームマーケットの準備と並行して行っておりますので、レポートが遅れております。ご容赦いただければ幸いです。

    『桜降る代の神語り』第20話:細音と久遠

    2017.04.21 Friday

    0

      《前へ》      《目録へ》

       

       妙な縁が結ばれたとは言っても、その足を止めるほどのものじゃあない。
       一晩を明かした氷雨細音は、城跡へ向かって龍ノ宮領をひた歩く。
       けれどもまあ、先を急ぐとぷっちり縁を切れるわけもなく……。
       情け容赦もなく道連れにまとわりつかれた彼女にとって、それが悪縁でなかったことだけが慰めになるだろうね。

       


       すたすたと、迷いを振り切るようにして交互する長い脚。

       

      「ねーねー」

       

       ぴょこぴょこと、飛び跳ねるように歩幅の違いを埋めていく短い脚。

       

      「ねーってばー」

       

       細音にとって目の代わりである薙刀の石突も、いっそ掘り返してしまいかねないくらい乱暴に地面を探っている。途中で水たまりがあろうが問答無用で突っ切るだろう勢いは、朝靄も残るうちに宿場を出てから陽を仰ぎ見るほどになった今に至るまで、ずっと衰えていない。
       道程はそれゆえかなり進んでおり、城下町外縁部の田園地帯を今に抜けようか、というところである。

       

      「そんなに急がなくったっていいじゃん。やろーよ音楽やろーよー」
      「…………」
      「めくらなのに、そんなに急いでちゃ転んじゃわない? 怪我して手が使えなくなったら、演奏できなくなって大変だってば」
      「……誰のせいだと思っているのですか」

       

       ほんの少しだけ、細音の足が鈍った。それを察した少女・久遠が細音の前に躍り出て、行く手を塞ぐ。
       けれど細音は、応じたことそのものに反省しながら、華麗に避けて通る。

       

      「あたしのせい? とんでもない! あたしは、あなたの楽才が埋もれたままになっているのがもったいないって一心で、楽の道に――」
      「それが余計なお世話だと言っているのです。私には既に歩む道がありますからっ!」
      「ちぇー」

       

       ちっとも納得していなさそうに悪態をついた久遠が、再び細音の後を追った。

       

       細音の苛立ちももっともで、昨晩久遠に絡まれた細音が、夕食の同席を認めてしまったところまではまだよかった。しかし、そこで久遠が北方の弾き語りを話題にした際、弾き手として細音が乗ってしまったのが運の尽き。
       素地すらあったと知った久遠が、彼女を音楽の道に引き込もうと延々と勧誘したとなれば、さしもの細音も無視という選択を採らざるをえない。いくら音楽に親しみがあるとはいえ、氷雨細音は未だ見ぬ武の果てへの途上にいるのだから、このまま薙刀から琵琶に持ち替えるわけにもいくまい。

       

      「寝て起きたら気が変わってるかと思ったら……でも、そーゆー頑固なのも好きだよあたし」
      「…………」
      「ほらほら、もう中心街だよ? 確か芝居小屋があったはずなんだよねーここ」
      「それは……分かっています」

       

       細音がそれを判断できたのは、むっと強まった焦げた臭いのおかげだった。
       風もないというのに、木を燃やした臭いに二人は包まれていた。細音の耳が捉えていないように、火はもはや勢いを殺され尽くして久しい。けれど、熱の失せた焼け跡を片付け始めているであろう住人に、恐怖を想起させるに余りある生々しい崩壊の臭いが鼻をつく。周囲に飛ばされる作業の指示の声にも、どこか不安が滲んでいるようであった。

       

      「このへんまでメガミが暴れまわったらしいからね」
      「なるほど、ヒミカは北へ……」

       

       実際に逃げる揺波と細音を追ったからなのか、はたまた天音家を襲撃する道中だったのか、それは本人のみぞ知るところだ。けれど細音は、無関係な人を巻き込んでしまったようで、少し言葉に詰まった。
       ……が、久遠にはそんなことは関係がない。

       

      「まー火事のことは別にいいじゃん? なんでもその小屋で扱われてたのは、かの畠山松陰が手がけた笛だとかなんとか。もしかしたらあるかもよー?」
      「関係ありません」
      「吹けるかもよー? なんならあたしが吹いちゃおっかなー!」
      「……はぁ」

       

       ため息と共に、刀身を隠したままの薙刀を軽く久遠に向ける。

       

      「わかりました。その芝居小屋とやらに行きましょう」
      「やった!」
      「ただし! ……立ち寄ったらもう二度と私に付きまとわないと誓ってください。それができなければなしです。そして誓いを破れば、そのとき私の手元が狂わない保証はありません」
      「はぁーい」

       

       本当に分かっているのだろうか。
       そんな懸念もどこ吹く風と、先導し始めた久遠。後を追う形となった細音は、予想外の方向からもたらされた幸先の悪さに、不安を覚えるしかないのであった。

       

       


       焼けた龍ノ宮城を左手に見て、東西に走る通りをいくらか西へ。城を見送るようになった頃合いには、なんとか形を留めている建物も増えてくる。芝居小屋は、そんな通りも突き当たる位置で燃え残っていた。

       

      「あー、こりゃまた」

       

       肩をすくめる久遠。一体どれほどの聴衆を飲み込めるのか、というほどの芝居小屋であった建物は、向かって左側と、釣られたように屋根のほとんどが焼け落ちてしまっていた。びしょ濡れだったり人為的に破壊された痕があったりと、消火の努力が見受けられる。

       

      「この分だと期待はできそうにないかなー。燃え尽きてないのがせめてもの救い、ってくらいだけど、野ざらしにされちゃね」
      「気が済みましたか……って、どこへ!」
      「中に決まってるじゃなーい」

       

       柱が焼け崩れたりしてまだ危険かもしれないというのに躊躇なく歩き続ける久遠に、細音は義務感半分自棄半分で着いていく。
       そうして久遠が、開け放たれていた入り口から顔を覗かせると、

       

      「なんだ、先客がいるっぽいよー?」
      『あ゛ぁ?』

       

       先客たちの輪唱は、すこぶる棘のあるものだった。
       小屋の中は案の定焼け落ちた天井によって、内装が分からなくなっている有様であった。座布団の残骸にまみれている一帯が座席であることくらいは把握できるものの、肝心の舞台は床に突き刺さった何枚もの天井板の燃え残りの向こう側にあるようだ。
       先客たちは、そんな芝居小屋跡を片付けているようだった。
       物色していた、とあるいは言い換えたほうがいいかもしれないが。

       

      「おいおい、なんだぁこのガキども。いっちょまえに薙刀なんてこさえてよぉ!」
      「俺たちゃ忙しいんだ。かまってやる暇なんてねえから、さっさとおうちけぇんな! ……あっ、けぇりたくてもけぇる家がねえか!」

       

       爆笑する先客ら。その下品な気性は、金になりそうなものを抱えている彼らの姿を見ることができない細音にも、正体が火事場泥棒であると悟らせるには十分すぎた。
       薄い笑みを張り付かせたままの久遠をかばうように、細音が前に出る。
       最初に細音を笑った男がそれをさらに鼻で笑い、ぞろぞろと物陰から姿を現した賊たちの中で最もガタイのいい男を指すと、

       

      「やろうってのか? こっちにゃ山岸さんがいるんだぜ!? あのミコトの、山岸さんだぞ!」
      「ガキが敵うお方じゃねえぞ。なんてったって、宿すメガミは破壊力重視ッ! 槌のハガネに鉄拳のコダマだ! ハガネに至ってはあの龍ノ宮一志も使ってたくらいなんだ、そんな細腕すぐに折れちまうわ!」

       

       山岸と呼ばれた男は、久遠と細音を見下せる位置に陣取った。両手に指先まで覆う鉄製の手甲を装備しており、膨れ上がった二の腕は丸太のよう。

       

      「グハハハハハ! 一撃でおねんねさせてや――」

       

       そんな彼が、攻撃を繰り出す余地はなかった。
       それどころか、一言、言い終わる間すら与えてもらえなかった。

       

      「――ぁ、あ……ぁぅぁ……」
      「痴れ者め。恥を知りなさい」

       

       細音が薙刀を手元に戻し、刃を露わにした上で構える。
       山岸なる男は、見下していた細音の動きをまったく見切ることができず、みぞおちに吸い込まれていった石突によって膝をつき、そして地面に伏した。
       彼らが不幸だったのは、音楽という芸能に親しみのある細音を敵に回したことだった。

       

      「こ、こいつ……! みんな、やっちまえ!」

       

       賊は残り七人。一斉に懐から小刀や棍棒を取り出すと、両手いっぱいに抱えていた金品を放り捨てて細音に襲いかかった。
       山岸を踏み越えて戦線に躍り出た細音は、初見かつ散らかっている場所にも関わらず、向かい来る賊を的確に捌いていた。不用意に間合いに飛び込んできた男をみねうちで吹き飛ばし、後続の体制を崩したりと、咄嗟に考えうる程度の戦術を即座に実行に移せるのは彼女の基礎修練のたまものである。

       

      「くっ……」

       

       けれど、やはり人数差を容易に覆すことはできない。細音を含め、決闘に特化した修行をするミコトは多い。それは、合戦などとんと起こらない時勢であれば当然の帰結であり、多人数を相手にする戦闘技能を持つ者は限りなく少ない。
       加えて、ここは神座桜の下ではない。メガミの力を借り、最大限発揮できる環境であればいざしらず、十把一絡げの賊よりも肉体的に少し優るだけでしかない細音が、力任せに場を収めることは叶わなかった。

       

       屋内ということもあり、乱戦によって複雑に絡み合う音を整理するのに集中力を削がれていた細音は、故に気づくのが遅れてしまった。
       四人目の局部を柄で痛打した彼女の耳が捉えたのは、窮地だった。

       

      「へ、へへ……多勢に無勢だったようだなぁ」
      「しまった……!」

       

       起き上がった山岸が、苦悶の表情を浮かべながら久遠に迫っていた。かばうように前に出ていたのが仇になったか、としっかり気絶させなかった自分を細音は悔やむ。むしろ逃げる時間を稼ぐための大立ち回りだったのだが、目をつけられた今になって久遠にそう言ったところで意味はない。

       

       無論、賊はそういったところには無駄に頭が回るので、山岸が久遠を人質にとるまでの時間稼ぎをすべく、残りの三人で一斉に襲いかかる。
       万事休すか。あんな子に関わらなければよかった。
       そう、細音が三人分の力をどう捌くか、必死に考えている最中、山岸のいかつい手が、久遠に伸ばされる。

       

      「大人しくしな。この嬢ちゃんがどうなっ、て――」

       

       が、そんな彼が、久遠を取り押さえることはなかった。
       それどころか、警句を、言い終わる間すら与えてもらえなかった。

       

      「――ぇぁがッ!」

       

       大男が、今度は背中から地面に叩きつけられた。

       

      「…………」

       

       静寂に包まれる芝居小屋跡で、久遠の残身だけが起きたことを物語っている。
       肩をつかもうとした山岸の手を、僅かに身体をずらすことで避けた久遠は、そのまま身をひねりながら半歩前に出て懐に潜り込み、突き出された手を下に引っ張りながら肘の裏を軽く押した。
       まるで舞うように滑らかだった一連の動きは、けれどその流麗な見た目とは裏腹に、少女に巨体が放り投げられるという恐ろしい結果をもたらした。

       

       

      「ほらほら、そっちも早くやっちゃってよ。この馬鹿ども追い出さないと話始まんないんだからさー」
      「え、あ……は、はい」

       

       一足先に我に返った細音は、唖然としていた賊どもを押し返す。

       

       実力者を二度も瞬殺されてしまったためか、それから賊を始末するのは容易だった。結局、奪うつもりだったものも全て置いて、ほうほうの体で逃げていった。
       そんな彼らを見送った細音には、一つの想いが生まれることになる。
       焼け跡から見つかった数々の楽器を愛おしむ久遠は、決して音楽馬鹿なだけではないのではないか、と。

       

       


       こうして、氷雨細音も幾年久遠――トコヨへと関心を持つに至った。
       氷雨細音はトコヨから学べるものを見定めるため。
       トコヨは氷雨細音を自らの望む道へと引き込むため。
       噛み合うようですれ違っている、そんな二人の旅がここに始まったのさ。

       

      語り:カナヱ
      『桜降代之戦絵巻 第三巻』より
      作:五十嵐月夜  原案:BakaFire 挿絵:TOKIAME

       

      《前へ》      《目録へ》

      桜降る代のゆるい午後:第8回

      2017.04.15 Saturday

      0

        《前へ》      《目録へ》

         

         

        メガミの日常をまったりお届け、そんなかんじのゆるい午後。

        《前へ》      《目録へ》

        祭札、そして様々な流れを楽しもう!

        2017.04.14 Friday

        0

           こんにちは、BakaFireです。いよいよゲームマーケット2017春に向けた情報を公開していく時が来ました。先日の記事でもお伝えした通り、この春で本作は一周年を迎えます。様々な催しを予定しておりますので、ご期待ください!

           本日はその中から春の新作「祭札」を紹介いたします。

           

          祭の時間がやってきました!

           

           

           「祭札」は一周年を記念した、ゲームマーケット限定のプレミアムセットです。普段のセットとは違い、よりカジュアルに遊ぶための特殊ルール4種類と、そのためのカードを封入しております。一味違う楽しさをご期待ください。
           
           もちろんカジュアル向けの限定セットですので、大会では使用できません。本作を持っているかどうかが有利不利に繋がることはありませんので、ご安心ください。
           
           さらに、ゲームマーケットに行けないという方もいらっしゃるでしょう。そんな方のためにカードの画像は6月下旬ごろに公開する予定です。ただし、プレミアム仕様のカードや特典のタロットは本作でしか手に入りません。もしお越しになるならば、是非とも手に取っていただけると嬉しいです。
           
           続けて、祭札に含まれる4つのルールを簡単に紹介しましょう。

           

          祭を彩る名店たちを紹介しよう!

           

          メガミの根源たる力に括目せよ!

           

           原初札はメガミ自身がその力を振るう時に用いる、極めて強力なカードです。これはでは(主に東京の)交流祭での「メガミに挑戦!」で使用されてきました。
           
           祭札では、5月までのイベントで登場したメガミ全員分の原初札を封入しております! これがあれば「メガミに挑戦!」をいつでも遊べます。さらに、原初札を普通の対戦に用いて、よりクレイジーに遊ぶことも可能ですよ。フゥー!
           
           さらに、切札のイラストはTOKIAME先生による新規イラスト描き下ろしとなっております。見たいですって? もちろん! 1枚お見せしますとも!

           

           

           

           


           

          この妙な黄土色? これは製品版では金色で印刷されているのです!

           

          謎のメガミが作り出した謎のマシーンにより、2.5等身となったメガミが大量発生したぞ! 
           


           
           そんな外伝めいた決闘を行うのがこのルールです。合計15枚の大発生カードがゲームに様々な影響を及ぼします。そしてそれらは、特定の条件で切り替わるのです。乱動するルールを巧みに泳いでいく、刺激的なゲームをお楽しみください!
           

           こちらは3月の交流祭で試遊版が公開され、好評を頂きました。

           

          クレイジーな決闘がバカ盛り仕様でおでましだ!

           

           第一幕の時代では大乱闘大会として、そしてそれ以降では交流祭の限定イベントとして親しまれていた大乱闘が、いつでも遊べるようになりますよ! これまで用いられた2つのルールに加え、新たに6つの大乱闘ルールを追加して、大乱闘カードとして封入しました。

           


           思っていたよりガチで、探求しがいのあるものから、クレイジーを極めたものまで多彩なルールが用意されております。狂った世界の探索をお楽しみください!

           さて、これらの大乱闘ですが、公開されるより前に大会で遊びたいですよね。大乱闘が楽しいのは、考え込むより前にルールの中へと投げ入れられ、そこで最善を尽くすことにあるのですから! ご安心ください。既にその機会は用意されております。
           
           4/23には、東京大阪北海道の3か所で同時交流祭が開催されます。さらにその中のいずれでも大乱闘が行われ、それらのルールは全て異なるのです! カードとなり、既知のものとなるより前にこの狂気を楽しめるのは今しかありません。ご参加、心よりお待ちしております!

           

          海の外より授けられたBlackBoxを利用し、かつてないデッキを構築して戦おう!
           
           いわゆるドラフトのような方法でデッキを構築するルールです。BlackBoxの内容を整え、そして運に恵まれれば、3柱以上のメガミや2枚以上の同じカードを用いてデッキを組むことも可能です。中々に戦略性もあり、カジュアルだけでなくガチで遊ぶこともできますよ!

           

          さらに限定プロモーションタロットも封入

           

           ルールだけではありません。パッケージのイラストを用いた、一周年記念プロモーションタロットも封入されています。

           

          予約はこちら!

           

           こちらのページにて本日より予約も開始しております! 祭札だけではなく、『桜降る代に決闘を』シリーズの他の製品や、『惨劇RoopeR』シリーズについての予約も可能ですよ。確実に手に入れたい方は、是非ともご利用ください!

           

          次世代へと向かおう!

           

           祭札についてはいかがでしたでしょうか。一周年という節目を迎え、本作は次の流れへと向かおうとしております。折角ですので、祭札以外の流れについても簡単に紹介しましょう。

           

          大会賞品の変更

           見事にも大会で優勝された方には、これまではプロモーションタロット「ヒミカ」が贈られていましたが、今回のゲームマーケットを節目に変更になります。
           5/15以降の大会での賞品はプロモーションタロット「トコヨ」になります。新たなタロットのため、勝利を目指しましょう!

           

          ゆるい午後はシーズン2へ

           4コマ漫画ですが、今回の更新でシーズン1が完結となります。ですがご安心を。遠くないうちにシーズン2が始まります。
           各シーズンはいずれも全8回を予定しており、アンソロジーコミックのように様々な先生をお招きする予定です。多彩な作風で描かれる桜降る代にご期待ください!

           

          TOKIAME先生サイン会

           ゲームマーケット春の当ブース(A32)にて、本作を素晴らしいイラストで彩るTOKIAME先生のサイン会を開催いたします。開催時間は13時から15時を予定しております。このチャンスをお見逃しなく!

           

          全国大会開催決定!

           先日の記事でも書きましたが、5月下旬から7月上旬を目途に、『桜降る代に決闘を』の全国大会を予定しております。こちらについての詳細は、2週間後に当ブログの記事で紹介する予定です。

           

          さらなる新情報も……?

           そして、大きな流れとなる新情報もございます。こちらについては、ゲームマーケット春の当日に当ブースにて発表いたします。ぜひとも、あなたのお越しをお待ちしております!

           それでは今回はこんなところとなります。お楽しみいただけたら嬉しいです! 次は二週間後、全国大会の話をする頃にまたお会いしましょう。

          『桜降る代の神語り』第19話:奇縁

          2017.04.07 Friday

          0

            《前へ》      《目録へ》      《次へ》

             

             火の手より逃れ、そして新たな目的に向かって各々旅立った天音揺波と氷雨細音。
             どちらから語るべきか迷うところだけれど、ここは氷雨細音を追うことにしよう。
             時は別れより数日後。彼女が龍ノ宮の領地へ再び入った頃合い。
             世情に触れる氷雨細音に、早くも新たな出会いが訪れる。

             


             一月も経たないうちに折り返してくることになった道を、細音はやや眉間にしわを寄せながら歩いていた。雨の気配もなく、宿場の喧騒も聞こえてきたとあって、屋根を得られる安心を覚えこそすれ、旅程に不安を覚える道理はない。杖代わりの薙刀を掴む手にも力みは見られず、旅の疲れが顔に出たのだと言われれば納得してしまう程度のそれ。
             細音が、一人きりの道中の慰みに選んだのは、至って冷静な反省であった。そこで生まれた僅かな苛立ちが、彼女を不機嫌に見せてしまっていた。

             

             

             龍ノ宮城での揺波の戦い。庭に面した廊下からその様子を聞いていた細音は、それに感じ入らずにはいられなかった。最強と謳われる相手に果敢に攻めていった揺波の足捌き、太刀筋、何より勝利を求める気迫。それは、細音が否定した彼女から生まれるはずのない、素晴らしいものだった。

             

             細音が揺波を認めるつもりがないのは事実であり、それは今も変わっていない。あの戦いを正当に、客観的に評価してもなお改まることはない。細音の考える武の道とは、どうあっても迎合しないことはもはや真理ですらあった。
             細音の苛立ちは、揺波を評価しなければならないことではなく、負けるのだと決めつけてしまっていた己の不甲斐なさから生じていた。

             

             自分が同じ立場にあって、あのように食らいつけるだろうか。
             その一刀を届かせるために、全てを投げ打つような執着心を抱けるだろうか。
             知りもしない結果を盲信した後悔が段々と熟し、至らなさに目が向くようになる。独りで武を磨いてきた細音にとって自省は発作のようなものだが、今回は特に恥ずかしさすら覚える有様で、彼女に一層の修行を決意させるには十分すぎた。

             

             揺波には情勢を調べるため、と説明したが、細音は自身でそれが建前でしかないと分かっていた。己を高めるには身体を動かす他なく、ただ漠然と雇い主である古鷹の下へ戻ったところで実りは望めない。それが怠惰に思えたからこそ、こうしてまた因縁の地に向かっているのだ。

             

             そうやって煩悶しているうちに、杖代わりの薙刀が叩く地面が、より硬い感触を返した。
             龍ノ宮城下から一番近い宿場町に到着したのである。

             

            「部屋があればよいですが……」

             

             そろそろ夕暮れも近いとあって、宿場の活気は否応にも増しているようだった。旅人の到着と飲み処のかきいれ時が重なればそれも道理であるが、考えていたよりも幾分か人が多そうだ、と細音は宿の心配をするはめになる。
             同じ道を行く者がほとんどいなかったにも関わらずこの有様なのは、南下した人間ではなく北上する人間のせいだろう。城下まで燃え広がった、という自身の目的地のことを再度思い出し、そう得心する。

             

             以前訪ねた際の地理を脳裏に呼び起こしつつ、世話になったことのある宿へと足を向ける。
            と、人を避け通りを行く細音の耳が、一つの音色を捉えた。

             

            「おや……?」

             

             ベン、ベン、とかき鳴らされる弦の旋律。曲というには曖昧で、音というには圧がある。屋内からかと思えば、明らかにそれは軒先からのものだった。
             続けて聞こえてきたのは、高らかに吟ずる妙齢の男の声音だ。

             

            「数多の人々まとめたる、龍ノ宮一志という豪気たる男。しかして彼の望んだ和の中に、天の名借りた悪がいた。道半ばにて地に還った、我らぁァ〜〜のォ、ほまァ〜れェ〜高ァき、龍ぅ〜の末ぇ〜えェ〜」

             

             それはまさに今、世に起きていることを伝える詩、その前口上のようだった。
             細音としては、世情を知るのにこれほど都合のよいものはそうなかった。幸い宿への道中だったため、流しの楽師を囲む人々の輪に入る。

             

             飲み屋の軒先で世を語り始めた楽師が二人組であることを、細音はすぐに悟った。弾き手と語り手が分かれるのはこの手にしては珍しい。語り手がつかえずにいられるのは、ひとえに弾き手がそれに合わせた伴奏をできるだけの高い技量を有しているからだった。
             ただ、細音は幼い頃から聞いてきた音色に郷愁を覚えるも、今現在紡がれている話の内容に再び眉をひそめざるを得なかった。

             

             語られたのは、龍ノ宮の死から起きる一連の出来事。メガミの炎に城が燃え、天音家が燃えた――その事実は確かに間違ってはいなかった。
             けれど、全ての原因が天音にある、という短絡かつ刺激的な結論が細音を苛立たせた。やりどころのない感情が、旋律を追って薙刀の柄を叩く指先の力へと変わる。

             

             曰く、天音のミコトは邪な手段を用いることでここまでの勝利を得ていた。
             曰く、敵わぬと考えた天音が龍ノ宮を誅殺した。
             曰く、まがい物の勝利で以って世を支配するのが天音の目的だった。
             曰く、故に天音はメガミの怒りに焼かれることとなった。
             曰く、ミコトの悪行に狂ったメガミは、正義のミコトの英雄的活躍により鎮められた。

             

            「随分と落ち着いてきた、って時分だってぇのにねえ……」
            「喧嘩がつええだけのやつに治められちゃたまらん。ヒミカ様はようやってくだすった」
            「いやぁ……それでも、あんな焼け野原にされちゃあ……ねえ? 今まであんな方が町にいたのかと思うと……」
            「おめえさん、城下のほうか。そうだな……見境なく暴れられちゃあな……」
            「とはいえ、メガミ様を討っちまったなんて、それはそれで恐ろしいよ。ヲウカ様がお怒りになっていやしないか心配だよ……」

             

             最初からとは言わずも、当事者であった細音にとっては、聴衆の反応も総じて勝手なものばかりであった。この場で身勝手な意見をばっかり切り捨ててしまいたい欲望に駆られるも、そうしたところで得はない。
             そのうち、胸糞が悪くなるような内容を話半分に聞くようになった細音は、佳境に行くにつれて激しくなっていく伴奏を捉えることに夢中になり始めていた。

             

            「ヒトかァ〜ミコトォ〜か、果てはぁァ〜メガミかァ〜。行く末ぇェ、知るべきゃァ、真かァ、桜かァ〜。――……どうも、お粗末さまでございました」

             

             はっ、と終わりを告げられた細音は、随分と熱中していた自分が恥ずかしくなった。語りの伴としては随分と複雑になったその旋律を、ひたすら追い続けることで鬱憤を晴らしていたのである。
             三々五々散っていく人々の足音に、自分も早く宿を見つけねば、と当初の目的を思い出す。すっかり頭の中からどかされていた地図をもう一度引っ張り出す。

             

            「ねえねえ、そこのお姉さん」

             

             そんな細音にかけられた声は、とても幼い女の子のものだった。
             耳が良すぎるため、自分に向けられたものだと分かってしまう細音は、訝しがりながらも応じるしかない。

             

            「……なんでしょうか」

             

             これがただの子供であったのなら、無視することもできた。
             けれど、自分の胸元まであるか怪しいくらいの背丈であろうその子供の足音が、明らかに弦の音色の発生源からやってきたこともまた、耳の良すぎる細音には分かってしまうのだ。
             そしてあの弾き手は、ともすれば語り手を手の上で転がすように奏でていたことも。
            細音の中で、興味と不審が天秤にかけられている。

             

            「今日はここに泊まっていくんでしょう? お夕飯でも一緒しない? あなたと話したいことがあるんだけど」
            「客引きなら間に合ってますが……」
            「あ、ごめんね。名乗りもせずに」
            「あの」

             

             細音の制止をよそに、その少女は悪戯めいた笑みを浮かべながらこう言った。

             

            「あたしは久遠。 幾年久遠 いくとせくおん 。よろしくね」

             


             袖振り合うも、とは言うけれど、それにしたって奇妙な縁だ。
             ……ああ、念のため伝えておいたほうがようさそうかな。
             君なら分かっているかもしれないが、彼女の正体はトコヨ。芸術と永遠を象徴するメガミさ。
             彼女はよく人の世に現れては、お忍びで芸事を嗜んでいる。そしてこのように人と触れ合うこともある。
             ま、お忍びって言ったって、分かる奴にしてみたらばればれもいいところなんだけどね。幸いにして、あの場にはいなかったようだけど。

             

            語り:カナヱ
            『桜降代之戦絵巻 第三巻』より
            作:五十嵐月夜  原案:BakaFire 挿絵:TOKIAME

             

            《前へ》      《目録へ》      《次へ》